Page7.何と!地球で就職?!………マグマ星人

登場 『ウルトラマンタイガ』第1話、第24話、第25話
行動目的当初は宇宙人犯罪の裏方暗躍。
戦闘手段脳波コントロール装置、マグマウェーブ
力量不詳
性格真面目
決着就職
作中行動 令和初のウルトラ作品となった『ウルトラマンタイガ』にて、地球に在住する宇宙人犯罪組織ヴィラン・ギルドの構成員として登場した。
 同作品に登場する宇宙人を理解する為には、まず同作品が持つ世界背景を理解する必要がある。

 そもそも『ウルトラマンタイガ』の舞台となる地球は、パラレルワールドに存在する地球である。タイガがウルトラアースにやってきたきっかけは、同作における宿敵的存在であるウルトラマントレギアとの戦いで、仲間であるウルトラマンタイタス、ウルトラマンフーマ共々元の世界から消滅させられて元の世界から放擲されたことによる。

 その世界の地球における宇宙人は、従来のシリーズの宇宙人の様に地球を武力侵略して直接支配下に置くよりは、こっそり地球に潜入し、地球人に成りすまして犯罪行為に手を染めるケースが多かった。そしてそれらと戦う組織も歴代防衛チームの様な軍事組織ではなく、民間警備会社E.G.I.Sで、主人公の工藤ヒロユキ(井上祐貴)もそこの社員で、それゆえ敵役の悪事は暗躍的なものも多かった。

 そんな中、ヴィラン・ギルドの構成員であるマグマ星人は第1話で早くも登場し、雛怪獣ベビーザンドリアスを拉致するのが任務だった。
 ベビーザンドリアス拉致の目的は、その親である若鳥怪獣ヤングマザーザンドリアスを誘き寄せることにあり、時空破壊神ゼガン(宇宙ゲリラシャドー星人が発明した最終生物兵器)の標的にせんとしていた(ゼガンは闇オークションにて競売に掛けられていた)。
 が、ゼガンは最凶獣ヘルベロスにあっさり倒され、マグマ星人はベビーザンドリアスをほっぽり出して逃げてしまった。

 そして最終話前後編となる第24話と第25話にマグマ星人は再登場した。
 第24話で、宇宙爆蝕怪獣ウーラーが地球へ迫ると、アジトにてギルドの同僚である宇宙商人マーキンド星人と共に脱出を考えていた。
 ウーラーはある惑星の発達した文明が、宇宙に捨て続けた多数の廃棄物の澱みから偶発的に誕生した疑似生命体で、有機物・無機物を問わず、エネルギー体ならなんでも無制限に捕食して吸収する存在だった(食べたものは高圧で圧縮され、体内に一種のブラックホールを形成するため、決して満腹にならず、その食欲は止まらない)。
 惑星に取り憑くと地殻に始まり、最後はそのコアエネルギーをも食い尽くして星を破壊してしまう。それゆえ全宇宙敵に恐れられており、地球が標的になったとあっては、地球を故郷としない宇宙人が脱出を図るのは極自然なことだった。

 だが、そこへE.G.I.Sの事務員・旭川ピリカ(吉永アユリ)が現れた。
 彼女は地球人ではなく、ウーラーの活動を止めるために対抗手段として宇宙に放ったエオマップ星の科学者が開発した、怪獣の生命活動を停止するデバイスを搭載したアンドロイドの1体だった。  だが、感情を持つバグが発生したことで彼女は破棄され、地球に流れ着き、ゴミ捨て場に倒れていたところをE.G.I.Sの社長佐々木カナ(新山千春)に救われ、旭川の姓を与えられ、地球で生活していた。
 だが、ウーラーの出現によって本来の任務に覚醒。彼女はウーラーと同期して停止させようと考え、ヴィラン・ギルドに現れた彼女に押し切られる形で、マグマ星人はアジトにあった脳波コントロール装置の使用を許した。

 続く第25話にてマグマ星人は、量子化してウーラー内部へ転送されたピリカやウーラーを救おうとするE.G.I.S.に協力を申し出ると、地中へ潜ったウーラーを誘き出すために宗谷ホマレ(諒太郎)と共に宇宙船からマグマウェーブを照射した。

 そしてすべてが解決するとマグマ星人はマーキンド星人と共に何と E.G.I.S.の警備員に就職し、ヒロユキの後輩となったのだった
 宇宙人が主人公達の所属するチームに所属した例としては、『ウルトラマンX』に登場していた健啖家宇宙人ファントン星人がいるが、ファントン星人が種族的に地球人に友好的で、最初からXIGに協力していた事を考えるとやはりマグマ星人とマーキンド星人の例は極めて稀有と云えよう。


参考:ヴィラン・ギルドの構成宇宙人
 マグマ星人、マーキンド星人、セミ人間、クカラッチ星人、レキューム人、ゼットン星人、ババルウ星人、フック星人、キール星人、ヒュプナス、チブル星人、ペダン星人、バド星人、ゴドラ星人、ザラブ星人、スラン星人、サーペント星人



性格・技量 正直、歴代マグマ星人と比して本作に出て来たマグマ星人は論じ難い。と云うのも、歴代マグマ星人が目的や規模はどうあれ、「大将」や「戦士」としてのカラーが強く、有利な状況限定とはいえ好戦的だったのに対して、本作のマグマ星人はあくまでヴィラン・ギルドのメンバーとしての暗躍が主体で、戦うことや倒すことを必ずしも目的としていなかった。
 つまり、出番は多いのだが、直接行動に注目する者が少ないのだ。

 前述した様にウーラーが地球に迫った際は、(相手の絶大な能力を考えれば無理ないが)地球から脱出しようとしていた。不利な状況を徹底的に避ける辺り、これまでのマグマ星人に共通するのだが、硝酸に押し切られる形とは云え、それまで敵対していたE.G.I.Sにあっさり協力したり、脳波コントロール装置やマグマウェーブと云った秘密兵器の貸与を許可したりしたのは前代未聞な行為だった。
 故に行動経過から、個としての戦闘技量は伺い難い。また不利を避ける性格は従来通りとして、地球人に協力してウーラーと戦ったことは、「有利不利を見極める性格が徹底された。」とも云えるし、「共通の敵を前にしたとは云え、それまでの敵と合力したのは、らしくない。」とも取れる。
 いずれにせよ、武よりも智が目立つので、狡猾者の多かったマグマ星人らしいとも云えるし、裏方に徹したことで個人的武勇は測り難いとも云える。
 ただ、本作の趣旨に沿えば、このマグマ星人もまた「十人十色」を発揮してくれたと云える。

 尚、性格に関しては、監督の市野龍一氏は、マーキンド星人ともども第1話の時点で再登場させることを決めていたため、「憎めない小悪党」として描写したとのことである。「憎めないマグマ星人」とは誠に稀有であろう。
 そうなると他のマグマ星人や、双子怪獣の様な配下が出なかったことに納得がいく一方で、彼が故郷マグマ星に置いて如何なる立場にいたのか興味深いところである。



存在感 或る意味、監督と脚本家に愛されたキャラクターである。
 第1話に登場した時点でマグマ星人を再登場させることを市野監督が決めていたのは前述した通りだが、脚本を担当した林壮太郎氏も、再登場を決めた時点でE.G.I.Sの社員にすることにしたと述べている。
 もし話の中盤でE.G.I.Sの仲間入りをしたとすると、最終回前に非業の死を遂げる可能性が有った訳で、すべてが解決した後に就職をすると云うことは、マグマ星人が命を落とさずに平和な地球人としての日々を送り続けさせることを決めたとさえ云える。
 単純にマグマ星人が好きでなければ振られなかった役割である。
 つまり、経緯はどうあれ、地球人との共闘・共存を初めて果たしたのである。
  ウルトラマンレオ・アストラ兄弟の過去を想えば些か複雑な展開で、パラレルワールドだから出来た展開と云えるが、マグマ星人を「憎き侵略者」と見たくなる従来の視点をマグママスター・マグナ並みに覆した足跡は大きい。
 作品部隊がパラレルワールド故に、再登場は見込み難いが、「こんなマグマ星人もいた。」と云う歴史はウルトラワールドの奥深さと多様性を強固なものにした重要な歴史となろう。



次頁へ
前頁へ戻る
冒頭へ戻る
特撮房へ戻る

令和三(2021)年二月一〇日 最終更新