第3頁 幽霊博士………その細かさを活かせ

ジンドグマ幹部File3.幽霊博士
性格計算に煩い。一方で意外と情に厚い
幹部気質知性派(但し程度が高いかどうかは不明)
演者鈴木和夫
正体ジンドグマ超A級怪人ゴールドゴースト
特技様々なBC兵器の駆使
配下火焔ウォッチ、ラジゴーン、イスギロチン、コゴエンベエ、シャボヌルン
基本性格 基本人物像は「博士」の肩書が示す様に「悪の組織のマッドサイエンティスト」である。そしてその性格は良くも悪くも「細かい」もので、明らかに他の三幹部はそれを敬遠していた。
 身も蓋も無い云い方だが、悪の組織の作戦は最終的にすべて失敗に終わるのだから、結果でもって幽霊博士(及び他の三幹部)の能力のほどを推し量るのは困難なのだが、彼自身が「頭脳派」を自称し、それにこだわったのは明白である。
 ラジコン兵器の性能をテストプレイした際に、「実際の物は、これの1333倍の破壊力じゃ!」と叫んだり、ジンドグマ・ユートピアでの必要勉強時間を「5分と30秒じゃ」と子供相手に説明したり、悪魔元帥の御成りが遅くて食事を待たされる際にも秒単位で後れを愚痴ったり、と相手・状況に関わらず細かい倍数や時間が口を突いて出て来きていた。ここまで来ると性格もあるだろうし、行動パターンが染みついているというのもあるだろう。

 この幽霊博士もまた御多分に漏れず他の三幹部との仲は良くなかった。理数的な知識や研究に基づいた行動パターンは直情的で武断派の鬼火司令は勿論、穏健派でも人間感情を重んじる妖怪王女ともそれが合わず、魔女参謀とはほとんど関わらなかった。
 もっとも、魔女参謀は他の二幹部に対しても同様に接していたし、幽霊博士が「この私の素晴らしい頭脳を以て…」と呟いた際には、「幽霊博士の素晴らしい頭脳!? それは楽しみだ(笑)。」といって嘲笑していたので、毛色は異なりつつも、彼等は似た者同士なのかも知れない。
 一方で幽霊博士もまた他の三幹部を揶揄することが多かったが、頭脳派を自認する故か、回りくどい嫌味が目立った。前頁で触れた様に妖怪王女がチョロを洗脳機に掛けた際、鬼火司令魔女参謀が「エネルギーの無駄」と批判したのに対し、幽霊博士は「近頃、妖怪王女の男の趣味も変わったものじゃ。」という捻りの効いた揶揄をしていた。

 そんな決して仲の良いとは云えないジンドグマ四幹部達だったが、悪魔元帥に対しては間違いなく忠実で、根底では(前述した様に)似た者同士だったのかも知れない。その証左になるかどうかは微妙だが、鬼火司令妖怪王女が同時に戦死した折には、その死を悼み、打倒仮面ライダースーパー1を誓っていた(回としては週を跨いだが、時系列的に見て直後にジンドグマ超A級怪人ゴールドゴーストとしてスーパー1襲撃に出ていた)。
 悪の組織の大幹部には利己的な者や、仲間に対しても冷酷な者も少なくなく、昭和ライダー作品で見ると仲間の死を悼んだ例は、ヘビ女の戦死を悼んだジェネラル・シャドゥ、大怪人ビシュムの壮絶死を悼んだ大怪人バラオムジャーク将軍や同じ隊長仲間達(ボスガン・ガテゾーン)の討死を悼んだマリバロンぐらいで、本当に数える程しかない(まあ、だからこその悪の組織である訳だが)。
 その中でもシャドゥヘビ女の特別な関係、バラオムビシュムの何万年にもわたる同志関係、ジャーク将軍に対するマリバロンの忠誠心(←クライシス皇帝に対するそれより強い)を考えれば、幽霊博士は組織の善悪やイデオロギーに関係なく仲間想いの人物(?)だったのかも知れない。



主な作戦傾向 幽霊博士配下のジンドグマ怪人は火焔ウォッチラジゴーンイスギロチンコゴエンベエシャボンヌルンで、その素体は直接的には武器になりそうにならない日用品である。
 勿論、「馬鹿と鋏は使いよう」という言葉がある様に、日用品の中にも使い方によっては凶器となり得るものは多い。幽霊博士の作戦は直接的なテロよりも日用品が突如牙剥く恐ろしさに裏打ちされていた。
 火焔ウォッチが指揮した「火の海作戦」は、「古くなった時計を無料で新しい物と交換いたします」というちりかみ交換ならぬ、「時計交換」でもって時計に偽装した時限爆弾を東京中の家庭にばらまき、一斉爆発させて東京を火の海にしてしまおうという遠大なものだった。
 ラジゴーンには、電波ジャックで盗んだラジコンに毒ガスやミサイルを仕込んで町中を走らせて混乱に陥れるという作戦に従事させた。
 イスギロチンにはドクロガスなる毒ガスを大量生産してのテロに当たらせんとした。
 コゴエンベエを駆使してのジンドグマのユートピア計画では、「勉強は一日僅かでOK、望む物は何でも手に入り、すべての作業は機械が肩代わりしてくれる。」という理想郷を見せることで、見た物が自然とジンドグマに忠誠を誓うようになる、という手の込んだものだった。
 シャボンヌルンに従事させたのは「石けん作戦」という名の人員調達作戦。幽霊博士自身が発明した、人間を溶かしてゼリー状の「ゼリー人間」にしてしまうジンドグマ石けんをばら撒き、下水に流れてきたゼリー人間を回収、再生装置にかけてジンドグマの奴隷として使おうという、遠回しだが、想像数とかなり不気味な作戦だった。

 そして自身がゴールドゴーストとして出陣した際には地球に存在しない宇宙カビで人々を黄金病なる逸り病に罹患させ、沖一也を元凶であると患者達に錯覚させ、リンチに掛けんとした。
 かように幽霊博士の作戦は科学力を駆使して、質より量で破壊や洗脳に当たった感が強い。一方で欠点を述べれば、肉弾戦に関して自身を含め、配下の怪人に至るまで概して弱かったというものがある(恐らく「智」を優先し過ぎて、「武」が疎かになっていたのだろう)。
 火焔ウォッチは自らに装備された時計の針を進めることによって動きを加速することが出来るという特殊能力を持ちながらそれを駆使してやったことは逃げただけだったし(苦笑)、ラジコン兵器で仮面ライダースーパー1を苦戦させたラジゴーンもエレキハンドでアンテナを破壊された途端自らのラジコンに襲われて敗北。
 イスギロチンジンドグマ怪人の中でも最弱に近く(人間を5秒で溶かすドクロガスの方がよっぽど怖かった(笑))、コゴエンベエも御世辞にも強いとは云い難かった。
「不死身」を豪語していたシャボンヌルンは石鹸の改造人間らしく、その特性でライダーキックすら滑らせて防いでいたが、その為には体を湿らせておく必要があり、頻繁にジンファイターを呼び出して体に水を掛けさせていたのが間抜けだった。

 そして幽霊博士自身もジュニアライダー隊のスーパーボール攻撃に怯む体たらく(苦笑) で、ゴールドゴーストとしての不死身振りも蜃気楼を利用した攻撃回避に過ぎず、バレた途端にレーダーハンドのロケット砲一発でグロッキーとなり、その後は秒殺されて討ち死にを遂げた(バレさえしなければ極めて効果的な防御法ではあったが)。
 「武」も「智」も大切な要素だが、どちらか一方に偏るのが好ましくないことが伺える。同時にその傾向が作戦や配下怪人にも反映されていたのは興味深いと云えよう。



注目すべき点 幽霊博士(に限らないが)の性格・得意分野は両極端なので、作戦傾向も概ね一貫していた。それだけに最後の最後で意外に仲間想いな面を見せたり、地球の科学ではない故郷原産のカビを用いたり、意志無き奴隷にする対象だった地球の一般ピープルに自らの意志で沖一也を襲わせたり、といったいつも面を見せていた。

 ジンドグマ編はコミカルに走り過ぎたことが評判を落としている面がある(ドグマ編より明らかに極端過ぎて)。
 そのコミカル面を色濃く出していたのが幽霊博士だった訳だが、智を重んじつつもどこか間抜けだったり、良くも悪くも内輪揉めの核となったり(鬼火司令の声を荒げた批難とは対照的に、皮肉の利いたツッコミを入れたり入れたれたりしていた)、とジンドグマらしさを暗に担っていたと云える存在である。

 それだけに幽霊博士最後の出番で、良い意味で彼らしからぬ面を随所に見せた第47話は、最終回を大いに盛り上げる布石を打ったと云え、それこそが最も注目すべき点とシルバータイタンは考える。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新