第2頁 妖怪王女………意外な寛容性と手広さ

ジンドグマ幹部File2.妖怪王女
性格パニック好きで小悪魔的
幹部気質穏健派
演者吉沢由紀
正体ジンドグマ超A級怪人サタンドール
特技敵味方を問わない人材活用
配下グラサンキッド、アマガンサー、スプレーダー、レッドレンジャー、ドクロボール、ハシゴーン
基本性格 魔女参謀と並んで初めて登場した女性幹部である。当然良くも悪くも女性らしさが(魔女参謀よりも)クローズアップされていた(鏡に向かっての御化粧シーンもあった(笑))。
 その性格を一言で云い表すなら「小悪魔的」と云えようか?幹部として作戦遂行にほくそ笑むのは誰でもそうだが、妖怪王女の場合、作戦の成否や、成果よりもその過程で標的が慌てふためき、パニックに陥るのをせせら笑う方を好む傾向が強かった。

 他の幹部達同様、妖怪王女もまた性格や戦略方針の相違から他の幹部達を見下していた。鬼火司令に対しては直情的な性格を、幽霊博士に対しては慎重過ぎる性格を、同じ女性幹部である魔女参謀に対しては気位の高さを嫌い、軽蔑していた。
 もっとも、鬼火司令に馬鹿にされたときは彼に負けないぐらい怒りを示していたが(笑)。

 そのような性格ゆえ、妖怪王女は悪の大幹部にしては残忍性が薄く、四幹部の中では穏健派に属し、悪役カラーは比較的薄い。また作戦やプライドに妙な固執が無いためか、配下の怪人達に高圧的に出ることもなく、他の三幹部が相手にしないような一般ピープルと接触することも厭わなかった(詳細後述)。
 また前述した様に、ライダー作品における最初の女性幹部故か、「女性」としてのカラーも色濃く前面に出しており、水溜りにはまり込んだ草波ハルミ(田中由美子)を一般人スタイルで睥睨したり、囚われの彼女に平手打ちを食らわせたりして妙な対抗心を見せてもいた。

 勿論、これ等の基本性格は彼女が指揮する作戦にも如実に表れていた。



主な作戦傾向 前述した様に妖怪王女ジンドグマ四幹部の中では穏健派である。それ故急進派で、直情的な鬼火司令が指揮した作戦に比して直接的な破壊行動は少なく、指揮した怪人達の素体も本来なら武器となり得ない者が多かった(そのせいか、アマガンサーハシゴーン以外はかなり弱かった)。

 グラサンキッドには「子供の自由と権利を守るチャイルドX」と名乗らせ、子供達を叱る大人達を攻撃させ、子供達の支持を得ることでX軍団という子供の集団でもって大人を攻撃する作戦に従事させた。
 アマガンサーには雨を降らせる能力と、人間をコントロールする装置を仕込んだ雨傘を利用した人類支配を目論ませた。
 スプレーダーにはスプレー型の体内に人間を吸い込み、吸い込んだ相手を洗脳させんとした。
 レッドレンジャーには赤ランプに対する人間の認識を逆用してパニックに陥らせようとした。
 ドクロボールは単純に仮面ライダースーパー1を迎撃しただけだったが、ハシゴーンには日本宇宙開発研究所開発したロケット燃料Xβを強奪させた。この燃料は衝撃に非常に弱く、1/1000mgで戦車をも吹っ飛し、小瓶一杯程度の量でも床に落としただけで東京中が吹っ飛ばすという物騒な物で、破壊兵器には最適なものだった。これは彼女には珍しい完全破壊作戦と云えよう(過程としては盗みだが)。

 こうして見ると、彼女の作戦は「子供を本気で攻撃出来ない大人」、「にわか雨に置き傘があれば飛びつく」、「赤ランプの緊急警報に危機感を感じる」、という人間心理に根差したものが多く、効果が出るにはある程度の時間が掛かるが、功を奏せば人間社会にかなり深刻な被害を与えるものであることが伺える。

 もっとも、細かく見ると穴・甘さも結構多い。
鬼火司令妖怪王女の作戦傾向に対して、「手ぬるい!」、「回りくどい!」との罵声を浴びせていたが、その経過には「何でそうなるの?」と首を傾げるものもあった。
 X軍団作戦は、子供を組織して子供を本気で攻撃出来ない大人を責めさせるという着眼点は良かったが、子供達は悪戯を庇ってもらったことでX軍団に居心地の良さを感じていたぐらいで、(鬼火司令が指摘したように)大人を攻撃するほどの憎悪を植え付けた様子はなかった。
 雨傘を利用した洗脳計画も目の付け所は良いが、人を洗脳する装置を日用品に組み込めるのなら、雨の日しか手にしない雨傘ではなく、街頭にて配るポケットティッシュに仕込んでも良い気がする(笑)。
 レッドレンジャーに従事させたパニック作戦に至っては、「赤ランプの音を聞けば人は慌てて窓から飛び降りる。」という人間行動への訳の分からない決めつけが根拠になっていた。「火事だ!」と思わせて人々を慌てさせるのなあ、(物騒なことを書くが)放火した方が手っ取り早い気がする。

 良くも悪くも、彼女らしさが作戦全般に現れていたと云えよう。



注目すべき点 元祖悪の組織であるショッカーが、世界の高名な科学者を拉致して科学技術力を強化させたり、前組織であるドグマが優秀な人間のみによる社会を目指したりしたこともあってか、悪の組織の作戦にはその対象に核となる優秀な人物に着目したものが多い。
 勿論無差別テロや、社会全体を洗脳せんとする、といった一般ピープルを標的とした者も少なくないが、その能力に期待してのものではなかった。
 その点、妖怪王女の作戦は、純粋に一般人の能力に期待したものだった。

 その傾向が特に顕著だったのは−このようなサイトを見て頂くような方々には既に読めていると思うが(笑)−、ハシゴーンを擁してのロケット燃料Xβ強奪作戦である。
 Xβは云うなれば「強力過ぎるニトログリセリン」で、その盗み出しには狭い場所を潜り抜けられ、それも慎重にそれを行える能力を必要とした。それゆえハシゴーンは小柄で体も柔らかいであろう子供に着目した。
 そのターゲットとなったのが、プールに行こうとしていたチョロ(佐藤輝昭)率いるジュニアライダー隊一行だったのは御都合主義と云おうか、「ハシゴーン間抜けなり……。」と云おうか(苦笑)。

 ともあれ、ハシゴーンが拉致した子供達に課した潜り抜けテストは子供達でも困難で、業を煮やしたハシゴーンが不合格となった子供達を殺そうとしたのを救う形で、過去泥棒だった経験を活かしてテストに合格したのがチョロだった。
 かくしてハシゴーンが拉致したチョロ。だが、彼は痩せても枯れてもスーパー1・沖一也の仲間である。そんな彼を盗みに従事させるために(電気椅子みたいな)洗脳装置に掛けた。
 そんな一連の流れを傍らで見ていた他の三幹部は「(装置の)エネルギーの無駄」としていたが、妖怪王女は涼しい顔をしていた。恐れらくは外野がどういおうと自分の考えに揺るぎが無かったからだろう。
 実際、洗脳後のチョロにテストでの潜り抜けを披露した際には悪魔元帥も大いにこれを褒めていた。

 勿論作戦そのものはスーパー1の妨害で失敗に終わったが、ハシゴーンは日本宇宙開発研究所の空気ダクトを通って見事にXβを盗み出してきたチョロを「もう用無しだ!」と云って蹴飛ばしたのだから、チョロの起用自体は完全に成功していたと云えよう。

 ジンドグマ編らしくコミカルな展開が目立った話だったが、妖怪王女の目の付け所や意表を突いた人材起用という面で見所のある話でもある。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新