第4頁 魔女参謀………もう少し強い個性があれば……

ジンドグマ幹部File4.魔女参謀
性格冷静沈着(但し、残忍)
幹部気質中立派
演者藤堂陽子
正体ジンドグマ超A級怪人マジョリンガ
特技積極的な現場での陣頭指揮、変装
配下ビデオン、ツリボット、キーマンジョー、ゴールダー
基本性格 ジンドグマ四幹部の内、最も基本性格が読み難いのがこの魔女参謀である。鬼火司令妖怪王女に比べれば感情を露わにすることも少なく(無い訳ではない)、毒・人質・薬品・謀略も好んで使うが幽霊博士程に智略一辺倒でもない。
 つまりは四幹部の中で最も没個性的に見えるのだが、これは云い換えれば彼女が「最も悪の大幹部らしく振る舞っていたから。」と云える。

 見方を変えれば彼女は四幹部の中で最も残忍だったと見られる。
 鬼火司令は猪武者故に考えより手が早かったし、妖怪王女幽霊博士は一般ピープルや戦闘員を見下しながらも無駄にその命を奪うことは少なかった(必要と見れば躊躇しなかったが)。だが、魔女参謀は科学者をジンドグマに従わせるために誘拐や人質を用いての脅迫を繰り返し、ミサイル分捕り作戦では、国防長の古賀長官(柄沢英二)を脅迫する際にジンファイターの一人を崖下の海に突き落として、サメの群れに襲われるところを見せていた(つまり云うことを聞かないと息子がサメの餌になりかねないことを仄めかしたのだ)。

 過去の悪の組織にも、脅迫や自らの能力を誇示する為に何の落ち度もない戦闘員を虐殺する悪の大幹部や怪人達は何人も見受けられたが、コミカルカラーが強いゆえに残忍カラーが希薄なジンドグマでは魔女参謀だけだった。
 同じ女性幹部である妖怪王女が、演じた吉沢由紀さんの声がかわいらし過ぎたこともあって(笑)、魔女参謀は藤堂陽子さんが演じた声からも悪役カラーが妖怪王女よりも強かった。これには単純な声質や演技力の差だけではなく、魔女参謀が作戦の最前線に出ることが多かった(詳細後述)」ことも影響していた。

 一方で、妖怪王女ほどではないが、初の女性幹部らしさも多少は醸し出していた。前述した様に前線に出た際は行き倒れの病人や看護婦に扮し、女性であることを利した警戒されにくい役柄を演じていたし、妖怪王女を馬鹿にする鬼火司令幽霊博士に対して「女を馬鹿にしないことね。」と宣ってもいた。もっとも、蒸し暑い日本の夏に不快の念を示す三幹部に「はーい、おやつですよぉ〜。」と云ってアイスクリームを持ってきたシーンは、女性らしさの演出にしても蛇足だった気がする(苦笑)。

 惜しむらくは、ジンドグマらしくない、従来の悪の組織っぽさの色合いが濃かったことが祟ったのか、魔女参謀が陣頭指揮を執ったのはたったの4回で、四幹部の中では最も少なかった。
 だが、他の三幹部長悪役の個性として為した新たな試みが裏目に出たことを考えると、従来の悪の組織のイメージに比較的忠実だった魔女参謀の存在意義は決して小さくないとシルバータイタンは考える。



作戦傾向 「基本性格」でも少し触れたが、彼女の作戦は誘拐・人質脅迫を多用した者が多かった。

 ビデオンには世界的権威をもつ科学者を次々と誘拐し、ありとあらゆる殺人兵器を研究する「殺人研究所」で研究にあたらせるという作戦に当たらせた。優れた人物を誘拐して手先にするのはショッカー以来の悪の組織の黄金パターンで、ジンドグマでこれに従事するのは魔女参謀であることが多い。

 ツリボットには国防庁長官のみが知っているという秘密のミサイルを強奪する=ミサイル分捕り作戦を成功させるべく、古賀長官の息子(ジュニアライダー隊の隊員でもあった)を誘拐させた。

 仮面ライダースーパー1打倒にターゲットを絞った暗殺計画にてキーマンジョーには、動物園へ遠足に来ていた沖一也とジュニアライダー隊を襲撃させた。
 作戦自体は完全に成功し、一也を罠にかけ、毒を注入して動けなくし、両手両足を鎖で固定したまま檻の中に放り込み、そのままマジックショーを装って水中に沈めてしまうという、アトラクションも兼ねたものとなった。
 暗殺は「如何なる時でも変身出来る修業を積んだ」という一也の御都合主義的な特殊能力の前に瓦解したが、これは不運だったと云える(←「毒で麻痺させた段階でアトラクションなど顧みずに殺すべきだった。」という厳しい意見があることも付け加えて置こう)。

 液体窒素よりもさらに低温の「窒素コールダー液」を利用しての日本中を氷漬けにする作戦では、同液を擁するゴールダースーパー1迎撃を担わせ、密室に閉じ込めて(一時的だったが)スーパー1を氷漬けにすることに成功した。

 陣頭指揮者としての出番が少なかったので単純な決めつけは早計だと思われるが、魔女参謀が従事した作戦は、大量破壊を始める前の準備段階にある者が多かったと云えよう。そしてそれ等の多くは、彼女自身の行動も含めて目の付け所的に的確なものだったことも見落とせない。



注目すべき点 何と云っても、作戦に対する彼女の目の付け所自体が的確で、同時に彼女自身も積極的に自ら動いていたことが大きい。

 というのも、魔女参謀にとって不運だったことに、彼女の配下の怪人が概して無能だったことにある。
 怪人達は四体とも白兵戦でもろくにスーパー1に抗し得ず、ビデオンゴールダーに至っては、謀略をもって捕らえたスーパー1を過失によって解放してしまっていた。
 このことに対する不安があったのか、怪人達に任せておけぬと思っていたのだろうか、魔女参謀は四幹部の中では最も前線にて自ら動いていた。特に第32話では行き倒れを装って彼女を病院に搬送しようとした沖一也をバイクの後部座席から襲撃したり、看護婦に化けて「息子さんが交通事故に遭いました。」と偽って古賀長官を拉致したりしていた(前述の、ジンファイターにサメを襲わせて脅迫したのもこの第32話である)。

 魔女参謀は他の三幹部に比較して嫌味や愚痴が少なく、声色や立ち居振る舞いも悪女然としており、自ら積極的に動いていたので、4人の中で最も悪役らしい悪役を演じていたのだが、皮肉にもそれゆえに彼女が最もジンドグマらしくなかった。
 同時に彼女自身を含め、その一派は白兵戦能力で仮面ライダースーパー1に比肩するだけのものを持っていなかったことも悲劇だったと云えよう。彼女自身、ジンドグマ超A級怪人マジョリンガとして悪魔元帥が変身したサタンスネークともども最終決戦に挑むも、悪魔元帥の懐刀・稲妻電光剣を与えられた尚、スーパー1を苦戦させるに至らず、逆に剣を奪われ、それを突き刺されたことで落命した。
 他の三幹部にも云えることだが、もう少し打たれ強くあって欲しかったものである。呆気なく戦死させるならさせるで、逆転に転じるまでは特殊能力でスーパー1を苦しめるぐらいのシーンはあっても良かっただろうに(実際、他の三幹部は直前まで九スーパー1を苦しめていた)。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新