第5頁 用心棒怪獣ブラックキング………ブリーダー振りの誇示?
怪獣名 ブラックキング 肩書 用心棒怪獣 出身地 ナックル星 初登場 『帰ってきたウルトラマン』第37話「ウルトラマン夕陽に死す」 キング度 8 キング要素 怪力、鍛錬可能、汎用性
概要 暗殺宇宙人ナックル星人に兵器として使役される怪獣。前2作と比しても陰の要素が強い『帰ってきたウルトラマン』にあって、郷秀樹の恩人・坂田健、恋人・坂田アキ(榊原るみ)が惨殺されるという同作屈指の陰惨エピソードに絡む故、その知名度は抜群に高い。
その容姿は、ブラックキングの名の通り、黒い頑強な皮膚で覆われた体を持ち、腹部は蛇腹状で、頭頂部には前方に伸びた巨大な金色の角を持つ。ちなみにこの角は、金色にもかかわらず「ブラック角」と呼ばれているらしい(笑)。また背中と尻尾に鋭い棘を持っている。
名前の似たレッドキング同様、直立した恐竜然とした佇まいで、見た目のどおりのパワーファイターであった。設定によると軽々と30万トンのタンカーを持ち上げる怪力を秘め、50トン戦車10台分の砲撃と同じ破壊力のパンチを繰り出すとある。初代ウルトラマンが体重20万tのスカイドンを持ち上げた際にふらついていたことを鑑みれば、腕力では明らかにウルトラマンを上回っている。
また角はとても硬く、50万トンのタンカーを引っ掛けて空へ飛ばすほどの力を有する。正にパワーファイターである。
身体能力に加えて特徴的なのは、使役者であるナックル星人によって、打倒帰ってきたウルトラマンの為に特訓が為されていたことである(特訓シーンがあった訳では無いが、ウルトラシリーズの前史を描いた漫画『ウルトラマンSTORY0』には特訓シーンがあった)。
ベムスターと竜巻怪獣シーゴラスを復活させ、戦わすことで帰ってきたウルトラマンの能力を分析したナックル星人(成瀬昌彦)は、単純に戦わせたのではブラックキングでも勝てるかどうか分からないとし、対ウルトラマン用に特別な訓練が施した訳で、実際にブラックキングはスペシウム光線を両腕をクロスして防ぎ、ウルトラブレスレットは肩口で弾き返した。
これらの防御技を目の当たりにした帰ってきたウルトラマンは、「私を倒す為に特訓されている。」と呟いていた。
肉弾戦のみならず、口から赤い熱線、白い煙幕を吐き出し、攻撃だけではなく、陽動作戦を為す知能もあり、名前の似たレッドキングよりも格上とする書籍も散見される。頭がある分(笑)。
更に必勝を期すナックル星人は郷の動揺を誘うために坂田兄妹を殺害し、且つ太陽光の弱い夕暮れ時に対戦することでブラックキングは対戦を優位に進め、心身ともに帰ってきたウルトラマンが消耗したところにナックル星人の加勢も得て、帰ってきたウルトラマンに勝利した。
だが、ナックル星に連行して処刑せんとした帰ってきたウルトラマンは初代ウルトラマンとウルトラセブンによって救出されて地球に帰還。再度ナックル星人と共にこれを迎え撃ったブラックキングだったが、二人ウルトラマンから得た友情に力を得た帰ってきたウルトラマンに抗し得ず、終盤では体術・格闘でも劣り、空中に放り投げられたところをベルリンの赤い………じゃなかった、スライスハンドで首ちょんぱされて最期を遂げたのだった。
怪獣としての立場 ブラックキングの名は、明らかにレッドキングを意識して付けられたものである。それどころか放映直後の児童書にはブラックキングを「レッドキングの兄」、「ウルトラマンに倒されたレッドキングをナックル星人が改造した」とするものまであった。
対ウルトラマン戦の特訓を積んで戦闘能力を増したことが「頭も良い」とされ、脳筋代表選手であるレッドキング (笑)より格上とするものもある。
ただ、シルバータイタンはブラックキングを怪獣の中では「上の下」か、「中の上」的な存在と見ている。
確かにかなりの腕力があり、学習能力があるのは怪獣の中でも稀有なので、強いか弱いかの二元論で云えば、「強い方」には入るだろう。ただ、戦闘は腕力だけで決まるものではない。確かに緒戦で帰ってきたウルトラマンに勝利したが、下記の様々なアドバンテージを持っていた。
○勝ってきたウルトラマンの戦闘能力を事前に分析し、各種必殺技への対抗策を持っていた。
○兄貴分と彼女を殺された帰ってきたウルトラマンの精神状態が凄まじい怒りと悲しみでかき乱されていた。
○夕暮れ時で、帰ってきたウルトラマンにとって太陽光エネルギーの補給が不充分な状況にあった。
○ナックル星人の加勢があった。
勿論、勝負に勝つ為にこれだけのシチュエーションを整えたナックル星人が用意周到な訳で、これらのアドバンテージがあったからといって、素のブラックキングを弱いとしたい訳では無い。ナックル星人も、帰ってきたウルトラマンの能力分析直後に「ブラックキングでも勝てるかどうか。」とは云っていたが、「絶対負ける。」と云った訳では無い。
だが、再戦では惨敗とは云わずまでも、完敗に近かった。上述のアドバンテージから見ると、
○新技・スライスハンドに対する対抗策を持っていたなかった。
○帰ってきたウルトラマンから怒りや悲しみが消えていた訳では無かったが、時間が経ったことと、ウルトラマン・ウルトラセブンの友情に支えられ、冷静さを取り戻していた。
○真昼間で、天候も良かった。
○最初からナックル星人と共に迎え撃った。
つまり、4つあったアドバンテージの内、3つが失われていた。となると、初登場時に郷秀樹がいきなり変身して戦っていれば、その場で倒された可能性は高かったと見られる。
分析するに、ブラックキングは良くも悪くも使役怪獣だったということに尽きる。そして使役する分には非常に使い勝手が良かった。そして使役怪獣であるが故に、主人の指導があるか否かでその戦闘能力を大きく増減させていた。
当然この長所は短所でもあった。兵卒が首相の在り様で精鋭にも雑魚にもなり得るのは世の常だが、ブラックキングはその傾向がかなり強い。後年、劇場版『ウルトラマンサーガ』の未公開映像では触覚宇宙人バット星人によって怪獣兵器として蘇生・改造されたブラックキングが帰ってきたウルトラマンと戦ったが、勝負は帰ってきたウルトラマンの完勝に終わっていた。それもかつて破った筈のウルトラブレスレットにブラックキングは敗れ去った。
もっとも、このとき帰ってきたウルトラマンが使用したウルトラブレスレットの形態はかつて破られたブーメランではなく、ウルトラランスを投擲したものである。要するにブラックキングの防御力は事前知識があるか否かで大きく異なると云う事である。また、本編登場時より、帰ってきたウルトラマンが初戦時より大きくパワーアップをしていることも留意する必要がある(『ウルトラファイトオーブ』で帰ってきたウルトラマンはかつて苦戦したグドンとツインテールの同時攻撃を苦も無く破り、同時にかつて不覚を喫したバードン相手に勝利を収めたゾフィーが、経験によって同じ相手に抗し得ることを述べていた)。
故に学習の有無で戦闘能力が大きく異なるブラックキングだが、これは云い換えれば「調教し易い」を意味する。それ故にナックル星人はブラックキングを完全な捨て駒扱いしつつも、惑星オズにおいて水・陸・空の様々な状況に特化したブラックキングを大量にブリーディングしていた。
また劇場版『大怪獣ウルトラ銀河伝説THE MOVIE』では暗黒星人シャプレー星人に、『ウルトラマンオーブ』ではジャグラスジャグラーに(貸与元はメトロン星人)率いられていたが、決して強い方ではなかった。
ブラックキングがナックル星人以外の異星人に率いられていたのも、狡猾なナックル星人のことだから、何がしかの取引で、貸与または売却したとしても全く不思議ではない(戦績的にも、優れた個体を渡した訳ではないと考えられる)。
『帰ってきたウルトラマン』において一、二を争う有名な話に絡み、様々なアドバンテージを準備したからとはいえ、帰ってきたウルトラマンを一度は破ったことで同作品における知名度は勿論、ウルトラ怪獣全般に在っても有名なブラックキングだが、その強さは偏に名将に率いられるか否かに大きく依存するだろう。
注目の「キング」要素 身も蓋もない云い方をすればブラックキングは使役怪獣である(まあ、宇宙人が連れて来た者であれば、そうなるのは必然なのだが)。それ以上でもなく、それ以下でもなく、そこを行くと「キング」には程遠い。
決して弱くはないが、多くの怪獣達の中にあって君臨出来るまでの強さは無く、よく比較されるレッドキングの様に他の怪獣を打ち破るシーンがある訳でもない(『ウルトラマンSTORY0』では食いしん坊怪獣モットクレロンを捕食するシーンがあったが)。
にもかかわらず、何故に「キング」なのか?そこには2つの要因があるとシルバータイタンは考える。
一つは、レッドキングとの絡みである。
上述した様に、ブラックキングには「元々はレッドキングだった」と囁かれたこともあったが、レッドキングが地球出身であったり、ナックル星人にベムスター・シーゴラスを操る能力があったりすることから、ナックル星人がレッドキングに執着する理由は見当たらない。ブラックキング自体は生物学的にはレッドキングとは全く異な生物なのだろう。
ただ、レッドキングを意識した存在であることは間違いない。特に蛇腹に覆われた腹部を見れば明らかである。思うに、『帰ってきたウルトラマン』の制作陣は同作品を代表するような怪獣が欲しかったのではあるまいか?
同作品には有名どころだけでもタッコング、グドン、ツインテール、シーゴラス、ベムスター等がいて、それぞれに有名な背景やエピソードも豊富である。だがそれ故に抜きん出た存在がある訳では無い。勿論、怪獣には個々に個性があり、好みも印象も人によっては異なるだろう。
そこに超有名怪獣として君臨していたレッドキングを彷彿とさせるキャラクターとして生まれた故にブラックキングは「キング」足り得るのだろう。深読みも良い所かもしれないが(苦笑)。
そしてもう一つの要因は使役怪獣故の、成長への伸び白とみている。
ブラックキングに限った話ではないが、怪獣も宇宙人もたった1体しか存在しない訳では無い。そもそも単細胞生物でない限り1体だけでは繁殖出来ない。そして上述した様にブラックキングはシリーズをまたいで複数体が登場している(シャプレー星人等の異星人が率いた個体以外はすべてナックル星人が率いている)。『ウルトラマンSTORY0』を読めば、大量繁殖が為されているのは明らかで、時に戦力、時に商品とされている。
となるとブラックキングの中にも能力に優劣があるだろうし、陸・海・空に特化した品種改良が行われているところを見れば、ナックル星人はまだまだ多くのブラックキングを育て、その強化を図っているであろうことは想像に難くない。
その知名度や、敵役に相応しい狡猾度から、ナックル星人が今後もまだまだウルトラ作品に出て来るだろうし、それに関連して数々のブラックキングも登場するだろう。その中には様々な事柄を学び、修業を積むことで究極の強敵となるブラックキングが登場する可能性は充分にある。この成長への見込みが、ブラックキングの最も大きな「キング」要素かも知れない。
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令和七(2025)年一一月一三日 最終更新