11−1.大怪人変身能力(仮称)
登場話
第38話「謎!?EP党少年隊」
有効性
天・海・地の石をシャドームーン復活に捧げたたことで大神官としてのエネルギー源を使い果たしたダロム(声:飯塚昭三)・バラオム(高橋利道)・ビシュム(好井ひとみ)は大怪人に生まれ変わり、三葉虫の大怪人ダロム、サーベルタイガーの大怪人バラオム、翼竜の大怪人ビシュムとなった。
シャドームーンを時期創世王候補兼総指揮者に迎えたゴルゴムでは第36話にて三大怪人が街中で大暴れして日本政府に宣戦布告しつつも謀略による日本征服計画を立案し続け、この第38話では早くも従来通りの暗躍組織になり下がっていた。
とはいえ、これはゴルゴムサイドの話。
シャドームーン=秋月信彦(堀内孝人)親友と戦わざるを得なくなった南光太郎(倉田てつを)にとっては、精神的な苦悩もさることながら、幼少の頃より頭もよく、奇抜な考えで周囲を驚かせていた信彦の発想が敵に回ることに不安を禁じ得なかった。
そしてそのシャドームーンはゴルゴムメンバーである代議士・坂田龍三郎(久富惟晴)に30話振りに指示を出し、「地球(=Earth)の平和(=Peace)を願う党」略してEP党を結成させ、徹底的な平和主義を訴え、世界から飢えと争いを撲滅することを唱い、急速に支持者を集めた。
ゆくゆくはEP党に政権を握らせ、そこへシャドームーンが現れて人間を支配する、という2週前に宣戦布告した奴とは思えない気の長い作戦に出た。
勿論このような遠大な計画を、人間界では権力者でも、ゴルゴムでは怪人に憧れる協力者に過ぎない坂田に頭を張らせたりはしない。
坂田は表の党首で、それに近侍する青年に化けて指揮を執るようにシャドームーンに命ぜられたのは大怪人バラオムであった。
精悍そうな青年に化けたバラオムに対し、シャドームーンは、大怪人の変身能力(以下、便宜上、「大怪人変身能力」と表記)は仮面ライダーBlackのマルチアイをもってしても看破されることはないので、その能力を活かして陣頭指揮を執るよう伝えた。
仮面ライダーBlackのマルチアイはその能力源を生命の石・キングストーンに持ち、望遠・視界拡大・暗視の能力を有し、敵の弱点や行動パターンを看破してきたという優れた能力だが、このマルチアイをもってしても大怪人変身能力は看破出来ないというのである。
実際、バラオムはEP党と共にボランティア活動に勤しむ少年達の先頭に立ち、EP党の正体を知る1人の少年に党員達が詰め寄った際も、光太郎の前で、すべての暴力を否定するEP党が悪口を云われたぐらいで喧嘩に及びかけたことを叱責し、少年に白々しく、「済まなかったな、怪我は無かったか?」と詫びていたが、光太郎には青年の言動を訝しがりつつも、それがバラオムであることに気付いている様子はなかった(この第38話までに光太郎とバラオムは何度も顔を合わせている)。
結局、少年の証言からEP党メディカルセンターにあり、人々の救心力を高めていた素粒子治療装置が、あらゆる難病に効果があるように見えて、その実、繰り返しの治療による副作用が患者を死に至らしめることをしった光太郎は素粒子治療装置破壊の為に Blackに変身して忍び込むも、バラオムと少年党員(正体はネズミ怪人の操るネズミ)によって、悪者に仕立てられたり、少年の仲間の中にいたゴルゴムに通じる者のために危機に陥りかけたり、等の紆余曲折を経て、素粒子治療装置の破壊とネズミ怪人の打倒には成功したが、リーダーが大怪人変身能力によって姿を変えたバラオムであることには気付かずじまいだった。大怪人変身能力はシャドームーンの予測通り、看破されることはなかったのである。
だが、その後、大怪人が指揮した作戦は8つ、はっきりとバラオムが指揮したことが分かっている作戦だけでも2つはあるが、大怪人変身能力は発揮されることはなかった(最後の最後にビシュムが女教師に変身していたが僅かな時間でしかなかった)。
最後にはもう一人の世紀王である仮面ライダーBlackに次々と敗れ去った大怪人が保持していたBlackに勝る機能をもっと活かさなかったことには疑問が残る。
何故再利用されなかったか?
まあ、大怪人が大怪人として活躍する期間が短かったというのもあるし、その後の作戦には怪人の特殊能力(例:ハエ怪人の憑依能力)や特殊兵器(タイムテレポート装置)に依存したものが多く、大怪人変身能力を必要としなかったということが挙げられる。
もう一つにはシャドームーンのワンマン性が挙げられる。
そもそもゴルゴムとは、宇宙制覇を目指す創世王が大神官・怪人達を従え、何万年も侵略を繰り返してきた組織で、仮面ライダーBlackも元は創世王の後を継ぎ候補である世紀王・ブラックサンとして、もう一人の候補者であるシャドームーンとともに改造された存在である。
その運命の皇子として選ばれたのが同じ日食の日に生まれた南光太郎と秋月信彦だった訳だが、それが為に大怪人達はシャドームーンが覚醒しない内は大神官として彼を呼び捨てにしていたが、覚醒するや慇懃になった(笑)。
そしてシャドームーンは当然のように彼等の絶対者として振舞った。それに伴い、作戦の多くはシャドームーンが怪人達の能力を考慮して立案した。例外は第44話で、怪人達を頼りにならないとして自ら遂行に当たった時ぐらいである。
まあ、逆を云えばせっかくの能力を活かさなかったその姿勢がゴルゴムの敗因だったと云えるし、創世王の寿命が迫る切羽詰った状況下と、その焦りから来る自滅的展開を見ても、悪とは滅びる運命にあることがよく分かる。
11−2.EP党
登場話
第38話「謎!?EP党少年隊」
有効性
前述した大怪人変身能力以上の何物として、実際に仮面ライダーBlack=南光太郎にかなりの苦渋を飲ませたのがこのEP党である。
名前の通り、E(=地球)とP(=平和)を訴え、ボランティア活動にも勤しむクリーンなイメージが多くの支持者を得ていた上に、素粒子治療装置(副作用付き)が一時的に難病治療に効果を見せていたことから救世主の如く崇められ、副作用にしたところで、それを破壊しようとする仮面ライダーBlackの評判を貶める成果まで上げた。
これまた前述したように素粒子治療装置は破壊され、EP党のボランティア少年に扮する配下を率いるネズミ怪人は倒せたものの、EP党そのものは壊滅に至らなかった(というより話題にも登らなかった−笑)。
再登場しなかったことから滅びたとの見方もできなくはないが、EP党の名目上の党首であるゴルゴムメンバーの代議士・坂田龍三郎は、大宮コンツェルンの大宮幸一会長(北見治一)とともにゴルゴムによる宣戦布告前後でもその地位が変わることがないぐらい表の社会に溶け込んでいたので、黒松英臣教授(黒部進)が剣聖ビルゲニア(吉田淳)に殺された際には新聞報道がされていた例からも、EP党や坂田が破滅していれば何がしかの報道は為されていた、とシルバータイタンは考える。
それほどまでにゴルゴムメンバーの一般社会に対する溶け込み振りは見事なのである。
何故再利用されなかったか?
これも上記の大怪人変身能力と被るが、創世王の寿命の前に日本征服と後継者決定が急がれるゴルゴムの政権事情が一度失敗した作戦を続行することをよしとしなかったのではないか?ということが考えられる。
もう1つはゴルゴムメンバーの在り様が考えられる。
存在がはっきりしているゴルゴムメンバーは5人いたが、うち2人は第1話・第2話で命を落とし、実質、黒松教授・大宮会長・坂田代議士の三人舞台となった訳だが、大宮会長にしても1回しか作戦指揮を執らなかった。
必然的に黒松と坂田が二大双璧になるのだが、中途にして殺された黒松に比べて、坂田は実に人間社会にうまく溶け込んでいた。となると、ゴルゴムとしては坂田の存在は日本征服が上手くいかない際の保険の様なものであり、それにともなって、EP党の影もまた薄くなったのではないかと思われる。
ゴルゴムへの雑感
横暴な創世王、その後継候補たる三人の世紀王(ブラックサン・シャドームーン・剣聖ビルゲニア)、万年単位で生きる怪人達、忠誠を誓った人間で構成されるゴルゴムメンバー……ゴルゴムもまた数多くのカラーを持つ存在を活かせたような、活かし切れなかったような組織である。
だが、そのまとまりのなさを含めてゴルゴムである、とシルバータイタンは捉えている。特撮房内の他の作品でも散々こき下ろしたが、シルバータイタンはゴルゴム創世王程、身勝手で横暴な人物(?)を知らない、と思っている。
創世王にとって、世紀王も、大神官も、怪人も、忠誠を誓った人間も、すべては捨て駒でしかなく、その性格を最も色濃く受け継いでいたのがダロムだった。
となるとゴルゴムは他の組織に輪をかけて一度失敗した兵器・人材・手段を見下す組織であったとしても不思議ではない。
人や物の使い様を見れば組織のあり様も類推できるケースも多いが、そういう意味ではゴルゴムは最も滅びるべくして滅びた悪の組織だったかもしれない。勿論その悪の組織としての在り様は『仮面ライダーBlack』を名作とするのに大きく貢献した訳だが。
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特撮房へ戻る令和三(2021)年六月一一日 最終更新