3−1.改造人間分解光線
登場話
第1話「ライダー3号 その名はV3」
有効性
ゲルショッカーの壊滅と共に死んだと見せかけ、自称「最後の組織・デストロン」を編成した首領は世界征服への野望を再燃させつつ、報復と準備を兼ねて仮面ライダー1号・2号を抹殺せんとした。
それは珠純子(小野ひずる)の証言でアジト(放棄済み)に乗り込んできた1号・2号を罠に掛けるもので、その際に使用されたのが改造人間分解光線である。
細長いL字型の3本のパイプの先端についた電球から発せられたその光はライダー1号・2号を行動不能に陥らせ、そのまま照射され続ければ Wライダーの体は跡形もなく消え失せまでに、ネーミング通りに分解されるところだった。
結局は首領の見立てで、後10秒も照射が続けば Wライダーの抹殺に成功していたところを駆けつけた風見志郎によって妨害された。 Wライダーを光線の照射範囲外に押し出すことで、Wライダーは身体の自由を取り戻し、ライダー1号が細身の照射装置にチョップを食らわすや、装置は一瞬にして壊れ、光線の照射も止まった。
だが、 Wライダーを救った志郎は二人を光線の照射範囲外に押し出すことで自身が分解光線の洗礼を浴び、身動きが取れない中でその肉体を著しく破壊(外見は軽い火傷を負った程度にしか見えなかった)され、瀕死の重傷を負った。
自分達を救う為に死に瀕した志郎を救いたい一心で、 Wライダーは彼等が否定した復讐の為ではなく、蘇生の為に志郎の肉体に改造手術を施し、これにより仮面ライダーV3が誕生することとなった訳で、穿った物の見方をすれば改造人間分解光線は V3が生まれるきっかけとなった存在である。
分解直以前まで追い込んだ Wライダーは照射が中断されるや何事もなかったように活動を再開した一方で、生身の風見志郎は一瞬にして瀕死となり、照射が止まった後も容体が変わらなかったのは考えてみりゃ些か不可解ではあるが、少なくとも兵器として申し分のない破壊力を持つこの改造人間分解光線が再利用されなかったのはもっと不可解で、これは道場主自身が『仮面ライダーV3』という番組対して最初に抱いた不可解な点だった。
何故再利用されなかったか?
幾つかの推測が可能である。
推測その1 デストロンは放棄したアジト内に改造人間分解光線の照射装置を Wライダーへの罠として残していた訳だが、後にその場で風見志郎の改造手術が行えるだけの手術用具・改造素材を残していたことから、かなり急な撤退を迫られたと推測できる。
その中には改造人間分解光線の設計図も残されていたのではなかろうか?だとしたらアジト撤退と砲撃を指揮したとみられるハサミジャガーとカメバズーカは処刑ものである……あっ、両名とも程なく死んでるや(笑)。
推測その2 諸刃の剣となることを恐れたのではなかろうか?あの Wライダーが志郎の助け無くばほぼ確実に死に追いやられているのである。当然のことながら、改造人間分解光線の機密がライダー陣営に洩れれば、それはデストロンの機械合成改造人間や結託部族を分解する恐るべき兵器となるのである。 日本の警察は動かずともインターポール(ICPO・国際警察機構)は動いていたのだから。
首領の思惑通りに最初の使用で Wライダーを始末出来ていれば、その後のカメバズーカと共に洋上のキノコ雲と消えたのが事実だったなら、改造人間分解光線はその役目を終え、むしろ存在することが危険だったと考えられる。 まあ、皮肉にも Wライダー抹殺は失敗しており、ライダーV3という最大の敵まで生んでしまった訳だが。
推測その3 早過ぎた口封じがあったのではなかろうか?
ゲルショッカーを Wライダーとその仲間に壊滅させられた苦い経験を持つ首領はデストロン編成にあたって徹底した機密保持に努めていた(務め過ぎて風見一家と Wライダーの介入を招いた訳だが)。
実際、ハサミジャガーに人が殺されるのを目撃した志郎はその直後を含め、5度に渡って命を狙われ、その渦中で最愛の両親と妹を眼前で殺されたのである。
当然、ハサミジャガーと戦闘員を目撃した珠純子も口封じ対象だったし、第3話では秘密裏にある病院の乗っ取りを成功させており、最後の一人となった院長が気付いていない有様だった。
となると、改造人間分解光線並びに照射装置の開発者はその役目を終えた時点で消されていてもおかしくはない。
と、まあ……上記3点により改造人間分解光線が再登場の道を断たれたことが予想できるのだが、個人的には、「物凄く恐ろしい武器を擁する組織との戦いが待っている!」と興奮したドキドキ感を返せと云いたい(苦笑)。
3−2.怪しい指輪
登場話
第12話「純子が怪人の花嫁に!?」
有効性
単純に考えて、指輪一つを指に填めるだけで人の容姿と性格を変えてしまうのだから、後の『仮面ライダースーパー1』に登場したドグマ王国の服従カプセルもびっくりである。
事の起こりは珠純子に一目惚れしたストーカーの存在である。
『仮面ライダーV3』が放映された当時(1973〜74年)、ストーカーという言葉はなかったが、第11話より登場した、純子に一目惚れしたチンピラの行為は完全なストーカー行為で、風見志郎がライダーV3に変身するのを目撃したことから志郎の正体を純子にばらして純子を我が物にせんとする悪辣振りをデストロンに買われた彼はドリルモグラに改造された。
悪としての在り様が純子への歪んだ愛情にある為、ドリルモグラの純子を我が物にせんとする意志は些かも衰えず、純子を拉致し、純子に似せたダミー人形(爆薬入り)で V3を爆殺した(と思いこんだ)。
これで純子を我が物にできる、と喜び勇んだドリルモグラは赤一色のウェディングドレスを着せた純子との悪趣味な形式の結婚式を挙げんとする。
その時に婚約指輪として犬神博士から供されたのが件の指輪である(正式名称不明)。
無理矢理とは云え、愛しい人との晴れの場にいるドリルモグラと怯える純子に、犬神博士は指輪に関する説明を行った。
その内容は「この指輪を填めれば、お前は嫌でも、姿も心も醜いデストロンとなるのだ」であった。
デストロンの一員となって日の浅いドリルモグラがこの指輪を知っていたか?或いは醜いことを是とする脳改造が施されていたかは今となっては知る由もない。 しかし、殆ど一目惚れから純子をつけ回すようになったストーカーの基本性格がドリルモグラの本質である。 となると、純子の容姿を「美」と見ていた、ドリルモグラ=ストーカーは念願叶って彼女を伴侶とするに当たって、「姿も心も醜いデストロン」で良かったのだろうか?
ともあれ、ドリルモグラの価値観はどうあれ、指輪そのものは極めて便利なアイテムである。肉体改造やマインドコントロールに伴う資材や労力を考えると量産化してデストロンが拉致した多くの人々に装着させれば、たちまち一軍を築くことも容易だったのだから。
何故再利用されなかったか?
まずは「結果を出さなかった。」ということが考えられるだろう。姿ばかりか心まで醜くしてしまう指輪の装着を珠純子は当然のように拒絶した。
そして最終的には仮面ライダーV3の手で結婚式は妨害されドリルモグラは敗死し、純子は解放された。つまりは犬神博士の指輪が全く効果のないものだったとしても効果を知る物も場も対象も失われたので、結果論は永遠に語ることが出来ない。
となると、失敗は、人材であれ、作戦であれ、武器であれ、一顧だにしなくなる(と云い切るには語弊があるが)悪の組織の傾向から云って余り重視されなかったのは無理もない気がする。
加えて、物が指輪だけに、指から外すか、外さずとも指や腕を斬り落とせば効果が消滅する可能性がある。そう、あたかも改造人間が死ねば改造人間によって病気にさせられた人たちが一斉に全快するように。
後は指輪に宝石でもついていればコスト面で割に合わなかったか、指輪を下手に研究されればデストロンのマインドコントロールの機密が漏れることが考えられただろう。
理由としてはそんなところだろうか?
3−3.デストロンガス
登場話
第43話「敵か、味方か? 謎のライダーマン」
有効性
ヨロイ元帥 (中村文弥)に裏切者の濡れ衣を着せられ、硫酸のプールで処刑されかけた結城丈二 (山口暁)は弟子達の助けで九死に一生を得た。
勿論この時、硫酸で解かされた右腕にアタッチメントが装着出来るように改造手術を受けてライダーマンが誕生した訳だが、結城丈二追討にヨロイ元帥はヨロイ一族の一人・カマクビガメを放った。
そしてそのカマクビガメの使い魔・「小亀供」が放つのがデストロンガスである。
番組も終盤に来ながら何とも安直なネーミングだが、ガスを浴びた結城での弟子達を窒息・悶絶させて死に至らしめた後に遺体を発火させる、という対象者の殺害と遺体処理を一気にこなすとは恐ろしい毒ガスである。
デストロンガスは、ヨロイ元帥は以下のカマクビガメが発した訳だが、毒ガスと云えばデストロンには細菌テロや毒ガステロを得意としたドクトルG (仙波丈太郎)の方が名高い。
それでなくてもガスの成分は作戦内容を決めると云っても過言ではないから、ガスには固有名詞がつくことが多かった(例:ギラードガンマ・殺人光化学スモッグ)。
それをデストロンガスという何のひねりもないネーミングのガスが上記の性能から行って、デストロンが所有する毒ガス兵器には背筋凍る物があると共に、本当に有効利用する気があるのかかなり疑問が持取れる(苦笑)。
何故再利用されなかったか?
「結果がすべてだ!」………これは道場主がかつて勤めていたソフト会社の横暴社長の台詞………じゃなくて、ヨロイ元帥の台詞である。
まあ、横暴かどうかはさておき、組織のトップやそれなりに責任ある立場の者は目に見える結果を出さなくてはならないのは恒常的な話である。
早い話、 V3・ライダーマンに敗れたカマクビガメの武器を一顧だにしなくなった可能性は高い。 ただ、単純な失敗作の無視や機密保持を重視した単発使用以外に、シルバータイタンが建てた一つの仮説を紹介したい。
それはヨロイ元帥の野望である。
もともとあからさまな卑劣な性格や保身振りを見てもヨロイ元帥がデストロン首領の忠実な部下とは云い難く、『仮面ライダーSPIRITS』によると自らが敗れた後の予備の肉体を用意する程の用意周到ぶりで、凡そ彼はデストロン首領の忠実な部下とは云い難い。
そして彼はデストロン滅亡後に結城丈二の優れた脳髄を手土産に次なる組織(おそらくは GOD )に参入することを画策していた。
あれほど憎しみ抜いた結城の脳髄を手土産に、である。
早い話、ヨロイ元帥にとって大切なのは自身の命と権力である。
その為に必要とあれば武器や機密を惜しみもすれば、独占も図る、すべては自分の為だけに。
であれば、デストロンガスもまたカマクビガメの敗死を機に破棄したように見せて、いつか自分が別組織で使う時の為に隠匿した、というのは考えられないだろうか?
デストロンへの雑感
デストロンという組織を考えた時に、四者四様の幹部の在り様が真っ先に思い浮かぶ。殊に第27話・第28話のショッカー・ゲルショッカーの再生幹部であるゾル大佐・死神博士 (天本英世)・地獄大使 (潮健児)・ブラック将軍とドクトルG の我の張り方は印象的だ。
デストロン四人の幹部の内、三人は結託部族の長で、直系とは云い難く、ツバサ大僧正 (富士乃幸夫)は明らかにヨロイ元帥とは面識がなかった。
となると幹部同士に連携や提携は考え難く、デストロン首領に対する忠誠にも一抹の疑問が見られ、となると、己が部族が所有する武器・兵器に対する機密保持が他の組織以上に重視されてもおかしくなく、再利用の有無にも必然的に慎重さが求められる。
最新武器が再利用されない背景に、機密保持や量産化の困難性への推測は何度か触れて来たが、幹部の有り様を咥えて考えるのも面白いだろう。
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