酷評を覆せ、ジンドグマ四幹部!

 昭和ライダー作品において、好評と酷評が両極端になり易い作品が有る。『仮面ライダースーパー1』である。
 前作である『仮面ライダー(スカイライダー)』の後継作品として、拳法アクション、充実した科学メカ、複数バイクの乗りこなし、敢えて歴代ライダーを頼らなかった作品構成等と、『仮面ライダースーパー1』には今尚評価の高い要素が数多くありながら第2期ライダーシリーズは同作品をもって終了してしまった。

 シリーズ最終作となった作品への風当たりが強いのは世の常だが、『仮面ライダースーパー1』は何故に毀誉褒貶が激しいのか?

 実のところ、おおよその見当はついている。第1話から第23話までの「ドグマ編」と第24話から最終話までの「ジンドグマ編」で人気が大きく異なるからである。

 ジンドグマファンや演じた方々からカミソリが送られてくるのを覚悟の上で書くと、ジンドグマ編はかなり酷評されており、人によっては、「ドグマ編の成功を塗りつぶして余りあるほど『仮面ライダースーパー1』を駄作に貶めた!」とまで述べている。
 では、本当にジンドグマ編は駄作なのか?様々な声に耳を傾けると、ドグマ編と比して以下の様な酷評が囁かれている。


     
  1. 赤心少林拳・玄海老師(幸田宗丸)、弁慶(西山健司)といった渋く、重厚感のある準レギュラーをドグマ編の最後で死なせたことでストーリーが軽いものになってしまった。
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  3. ジンドグマ怪人が日用品をモチーフにした改造人間だったため、怖さを感じさせる要素が無く、戦歴的にも総じて弱い。故に戦闘に緊張感も緊迫感も見られない。
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  5. コミカルに走り過ぎて、ドグマ編とのギャップが強く、ドグマ編にのめり込んだ視聴者ほどついて行き辛かった。悪く云えば、子供番組とは云え子供っぽくなり過ぎた。
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  7. 当時まだ未熟な演技力の子役が多い時代で、少年仮面ライダー隊の再来であったジュニアライダー隊の演技も好評ではなかった(草波良(早川勝也)、石川ミチル(中村和泉)、石川マサル(荻堂盛幸)以外が極端に目立たない)。


 といったのが主だったところである。
 実際、シルバータイタン自身、ジンドグマ編よりもドグマ編の方が好きだ。だが、ジンドグマ編とはそんなにつまらないものだったのだろうか?
 確かにドグマ編と好対照にせんとしたことが裏目に出た感はある。だが、その試みの数々は、それまでのマスカーワールドの既成概念とは別のものに挑んだもので、もし成功していればジンドグマ編を屈指のシリーズにしていただろうし、実際に現在でも異彩を放っている。簡単に箇条書きにしてみると、


     
  1. 本来利用する日用品が突然牙剥く恐怖(アクション、見た目的には失敗しているが、実際に梯子やサングラスや赤ランプに襲われるのを想像するとかなり怖い)。
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  3. 宇宙から来た存在であることを明言(かなりラストではあるが)し、実際にそのことを反映させていた。
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  5. 視聴者が考えた怪人を実際に起用し、そのことをはっきり示した(ショオカキング)。
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  7. 一人の首領の下に複数の幹部を配し、首領と組織に忠誠を誓いながらも、幹部同士が対立するという構図を示した


 特に「4」が大きいとシルバータイタンは見ている。
 拙サイトを閲覧頂いている方々には反論もあると思う。「1」に関しては『仮面ライダーV3』デストロンも機械合成怪人を繰り出していた。だが、道具単体はジンドグマが初である。
 「2」に関しては『仮面ライダーストロンガー』デルザー軍団大首領が自らを宇宙から来た存在で、歴代組織を裏で糸引いていたことをカミングアウトしたが、宇宙人であることが反映されてはいなかった。

 そして「4」に関しては、「幹部同士の対立」として『仮面ライダーストロンガー』における一つ目タイタン(浜田晃)とジェネラル・シャドゥ(声・柴田秀勝)の対立や、デルザー軍団の対立の方が先であることを挙げる人達も多いと思う。
 だが、タイタンとシャドゥは「直属対雇われ者」との図式があり、デルザーに関しては組織としてまだ固まっていなかったと言う意味で背景が大きく異なる。
 その点、ジンドグマ悪魔元帥(加地健太郎)という絶対者がいて、その命には全員が従いつつも、完全な性格の相違と手柄への執着から四人の幹部が対立していた。故に彼等は他の幹部の手柄を妬み、失敗を嘲笑っても作戦そのものには介入しなかった(もし邪魔でもしようものなら悪魔元帥は決してその者を許さなかっただろう)。

 これ以上の詳細は次頁以降で検証したいが、シルバータイタンは『仮面ライダースーパー1』における毀誉褒貶、魅力を司る重大要素としてジンドグマの四大幹部、鬼火司令(河原崎洋夫)・妖怪王女(吉沢由紀)・幽霊博士(鈴木和夫)・魔女参謀(藤堂陽子)をクローズアップしたいと考えて本作制作に取り掛かった次第である。



第1頁 鬼火司令………夜光虫を育てた忍耐を、もっと!
第2頁 妖怪王女………意外な寛容性と手広さ
第3頁 幽霊博士………その細かさを活かせ
第4頁 魔女参謀………もう少し強い個性があれば……
最終頁 四幹部を統括する悪魔元帥の責任


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新