4.沼田五郎………人を捨てる決意をもたらした友情

キャラクター名沼田五郎
演者無し
登場名前のみ、『仮面ライダーストロンガー』第2話「ストロンガーとタックルの秘密」
再会時の立場既に死亡
再会時の主人公への想い既に死亡
友情残留度10
最期ブラックサタンによる改造手術にて落命



人物 この沼田五郎という人物、『仮面ライダーストロンガー』の作中には名前しか登場しない。それも第2話の回想シーンで城茂(荒木茂)がたった一度口にしただけだった。
 それゆえとの関係は「親友」としか分からず、ブラックサタンの改造手術の失敗で命を落としたことだけが作中唯一判明していた事実だった。

 後年、漫画『仮面ライダーSPIRITS』によると、沼田は親友であるとともに、アメリカンフットボールのチームメイトでもあった。
 が城南大学アメリカンフットボール部のキャプテンだったことは作中でも言及されており、同作品のイラストではガタイの云い巨漢に描かれていた(ただ、『仮面ライダーSPIRITS』では大学名は城北大学だった(苦笑))。

 シルバータイタンはアメリカンフットボールに関しては無知に等しいから詳細は語れないが、沼田は自分のボールコントロールとの脚力を活かしたアサインメント(作戦)を考案しており、その名前を「より強く」という意味で、「STRONGER」としていた。
 本編ではストロンガーの名はの改造手術を執刀したブラックサタンの科学者から与えられていたが、ブラックサタンならその組織の是から「カブトムシ奇械人」と呼びそうだから、シルバータイタンとしては後述する理由を含め、五郎の死に報いんとしたがアサインメント名から流用したという説を支持したい。

 経緯は不明だが、その沼田はブラックサタンの改造手術中に死亡した。
 『仮面ライダーSPIRITS』では死体遺棄事件として新聞にも掲載され、遺体には人体実験の痕があることも見出しにて書かれていた。
 沼田の棺桶を前に、は周囲にいた警察官が止めに入るほどの怒りを示し、実験痕からブラックサタンの名を口にし、そこにが詳しい話を求めたことが本編へと繋がっていったのであった。



再会 『仮面ライダーストロンガー』が始まったのは沼田五郎の死後だった。それゆえ生前の沼田の出番はなく、回想シーンが描かれることもなかった。
 つまりTVでは沼田の姿を見ることは無く、沼田のそれが見れるのは漫画『仮面ライダーSPIRITS』での話である。それも生前の姿での再会は無かった。

 この作品でBADANの首領JUDOは、BADANと同時に過去の悪の組織の大幹部・改造人間(一部は首領)をも復活させ、日本全国を襲わせた。
 勿論ブラックサタンも例外ではなく、東海地方襲撃を担ったブラックサタンの再生奇械人軍団の為に富士山麓の陸上自衛隊は無残な殺戮に曝された。
 多くの再生怪人同様、それは過去の残骸を修復したもので、過去程の強さは無く、単体なら滝和也や特殊部隊SPIRTSの面々でもどうにか戦える程度で、ライダーが相手なら何十体で掛かっても蹴散らされる存在だったが、過去の特殊能力を失っていなかったことで、本編の再生改造人間よりは(苦笑)驚異的だった。
 恐ろしいのはその中に電波人間タックルと、奇械人スパークという仮面ライダーストロンガー・城茂にとって忘れようにも忘れ得ぬ人物を正体に持つ存在がいたことであった。

 眼前の電波人間タックルが魂も記憶もない紛い物であることを承知しながら、その懐かしい容姿に戦意を奮い立たせられなかったストロンガーはウルトラサイクロンを食らって瀕死、変身不能の状態に叩き落された(勿論紛い物タックルはこれで死亡)。
 幸い、立花藤兵衛と、変身不能状態ながらも風見史郎が駆け付けて来てくれたことでは辛うじて危地を脱し、意識を失った状態でうわ言で呟いていたのが「五郎」の名だった。

 藤兵衛は沼田五郎の存在を知っており、彼の仇を討つことを決意したことでがストロンガーになったこと、そんな決意をさせる程大切な存在であったことを風見に説明したが、それ以上のことは知らなかった。

 そしてその頃、戦死や破損で役に立たなくなった奇械人の死体置き場と思しき場から、ストロンガーにやや似た容姿の改造人間が這い上がってきた。
 それこそ奇械人スパーク沼田の改造手術が成功していればストロンガーに先駆けてブラックサタンの尖兵となっていた改造人間だった。
 移動中、奇械人とはやや異なる容姿のスパークを見かけ、訝しんだ風見はネットアームでそれを捕獲し、意識を取り戻したはそれが五郎の慣れの果てであることを告げた。
 そこから回想に入ったのだが、回想はアメフト部での日々から始まった。

 ある試合に敗れ、涙するに対して五郎は意外そうにしていた。そして「今日は負けたが次は勝つ」として、アサインメント名・STRONGERでの勝利を熱く語っていたが、程なく彼は命を落とした。
 突然世を去った親友には「俺たちはまだ勝っちゃあいねぇ!」として、五郎を襲った不幸と、五郎が命を落とした事実に激しい怒りを露わにした。

 だが、紛い物であるタックルに心奪われて重傷を負ったことでの心にも一つの区切りがついていたのか、は的確であったが、恐ろしくもある解決方法を思いついていた。
 それは自分のプロトタイプであるスパークの体のパーツを、自分の体を修復するのに流用することだった。
 嫌な書き方をすれば、紛い物が対象とはいえ、あれほど憎んだブラックサタンと同じようにその体を解体しまくった上で自分の体に取り込んだのだった。



友情と悲劇 悲劇については殆んど最初から触れているように、改造手術失敗による沼田五郎の死にある。

 改造手術が沼田の意に沿っていたか、反していたかは分からないが、ガタイの良さとアメフト選手としての評判から「奇械人に適した人材」と見られて拉致されたと見られる。そして沼田は死んだ。
 少し話は逸れるが、昭和ライダーシリーズには改造人間手術の話が腐るほど出てくるが、この『仮面ライダーストロンガー』以外には失敗して死んだという話を聞かない。同作品では沼田以外にも岬ゆり子(岡田京子)の兄・岬守(倉石功)も改造手術の失敗で命を落としている。
 第2話の回想シーンで、改造手術を志願するに執刀医達は、手術が終わるまで死以上の苦しみを味わう、としての望みに怪訝な目を向けていたから、「技術的に杜撰なのでは?」とすら思ってしまう(苦笑)。
 実際、手術中のは「麻酔掛けてんの?」と云いたくなるぐらい苦しそうにしていた。また時期や事情は異なるが、ブラックサタンを脱走して超電子の研究を続けていた正木洋一郎博士(小笠原弘)は改造人間から改造超電子人間への改造手術の成功率を「10%」と述べ、「死以上の苦痛」が伴うとしていたから、ブラックサタンの基本技術は相当問題があるのかも知れない。
 悪の組織による改造手術を肯定する訳じゃないが、設備や具材や人材獲得までの労力を大雑把に見るだけでも改造手術には高額の費用が掛かりそうで、成功率の低さは組織の財政を圧迫する気がする(苦笑)。

 ともあれ、回想シーンで殴り合いの喧嘩(「俺の方が強い。!」という子供じみた意地の張り合いが原因)をしていても、文字通り「喧嘩するほど仲の良い。」親友・沼田五郎を失った城茂は、その友情に報いる為に自らも人間の体を捨てるという、傍目には悲劇的にしか見えない選択を取った。
 素体テストでは体に電流を流されながらも平気な振りをし、改造手術中は苦痛に顔を歪めながらも目的の為に何としてもそれに耐えんとの意を見せ、念願叶って改造電気人間になりつつも、自己催眠装置で脳の無事を保つと、忠誠を強要するブラックサタン大首領と執刀医達に声を上げての嘲笑を浴びせた。
 何とも苦難と怨恨に満ちた時間ではなかろうか。

 ちなみに『仮面ライダーSPIRITS』では改造手術前の素体テスト時に「奇械人スパーク」の名を与えられんとしたのに「縁起の悪い名はゴメン被るね」として、「ストロンガー」の名乗りを申し出ていた。
 恐らく、ブラックサタンへの復讐の意を腹に秘め、沼田がこの世に残した「STRONGER」の名を流用したのだろう。

 『仮面ライダーSPIRITS』ではスパークの残骸からパーツを取り込んで復活を遂げた仮面ライダーストロンガーは、自衛隊駐屯地に立つブラックサタンのピラミッドを攻め、敵の放つ放電攻撃すらエネルギーとして吸収し、風見の放った砲弾を空中で掴むや、過去の沼田の呼び掛けに応え、「おお!!五郎! STRONGERRRRR!」と叫んで、砲弾を百目タイタンの顔面にタッチダウンさせて粉砕した。

 その後もそれ以前の重傷を忘れたかのように暴れ回るストロンガーに藤兵衛が半ば呆れていたのに対し、風見はそれをの「こだわり」として、それが「天に召された女と…大地に眠った男の分まで悪を倒せ」としたものだと述懐していた。

 人間を捨てることすら決意させた友情…………諸手を挙げた称賛はし難いが、並々ならぬ決意と思いと、それを貫かんとするの姿勢は正に「ぼくらの兄貴 城茂に相応しいと云えようか。


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令和四(2022)年五月一八日 最終更新