5.和久宏………今際の際に取り戻した心

キャラクター名和久宏
演者石太郎
登場『ウルトラマンレオ』第48話「恐怖の円盤生物シリーズ! 大怪鳥円盤 日本列島を襲う!」
再会時の立場プロカメラマン
再会時の主人公への想い喧嘩別れが時間経過によって緩和
友情残留度4
最期円盤生物サタンモアの使い魔・リトルモアの襲撃にて死亡



人物 和久宏(石太郎)は元城南スポーツセンターのトレーナーで、同じ職にあった主人公・おヽとりゲン(真夏竜)の同僚で、互いを「ゲン」・「」と下の名で呼び合う親友でもあった。

 ただ、同話の三年前の時点で両者は喧嘩別れしていて、それに絡んではスポーツセンターを辞職していた。
 喧嘩別れの原因はがプロカメラマンになるという夢の為に周囲を顧みない人物だったことにあった。同僚だった時代に共にスポーツに熱中していたは次第に自分のことしか考えなくなり、彼に想いを寄せていた厚子(八代順子)と云う女性の気持ちを踏み躙り、それに激昂したゲンは殴り合いの喧嘩となり、結果、は辞職し、程なく厚子もスポーツセンターを辞職し、直後に別の資産家と見られる男性と結婚した。

 その後は夢に向かってひた走りに進み、作中登場時には個展を開くまでに名を成していた。だが、自分の夢のこととなると見境のない性格は三年前のままで、個展が広かれているビルが の襲撃を受けた際に、自分の作品が灰燼に帰すことを恐れて危険も顧みずに駆け付けんとしたのはまあ良いとして、その際にバイクで子供を轢きかけても平然とし、親とはぐれた赤ん坊を守って避難するようゲンに託された際も、「何で俺が?」という態度を取っていた。

 最終的に、自分の夢の為に周囲を顧みない態度は是正されたのだが、それは数々の悲しい結末を伴うものだった。



再会 おヽとりゲン和久宏の再会は新宿でのことだった。
 全くの偶然にを見掛けたゲンが声を掛けたことで両者は再会した。喧嘩別れした両者だったが、3年の時の流れにわだかまりも氷解していたのか、両者は三年前同様下の名前で呼び合い、最初の声を掛けたゲンに躊躇いが無ければ、これに応じたも喧嘩を引き摺った様子は微塵もなかった。

 要するに三年前の出来事は当事者の中では過去として清算されていたのであろう。
 で夢を追い続け、幾ばくかの成功を収め、ゲンゲンでスポーツセンターのトレーナーを続けながらMAC隊員や個人としてブラックスターと戦い続ける日々を送り、両者には丸で接点が無かった訳だが、そのことが時間の流れで両者の仲を自然治癒していた。

 しばしの歓談後、はカメラマンとしてようやく個展を開けるまでになったことを告げてチケットをゲンに私、ゲンも必ず行く、と快諾した。
 両者(および厚子)との再会は時の流れの中で過去のわだかまりが氷解したことを確認し、行く道は違っても互いの進む道を尊重し合えるものとなる筈だった。

 そう、円盤生物サタンモアの襲撃さえなければ………。



友情と悲劇 約束通り和久宏の個展に訪れたおヽとりゲンは、個展に訪れた厚子とも再会した。
 に振られる形となった厚子だったが、スポーツセンター退職後、すぐに今の主人と結婚し、運転手に車を運転させて外出するほどの裕福な生活と生まれたばかりの長男・マサオに恵まれていた。

 喧嘩別れしたが己の夢を叶え始め、当時傷心状態だったと思われる厚子が別の幸せを掴んでいることにホッとするものを感じていたゲンだったが、彼は二ヶ月前に円盤生物の襲撃で恋人(山口百子(丘野かおり))と弟分(野村タケシ(伊藤幸雄))と幼い妹分(梅田カオル(富永美子))、更にはMACの仲間を一度に失っていたから、再会の喜びはひとしおだったことだろう。
 だが、その幸せなひと時はサタンモアと、それが放った数十羽の怪鳥円盤リトルモアによって無残に打ち砕かれた。

 サタンモアは新宿に林立するビルの合間を縫うように飛行し、偶然 の個展が開かれているビルを襲った。同時に分身であるリトルモアが街中を逃げ惑う人々を襲撃した。
 ゲンは逃げ惑う人々の避難誘導に努めたが、サタンモアリトルモアはともに執拗な性格をしており、この執拗さの為にゲンはウルトラマンレオに変身後も自分の身長より高いビルを守るためにかなり長時間サタンモアの攻撃に耐えなければならなかった(いざ反撃に転じるとサタンモアはほぼほぼ敵ではなかった)。

 一方、リトルモアは中型の鳥程度の大きさでしかなかったが、数が多く、鋭い嘴で襲い来るのが何とも厄介だった。
 この襲撃の中、厚子はゲンとはぐれ、負傷で動けなくなったためにマサオを見知らぬ人に託す羽目に陥ったが、その人物はやがて逃げるのに窮してマサオを置き去りにしてしまった!
 その頃、自分の作品が危ないと思ったはそれらを守るために危険極まりないビルの中に入らんとしたのだが、その際に子供をバイクで轢き掛けて平然としていたことでゲンが激昂した。三年前同様、自分の目的に夢中になる余り、周囲を傷つけたり、傷つけ掛けたりしているのに一顧だにしないその性格に。

 ゲンは三年前同様に殴り合いを展開した。
 だが高層ビルが崩れ落ちかねない状況下でいつまでも殴り合っている訳にもいかず、二人はビルに向かい、その近くでゲンは泣き叫ぶマサオに気付いた。ゲンはマサオをに託して避難を促したが、マサオを厚子の子と知らないは何故見ず知らずの子を自分が守らなければならないんだ?的な態度を取り、ゲンは激昂した。

 ゲンに対して、女の気持ちを踏み躙り、子供を轢きかけて平然としているような人物に良い写真が獲れる筈がないと斬り捨て、に対して人の心を取り戻させんとして半ば強引にマサオを託し直すと自身はビルに向かってダッシュし、の眼前でレオに変身した。

 旧友がレオであること知ったことで思うところがあったのか、もようやくゲンの求めに応じて、マサオを連れて避難に掛かった。
 上述した様に、サタンモアは戦闘能力そのものではレオに及ばなかった。だが、レオが周囲の被害を考えて崩れ落ちかけている高層ビルを支えることで精一杯になったために戦闘は長引いた。
 そしてサタンモアを倒したレオがゲンに戻って駆け付けた時、マサオを庇うリトルモアの嘴を何度もその身に受け、出血多量で致命傷を負っていた。

 ゲンは我が身よりも子供の無事を懸念するに対して、彼が見事に子供を守り切り、人の心を取り戻したことを讃えたが、は自分の守った赤ん坊が厚子の子であることを耳にする前に息を引き取った。
 直後、自力脱出して来た厚子が駆けつけ、ゲンは彼女にマサオが無事であることを告げ、無言のまま目で傍らにて死んでいる人物を指した。当然厚子はそれがであることに気付き、慌ててその名を呼んで取り縋ったが、は既に息を引き取っており、再会が叶うことは無かった。
 状況を察して泣き崩れる厚子に、ゲンの行為が如何に立派だったかを告ゲンとしたが、悲しみは彼も同様でに礼を告げるのが精一杯だった。

 何とも救いのないストーリー及びラストだが、『ウルトラマンレオ』自体、MAC、スポーツセンターの仲間、そして一話限りのゲストにもこの第48話以上に悲惨な犠牲が相次いだから、まだこの話がとんでもない悲劇には映らない(勿論比較の上での話で、単体としては充分悲惨なのだが)。
 幼い命が守られ、過去に失われた人を想い、気遣い、守る心が取り戻されたのがせめてもの救いだったのかも知れないが、おヽとりゲンからまた一つの友情が失われたのは何とも遣り切れなかった。


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令和四(2022)年五月一八日 最終更新