7.UGM(ウルトラマン80)
7−1.フォーメーションヤマト
登場話
第13話「必殺! フォーメーション・ヤマト」
有効性
フォーメーション・ヤマトとは、UGMが再生怪獣サラマンドラを倒す為に矢的猛(長谷川初範)が考案した飛行方法である。
フォーメーション・ヤマトの誕生は偶然の要素も強かった。
街中にて暴れるサラマンドラにはレーザー砲が丸で聞かず、オオヤマキャップ(中山仁)の命じたボディ・リサーチによって、咽喉が弱点であることが判明したが、やっこさんも己の弱点ぐらいは知っているようで、容易に咽喉を見せずに両腕でガードを取る。そこでオオヤマはジャックナイフ・フライトと呼ばれる飛行法による攻撃を宣言した。
ジャックナイフ・フライトとは、この場合、相手の腹部ギリギリまで接近し、そこから垂直に進路を取って上昇し、その際に咽頭部を攻撃するもので、元防衛軍航空部隊特別指揮官にして、マッハ2での垂直降下などの難度の高い操縦も難なくこなすエースパイロットであるオオヤマが実践するにしても危険の大きい飛行方法で、猛はオオヤマに無断で分離可能機であるβ号に移り、サラマンドラの頭部を攻撃し、それに釣られたサラマンドラが上を向くことで咽頭部が曝け出され、シルバーガルα号に残ったオオヤマの攻撃でサラマンドラは倒された。
サラマンドラは二つ名の如く、再生能力に優れていたため、これを操っていたドクロ怪人ゴルゴン星人の手で細胞片から再生させられ、結果論から云えば完全勝利とは云えなかったが、多くの怪獣はここまでの再生能力を持っていないため、再生能力が無いか、予めこの事を知っていて最初の段階で細胞片が焼却されていれば、UGMの手による完全勝利と云っても過言ではなかった。
ともあれ、怪獣退治に成功したとはいえ、猛のとった行為は独断専行で、オオヤマはもとより、タジマ浩隊員(新田修平)とハラダ時彦隊員(無双大介)もこれを批判した(至極真っ当なことです)。だがこのことが話し合われる前にゴルゴン星人の謀略でオオヤマは暗殺者の影に怯えて外国人女性を射殺したUGM隊長にあるまじき人物、との濡れ衣を着せられた。
復活したサラマンドラが街中で暴れだし、UGM機が次々と撃墜される中、居ても立ってもいられない拘禁中のオオヤマだったが、濡れ衣は程なく、猛の活躍で晴らされ、ナンゴウ長官(北原義郎)の口から任務への復帰が許可され、オオヤマはスペースマミーに向かう途中で猛に礼を述べた。
そして艦内にてオオヤマは再度ジャックナイフ・フライトによる攻撃を、否、その攻撃から派生的に生まれた先の攻撃の再開を宣言し、シルバーガルβ号で頭部を狙う攻撃を囮として、シルバーガルα号にて咽喉を狙う攻撃方法を「フォーメーション・ヤマト」と名付けたのだった。
結論から云うと二度目のこの攻撃はサラマンドラに通じず、投げ出された飛行機を助ける為に猛が変身したウルトラマン80によってサラマンドラはゴルゴン星人ともども倒されたが、UGMではフォーメーション・ヤマトのマスターが叫ばれ、隊員一同、オオヤマに特訓を頼み込み、それが為に怪獣退治と容疑解消の祝いにナンゴウ長官が招待しようとした高級ディナーを棒に振る事となったのを城野エミ隊員(石田えり)がぼやいたのもご愛嬌だったが、ここまで重視されたフォーメーション・ヤマトがその後再利用された形跡は無かった。
空母兼前線基地ともなりうる巨艦・スペースマミーを飛ばしたり、オオヤマキャップが優れたパイロットだったり、最終回にて後一歩で冷凍怪獣マーゴドンを倒せるというときに戦闘機の燃料が足りなくなった戦闘機への空中補給の為に突如オーストラリアからタジマとハラダが帰って来たり、と、戦闘機の活躍には力が入っていた印象のある番組だけに、フォーメーション・ヤマトが『ウルトラマンメビウス』が放映されるまで人口に膾炙しなかったことは実に不可解なものがあった。
何故再利用されなかったか?
無理やり結論付ければ、「ピンポイント攻撃の悲しさ」といったところだろうか?
相手のウィーク・ポイントを突くのは勝負の定石だが、はっきり云って怪獣達の多くは単発の登場で、その時点で未知の存在であることが多い。
サラマンドラにしたところで弱点箇所が異なっていたり、直立型ではなくて四つんばい方だったりすれば、当然攻撃方法も異なっていただろう。
正直云って、『ウルトラマン80』は然程回数を見た方ではなく一体一体の怪獣、一話一話のエピソードも熟知していない方が多い。一度、弱点が分かっている例や、フォーメーション・ヤマト型の攻撃が可能な固体について見直してみたいものである。
実際、前述の『ウルトラマンメビウス』でサラマンドラが登場した際にはとどめこそはウルトラマンメビウスとウルトラマンヒカリが刺したが、咽喉元の再生器官はドキュメントUGMに残されたデータに基づいて、フォーメーション・ヤマトを敢行したGUYSの手で潰されており、、DVD版『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』では完全に単独でGUYSがサラマンドラを倒すことに成功していることからも、回数はともかくとして、記録としてのフォーメーション・ヤマトは重宝されていた、と信じたいところである。
7−2.テレポーテーション
登場話
第14話「テレポーテーション! パリから来た!」
有効性
テレポーテーションとは説明するまでもないが、瞬間移動のことである。離れた場所に瞬時に移動する、ということはそれが装置にしても、超能力にしても大変便利で、電話・メール等により、声・文字・映像が瞬時に送れるだけでもかなり便利であることを考えれば人や物でそれが叶うことは誰しもが一度は憧れた話だろう。
また、悪用されれば危険極まりない能力でもある。
そんな能力をUGMのパリ本部からやってきたイトウ順吉チーフ(大門正明)が披露した。イトウはオオヤマキャップの5年後輩で、UGM強化の為に日本に戻って来て、出迎えに来た猛達の前で飛行機ごとその姿を消し、時空を超えてUGM基地の前に突如現れると、怪しんで集まってくる警備員達(←そりゃそうだろう)を押しのけ、オオヤマに再会したところで、ようやくその着任が確認されたのである。
オオヤマの説明によるとイトウはヨーロッパエリア配属(←見習い時代に単身でエイリアンを捕らえて地球侵略計画を白状させた功績によるものであることが後に明らかになる)前からテレポーテーションの研究を行っており、この時、直前にヨーロッパにて大暴れしていたテレポート怪獣ザルドンの超能力に便乗して猛達の前から姿を消し、UGM基地に現れる、というものだった。
イトウはザルドンの能力を徹底的に分析しており、ザルドンの能力を自らの手段として活かすだけではなく、ザルドンが放つテレポート光線をかわす為の飛行訓練をUGM隊員達に事前に積ませ、ウルトラマン80がサクシウム光線でもって倒すのにも貢献した。
話中にてイトウは説明無しな単独行動や、命令が多いため(本人も「俺はいちいち説明しないからな。」と云って、猛達の疑いの目を責めなかった)、テレポーテーションのシステムに対する詳細は語られずじまいだったが、イトウのテレポーテーションに対する研究の深さ・長さは明らかだった(そうでなければ対処法を知り、訓練させることが出来る筈がない)。
にも関わらず、以後、テレポーテーションは発動されることも無ければ、研究シーンすら出て来ない。如何なる理由によるものだろうか?
何故再利用されなかったか?
作中にて明らかにされているのは、イトウがかなり秘かに研究を行っており、その原因が過去のイトウの失敗(その際に足の骨を折っている)にあることである。
イトウはそれをかなり恥じ、また前述したようにべらべらしゃべるタイプでもない故に確固たるものがない限りテレポーテーション能力について話したがらなかった、と類推される。
イトウが語らないため、多くを推測に依存せざるを得ないが、イトウの見せたテレポーテーションがザルドンあってのものだとすると、ザルドンが倒された後は実践不可能となった、と考えるのが一番簡単な推論である。
だが、解せないのは、ザルドンのテレポート光線をかわす為にマッハ2での垂直降下という難度の高い飛行法のマスターを隊員たちに課していたイトウがその後もテレポーテーションの研究を放棄していたとは考え難く、多用に向けての何らかの動きが見られなくなったことである。
これまた推測に過ぎないが、その理由は、恐らくは安全面ではなかろうか?
イトウは責任感の強い男で、当然、オオヤマとともに隊員達の命を預かっているとの使命感も高い。故に彼は危険な任務を前に隊員達が弛んでいると思えば口喧しくもなるし、余計なことを教えれば隊員達を危険に向かわせかねないと思えば寡黙にもなる。
となると、必然、テレポーテーション研究に確固たる成果を挙げない内は、隊員達が便利な能力に依存する事を戒め、悪用された際の用心の為にもイトウが沈黙を守り続けたのは無理もないだろう。
まあ、それを承知の上で度肝抜く初登場時のインパクトに負けない特殊行動が後々見られないのを惜しむ訳だが。
UGMへの雑感
シルバータイタンは、『ウルトラマン80』並びUGMはもっと勇名を馳せてもいい存在だと思っている。
寡黙ながらオオヤマキャップは実にいい味を出していた。ナンゴウ長官も自ら体当たりで宇宙人に突進するシーンを見せ、女性隊員ただ一人が殉職したのもショッキングでありながら、思い切った展開だった。
更には最終回でタジマ・ハラダが危機一髪に駆けつけてマーゴドンに止めを刺すのに貢献し、多くのウルトラ兄弟がまともな別れを告げられないまま1年近い戦いをともにした仲間達の元から去らなければいけなかったのに対し、ウルトラマン80は帰還前の特別休暇と送別会までプレゼントされている。
再放送や、レンタルビデオ店での陳列が少ないことが訝しく思えて仕方が無い。
そんなUGMに対して惜しまれるのはイトウチーフがUGMとしての見せ場の多くを奪ってしまっていることが挙げられる。
第12話にて矢的猛の教師編が終わり、新シリーズ開始の代表とも云える登場を果たしたイトウは責任感が強い一方で気さくな面を見せたり、怪獣に変えられたり、恋人が異星人だったり、一度殺されて宇宙人の命を貰ったり、とエピソードの多い面を見せてくれる。そして最後にはオオヤマとともにウルトラマン80の正体が猛であることにも気付いていた。
こんな姿を満載していては、イトウがUGM隊員の中でもかなり目立つ存在となるとともに、他のUGM隊員の見せ場を奪ってしまったことも否めない。
それでも倒した怪獣が少ないにもかかわらず、あれだけのいい味を出していたのだからUGMは大したものである。
エラソーなことを主張するほどシルバータイタンの『ウルトラマン80』に対する研究の深さはたいしたものではないが、今後更なる研究を重ねる価値があることと、もっと注目されてしかるべき番組と組織である事を重ねて訴えたい次第である。
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特撮房へ戻る令和三(2021)年六月一一日 最終更新