Page4.ウルトラマンシリーズ

1.『ウルトラマン』
ホシノ・イサム演者津沢彰秀
役所一般人→科学特捜隊隊員
最終出演第25話
降板 ホシノ・イサム(以下、番組上での呼称を尊重して「ホシノ君」)は、(部外者の出入りが禁止されている筈の)科学特捜隊本部への出入りを許されていた11歳の少年で、後に第18話でザラブ星人に囚われの身となっていたハヤタ(黒部進)の危機を救った功をもって正式に科学特捜隊員となり、第25話を最後に降板した。

 小学生のホシノ君が何故に部外者の出入りが禁じられている科特隊本部に出入りができたのかは一切不明で、いくら功績があったからとはいえ、年端も行かない彼が(児童福祉法も無視して)科特隊に正式入隊ができたのかも不明で、それ以前から彼はスパイダーでネロンガを撃ったり、隊員服を着用していたり、とその謎には切りが無かった(さすがに放射能汚染が懸念されるような現場には年少を理由に出動が認められなかったが)。
 当然の様にホシノ君が作中に登場しなくなった理由が語られることもなかった。


背景 ホシノ君を演じた津沢彰秀氏が降板した理由自体は割と有名である。早い話、負傷降板である。スキー事故での骨折によるもので、これは大人でも降板せざるを得ない。
 疑問となるは、「何故復帰が叶わなかったのか?」と「何故降板理由が語られなかったのか?」ということである。

 例によって推測するしかないが、『ウルトラマン』は全39話で、ホシノ君の降板は第25話だから、3ヶ月半の放映期間が残っており、軽い骨折なら1ヶ月前後で回復するから復帰が全く不可能だったとは思えない。
 ただ、事故によって出演不可能となったことが(事故の理由によっては)周囲を怒らせたとしたら、復帰不可能の陥ったのも無理ない話である(藤岡弘、氏は『仮面ライダー』の撮影中に大事故に遭ったことに対して病床にて制作首脳陣に泣いて詫びたらしい)。
 制作陣がホシノ君を大いに活躍させるストーリーを考案していたとしたら、それをおじゃんにされたことで「レギュラー不適格」の烙印を押して正式降板させ、以後の復帰を認めなかったというのはあり得る。一般企業のサラリーマンだって、急病による欠勤を「体調管理が成っていない」という一応の譴責が伴うのだから。

 また、津沢氏の保護者が復帰を許さなかったということも考えられる。何せ当時まだ小学六年生だ。実際、津沢氏は直後の中学進学を機に長く芸能界を離れた。また、当時の子供にしては声変りが早く、『ウルトラマン』の撮影中にそれはやって来て、元の声を出すのに苦労したらしい。
 となると、背景的にホシノ君が復帰しなかったこと自体は無理のない話だったと言える。

 問題は、ホシノ君が登場しなくなったことが作中で語られていないことである。
 好意的に見るなら、「津沢氏復帰の可不可が見えなかったから。」と推測される。何せ怪我をして精神的にも傷ついているであろう少年に対して「降板」はともかく、その後のことまで性急に決めつけられなかったというのは充分に考えられる。
 だが、悪意的に見るなら、「子役」という存在が軽んじられていた、とも取れる。

 話は逸れるが、『ウルトラマン』放映から今年(平成30(2018)年)で半世紀以上が経過している。当然、現代の作品と様々な意味において同じようには語れない。
 有名な話だが、第34話にてハヤタ(黒部進)がウルトラマンに変身しようとしてベータカプセルと間違えてカレーのスプーンを頭上に掲げるという特撮界屈指の名シーンが当時制作陣内部においてはかなりの酷評を受けた。ヒーローたるものがそのようなイージーミスをするなど論外、との意見だったのだが、当時はヒーローに対するイメージがそこまで堅かった。
 別の言い方をすれば、主人公ですら作中でイメージを固めるのに四苦八苦され、フジ隊員(桜井浩子)の休暇シーンや弟(川田勝明)が描かれたことを例外にすれば、他のレギュラーは科特隊内での姿しか書かれていない。必ずしも毎回登場した訳でもない子役の出処進退にまで細かい言及を行う予定が当時の制作陣にはなかったのかも知れない。
 実際、次回作の『ウルトラセブン』には子役のレギュラーはなく、子役レギュラーの定着は更に3年以上後の『帰ってきたウルトラマン』における坂田次郎(川口英樹)まで待たなければならなかった。


後日譚 ウルトラシリーズの後日譚を語るのは仮面ライダーシリーズ以上に困難である。というのも、作品が変わる毎に正義のチームも変わり、チーム及びメンバーの行方は極めて不鮮明で、全くの不明であることが大半である。番組ごとにそれまでのチームが消えるかの謎は今現在をもって不明である(というか、今更万人が納得出来る整合性を付けるのは不可能だろうな………)。

 また、ウルトラシリーズの各作品が同一の世界を舞台にしたものであることがはっきりしたのは『帰ってきたウルトラマン』にウルトラマンとウルトラセブンが登場し、その最終回でバット星人の口から「ウルトラ兄弟」の台詞が出てからのことで、それまで『ウルトラマン』及び『ウルトラセブン』は近未来を描いたものとすらされていた(第23話によるとジャミラが死亡したのは1993年のことで、放映年月日から見て36年も未来の話である)。

 ちなみに津沢氏自身は劇場版『ウルトラマンメビウス外伝アーマードダークネス』の特典映像に出演しており、実現しなかったが、『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』でも当初出演が予定されていたらしい。いつの日か津沢氏=ホシノ君が視聴者の眼前に現れる日が到来するかも知れない。



2.『ウルトラマンA』
梶洋一演者中山克己
役所 TAC兵器開発担当主任
最終出演第31話(実際の降板は第27話)
梅津香代子演者宮野リエ
役所北斗星司の知人
最終出演第43話
梅津ダン演者梅津昭典
役所北斗星司の知人
最終出演第43話
降板 梶洋一主任は、その職務柄、TAC隊員の中ではかなり重要な立場にいた人物である。個人的にも、『全話解説の間』の『ウルトラマンA』を制作していた折に、梶主任への言及にはかなり力が入ったことを記憶している。
 妖星ゴランを一撃で破壊したマリア1号の設計図を完全に記憶し、メビウスの輪理論を元に人間を異次元に送り込む転移装置を作り上げ、本来の目的である超獣抹殺が成らなかったとはいえ、作戦遂行上重要な武器・道具を次々に開発していた。
 副隊長格の山中(沖田駿介)と同格だが、物静かで、それでも胸に熱いものを秘めていたが、第27話でヒッポリト星人との戦いに自分も連れて行って欲しいと志願し、従軍したのを最後の降板した(第31話での出演は客演扱い)。

 梅津香代子ダン姉弟は南夕子(星光子)が仲間の元に帰った翌週となる第29話で初登場し、TACとは直接絡まなかったが、同じマンションに住む北斗星司(高峰圭二)を(主にダンが)兄貴分と慕い、数々のストーリーに「北斗と近しい一般人」の立場で絡んだが、第43話を最後に降板した。

 勿論、この三者も登場しなくなった理由が作中で語られることはなかった。


背景 梶主任の降板は、TACの置かれた立場と梶主任の才覚がマッチしなかったから、とシルバータイタンは推測している。一部の書籍は超獣を倒せない梶主任を酷評し、それ故に彼の姿が作品後半には消えていた、としているが、シルバータイタンの考えは真逆である。
 梶主任の才覚を鮮明にするなら、何体かの超獣達が、彼の開発した新兵器の前に落命していたことだろう。だが、当時TACに振られた役割は、「怪獣より強い超獣」を際立たせるための「噛ませ犬」だった(と言い切ると語弊があるが………)。
 必然、梶主任をそれ以上活躍させる訳にはいかなかった……………と考えるのは穿った物の見方だろうか?
 せめて、ウルトラマンAを一度は倒したファイヤーモンスを一撃で倒すと云う鮮やかな戦果を見せたシルバーシャークに言葉だけでも「梶主任が関わっていた」として欲しかったものである。

 他方、梅津姉弟の降板は全くの不明である。最後の出番となった第43話は、「冬の怪奇シリーズ」の最後でもあったが、クールの締めとなる13の倍数となった話数でもない。最終回を別にしても、舞台や極端にストーリー性が変わった訳でのなかった。
 強引にこじつけて、「第43話の舞台となったスキー場のある村に梅津姉弟が居座った。」とすれば、第44話以降に二人が出演しなかった辻褄は合うが、自分で書いていて「無茶苦茶言ってんなぁ………。」としか思えない(苦笑)。

 ちなみに香代子を演じた宮野エリさんはレギュラーになる前に第12話でもノンクレジットでチャラい女の役で客演していたが、他での活躍は不明である。
 ダンを演じた梅津昭典氏は『ウルトラマンタロウ』『ウルトラマンレオ』でも単発客演し、他の特撮作品にもそこそこ活躍していた。
 これらの経緯から特に見えるものはなく、正直、何の問題があっての降板かは全く不明だが、何か問題あっての急遽降板にしても2人一度に問題を起こしたとは考え難い。となると香代子ダンが2人ワンセットで制作サイドに捉えられていたのだろう。


後日譚 一応、Wikipediaによると、梶主任の降板には「実験中の事故で殉職した。」とするものがある(『ウルトラ超兵器大図鑑』)。しかしシルバータイタンはこれに賛同しない。第1話で創設され、隊員同士の年齢が近いこともあって、歓迎会や送別にも特別の思い入れを見せていたTACが梶主任という重要人物の事故死に何の感情も見せないのは作風的にも異を唱えたいところである。

 残念ながら後々のウルトラシリーズ作品にて梶主任の名が出たことはない(平成30年4月24日現在)。ま、これは梶主任に限った話ではなく、主人公以外の者の名が後番組に出ることの方が極めて稀である。
 余談だが、梶主任を演じた中山克己氏は、『ウルトラマンA』終了後、子供を育てる間は安定した収入の生活を保ちたい、と考えて俳優業を廃業し、サラリーマン勤めをしていたらしい。仮に中山氏が俳優業を続けていたとしても梶主任が後番組に登場した可能性は0に近いが、「もし中山氏が俳優業を続けていたら?」と思わせる魅力が梶主任と中山氏の双方にあるのだけは間違いなかろう。



3.『ウルトラマンタロウ』
上野孝演者西島明彦
役所 ZAT隊員
最終出演第35話
降板 『ウルトラマンタロウ』は主人公や隊長を別にすると初めて隊員の入れ替わりが見られた作品である。そんな中で上野孝隊員は第8話で宇宙ステーションV9に転任となった西田次郎隊員(三ツ木清隆)と入れ替わりにZATに加入した。
 主人公の東光太郎(篠田三郎)より年下の立場だった西田同様、唯一光太郎に呼び捨てにされていた上野は、アットホームな雰囲気の漂うZATにあって、良い弟分を演じつつ、第25話の対ムルロア戦では荒垣修平副隊長(東野英心。当時は東野孝彦名義)がその身を心配するほどの捨身の作戦を敢行してその打倒に尽力するなどの活躍を展開したが、第35話を最後に理由なく降板した。

 西田の降板は転任であることが明言され、実際に西田は第13話にてゲスト出演の形で宇宙ステーションV9に勤務する姿が描かれた。また、第50話を最後に荒垣副隊長が宇宙ステーションに転任となり、代わって二谷一美副隊長(三谷昇)が第51話にて赴任したが、上野だけはその理由を語られることはなく、設定としてもその理由は存在しない。
 後述するが、各俳優が降板した理由がはっきりし、それぞれに言及の有った同作品における唯一の例外とは些か寂しいものである。


背景 前述した様に、『ウルトラマンタロウ』はレギュラーの入れ替わりが複数見られた。
 本作で採り上げている上野もそうだが、荒垣副隊長と西田隊員が途中降板し、キャラクター自体は続いたが白鳥さおりを演じた女優があさかまゆみ氏から小野恵子氏に交替した。
 作品的にはともかく、俳優としての降板理由ははっきりしている。朝比奈隊長を演じた名古屋章氏からして多忙なスケジュールから、「毎回は出られない。」ということを承知の上での出演で、同様に三ツ木清隆氏も主役を張った『白獅子仮面』を初めとしたスケジュールから続投が厳しく、西島氏もあさか氏も事務所の契約・意向による降板だった。
 東野英心氏はスキーでの怪我によるもので、残すは3話のみとあって、事故が無ければ最終回まで出演し続けたのは明白だったことだろう。実際、最終回でZATを去る際に東光太郎は朝比奈隊長に、「荒垣さんにもよろしく。」と述べていた。

 そんな中、上野のみ進退に言及がないのは、降板事情に特異なものがあったのかも知れない。推測で書くのもどうかと思うが、降板がかなり性急なもので、ストーリー的に上野=西島氏の復帰有無が曖昧だったと考えれば、敢えて触れられなかったことも考えられなくはない。


後日譚 繰り返しになるが、ウルトラシリーズは主人公やウルトラ兄弟を例外にすれば他の登場人物の後日譚が語られることが極めて稀である。
 『ウルトラマンタロウ』を限定にすれば、主人公であるウルトラマンタロウ自身、光の国に帰還した経緯は長年謎だった。勿論、ZAT隊員や白鳥姉弟のその後が語られた例は皆無で、『ウルトラマンメビウス』における過去の正義チームのデータ、アーカイブ・ドキュメントにおいて「ドキュメントZAT」の名が偶に囁かれたぐらいだった。

 逆をいえば、ウルトラシリーズにはまだまだ過去を振り返った面白い話を作る余地が残されていると言える。だが、少し悲観的なことを触れると、篠田三郎氏が東光太郎として再登場することを拒否している内は、他のキャラクターを採り上げるのは難しいだろうなあ………。



4.『ウルトラマンレオ』
大村正司演者藤木悠
役所 城南スポーツセンター責任者
最終出演第22話
黒田明雄演者黒田宗
役所MAC隊員(初代副隊長格)
最終出演第8話
青島一郎演者柳沢優一
役所MAC隊員
最終出演第16話
赤石清彦演者大島健二
役所MAC隊員
最終出演第16話
桃井晴子演者新玉恭子
役所MAC隊員
最終出演第16話
平山あつし演者平沢信夫
役所MAC隊員(二代目副隊長格)
最終出演第18話
大槻美也子演者大原みどり
役所MAC隊員(オペレーション担当)
最終出演第25話
降板 歴代正義のチームにあって、MACは極めて不遇なチームである。
 ウルトラセブンが正体であるモロボシ・ダン(森次晃嗣)が隊長を務め、主人公であるウルトラマンレオ=おゝとりゲン(真夏竜)とともに「地球を守るたった2人の宇宙人」という立場を堅持したため、他のMAC隊員達の影は極めて薄く、流動的で、第40話で円盤生物シルバーブルーメの襲撃を受けたことを最後に、ゲンを除く全員が殉職者となって降板した。

 作中、MACが登場したのは第40話まで。この間、単発出演者を除けば、レギュラーを演じたのは総勢13名で、初期メンバーはモロボシ・ダン、おゝとりゲン、黒田明雄青島一郎赤石清彦桃井晴子、白川純子だった。
 メンバー流動の始まりは早く、まず第8話最後に副隊長格の黒田が理由もなく降板し、第9話からは平山あつしが副隊長格となった。
 第16話で青島赤石桃井もやはり理由なく降板し、第18話で平山もまた理由なく消えた。

 第17話から白土純と梶田一平が(白土は第6話でも同じ役柄でゲスト出演している)、第19話で三代目の副隊長格となった佐藤が、第23話で大槻美也子が、第26話で松木晴子が加わった。
 白土以下のメンバーはたった2回の出演で理由なく降板した大槻を除けば全員が第40話まで出演した。

 謂わば、MAC隊員の流動は第1話から第16話までの初期、第17話から第25話までメンバーの入れ替わった過渡期、第26話からMAC全滅まで隊員達が固定した安定期に分けられる。そして安定期に入る以前に番組から去ったメンバーはその理由がはっきりすることはなかった。
 まあ、安定期のメンバーは最終的に全員が殉職したのだから、殉職以外の降板理由は全く語られない組織並びに番組と言える。

 また、MACと並ぶゲンの重要な居場所であった城南スポーツセンターの代表・大村正司の登場・未登場もまた不可解だった。
 作中の会話から見ると、ゲンとの縁に端を発したとはいえ、MACの隊長であるダンと大村はそれなりに親しい仲を築いていたと見え、ゲンの特訓の場としてスポーツセンターを利用することがごく普通に通っていた。
 だが、そんな重要な存在感を持つ人物でありながら、大村が登場したのはほんの初期だけだった。第11話までは度々宇宙人に敗れてリベンジの為の特訓に挑むゲンや、父親を殺されて傷心に陥っていた梅田トオル(新井つねひろ)・カオル(富永美子)の兄妹を、コミカルなキャラながらも温かく見守っていたが、第12話以降は登場せず、第22話では山口百子(丘野かおり)の誕生パーティーに駆け付けたのが最後の出番となった。

 その第22話で、肝心の百子を祝うパーティーになかなか現れない理由がサイクリングに没頭していてとのことだったが、それをカオルが仕草で示した際に野村タケシ(伊藤幸雄)が「またぁっ?」と呆れていたところを見ると、未登場の回はスポーツセンターの職務そっちのけでサイクリングに没頭していたと推察出来るが、結局その後大村は登場せず、サイクリングと責任者としての関連も語られることはなかった。
 第40話でトレーナーだった百子・タケシ、練習生だったカオルが殺された後もスポーツセンター自体は存続し、ゲンがトレーナーとして勤務していた描写も僅かに見られたが、前後を通じて大村がどうしていたかも一切は不明である。
 百子達の死も呆気なく、描写自体も極めて僅少だったが、かかる悲劇に前後して大村の名前さえ出て来なかったのも頂けない話である。


背景 一言で言うなら、『ウルトラマンレオ』が「テコ入れの嵐的作品だった。」ということに尽きる。
 MACも不遇だったが、『ウルトラマンレオ』という作品自体もかなり不遇だった。第2期ウルトラシリーズが始まり、『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』『ウルトラマンタロウ』に続く作品として、『ウルトラマンレオ』はこれに負けない作品にしなければならなかった。
 まあ、先代が偉大だと後代が大変なのは世の常で、これは『ウルトラマンレオ』に限った話ではないが、時代背景が特撮番組を冷遇した所謂石油ショックである。同作品が初期において光線技をほとんど出さず、レオが空手アクションを重んずるキャラクターとなったのも、路線のみならず、火薬代の予算が減らされたことも大きかった。

 低予算で効果は大きく上げなければならないことに苦しむ世の例は、枚挙に暇がない。そして金が出ないと有れば知恵を出さなければならない。初期の通り魔的宇宙人との連戦期の後、「見よ!ウルトラ怪奇シリーズ」(第17〜21話)、「日本名作民話シリーズ!」(第26〜32話)、「恐怖の円盤生物シリーズ」(第40〜最終話)といった試行錯誤と梃入れが為され、ウルトラ兄弟、ウルトラマンキング、アンヌにそっくりな女性(ひし美ゆり子)、ハヤタにそっくりな自転車屋(黒部進)、フジ・アキコにそっくりな宇宙鶴(桜井浩子)といったゲストが視聴者を喜ばせたが、それらの尽力は皮肉にもMAC隊員達の影を薄くした(一応、梶田が見事なフライトテクニックを見せたり、佐藤が慈悲深いところを見せたりしてはいたのだが)。

 背景はさておき、ストーリー的に隊員達の入れ替わりを無理矢理考察するなら、希望退職か人事異動だろう。
 第6話で、宇宙ステーション勤務だった白土は恋人・洋子(早川絵美)をカーリー星人に殺された際に、地上勤務を申し出て、許可された。勿論その目的は自らの手による仇討ちで、カーリー星人がレオに倒されると彼は宇宙ステーション勤務に戻った。となると、MACは私情で動くことを許す組織ということになるのだが (苦笑)、第12話でアフリカ支部からやって来た佐藤三郎(東龍明)が同話の最後にヒマラヤに再転任(目的は「雪男を探す」と云う仰天もの(笑))したり、アトランタ星から帰って来た内田三郎(伍代勝也)が即座にアジア支部に赴任したり、等の例を考えると、ある程度は個人の希望が通る組織なのかも知れない。
 また、MACの殉職率を考えると退職を希望する者が続出してもおかしくない。ただそれを画面上に露わにすると怪獣・超獣・宇宙人に勝てずとも勇敢さを失わなかった歴代隊員達のイメージを著しく貶めてしまう危険があったであろうから、描く訳にはいかなかっただろうけれど。


後日譚 存在のしようが無いな、後日譚(苦笑)。
 何度も触れている様に、MACは作中において全滅した。そして全滅の悲劇を生んだシルバーブルーメ急襲時には隊長モロボシ・ダンも行方不明となっていた。そのダンの生存が正式に確認されたのは平成6(1994)年のことで、しかもその作品は現在ではパラレルワールド的に見られている。となるとウルトラの母に救出されたことが設定にて明らかにされた『ウルトラマンメビウス』までその生死並びに助かった背景は不明だった。
 ダンでさえ、こうなのだから、シルバーブルーメ急襲時に死亡しなかったとはいえ、トオルや高倉長官(神田隆)や大村の後日譚に触れる機会なんて生まれようがなかったのだろうか?



5.『ウルトラマン80』
林憲之助演者坊屋三郎
役所桜ヶ丘中学校校長
最終出演第12話
野崎クミ演者和田幾子
役所桜ヶ丘中学校教頭
最終出演第12話
相原京子演者浅野真弓
役所桜ヶ丘中学校体育教師
最終出演第12話
スーパー演者清水浩智
役所桜ヶ丘中学校生徒
最終出演第12話
ファッション演者久野みどり
役所桜ヶ丘中学校生徒
最終出演第12話
落語演者鍛代順一
役所桜ヶ丘中学校生徒
最終出演第12話
ハカセ演者上野郁巳
役所桜ヶ丘中学校生徒
最終出演第12話
降板 キャラクターの名前を挙げただけで、殆ど説明不要と言える(苦笑)。
 主人公・矢的猛がUGM隊員を務める一方で、普段は桜ヶ丘中学校の教師を勤めていたことから、第一クールでは矢的隊員と矢的先生が描かれた訳で、当然職場となる中学校が舞台として半分を占め、同業の教師達や教え子達が登場した訳である。

 だが、第12話を最後に教員・矢的猛が描かれなくなり、UGM隊員一本となったため、桜ヶ丘中学校関係者は一斉に降板することとなった。


背景 名前の通り、1980年の作品である『ウルトラマン80』だが、この作品が作られた時代は『熱中時代』、『3年B組金八先生』を初めとした学園物語が隆盛を極めた頃でもあった。そのブームを重視して、正義のチームの隊員でありながら、普段は学校の教師でもあるという斬新な設定で同番組は始まった。
 酷な言い方をすれば、その両立に失敗したのがすべてと云えよう。

 誤解無いように触れておきたいが、シルバータイタンは初期の作品を悪く言いたいのではない。むしろ、生徒が学園生活で出会う問題と怪獣の発生の絡んだ良い作品が幾つも生まれたと思っている。30分番組(CMや主題歌を除けば事実上は20分チョット)でいじめや不登校、異性交遊などの思春期の中学生が抱くであろう当時の教育問題と怪獣退治を並立するのは至難だったであろうことは想像に難くない。
 そんな中、学園物としての設定を推していたプロデューサーがラジオ部に異動になったことを機会にTBS編成局は従来のスタイルに戻ることを円谷プロに伝えてきたらしい。
 例によって桜ヶ丘中学校とその関係者が第13話以降登場しなくなったことに対して何の言及もなく、猛が教職を続けていたのかどうはか不明のまま同作品は完結し、26年の時を経て『ウルトラマンメビウス』第41話にて猛の教え子達が客演(残念ながら配役は全員当時とは別人だった)した際に、「ある日突然いなくなった。」と語られ、視聴者は疎か、教え子にまで教職を降りた理由は語られていなかった(苦笑)。

 後年、監督の湯浅憲明氏は、「中途半端になって、後悔の多い作品になった」と述懐しているそうだが、きちんとした切替えさえ行っていれば、作品・梃入れの一つ一つは充分に受け入れられたとシルバータイタンは思っている。

 同作品の最終回には、UGMがウルトラマン80の力を借りずに怪獣を倒すことにこだわり、後一歩のところで陥ったピンチに第27話で転任していたハラダ時彦(無双大介)とタジマ浩(新田修平)が駆け付けてマーゴドンを倒すのに貢献したように、過去の登場人物をも大切にしていた同番組だっただけに桜ヶ丘中学校に一言の言及もなかったのは残念だった。


後日譚 文句なく『ウルトラマンメビウス』第41話が挙げられる。
 教え子の一人・塚本(吉見一豊)が矢的猛に憧れて母校・桜ヶ丘中学校の教師になっていたが、少子化のあおりを受けて廃校が決まっていた。それを惜しんで校内に現れた落語(金と銀)とスーパー(浅木信幸)が塚本と再会したことで、急遽同窓会が行われることになった。更に偶然南の島に25年振りにウルトラマン80が地球に現れたこともあって、師弟の再会が成立したのだった。
 塚本同様一回限りのキャラクターだった真一(紀伊修平)も当時のエピソード共に出ており、僅かな時間で学校編のすべての懐かしさを網羅した秀逸作だったと云えよう。

 また、特筆すべき点として、矢的猛が桜ヶ丘中学校を去ったことに対して、「当時の生徒に対して何も告げられておらず、それに対して猛が罪悪感を抱いていた」としていたことだろう。
 作中、『ウルトラマン80』の時代は「怪獣頻出期」とされており、UGM隊員と中学校教師との両立が叶わず、教師を退職したことが生徒達に告げられていても、告げられていなくても、ストーリー的には大きな意味を持たない。
 だが、シルバータイタンには、何も告げず、その事に引け目を感じる姿は、何の説明もなく設定や登場人物にされた不服を抱く視聴者の気持ちを代弁し、応えていた様に思われてならなかった。

 降板には(是非はさておき)必ず理由がある。その理由が明らかになるときもならないときもある。勿論、明らかにしたくても出来ないときもあろう。その背景を知る術はないので考えや根拠無しに批判は出来ないが、基本として視聴者の胸中に燻るものを残すものであるとの認識を制作陣に幾許なりとも保持しておいて欲しいものである。勿論、この『ウルトラマンメビウス』第41話は見事にその燻りを解消してくれたからこそ述べるのだが。



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平成三〇(2018)年六月一三日 最終更新