第4頁 古代怪獣キングザウルス3世………「3世」を経た王位

怪獣名キングザウルス3世
肩書古代怪獣
出身地地球・箱根山中
初登場『帰ってきたウルトラマン』第4話「必殺流星キック」 
キング度5
キング要素作中序盤での初勝利


概要 キングザウルス3世『帰ってきたウルトラマン』に登場した、最初の四足歩行型怪獣である。同作品の多く登場する怪獣に多い、恐竜然とした容姿の者の内の一体だが、ぱっと見には丸で恐竜である。

 ただ、そこはやはり怪獣、頑丈な皮膚や背鰭はミサイルを撥ね返し、ウランを常食とし、口からは赤い放射能光線を発する。のみならず角からも扇状のショック光線を発するが、何と云っても最強能力は角から発する、あらゆる攻撃を防ぐカーテン状態のバリアーである。「キングザウルス3世」と聞けば、このバリアーを最初に思い浮かべる特撮ファンも多いことだろう。

 箱根山中に現れ、帰ってきたウルトラマンのスペシウム光線、八つ裂き光輪、シネラマショット、フォッグビームと云った各種光線技を完全に遮断した。直後、狼狽する帰ってきたウルトラマンに突進攻撃を敢行し、左大腿部に角を突き立てると強烈なエネルギーを放射して帰ってきたウルトラマンを敗退せしめた。
 だが、第一原子力発電所付近で行われた再戦では、万能であるバリアーがキングザウルス3世の周囲にしか張り巡らされていない、つまり頭上はがら空きであるところを帰ってきたウルトラマンが特訓にて身に着けた流星キックで角をへし折られたことでバリアーが解け、無防備となった背中にスペシウム光線を浴びたことで倒された。


怪獣としての立場 『帰ってきたウルトラマン』は第17話で宇宙大怪獣ベムスターが登場するまで登場した怪獣はすべて地球出身で、長年地底や海底で休眠状態にあったものが公害の影響で目覚めたとされた者が多い。
 図体のでかい怪獣が長らく衆人の目に曝されなかった以上、地底や海底にいたというのは実に分かり易い設定だが、地中において長く眠っていた者もいれば、元気に暴れ回っていた者もいる訳だが、キングザウルス3世の生態に関してははっきりしない。『空想科学読本2』で柳田理科雄氏が地底怪獣の生態を検証したところ、同作品に登場する化石怪獣ステゴン古代怪獣ツインテールが食性で地底怪獣として不向きとされたのに対し、キングザウルス3世地底怪獣グドン岩石怪獣サドラ古代怪獣ダンガー同様、体形的に不向きとされていた(笑)。ちなみに他の怪獣は身体能力や体質で不向きとされていた(笑)。

 いずれにせよ、第16話までに登場した怪獣達は、巨大過ぎる体躯。種々の特殊能力を除けば、「でかい動物」に過ぎず、その行動基盤は食べることと、子孫を残すにあり、帰ってきたウルトラマンや他の怪獣と争うのも、捕食や縄張り争や外敵排除の範囲を出ない。
 それゆえキングザウルス3世が帰ってきたウルトラマンと対峙・対戦したのも、食糧であるウランを求めて地上に出て来たところを、その体躯、捕食がもたらす惨禍が怪獣にょる害として看過されなかったためで、キングザウルス3世にしてみれば「食べに来た」だけで、そこがヒトという哺乳類の生活圏に入り、脅威とを見做された為に駆除された訳である。
 特殊なバリアーを初めとする光線を操らなければ「巨大な動物」で、それ以上でもそれ以下でもない。それゆえウルトラ怪獣全般に在ってキングザウルス3世の存在感はめちゃくちゃ大きい訳では無い。が、小さくもなく、同作における1話限りの出番でしかなかった割には知名度もある。

 それは取りも直さず、同作品における「帰ってきたウルトラマンを最初に敗退させた怪獣」であることが大きい。


注目の「キング」要素 すべての怪獣・超獣・宇宙人・円盤生物はウルトラ兄弟か正義のチームによって打倒される(怪獣同士の戦いで落命する者もいるが)。身も蓋もない云い方をすれば、一度は勝利してもリベンジ戦で敗れる運命にある。
 それ故、地獄宇宙人ヒッポリト星人火山怪鳥バードンタイラントの様に、複数のウルトラマンに勝利したり、連戦連勝したりした者でなければ、「ウルトラマンに勝利した。」という戦歴を持っていても、それが目立たない者は多い(特に『ウルトラマンレオ』に登場する宇宙人達は初期のレオが未熟だったことから初戦で勝利した者が多いが、リベンジ戦では簡単に敗れた者も多く、戦歴的に有名でない者が殆んどである)。
 そんな中、キングザウルス3世の「帰ってきたウルトラマンに初戦で勝利した」は割と有名である。何故か?

 それは、第4話という初期で帰ってきたウルトラマンを破ったことが大きいと云えるだろう。
 前任のウルトラ兄弟であるウルトラマンに変身したハヤタ(黒部進)・モロボシ・ダンに比して、帰ってきたウルトラマンが憑依した郷秀樹(団次郎)は明らかに人として未熟な面が見られ、初期においてはウルトラマンの能力を得たこともあって思い上がり者としての一面も見られた。
 勿論未熟さは徐々に軽減され、成長していった訳だが、郷の未熟さを反映してか、帰ってきたウルトラマン自身、初戦に敗れることは決して少なくなかった。特に第17話以降は宇宙怪獣が地球出身の怪獣よりも格上に置かれた面が色濃く、初戦で敗れなかった場合でも、苦戦や痛み分けは多かった。
 だが、そんな中、キングザウルス3世の「初戦勝利」という戦歴が目立つのには二つの要素がある、とシルバータイタンは考えている。

 その二つの要素を単語で示せば、「最初」と「特訓」と云えよう。
 キングザウルス3世が登場したのは第4話である。郷秀樹が第2話で思い上がりからMATを解雇されかけ、共にレーサーとしての夢を追う先輩である坂田健(岸田森)に見放されかけるという失態(←勿論、両者とも業を諭したかったのが目的で、切るつもりは全くなかった)を演じたが、ちゃんとウルトラマンに変身してからはオイル怪獣タッコングに対してほぼ危なげなく勝利し、第3話ではサドラ地底怪獣デットンとの1対2のハンディキャップマッチにも勝利している。
 その帰ってきたウルトラマンが第4話にして初敗北を喫した。それもスペシウム光線や八つ裂き光輪といった代表技のみならず、設定上はより格上とされるシネラマショットやフォッグビームも通じなかったから、帰ってきたウルトラマンの絶望は推して知るべしである。何せシネラマショットは同じ形態で繰り出されるウルトラセブンのワイドショットと同等の破壊力を持つと設定されているが、キングザウルス3世のバリアーにあっさり防がれた。このことがトラウマになったかどうかは定かではないが、八つ裂き光輪もシネラマショットもフォッグビームも同作品に二度と登場することはなかった(まあ、後半はウルトラブレスレットの万能性の前にスペシウム光線以外の技は存在感をかなり低下させた訳が)。

 そして初敗北、それも完膚なき惨敗を喫した帰ってきたウルトラマン郷秀樹は打倒キングザウルス3世の為の「特訓」を積んだ。「ウルトラマンの特訓」と云えば、多くの特撮ファンはウルトラマンレオを思い浮かべると思うが、この第4話における郷の特訓もなかなかの迫力だった。
 丸太を担ぎ、ひたすらジャンプ力を高めんとする姿は歴代ウルトラ俳優の中でも頭一つ高い団氏(187cm)が必死の形相で怪我の痛みに耐えながら特訓していた姿は圧巻だった。
 そしてその特訓だが、仮面ライダーシリーズに比べると、ウルトラ兄弟の特訓は決して多い訳では無い(勿論前半のレオは例外)。ハヤタもダンも北斗星司(高峰圭二)も全く特訓しなかったし、東光太郎(篠田三郎)には少し見られたが、元々ボクサー志望だったので特訓を積んでいてもインパクトは薄かった。
 郷も、後々登場したウルトラブレスレットが強力だったこともあってか、特訓シーンはほぼこの第4話だけだった(第27話ではキックボクサーに対するトレーナーとしての色合いの方が濃かった)。

 つまるところ、この「初敗北を喫した」ことと、「特訓を要した」こととが大きなインパクトを持ち、キングザウルス3世の知名度を否が応にも高めている。それ故、必死にジャンプ力を身に着ける特訓を積んでいた郷秀樹=帰ってきたウルトラマンに対して、「アンタ、空飛べるでしょ?」いう野暮なツッコミは慎みましょう(苦笑)

 さて、ここまで考察すると、キングザウルス3世はバリアーの防御力こそピカ一だが、そのバリアーも頭上ががら空きで、バリアーを失った後は精彩を欠いていたことを考えると、「「キング」というほどではないのでは?」と考えた視聴者も少なくないと思われる。
 そしてそのキングザウルス3世の名前に焚いて、「キング」以上に、「何故に「3世」なのか?」に対する疑問を強く抱いたことの有るかとは多いことだろう。勿論、3世が存在する以上、「1世」が存在する(生前そう呼ばれなくても、である)。キングザウルス3世の場合、伊上勝が手掛けた未制作脚本「呪われた怪獣伝説」に登場する予定だった怪獣から来ている。
同脚本中では「原始怪獣キングザウルスを古代アトランティス人が品種改良した三世」と設定されており、そのことに触れられないまま、「キングザウルス3世」の名前が作中にて告げられたため、必然性のない3世という称号として残ってしまった。

 古代アトランティスの時代、出現した怪獣に対してウルトラ兄弟が現れて退治してくれた記録はない(筈である)。ウルトラ兄弟の助けを借りられず、超近代兵器も保持しない古代人にとって、怪獣はとんでもない脅威で、それ故に「恐竜の王様」ともいえるその姿に「キングザウルス」の名がついたと考えるのは容易である。
 更に、3世という同名の「キング」を呼び分ける為に代数表示までつけば、本当に「キング」みたいである(笑)。


余談 漫画『闘将!!拉麺男』に登場した十字拳黒龍の制空圏バリヤーが、頭上ががら空きだったことでラーメンマンの双星猛虎拳に敗れたシーンを見た際に、キングザウルス3世を思い出した方は、画面の前で挙手して下さい(笑)。


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令和七(2025)年一一月八日 最終更新