Page3.第3期仮面ライダーシリーズ

1.『仮面ライダーBLACK』
大宮幸一演者北見治一
役所ゴルゴムメンバー、大宮コンツェルン会長
最終出演第7話
坂田龍三郎演者久富惟晴
役所ゴルゴムメンバー、代議士
最終出演第38話
降板 悪の組織・ゴルゴムは歴代悪の組織の中で最初に戦闘員を率いなかった組織である。だが、人類が文明を持つ以前から怪人を率いて暗躍していたゴルゴムには改造人間でもない人間の中にも社会に影響力ある人物が自らの意志で加入し、組織の為に動く者達がいた。
 所謂ゴルゴムメンバーである。

 主要メンバーと見られるのは上記の大宮幸一坂田龍三郎に加え、秋月総一郎(菅貫太郎)、黒松英臣(黒部進)、月影ゆかり(泉じゅん)。
 大宮は大企業の会長として財界に、坂田は代議士として政界に、総一郎と黒松は大学教授として学界に、月影は女優として芸能界に暗躍していた。
 彼等はゴルゴムに忠誠を誓う見返りに万年単位で生きる怪人に改造されることを期待し、自らが活躍する世界での資金援助を受けたりしていた。
 もっとも、ゴルゴムは格下の者、ましてや怪人でもない人間を思い切り見下す組織で、みっともないぐらいへーこらするゴルゴムメンバーに対しても欠片の情も持ってはいなかった。
 実際、メンバーの中でも総一郎は恐怖心から服従を誓っていた(彼とは逆にメンバー入りを断った南光太郎(倉田てつを)の両親は殺された)し、総一郎は裏切り者として、黒松は役立たずは不要との見せしめに、月影は口封じのために殺された。

 つまり、殺されたメンバーは「死亡」という形で降板した。
 総一郎は実子・秋月信彦(堀内孝人)と養子・光太郎が改造されて記憶まで消されることに反対して2人を逃がそうとしたことが裏切り行為とされて第1話でクモ怪人に殺された。
 月影は第2話で光太郎がゴルゴムのことを聴こうとして彼女のマンションを訪れた直後にヒョウ怪人にその口を封じられた。
 黒松は数々の失敗を重ねた咎で他のゴルゴムメンバーへの見せしめとして三神官に処刑されることになった。一旦は剣聖ビルゲニア(吉田淳)が助命嘆願してくれたように見えたが、結局は彼の作戦に利用するために顔と命を奪われ、第19話で変死体にされた。

 謂わば、大宮坂田は三神官達の怒りを買うこともなく、最終回まで死亡するシーンが無かった故に自然消滅的にそれぞれ第7話・第38話をもって降板したこととなった。
 もっとも両者の出番は決して多かった訳ではない。大宮が実際に登場したのは第2話と第7話だけで、その後は第19話と第38話で黒松・坂田に資金援助していることが語られ、写真が出ていたに過ぎなかった。ま、設定上は生きていたことに間違いはない。
 一方の坂田は、第6話・第8話・第38話に登場した。第38話では新党として発足されたEP党の党首となっていたので、その間も代議士として世の中で大手を振って生きていた。
 作品の流れで見ると、ゴルゴムメンバーが登場したのは主に前半で、第38話にEP党結成で政界に直接的に乗り出した時点で思い出したように(笑)坂田本人と大宮の名が出て来た。

 つまりは単発的な登場なので、いつ消えてもおかしくなかった訳だが、終わりが描かれないのはやはりすっきりしない。本気でゴルゴムメンバーを活かすなら、登場回数はともかく、第48話でゴルゴムが日本占領に成功した時点で大宮坂田を再登場させるべきだったし、最終話でゴルゴムが壊滅した際に両名が逮捕されたり、落命したりするシーンが描かれて然るべきだったとシルバータイタンは思う。
 ラスト3週の急激な展開でそれが困難だったのは分かるのだが(苦笑)。



背景 仮面ライダーBLACKには「仮面ライダー0号」との通称がある。『仮面ライダースーパー1』以来8年振りの放映ということもあって、原作者の故石ノ森章太郎先生が『仮面ライダー(スカイライダー)』同様の原点回帰が図った作品並びにライダーである。
 その一方で、「マフラーを着用しない」、「悪の組織に戦闘員がいない」、「純粋な悪のライダーがレギュラー出演」といった初めての傾向が見られた。
 勿論ストーリー的にもそれまでのライダー番組に見られない傾向・展開がありゲストキャラクターにもそれが見られた。

 大雑把な言い方をすると、第1期、第2期に比べて一般ピープルのゲストキャラクターが目立った。
 逆に過去作において悪の組織に標的とされる傾向の強かった学者・博士・権力者・富豪は大宮幸一坂田龍三郎・黒松英臣・秋月総一郎として悪の組織に着いた。
 そんな傾向を反映してか、正悪を問わず、ゴルゴムメンバー同様ピンポイントな客演をするメンバーも存在した(例:ゴルゴム少年戦士、インターポールの滝竜介(京本政樹)等)。
 そこを考察すると大宮坂田が消化不良になったのも、これ等の傾向が裏目に出たと言えなくもない。連続して出演しない故に必ずしもストーリーの大きな流れと整合させる必要が無い分、使い勝手は良かったのだろうけれど、急激な流れや終盤の収束において取り上げられないこととなった(のだろう)。

 職務&設定上、海外での活動が主流の滝竜介や、ゴルゴムの脱走者故に普段は身を隠していると思われる少年戦士達はピンポイント出演に終始してもおかしくはない。だが万年単位で生きる怪人に憧れてゴルゴムに加担し、社会的に知名度も高いであろう大宮坂田は第48話にてゴルゴムが日本占領に成功した折にその手先となって再登場するのが筋だっただろうし、ゴルゴム崩壊とともに悪に加担した者の末路も描かれて然るべきだった。

 まあ、南光太郎の大切な仲間であった紀田克美(田口あゆみ)・秋月杏子(井上明美)ですら、BLACKがシャドームーンに敗れた後、渡米したまま帰って来なかった(一応、光太郎の迷いを絶つために帰国しないことを決意するシーンはあったが、ゴルゴム壊滅後も帰国しなかった理由は何も示されず)。
 光太郎達が根城にした喫茶・キャピトラの真の店主・東堂勝(セント)に至っては、「海が俺を呼んでいる!」と言って、2回出た切りだった。
 そんな状況下では大宮坂田が自然消滅的になったのも無理なかったのかなぁ………。


後日譚 ライダー作品の後日譚的作品ともいえる『仮面ライダーSPIRITS』だが、周知の通り、仮面ライダーZXを現役・主人公とした物なので、当然のことながら仮面ライダーBLACKは出て来ない(舞台がBLACK登場前故に)。
 ただ、極めて稀有なことに、仮面ライダーBLACK・南光太郎は後番組でも引き続き同一人物の主人公仮面ライダーBLACK RX・南光太郎として主演した。

 当然、光太郎は『仮面ライダーBLACK』でのストーリーを過去に持つ。兄弟同然に育った秋月信彦と戦い、信彦の彼女・克美、信彦の妹・杏子との日々を失った辛さも思い出していたし、光太郎の叔父で雇い主でもあった佐原航空社長・佐原俊吉(赤塚真人)は再会した直後の光太郎を「とても疲れ切った顔をしていた。」と述懐していた。
 だが、シャドームーン以外に前作のキャラクターは登場せず(回想シーンで信彦・克美・杏子が出ていて、クジラ怪人が名前だけ出ていた)、当然大宮坂田の名前が出ることもなかった。

 『仮面ライダーBLACK』での光太郎と、『仮面ライダーBLACK RX』での光太郎では置かれた境遇や、周囲との交流関係が大分異なり、番組の空気の相違から言って世界観重視の為に前作関係者が殆ど出て来なかったことを批判するつもりは全くないが、言及ぐらいあって欲しかったと思うのはシルバータイタンだけではあるまい。それだけ『仮面ライダーBLACK』に出演していたキャラクターたちは秀逸だったと思うだけに。



2.『仮面ライダーBLACK RX』
速水隼人演者佐渡稔
役所警視庁警部補
最終出演第12話
降板 典型的なコメディーリリーフで、南光太郎が住まう地域を所轄とする刑事だが、カッコ良さは微塵もなかった。
 犯罪を未然に防ぐ為に頻繁に街中をパトロールし、不審人物に注意を払う姿勢そのものは警察官の鏡と言えるが、その人物鑑定眼は曇っており、正義の味方である光太郎を露骨に怪しみ、地球侵略を目論むクライシス帝国の諜報参謀マリバロン(高畑淳子)の色仕掛けに鼻の下を伸ばし、言われるがままに光太郎を逮捕せんとしていたのだから光太郎にとっては厄介な隣人でしかなかった。

 そんな調子だから初登場の第2話からして怪魔ロボット・キューブリカンに追剥され、パンツ一丁にされ、マリバロンの手先(←光太郎を不審人物とする密告を真に受けた)になって部下とともに逮捕せんとするも(当然の様に)光太郎に叩きのめされ、マリバロンに役立たずとして締め上げられるという有様だった。

 そして第12話を最後に理由なく降板。佐原茂(井上豪)の友達のように時々の登場だったキャラクターなら途中で出て来なくなっても違和感はないし、彼等は終盤において佐原家同様クライシス帝国の本格信仰を前に疎開していたことが佐原唄子(鶴間エリ)の口から語られていた。結局2号ライダーと同じ名を持つ速水隼人は何の説明もなく消えた(←しかも初期で)唯一のキャラクターとなった。


背景 『仮面ライダーBLACK RX』の登場人物はあらゆる意味において前作とは対照的だった。南光太郎が正業(ヘリコプターのパイロット)に就いたことで社長にして身内でもある佐原一家がレギュラーとして定着し、仕事柄カメラマンの白鳥玲子(高野槇じゅん)、航空食堂のコック・吾郎(小野寺丈)、ウェイトレス・七七子(優希亜裕子)等との交流が生まれ、クライシス帝国との戦いが本格化するとストーリー展開に伴って霞のジョー(小山力也)、的場響子(上野恵)が中途から加わる等と、そのキャスティングはかなり高く評価出来る。

 敢えていやらしくその欠点をあげつらうと、前作と対照的だった故に前作絡みのキャラクターが登場し辛かったが、それぐらいで同作はキャラクターの登場・休演には細心していたとシルバータイタンは考えている。
 例えば、霞のジョーは第26話でボスガン(藤木義勝、声・飯塚昭三)に斬られて瀕死の重傷を負って入院したが第37話で復帰し、第30話で光太郎達との共闘を誓った的場響子が翌週いきなり姿を消したが、第38話で復帰した際にそれまでは単独でクライシスの動向を追っていたとの説明が為されていた。

 すべてのレギュラーを大切にしたこの姿勢が高く評価出来るからこそ、速水隼人に対しては「後付けや、言葉の上だけでもいいから何とからなかったか?」と思われてならない。


後日譚 『仮面ライダーSPIRITS』が仮面ライダーZXのリメイク漫画故、『仮面ライダーBLACK』以降の作品の後日譚は平成ライダーシリーズの主に劇場版が頼りとなる。
 そんな中、『仮面ライダーディケイド』第26話・第27話では倉田てつを氏が客演し、10年振りの南光太郎にシルバータイタンは感涙に咽んだ。

 『仮面ライダーディケイド』によると平成ライダー各作品の世界はパラレルワールドになっているとのことで、仮面ライダークウガから仮面ライダーキバまでの9つの世界を戦い歩いた門矢士(井上正大)は新たな世界として「RXの世界」に迷い込み、クライシス帝国と対峙する光太郎と邂逅した。
 その時の光太郎と怪魔ロボット・シュバリアンとの会話によると光太郎と霞のジョーは「RXの世界」にてクライシス帝国との戦闘を続けており、2人は別途に行動し、クライシス帝国は勿論、光太郎でさえジョーの動向を掴めずその行方を追っていた(残念ながら、結局作中にジョーが登場することはなかった)。
 つまりは『仮面ライダーBLACK RX』とは話が合わないのである。『仮面ライダーBLACK RX』ではクライシス帝国は怪魔界共々完全崩壊していた。
 ただ、完全に矛盾する訳ではない。『仮面ライダーBLACK RX』の最終回にてクライシス皇帝(声:納谷悟朗)は今際の際に地球人が地球環境を汚し続ければ新たな怪魔界が生まれるとしていたし、クライシス帝国の民の中には個々に地球に亡命していた者もいたので、残党が残っていてもおかしくはない。
 『仮面ライダーBLACK RX』の最終回にてジョーは失われた記憶を求めて、光太郎は新たな戦いに備えて自分を鍛え直す為に旅に出ると宣言していたので、『仮面ライダーディケイド』における「RXの世界」を『仮面ライダーBLACK RX』における後日譚と捉えることが出来る……………と思っていたら、第26話のラストで士は「BLACKの世界」に迷い込み、そこには仮面ライダーBLACKに変身する南光太郎がいたのである!

 結局『仮面ライダーディケイド』におけるBLACKとRXはパラレルワールドとなる各々の世界に存在し、第27話には2人の南光太郎が登場するシーンすらあった。『仮面ライダーディケイド』に登場した様々なライダーの世界はそれぞれの本編と似て非なるもので、同一視するのは無理がある。
 勿論、それぞれの本編を無視したものでは決してない。故に南光太郎の客演は勿論、台詞のみだったとはいえ、霞のジョーの存在に言及されたのも嬉しい事だった。可能なら白鳥玲子、的場響子、佐原兄妹、「BLACKの世界」が出て来たのであれば紀田克美、秋月杏子についても触れて欲しかったものである。たった2話でそれが無理なのは百も承知ではあるが。


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平成三〇(2018)年二月五日 最終更新