3.水野一郎………研究への一途さがすべての仇に
キャラクター名 水野一郎 演者 清水幹夫 登場 『帰ってきたウルトラマン』第34話「許されざるいのち」 再会時の立場 生物学者 再会時の主人公への想い 不明友情残留度 5 最期 怪獣レオゴンに捕食されて死亡
人物 水野一郎(清水幹夫)は主人公・郷秀樹(団次郎)の幼馴染で生物学者。小学生時代の同級生だった。
彼の父もまた優秀な生物学者で、水野は一年前に亡くなった父親の後を継ぎつつも、自分を認めなかった父親に対するコンプレックスから研究に異常な没頭をしており、その対象は植物と動物に共通する生命の根源だった。
また、「すべての生命は1つ」という信念の持ち主で、どの種にも属さない生物を作ろうと手を尽くした結果、自身の発見したαレオン電磁波を長時間照射してトカゲとウツボカズラの命を合成させたことで合性怪獣レオゴンを生み出した。
卵から孵化した時点では全長30cm程度の大きさだったレオゴンだったが、その日の内に成人男性並みの大きさに急成長し、研究所からの逃走を許してしまった。
芦ノ湖に逃れたレオゴンは全長50m、体重3万5000tの怪獣となり、MATによる駆除対象とされた。
旧友郷の説得を受けて、βレオン波を照射すればレオゴンは死ぬとしてMATへの協力を約束したが、結局自分の手で生み出したレオゴンを自分手で殺すことが出来なかった(詳細後述)。
その人間性は研究に没頭する余り、かなりエキセントリックで、決して悪人ではないのだが、こだわりや思い込みが極端に強い人間となっていた。
初登場時にも研究に必要なスタンドを作って欲しい、として既に終業したことを告げる坂田健(岸田森)にかなり強引に頼み込んでいた。
郷に「もう結婚したのか?」と問われた際に、自身を独身主義者だと答えたのは別に変な話でも何でもないのだが、その妙に険しい表情で語気を強めた返答振りは何か理由があって婚姻というものを嫌っている風ですらあった。
また、レオゴンの秘密を坂田次郎(川口英樹)に見られた際は、彼の首を締め上げ、口外すれば有毒生物を使って家族ごと毒殺すると云う旨の脅迫すら行っており、次郎は寝床で涙を流すほどの恐怖を与えられていた。
同話の監督・山際永三氏によれば、子供がそのまま大人になった人物として設定されていたらしい。
結局、水野自身はそのこだわりで非業の死を遂げたが、遺書には研究所を博物館として子供達に開放するよう残されていた。
マッドサイエンティスト的に人の道を踏み外した言動を取る一方で、子供や動物を心から愛する性格も矛盾なく併存させた人物で、スタンドを届けに来た次郎に、彼が動物好きと知ると、無理な制作依頼を健が引き受けてくれた御礼も兼ねて研究所内を紹介したりもしていた。
その極端過ぎる思考が自分を世に受け入れさせるか、それが叶わなければ自分が世の中から去るかの悲しい選択を自身に強いた人物でもあった。
再会 再会は偶然だった。
水野一郎が研究に必要なスタンドの製作を坂田自動車修理工場に依頼しに来たことで、パトロール中に坂田自動車修理工場に立ち寄った郷秀樹と再会したのだった。
最初は既にその日の業務を終了したことを理由に依頼に乗り気じゃなかった坂田も、郷の旧友の頼みとあって快く引き受け、次郎とも面識を得た。
だが、再会は偶然でも、その後の絡みは必然だった。
冒頭の街中は平和そのもので、MAT隊員達もだれ気味だったが、郷と岸田文雄………じゃなかった(笑)、岸田文夫(西田健)は怪しい電磁波をMATビハイクルのレーダーで捉えていた。
電磁波の正体は、水野が研究に使っていたαレオン電磁波で、郷達は住宅街でそのような電磁波がキャッチされることを訝しがり、水野の研究所を含む一帯を訪ね歩いていたが、当然水野はすっ呆けた。
だが、怪獣化したレオゴンの存在をいつまでも隠し通せる筈もなく、恐怖から口を噤んでいた次郎もその余りの怯え様を健と郷が問い詰めたことで、次郎も助けを求めて一部始終を話し、水野とレオゴンの関係は郷を初めとしたMAT一同の知るところとなった。
そして決して悪人ではない水野も、植物と動物の垣根を超えた生物レオゴンの誕生を喜びつつも、それが怪獣化して世を騒がしていることに平然とはしていられなかった(←飲んだくれていた)。
事件解決の為に郷と水野は四度顔を合わせた。
友情と悲劇 この『帰ってきたウルトラマン』第34話が放映されたのは昭和46(1971)年11月26日で、同年11月5日放映の第31話からこの第34話までの4話は後に「11月の傑作群」として名高い。
その詳細についてはここでは触れないが、確かに後々何十年にも渡って現実世界を含め重い命題を投げ掛けて来た傑作揃いに違いなかった。
ただ、子供番組として余りに重い話の連続でもあった(12月放映の作品も含めて)。
上述している様に、水野一郎はこだわりが強過ぎる人間ではあったが、決して悪人ではなかった。レオゴンを生み出したのも、生物学研究の果てに「動物でもない植物でもない生物」を作り出したい一念で、他意も悪意も無かった(名誉欲は有ったが)。
だが、そんな一念の強さゆえ、彼はレオゴンの正体を追う郷秀樹に素っ気ない態度を取り、レオゴンのことを詰問してきた次郎に対して、それに答えず、上述のえげつない脅迫で黙秘を強要した。
一方で、自分の研究が為した被害に冷淡だった訳でもなく、罪悪感によるものか自暴自棄によるものか酒に溺れ、レオゴンを作ったのが罪であるなら自分は死ぬしかないとまで云い出した。
そんな状態でも、もはや隠し通せないとなった認識もあってか郷の質問には素直に答え、説得に耳を貸してもいたから、決して分からず屋でも、薄情な人間でもなかったからなかなかにこの水野一郎という人物は単純な評が下せない。
説得を受け、レオゴンに浴びせたαレオン電磁波をβレオン電磁波に変換すればそれを殺せることを教えた水野は、更なる説得を受けて郷への協力を誓った。
だが、自分の生涯を掛けて産み出したレオゴンを「僕の命」と捉える水野はレオゴンを殺すことが出来ず、MAT隊員達が止めるのも聞かず、芦ノ湖に入り、レオゴンの元に歩み寄っていった。
慌てて水野を追って芦ノ湖に飛び込む郷。PYGの「花・太陽・雨」をBGMに水野はひたすらレオゴンに歩み寄り、それを郷が(小学生時代の二人を回想しながら)泳いで追ったが、結局愛情は水野の片思いで、レオゴンは自分を作った水野をただの捕食対象と見做して無情にも蔦を飛ばして水野を捕食してしまったのだった…………(さすがにこの捕食シーンを小学生時に初めて見た際には、道場主も息を呑まずにはいられなかった)。
結局、レオゴンは帰ってきたウルトラマンによって倒され、水野が残した遺書から彼の遺志に従って、水野生物研究所は児童博物館として開放された。
その様子を見ていた郷と次郎は、水野がレオゴンの怪獣化を予想していたことを悟った。そもそも遺書があること自体、水野が云っていたように、彼には世に受け入れられるか、受け入れられなければ自分が去るしかないと考えていたのだろう。
遺品の中にαレオン電磁波発生装置を見つけた次郎は「あんなもの要らないや。」と云ってそれを焚火の中にくべ、郷もそれを追認するように頷いていたが、もしかすると郷と次郎はマッドサイエンティストとしての水野を否定し、子供の様な純粋さを持っていた水野を肯定したかったのかもしれない、とシルバータイタンは考えるのだった。
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特撮房へ戻る令和四(2022)年五月一八日 最終更新