9.北村雄一………恩義と理想の歪みに付け込まれて

キャラクター名北村雄一
演者中山卓也
登場『仮面ライダーOOO』第33話「友情と暴走と残されたベルト」、第34話「親友と利用とその関係」
再会時の立場レジャーランド経営者
再会時の主人公への想い過去への感謝と恩返ししたい一念
友情残留度7
最期無し



人物 主人公・火野映司(渡部秀)の高校時代の同級生である。
 北村雄一(中山卓也)本人は映司に対して「親友」と名乗っていたが、映司は忘れていた(苦笑)。というのも、高校時代の北村映司とはクラスが異なり、彼自身引き籠り状態にあった。ただ、「ほら、よくノート届けてくれただろ?」と云う台詞で映司も思い出した。
 直後の会話によると、北村が若手ベンチャー企業の社長となり、大手レジャーランドの経営に着手出来たのも、映司のお節介に感化されてのもので開園直前の招待はその御礼とのことだった。

 ただ、この作品の常で、北村もまた悪の組織に絡む事件と無縁ではいられなかった。早い話、カザリ(橋本汰斗)とアンク・ロスト(飛田光里)に目を付けられ、彼自身の欲望を利用されてフクロウヤミーが生まれた訳だが、その欲望は映司を自分の会社に勧誘すると云うものだった。
 勿論、企業経営者たるもの、自社の発展に貢献出来ると見込める優秀な人材を何としても獲得せんとするのは責務ですらある。ただ、北村の場合、本気で映司の為を想っての勧誘でもあり、その点では間違いなく友情を保持していたが、映司と自分の望みが強過ぎ(←だからこそカザリ達に目を付けられた訳だが)、その為には些か強引な手段を取ったり、邪魔と見た者の排除も辞さなかったり、と良くも悪くも意志の強さが見られた。何せ、映司を自分の元に呼び込む為、邪魔と見たアンク(三浦涼介)を罠に嵌めて捕らえた程だったのだから。

 想いだけではなく、感情や信念も強かった。
 映司を勧誘せんとした根底にあったのは、過去の映司にお節介に感謝し、彼の為になることをしたい一方で、「映司に頼られたかった………。」との想いもあった。そして映司映司らしく生き、映司のやりたいことをするのにアンクが足枷になっていると思うや泉比奈(高田里穂)を拐わかし、しれっとした顔でその捜索に力を貸す風を演じ、ロスト・アンクの片棒を担いでアンクのみならず伊達朗(岩永洋昭)や後藤慎太郎(君島麻耶)等も罠にかけて監禁した。
 悪い云えば目的のために手段を択ばないタイプだったが、映司に恩義を感じ、それに報いたいと考えている人間だったから根は善人だった。
 映司を勧誘するのに、比奈の行方を必死に追っている最中に切り出すなど、その機の見方は怪しいものがあったが(苦笑)、一方でコアメダルが映司にとって大切なものと知るとこれを返却し、映司が決してアンクに利用されている訳ではなく、アンクを心底必要としているのを認めると黙って身を退く潔さも持っていた。



再会 火野映司北村雄一の再会は、北村映司の居候・バイトしている多国籍レストラン・クスクシエを訪ねて来たものだった。
 要件は自らが社長として経営するレジャーランドに映司を招待せんとしたものだった。上述した様に北村の名を見ても思い出せずにいたが、再会してもすぐには思い出せなかった。

 高校時代のお節介が自分を感化したことを話したことでようやく映司北村を思い出し、映司はアンク、泉比奈、伊達、後藤と共に招待を受け、フィールドアスレチックに興じた。
 その最中、比奈が大網で捕らえられ、行方不明となったのだが、これは北村の自作自演だった。比奈を追い、手分けして探す映司、伊達、後藤の動きを双眼鏡で追っていた北村は我が事成れり、とほくそ笑んでいたが、そんな欲望の暴走をカザリとアンク・ロストに付け込まれた。

 結局、北村の目的は映司の勧誘にあったので、比奈の行方を追う映司に協力振りをして、園内各所を案内したが、その最中に突如、映司に自分の会社に来ないか、と空気も読まずに(苦笑)勧誘し出した。
 その殺し文句は、「一緒に世界の恵まれない子供達を救う事業を立ち上げたっていい。」というものだったが、さすがに切り出すタイミングがおかし過ぎて、映司に「こんな時にどうしたんだ?」と返されていた。
 ただ、北村の想いは真剣だったゆえに映司も怪訝に思いつつも邪険にはせず、一方で北村的には計画通りに進んでいるとの自負があった故か、欲望の増幅に大きくパワーアップしたフクロウヤミーは仮面ライダーバースを圧倒し、伊達を捕らえる程だった。

 そして比奈捜索を優先する映司と、鳥系ヤミー追跡を優先するアンクが喧嘩別れして別行動を取ると北村はアンクに対して映司の前から消えるよう要求して来た。
 アンクはその要求を鼻で笑いつつ、北村の想いの強さから、北村がヤミーの親と気付き、にじり寄ったが、そこをその場に仕掛けられた罠=地中に埋められた網に救い上げられたのだから、何とも彼らしくない間抜けなシーンだった。

 直後、北村は比奈がいそうな場所に目星がついたと告げ、映司を気絶していた比奈の元に連れて行ったが、そこをフクロウヤミーが襲撃。北村映司から比奈を連れて逃げるよう託された。
 フクロウヤミーは思いの外強く、OOOとバースドライバーを持たない後藤が二人掛かりで圧倒されるほどだったが、そこへ自力脱出したアンクが暴走しかねないプトティラコンボに変身するより、サゴーゾコンボの方が有効である旨を告げたことでOOOは殴り合いでフクロウヤミーを圧倒出来たが、後一歩のところでフクロウヤミーは簀巻きの後藤を盾にしたため、逃げられた上に後藤まで攫われた。

 直後、北村が気付いた比奈を伴って戻ってきて、「いつもあんな危ないことをしてんのか?」と詰問調に述べ、映司への再勧誘を始めそうに見えたが、そこへ監禁していた筈のアンクが怒気を孕んで現れたため、北村は大いに狼狽えた。
 ただアンクは睨みつけるだけで、映司はまだ信用し、礼を述べ、伊達と後藤の行方に気を取られていたが、さすがに方便とはいえ親友を騙していたことに居た堪れなくなった北村はその場を逃げ去るのだった。

 第34話に入り、映司が伊達と後藤の行方を求めてレジャーランド内を奔走する中、アンクは北村を(比奈に聞こえないように)密かに尋問。黙秘すれば映司にバラすとの脅しに屈して北村は「映司に頼られたかった」という本音と、比奈を攫ったのが、比奈を助けることで映司の前でいい人を演じたかった自作自演だったことを吐露するとともにヤミーという化け物が生まれたことに項垂れるのだった。
 勿論、北村はこのことを映司に伏せて欲しくてすべてを白状した訳だが、アンクがそんな約束を守る玉ではないことは周知の通り(笑)。

 すべてをバラされ、映司との仲も終わったと感じ、完全に肩を落とす北村だったが、究極の御人好し男・火野映司は突然比奈に、誘拐は自分と北村が組んだサプライズだったと云いながら謝罪して、北村を庇い始めた。
 なぜ北村を庇うのか?と詰問するアンクに映司が答えたのは、北村の愚行は自分にも責任があるとするものだった。
 その後、映司フクロウヤミー北村から生まれた事実をヒントに、敵アジトはレジャーランド内の北村のお気に入りの場所が可能性として濃厚と考え、植物園が導き出された。
 果たして伊達と後藤もそこで束縛されており、二人を解放せんとする映司フクロウヤミーが襲い掛かって来たが、後藤の基点とアンクによるメダルコンボのベストチョイスが功を奏して危機を脱し、そこにカザリが乱入してきたことから乱戦となった。

 乱戦の中、今度はアンクがフクロウヤミーに攫われる羽目に陥り、その隙をカザリに突かれたことで変身を解除され、零れたコアメダルも奪われ映司だったが、カザリは下手に映司を追い込んで最強にして最凶のプトティラコンボが発動するのを恐れ、緑のコアメダルを一応の選果として撤退した。
 映司、伊達、後藤はアンクを連れたフクロウヤミーを追わんとしたが、それに北村が待ったをかけた。カザリの入れ知恵もあって、アンクを映司を苦しめる元凶と見ていた北村は伊達と後藤が助かったことを良しとして、人間でもないアンクなど放っておけとの態度を取った訳だが、勿論映司が聞き入れる筈なかった。
 北村はそんな映司を「お前らしくない。」としたが、映司は自分が高校時代と何も変わらない、と反論。あくまで「今自分に出来ること」を「出来る範囲」でやるだけだと主張したのだった。



友情と悲劇 最終的には本作の他のキャラクターの様なアンハッピーエンドにはならなかったから、「友情と悲劇」は少し云い過ぎである(苦笑)。

 アンク救出を止めた北村雄一だったが、結局彼は火野映司の真意を理解し、受け入れた。アンクもただ拉致されただけでなく、バッタカンドロイドを利用して映司に救援を求めるという機転を利かせたため、映司はアンクの連れ去られた場所の見当を付け、北村はマイカーを駆使して案内役を買って出るべく映司の元に駆け付けたのだった。
 そしてその場に向かう途中、北村は更なる本音を吐露した。高校時代、北村は度の過ぎたお節介を焼く映司に辟易しながらも屈託のない笑顔に心を開き、夢を語った北村に、何の根拠も無しに「絶対出来る!」としてくれたことに勇気づけられたことを。
 それを聞いた映司は逆に自分の力を過信して根拠のない成功展開を声高に語った自分を恥じる発言をしたが、そこから両者は肝胆相照らし、真の友情を高め合い、映司の考えを完全に理解した訳でなくとも、気持ちは感じ取った北村は目的地に到着するとこっそり拾っていたコアメダルを映司に「お前たちにとって大切なモンなんだろ?」と云って返却した。

 結果、フクロウヤミーはバースが倒し、プトティラコンボを発動したOOOの前にカザリ、アンク・ロスト、Dr.真木(神尾佑)も撤収した。ただ、プトティラコンボは凄まじい戦闘力を持つものの、正気を失わせるリスクをはらむコンボで、懸念されたように、OOOは銃口を北村に向けたが、これを救ったのは意外にもアンクだった。詳細は割愛するが、自己中な意思を声高に宣言するアンクにメダガブリューを一閃したOOOだったが、純粋で真剣な想いにプトティラコンボは戦意をなくす傾向のあることから斬撃は寸止めされ、OOOに動きが止まった隙にアンクがドライバーの位置を正すと変身は解除された。 
そして映司とアンクの独特な信頼関係を見出した北村は敗北を悟ったように立ち去った。

 些か消化不良なラストと思えなくもないが、早瀬五郎や高木裕介の小針正の様に悪の組織にのめり込むこともなく、弁慶や水野一郎や和久宏の様に命を落とすこともなかったのだから、映司を勧誘することで恩返しする目的は叶わなかったものの、映司の想いを尊重して去れたことを良しとすべきであろう。
 一番の悲劇は、映司がお人好し過ぎてすべての友を尊重することで、映司を親友と思えても、映司にとっての一番の親友になることが極めて困難なことだろうか?(苦笑)


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令和四(2022)年五月三〇日 最終更新