終章 アイデンティティ尊重の難しさ

 仮面ライダーシリーズとウルトラマンシリーズの双方に登場した再利用されざる兵器能力作戦について触れてきたが、一つだけ誤解されたくないことがある。
 それはシルバータイタンが有効な兵器能力作戦が再利用されなかった事を指して批判しているのではなく、再利用されなかったことを惜しむことで兵器能力作戦を称えているのである。

 実際、兵器能力作戦の選択はかなりシルバータイタンの好みが反映されており、見る人によっては別の兵器・能力・作戦を取り上げるべき、と主張する人もいるだろう。それを比較した時にどっちが優れた見解であるかを討論するのは、面白いことでもあり、野暮なことでもあると思う。
 ただ、シルバータイタンは自分が選択し、所見を述べた各種兵器能力作戦は間違いなく番組を盛り上げるのに貢献したと思っているし、適度に再利用されていれば更に番組を盛り上げていたであろうものを選択した、との自負はある。

 そしてこれらの兵兵器能力作戦を振り返った時に、これらの兵器能力作戦は単発の登場だからその話を盛り上げるのに成功したし、頻発させれば作品の世界観を打ち壊しかねなかったであろうことも充分に理解出来る。
 だが、それを承知の上で、「再登場して欲しかった!」と思うのはシルバータイタンのエゴであり、登場した兵器能力作戦への賛辞でもある。

 かくもアイデンティティの尊重とは難しいものであることを改めて思い知らされ、同時に数々の設定の中で一際大きな存在感を放つものには自然と畏怖の念を抱いてしまうものである。
 それゆえに、再登場されなかったことを惜しむべき存在達への賛辞と、せめてマニア内での存在感高からんことを祈念して、優れたの兵器能力作戦再登場への特撮史上における尽力について語りたい。
歴史が高めたアイデンティティ
 漫画『キン肉マン』を描いたゆでたまご氏が、後年、『キン肉マンU世』の単行本のコメントに、彼等が単発キャラで終わらせる筈だったキャラクター程、ファンの間で人気が高かったことを述べていた。
 ウォーズマンや、ブロッケンJr.や、ザ・ニンジャがそうだったとのことだが、特にウォーズマン人気は第1回人気投票では、その時点で殆ど『U世』に登場していないにもかかわらず第3位にランクインしたことは多くの人々を驚かせ、その後のウォーズマン大活躍への契機となったのは多くの人々が認めることだろう。

 書籍は変わって、『空想科学読本』では柳田理科雄氏がウルトラマンシリーズや仮面ライダーシリーズに出てくる怪獣・怪人達の特殊能力が大きな矛盾を孕んでいたり、自己の中でミスマッチしていたりする例を挙げていたが、最後の部分で、怪獣達の多くは1回限り登場するだけの悲しい存在で、宇宙忍者バルタン星人やどくろ怪獣レッドキングのような何代にも渡って登場するのは稀有な例で、それが為に荒唐無稽と紙一重な一発技に掛けるしかない、故に彼等の必殺技を讃えるべきである、と締め括っていた。

 で、上記2冊の書籍を例示したのは、原作者や製作者の意図をも超えて、様々な存在がファンに愛され、そのアイデンティティは個々に尊重され、それは時として何十年もの時を経て感動の再登場を実現させることがあることをシルバータイタンは訴えたかったのである。

 仮面ライダーシリーズなら、『仮面ライダーSPIRITS』が挙げられる。
 同作品では、電光ライダーキックライダー卍キック V3マッハキックライドル脳天割りスーパー大切断超電稲妻キック超電急降下パンチ超電ジェット投げウルトラサイクロン大回転スカイキック梅花の型、といった1、2回の出番しかなくとも、重大なエピソードを交えた大技を再登場させてくれた。

 そしてウルトラマンシリーズなら『ウルトラマンメビウス』が挙げられる。
 アーカイブドキュメントに記録の残るどくろ怪獣レッドキング、古代怪獣ゴモラ、悪質宇宙人メフィラス星人、宇宙恐竜ゼットン、凶暴怪獣アーストロン、地底怪獣グドン、古代怪獣ツインテール、岩石怪獣サドラ、宇宙大怪獣べムスター、宇宙調査員メイツ星人、巨大魚怪獣ムルチ、人魂怪獣フェミゴン、ミサイル超獣ベロクロン、一角超獣バキシム、蛾超獣ドラゴリー、異次元超人巨大ヤプール、満月超獣ルナチクス、火山怪鳥バードン、百足怪獣ムカデンダー、宇宙海人バルキー星人、サーベル暴君マグマ星人、暗黒星人ババルウ星人、円盤生物ノーバ、硫酸怪獣ホー、再生怪獣サラマンドラ達の再登場も嬉しかったが、アーカイブドキュメントの記録を元に踏襲され、改良されていたライトンR30マインマグネリューム・メディカライザーシルバージャークG フォーメーション・ヤマト等は涙物でさえあった。

 アイデンティティ尊重の難しさや、単発ゆえに輝いた事実を充分に理解しつつも、敢えてもう一度叫びたい。


 もっと使えよ!


 と。
 それは制作を責めるのではなく、いつの日か誰もが納得のいく形での再登場を心の底から願えばこそである。


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平成二一(2009)年九月八日 最終更新