6.弁慶………最後の戦いに散った義侠心
キャラクター名 弁慶 演者 西山健司 登場 『仮面ライダースーパー1』第2話「闘いの時来たり!技は赤心少林拳」〜第23話「不死身の帝王テラーマクロの正体は?」 再会時の立場 赤心少林拳師範 再会時の主人公への想い 幼馴染にして拳友 友情残留度 10 最期 ドグマ親衛隊の一斉射撃から沖一也を庇って戦死
人物 赤心少林拳の師範代で、玄海流赤心少林拳の総帥・玄海老師(幸田宗丸)の直弟子にして主人公・沖一也(高杉俊价)の幼少の頃からの親友でもあった。
強面の髭面で、玄海老師と共にドグマ王国との戦いに苦戦する一也を厳しく鍛え、時に一也に加勢して一也とドグマ怪人の一騎打ちを妨害するドグマファイターを迎撃したりした。
純粋な拳法の腕では一也に匹敵するか、場合によっては一也よりやや優れているようにも見えた。寡黙な人物で、口を開くとすれば修行に必要なことを除けば、修行内容が一也の命を脅かしかねないと見た際にその旨を老師に告げるぐらいだった。まあ、その忠告が通って修行が中止になることは無かったが(苦笑)。
再会 作中での沖一也と弁慶の再会は第2話でのことである。
直接の再会シーンは描かれておらず、第1話のラストでドグマの襲撃を奇跡的に逃れるも、仮面ライダースーパー1に自力で変身する術を持たない一也が、そのヒントを求めて幼少時に修業を積んだ赤心時に身を寄せたのが弁慶との再会で、一也が赤心寺にその姿を見せた時には既に多くの修行僧と共に拳法の稽古に励んでいた。
恐らく、一也は赤心寺に身を寄せた際に、惑星改造用改造人間の手術に前後したすべての事情を玄海老師と弁慶に話したのだろう。
本来はアリゾナの国際宇宙開発研究所のコントロール・ルームからの操作で必要に応じてスーパー1になる筈だった一也だったが、コントロール・ルームは闇の王国ドグマの襲撃を受けて破壊され、一也は自力で変身する術を失った。
恩師ヘンリー博士(大月ウルフ)の助言で、自力による変身の呼吸を身に着けるべく特訓に挑む一也だったが、結局そのヒントもつかめぬまま研究所はファイヤーコングによる再度の襲撃を受けて壊滅。ヘンリー博士を初めとする研究員たちは皆殺しにされたと見られたが、一也はその混乱の中で偶然に変身の呼吸を発し、スーパー1への変身を遂げて日本に逃れたのだった。
その経緯を知っていたと見られる玄海老師は一也に変身の呼吸を掴む為に修業を積ませていたが、ドグマの魔手が身近に迫ったことで、玄海老師は一也の地獄稽古を命じた。
地獄稽古とは、要するに百人組手で、弁慶はその過酷さゆえに命の危険もあると進言したが、上述した様に中止になることは勿論なかった(苦笑)。
同じ赤心少林拳の門弟が次々とかかってくるのを打ち倒す一也の前に99人目として立ちはだかったのが弁慶で、100人目として立ちはだかったのが玄海老師だった。
99人目の弁慶を倒したところで玄海老師の急襲を受けた一也は崖下に落とされたが、その瞬間に発動した呼吸法がヒントとなって、一也は自力で仮面ライダースーパー1に変身出来る様になった。
このとき、弁慶を初めとする100人近い修行僧達が我がことのように喜び、大拍手で一也を祝福するという、仮面ライダー史上最も多い人数が目撃した初変身(←自力によらないものは除いてます)となった(笑)。
勿論、かかる経緯を経た上は玄海老師も弁慶も一也の対ドグマ戦に協力することとなった。もっとも、玄海老師や弁慶が赤心寺を離れた回数は多くなく、大半はドグマ怪人に対抗する手段を求めて特別な修行を志願した一也に協力するもので、弁慶の役割は玄海老師の補佐が多かった。
それが端的に表れたのは第12話と第13話だろう。
第12話中盤で、スーパー1は拳法家・大石秀人(大西徹哉)に扮していたドグマ怪人ライギョンを倒した。だが、その本体はライギョンに寄生していたドグマ怪人ギョストマで、そのことを知らなかった一也は倒した筈の大石が生きていることに周章狼狽し、その心の隙を突かれたことで一敗地に塗れた。
このとき、一也を助けたのは大石の正体を怪しんで山を下りてきていた玄海老師と弁慶だった。
体の傷よりも、心の傷の方が大きかった一也はその悔しさからただただ「獣のように強くなる(玄海老師談)。」のを求めて憤怒の形相で孤独に修業を積み、様子を心配してやってきた草波ハルミ(田中由美子)に対しても、持参したおせち料理を叩き飛ばして「大石秀人を倒すまで俺に正月は無い!帰れ!」という程荒んでいた。
それを諭し、平常心を取り戻すヒントを与えたのは玄海老師だったが、やがて一也は平常心を取り戻し、老師の教えで梅花の技を会得すると、獅子舞に化けて大石道場に侵入した。ちなみにこのとき、獅子舞の後ろ半身を演じたのは弁慶である(笑)。
友情と悲劇 かくして主に裏方的に沖一也を支えた弁慶だったが、恐らくこれは両者が対等だったからだろう。
漫画『新仮面ライダーSPIRITS』の回想によると、弁慶には義経という姉(勿論同作品のオリジナルキャラ)がいて、弁慶は一也と姉が一緒になって赤心少林拳玄海流を継承し、自らは同じ赤心少林拳の一派である黒沼流を継ぎたいと考えていた(弁慶は自身を「乱暴者」と自認し、自分には「邪拳」とされた黒沼流が相応しいと思っていた)。
だが、一也は夢であった宇宙開発の道を選び、赤心寺を去った。恐らく宇宙学を学ぶ為にアメリカに渡ったと見られ、本編が始まるまで赤心寺を訪れなかったのだろう。
当然、流派内での地位は寺内で留まり続けた弁慶の方が高位となった。
名前のある人物は玄海老師と弁慶しか出てこなかったが、弁慶は玄海老師に次ぐ地位にあった思われる。本来なら出戻りで、20年近く寺を離れていた一也は弁慶を上位者と仰がなければならない立場でもおかしくないが、一也は弁慶を呼び捨てにし、対等に振舞う両者に他者が咎めた様子は全くなかった。
恐らくは幼少時の対人関係が強固なものだった故だろう(逆にその強固さゆえに、一也が赤心寺を去ったことを義経は「裏切り」を看做し、玄海流の壊滅は一也が要因として、彼を恨んでいた)。
だが、ドグマとの戦いによって為された再会と共闘による友情の日々は、皮肉にもドグマとの最終決戦によって終わりを告げた。
それは運命の第23話でのことだった。前週の第22話でスーパー1はドグマの大幹部・メガール将軍(三木俊彦)を倒し、彼が所持していたロケットからドグマのアジトを知り、最終決戦に挑んだ。
だが、敵組織を滅ぼすのにその本拠地を把握するのは必須だが、敵にとって最後の砦となればどんな罠や強敵や陣容が待ち構えているか分かったものでは無い。
ハルミは「無茶よ!」と断じ、弟の草波良(早川勝也)は谷源次郎(塚本信夫)に、玄海老師と弁慶に一也を加勢してくれるよう頼んで欲しい、と申し出た。
谷は既に要請済みで、玄海老師と弁慶は残雪の残るドグマの本拠地を数人の門弟達と共に行軍し、帝王テラーマクロ(汐路章)に敗れて雪中に突っ伏していた一也を発見した。
一命を取り留めた一也だったが、重傷の身から回復するのにはまだ時間を要し、玄海老師は弁慶達に周囲の警戒を命じた。
そもそも一也が重傷を負ったのも、テラーマクロが儀式によって不死身の肉体を手に入れていたからで、その体の前にはファイブ・ハンドのよるものを含む仮面ライダースーパー1の如何なる攻撃も通じなかった。
勿論ドグマ側は完全に強気で、沖一也の息の根を止めんと追撃にやって来た。
これに対して弁慶達は一也を庇って迎撃に出たのだが、劇場版にて素手で改造人間を倒した玄海老師や、一也に匹敵する腕も持つ弁慶はドグマファイターが束になって掛かって来ても物ともしなかったが、他の門弟達は多勢に無勢で、一人また一人と倒れて行った。
そして赤心少林拳一派がドグマファイターを迎撃する間隙を縫って、親衛隊は密かに一也に接近し、長弓でもって一也を射殺せんとしたが、これを防いだのが弁慶だった。
最初の矢こそサイ(の様なもの)でまとめて叩き落した弁慶だったが、すぐに二の矢が放たれ、これには弁慶も身を挺して一也を庇うのが精一杯だった。
自分の為に針鼠にされた親友を見てその名を叫ぶ一也。呻きながら「一也ぁ〜…。」と叫んだのが弁慶の最期の言葉となった。
フィクションとはいえ、自分を庇って親友が壮絶な最期を遂げる様を目の当たりにした一也の心情を想えば言葉もない。この事態に玄海老師は、「動くな一也!今動けばお前は回復出来ない!弁慶の死が無駄になる!」と叫んでその場を動かないことを命じた。
実に辛い台詞である。発した老師も、聞かされた一也も。
幼少の頃から慈しみ、鍛えてきた愛弟子を目の前で殺され、その死を無駄にしない為にもう一人の愛弟子にその身に駆け寄ることを許さない命令を出さなければならなかった玄海老師も悲惨なら、自分の為に命を落とした親友に駆け寄ることも許されなかった一也の悲痛もまた計り知れないシーンだった。両者ともに即座に弁慶の死を受け入れざるを得なかった心痛も甚大だったことだろう………。
結局、弁慶を討った親衛隊は玄海老師に叩きのめされ、その玄海老師もカイザーグロウとの対峙でその弱点を発見し、一也の勝利に貢献したものの、自身はカイザーグロウの反撃を受けて壮絶な戦死を遂げた。
かくして玄海老師と弁慶の死により、一也の弁慶(および赤心少林拳の面々)との友情の日々は終わりを告げた。
翌週から始まったジンドグマ編より赤心少林拳関係者が登場することは無く、基本戦闘スタイルとした赤心少林拳の武技や名前が廃れることは無かったが、玄海老師と弁慶の名が出ることもなかった。両者を巡る沖一也の想いが語られるには『新仮面ライダーSPIRITS』を待つしかなかった。
同作品には弁慶に義経という姉がいて、その義経が赤心寺を去り、ドグマとの戦いで弟が討ち死にする遠因となったとして一也を恨んでいた(後に和解?)。同時に赤心少林拳の一派である黒沼流を率いていた黒沼外鬼がテラーマクロその人であったことも明らかにされ、そのテラーマクロ (再生)が倒されることで赤心少林拳を巡る因縁に終止符が打たれた。
再生ドグマに続いて再生ジンドグマと戦う中、傷つき倒れ伏した際に、眼前に現れた雲水スタイルの谷源次郎とチョロに亡き玄海・亡き弁慶の姿を重ね見た一也だったが、しばらく後に今の彼にとっては谷が「父」であり、チョロが「友」と述べていた。
死人が決して還らない非情な現実を突きつけたもの、と云えばそれまでだが、見方を変えれば、改造人間として人間の体を失ったからこそ沖一也が「父」や「友」を求め、弁慶がそれほどに大切な存在と見ていた証左とも云える。
両者の再会と友情の日々は尊いが、その別れは余りに悲しいと改めて思う。
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特撮房へ戻る令和四(2022)年五月二四日 最終更新