Page5.イメージを覆した名武人振り………マグマ星人総統

登場 『ウルトラマンSTORY0』第28話・第29話
行動目的 L77星侵略
戦闘手段マグマサーベル、鉤爪鎖
力量不明(詳細後述)。但し、マグマ星人内に在っては高技量に該当
性格正々堂々としており、勝者を讃える潔さ有り。
決着討死
作中行動 L77星を侵略し、その迎撃に出るL77星人の中で最も手強いと見た者をマグマ星人総統である自分に相応しい相手と見定めて一騎打ちに及んだ。

 L77星侵攻に際し、宇宙空間の戦いで(マグマ星人から見て)敵の総大将アルス王を討ったマグマ星軍団は一斉攻撃に出た。
 の王城に配備された反重力プラズマ砲を先鋒大将である副官(総統の兄)がマグマサーベルの一閃で壊滅させ、落城は間近と見られた。
 だが、敵方にはM78星雲人であるドリューがいた。彼はM78星雲光の国から暴走されたプラズマスパークが光りの国のみならず、L77星にも超人化をもたらした状況を告げ、その力に呑まれぬようL77星人を教導する為に来星し、アルス王の軍師的存在となり、まだ少年とも云えたレオ・アストラ兄弟の武術師範となっていた。

 ドリューの繰り出すパンチの連打は、例えるなら千歩氣功拳に等しく(参考文献『魁!!男塾』)、反重力プラズマ砲の攻撃を物ともしなかったマグマ星人の兵卒数人を討ち取った。
 ドリューの技量と、大軍に単独で立ち向かう男気を見たマグマ星人総統は、彼こそ自分が戦うに相応しい相手と見て、騎馬であるデスギラスに乗ったままL77星の大地に降り立った。

 だが、ドリューとの一騎打ちはレオの乱入で叶わなかった。
 ドリューに課された訓練で驚異的なキック力を見せたレオに軍団が戦意喪失して退却する中、デスギラスに数々の星を滅亡に追いやった大技・デススピンを放たせ、これを防ぎ切ったレオをかつてない最高の敵として、改めて自分に相応しい対戦相手と定めた。

 両者の一騎打ちはマグマ星人総統がレオの経験不足を突く形で地面に転倒させたところを刺殺することで勝利する寸前まで追い込んだが、ドリューの妨害が入り、形勢は逆転した。
 だが、次の瞬間兄である副官が負傷したドリューを人質にして一騎打ちを邪魔し、その次の瞬間にはアストラが副官に斬りつけるなどし、様々な横槍が入ったが、両者はクロスカウンターで最後の一撃を放った。

 結果、マグマ星人総統の刺突は空を切り、逆にレオのキックはマグマ星人総統の右脇腹を大きく抉り、これが致命傷となって勝負は決した。
 マグマ星人総統は最期にレオの名を尋ね、アルス王が良き後継者を持ったことを讃え、自らの敗北を認めて息を引き取った。
 だが、彼が讃えたL77星とその王家は、愚弟の自棄糞自爆の道連れとなって滅びたのだった。



性格・技量 これまで、「粘着質で執念深く、残忍・無慈悲な侵略者」と云うマグマ星人のイメージをかなり覆したのがこのマグマ星人総統と云えるだろう。
 『ウルトラマンSTORY0』で共に登場した兄である副官が従来のマグマ星人のイメージを絵に描いたような奴だったので、その真逆な性格は際立っている。
 実際、シルバータイタン自身、マグマ星人に対して本作のタイトル通りに「十人十色」を感じたのにはこのマグマ星人総統によるところが大きい。

 弟でありながら兄を差し置いて総統の地位に就いていた事から、技量・人格共に大きく兄を凌駕していたと思われる(兄は「勝手に総統なんぞを名乗りやがって。」と述べていたが)。
 レオのキック力に恐れをなした軍団が総崩れになって次々撤退する状況にあって、「逃げたい者は逃げるがいい。この星の価値が分からぬとは哀れ。」と述べていたことから、十人十色のマグマ星人に在って極めて武人肌が濃く、男気にも溢れていた御仁と見られる。
 このマグマ星人総統と副官の兄弟関係と性格に黄金期の『週刊少年ジャンプ』を愛読していた方々には『北斗の拳』におけるケンシロウとジャギの姿を見出した方々も多いと思う(笑)。
 侵攻に在っても、強敵を総統である自分に相応しい相手と見定めていたことから、相手が弱卒と見れば普段は自ら剣を抜くことも無いのだろう。
 またレオを数多く戦ってきた敵の中でも「間違いなく最大の敵」としていることから、数々の戦績を持ち、(兄の酷評とは異なり)実力・人柄で総統の地位に就いたのだろう。

 ただ、戦闘技量について単純に讃えるのは微妙である。
 何せ、L77星滅亡時のレオはウルトラマンとしての能力に目覚めたばかりで、地球にやってきた直後のレオがその未熟さで数々の怪獣・宇宙人に初戦で敗れたのは周知の通りである。
 第壱頁・第弐頁の考察からもマグマ星人自体宇宙人の中では御世辞にも猛者としての部類にカウントするのは大いに躊躇われる。マグマ星人総統マグマ星人の平均値と比して相当な強さを持っていたとしても、光の巨人としての能力に目覚めたばかりのレオに敗れたのは痛い

 ただ、L77星滅亡時のレオは、ドリューから「(アストラ共々)素質は申し分ありません。」と評され、単純に実践経験のなさだけがネックだった。それゆえ、父王の死やかつてない星の危機と云った衝撃的な出来事のオンパレードで火事場のクソ力的な潜在能力の発揮が起きたと考えられなくもない。

 ともあれ、力量よりも、ヒーローに負けない程の誇り高き武人としての在り様を示したことがマグマ星人と云う存在を考察する面白みを増してくれたことは疑いない。



存在感 出番は少なかったが、残した存在感は強烈である。
 ウルトラシリーズに登場する多くの侵略的宇宙人は単発の登場で、台詞を丸で発しない者も多い(マグマ星人も最初はそうだった)。それゆえ性格・人格、詳細な行動目的の読み辛い者が大半で、攻められている地球人から見れば「無慈悲なインベーダー」と云う一括りになり易い。

 そんな中でマグマ星人は「L77星を滅ぼした怨敵」と云う、他の宇宙人には持ち得ない独特の履歴と存在感を持つ訳だが、それでも性格・人格までは長く示されなかった(故内山まもる氏の漫画版では少し示されていた)。
 そこをウルトラシリーズの前史を描いた『ウルトラマンSTORY0』はL77星の滅亡を舞台に様々なマグマ星人を披露した。ただ、行動指針が侵略なので、性格を垣間見るのは戦術的なものが多かった(好戦的な性格や、強敵を前にした態度や、勝敗へのこだわりに個々の差異が見られた)。

 そんな中でマグマ星人総統が放った異彩は大きな存在感をもたらすと共に、美しさへのこだわりがマグマ星人における価値観を際立たせていると云える。
 副官もマグマ星人総統も好戦的な性格を持ちつつも、戦いによって星が傷つくことがその価値を下げると見ていたことは共通していた。同時に星の価値を下げることになっても獲得することを優先し、それが叶わないとなると破壊することも辞さない点も、宇宙鶴ローランに執着したケースと酷似している。

 独特の存在がある故、「好戦的で美を好みつつ、それよりも勝利を優先し、叶わないとなると破壊する。」と云うマグマ星人の平均像が確立したと云えよう。



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新