4−1.アポロン宮殿
登場話
第15話「ゴッド秘密基地!Xライダー潜入す!!」・第16話「逆襲アポロガイスト!Xライダー危うし!!」
有効性
長い仮面ライダーシリーズの歴史にあって、悪の組織の秘密基地についてこれほど詳細に語られた例は勿論初めてのことで、回数自体が極少である。
城南大学教授にして電子物理学の権威である宮本博士(灰地順)はGODから自らの研究の為の資金提供を受け、逆にその研究成果を提供している、という、謂わばGODの契約メンバーとも云える存在である (その証拠に、アポロン宮殿には目隠しされた状態で案内されていた)。
ある偶然からそれを知った神敬介 (速水亮)は宮本に変装し、神話怪人・死神クロノス (沼田耀一)の案内で、 GOD 秘密基地であるアポロン宮殿に案内された。勿論この潜入がばれていたのはお約束である(笑)。
クロノス並びにGOD総司令(声:阪脩)の案内によると、このアポロン宮殿は単なる秘密基地に留まらない。
GOD秘密警察第一室長・アポロガイスト (打田康比古)しか面会が許されないとはいえ、GOD総司令が来ることもあり、いざとなれば本拠地にもなり得る。
そしてそれを証明するかのように、宮殿内には、世界中のあらゆる格闘術・武術・スポーツのチャンピオンクラスを目指して特訓が為されるトレーニングジムがあり、そこで鍛えられたSPが務める警備課、通信衛星を通して地球上のいかなる場所とも交信可能な通信課(アポロガイストはGODが独自のTVチャンネルを持っていることを披露して組織力を誇示した恫喝を行ったことがある)、更には技術課・人事課・車両課・作戦課・医務局が揃っており、更にはこの基地内において、アポロガイストの再生手術が行われており、改造手術を初めとする様々な実験を行うにも充分な設備が整えられていたと見られる。
そもそもが客員メンバーでもある宮本が病院院長でもある川上博士(三上耕)とともにアポロン宮殿に招聘されたのはそのためだった。
各課の充実度だけではなく、防御面でも優れていた。
当初、宮本に変装した敬介は川上(何故か後に「早田」と呼ばれていましたが、些細な事は忘れましょう―笑)と共に送迎の車内で目隠しをされ、宮殿近くと思われるどこぞの山奥に来た所で、宮殿が人工の霧で隠匿されているのを見せられた。
更にはこのアポロン宮殿が地下200メートルの深さに存在し、クロノス曰く、「原水爆撃ち込まれたって、ビクともせんわい!」とのことだった。
『仮面ライダーX』が放映されていた昭和40年代、世界は東西冷戦の真っただ中で、地球を滅ぼす要因の筆頭は核戦争だった。後に『仮面ライダーアマゾン』でもガランダー帝国がヘリウム爆弾による被爆の及ばない地下に基地を作っていたことからも、当時の世相に「地下深くこそ安全」との考えがあったことが見て取れる。
そして、アポロン宮殿が地下にあったことは、同時に基地内からの脱出を極めて困難なものとしていた。つまり、宮殿は牢獄の役割をも果たしていたのである。
実際、敬介は戦闘工作員との戦いさえ極力避けて逃げ回り、最後には連絡員に変装して脱出した。推測でしかないが、アポロン宮殿の規模の前に、白兵戦で時間が取られれば増援が駆け付け、更に脱出が困難になると踏んだのだろう(一時的に宮殿外に出た時はクロノスや再生アポロガイストと戦っている)。
至れり尽くせりとも云える秘密基地の内部を、GOD総司令は宮本博士が敬介の変装であることを承知の上で案内した。さすがに敬介もこれを訝しがって、GOD総司令にその真意を問うている。
つまりこれは敬介が驚嘆する程、このアポロン宮殿が秘密基地として優れていたことを証明しているとも云える。
そしてGOD総司令の真意はアポロン宮殿の優秀さ及び、そのような宮殿が世界中に幾つもある GODの組織力を誇示することで仮面ライダーX =神敬介の降服を促すのが目的だった。
降服勧告そのものは敬介にマッハで断られたから(笑)、目の付けどころは間違っていたが、アポロン宮殿がGOD総司令にとって、相手を屈服せしめられるだけの恫喝材料になり得る、と見られていた点には注目したい。
すくなくとも、踏み込まれたら即爆破するような行き当たりばったりの仮住まい的なものでなかったのは間違いなく、それだけに後々このアポロン宮殿を舞台としたシーンが見られなかったのが残念である。
何故再利用されなかったか?
一言でいうなら「路線変更」だろう。番組的にも組織的にも。
アポロン宮殿は再登場しなかったが、厳密にはアポロガイスト最後の出演となった第21話でアポロン弟二宮殿なるものが登場しており、アポロガイストが射撃訓練を積んだり、二人の女子大生チコ(小板チサ子)・マコ(早田みゆき)を人質にして呼び寄せたXライダーとの決戦場としたりして、XライダーVSGOD神話怪人軍団シリーズの終幕を飾っていた。
つまり、第15話・第16話で登場した最初のアポロン宮殿はXライダーに所在が知られたことによって放棄されたとしても、GOD総司令が豪語していたように、アポロン宮殿は他の場所にも存在し、その中にあってアポロガイストがGOD秘密警察と再生怪人の指揮を執っていた訳だから、この時点ではアポロン宮殿の存在は色褪せていないが、第22話よりキングダーク(声:和田和夫)率いるGOD悪人軍団との戦いに入るや、アポロン宮殿の「ア」の字も出て来なくなるのである。
もっと本質を突くなら、アポロン宮殿どころではない。再生怪人として若干の再登場を見せたアキレス・サラマンドラを除けば、第22話以降のGODに神話怪人軍団の影はなく、アポロガイストの名も、GOD秘密警察の名も出て来ず(ヒトデヒットラーが「吾輩の秘密警察」を率いていたが、これはヒトラーが指揮したナチスの秘密警察=ゲシュタポのパクリだろう)、GOD総司令の存在さえあやふやなものとり、キングダークの中にいた呪博士がGOD総司令と同一人物だったのかどうかも結論が出ない(多くのマニアは別人としている)。
つまり同じGODにあっても、神話怪人軍団と悪人軍団が同一組織化にある全く別個の下部組織にさえ見えるのである。
もしこの推測が正しいのなら、GODの目的である日本壊滅の指揮権が神話怪人軍団から悪人軍団に委譲されたこととなり、成程、神話怪人軍団の基地にして、ギリシャ神話に因むアポロン宮殿 (アポロンはギリシャ神話に登場する太陽神である)に出番が訪れなくなったのも無理はない。
シリーズ初の巨体幹部であるキングダークは、当初は頬杖をついた状態で、殆ど基地内で動かなかった。つまりはキングダークの巨体が隠れるだけのスペースがあり、そこにキングダークが座せば(寝転がれば?)、そこが「基地」だった。
別の視点で見るなら、キングダークそのものが基地でもある。その巨大な体内には頭脳にして正体である呪博士だけではなく、サソリジェロニモJr や戦闘工作員も潜んでいたし、侵入者迎撃用のトラップや、待ち伏せ場所も設けられてあった。
話を統合すると、キングダークの巨体そのもの並びに巨体の潜む場所自体が基地となり、かつてアポロガイストが監視した神話怪人軍団は日本壊滅計画に携わらなくなったことからアポロン宮殿には前線基地としての役割を振られなくなった。
そうなると、アポロン宮殿は「使われなくなった」のではなく、「出番が回ってこなくなった」というのが正しいのではないだろうか?
4−2.拷問器具(仮称)
登場話
第26話「地獄の独裁者ヒトデヒットラー!!」
有効性
「拷問器具(仮称)」とあるように、ユナイテッド工科大学教授・江崎博士(中井啓輔)(←多分、ノーベル賞の江崎玲於奈氏をパクったな)とその夫人(真木沙織)の身代わりを務めたヒッピー(中井啓輔&真木沙織 勿論二役)に、神敬介達のたくらみを白状させるのに使われた。
『仮面ライダーX』の後半戦、Xライダーとキングダーク率いるGODは南原総一郎博士が発明した極分子復元装置=RS装置の9つに裂かれた設計図を求めての奪い合いを展開するのだが、南原博士は殺される前に9つに裂いた設計図を自らの親友・教え子である科学者達に託した。
当然、それらの人物はGODの狙う所となり、設計図と託された科学者達を助ける為にた敬介達も科学者達と接触を図り、アメリカにいる江崎博士をGODの魔手から守る為に、ヒッピーの男女を雇って、江崎夫妻に化けさせ、江川夫妻はヒッピーの振りをした。
日本に帰国した偽の江崎博士はマスコミに化けたヒトデヒットラーとその配下である秘密警察に拉致されるが、チコ・マコによって帰国祝いに渡された花束の中の発信機を頼りに敬介が追跡し、 GOD のアジトが突き止められる算段となっていたが、た敬介は撒かれた上に、江崎夫妻が偽者であることはキングダークによって見抜かれていた(秘密警察を率いるヒトデヒットラーは分かってなかった−笑)。
キングダークの叱責と共に拉致してきたカップルが偽者と知ったヒトデヒットラーは偽物夫婦の内、夫人役の女性を拷問器具にかけた。
拷問器具はマッサージチェアーに似た椅子に拘束枷と2本の螺旋コードが繋がれたヘルメットを被せて被験者を拘束するタイプのものである。
女性の悲鳴と、ヒトデヒットラーの「これ以上やると死んでしまう」という台詞、二人を救出した敬介の「重体で病院へ」という台詞から分析すると、螺旋コードから出る電気または音波で激痛及び肉体的損傷を与え、痛みに耐えかねて白状させるタイプと取れる(もっとも、男性ヒッピーは拷問器具に掛けられていないことから、二人を重体に追いやったのは他の手段である可能性も高い)。
更に、激痛を与えた女性のみならず、その悶絶ぶりを見せつけることで、自らがかけられた際の痛みに対する恐怖や、女性を死なせかねない恐怖から、男性ヒッピーの口を割らせる効果もあった。
ある意味一石二鳥である。
仕掛け及び目的は単純なのだし、極めてシンプルな作りと目的の長いライダー史において、ただ白状させるだけならもっと使い勝手のいい催眠術や、自白剤や、脅迫手段が取られた。
それでもシルバータイタンがこの拷問器具に注目したのには2つの要因がある。
1つはキングダークの情報収集能力の限界を補っているところである。
Xライダー達とGODのRS装置設計図争奪戦は謀略戦の連続でもあり、GOD悪人軍団の改造人間達は呆れる程何度も偽物の設計図を掴まされてはキングダークに叱責されていた。
そのキングダークはその都度、褒めると見せかけてその褒め言葉を即座に翻して悪人怪人を怒鳴りつけるのだが、アジト内からほとんど動かない割には数々の偽物や謀略を見抜いた情報収集能力は大したものだと思っている。この話でも江崎夫妻が米国内にてヒッピーと入れ替わったことを知っていたが、入れ替わりをしながら本物の行方を知らなかったり、立花藤兵衛(小林昭二)達と合流した本物の行方を追っていなかったり、と不可解なことをしている (笑)。
そこでいきおい、この拷問器具の出番が巡ってきたわけである。
有り触れた装置かも知れないが、中途半端に優れたキングダークの情報収集能力を補っている点は興味深く、その後9話あれば充分再登場できそうなものだったのが、単発で終わったのをシルバータイタンは妙に惜しむのである。
もう1つは拷問にかけられた−正確には相方が拷問にかけられた姿に恐怖したヒッピーが文字通り死にもの狂いで白状したことである。
否、白状というのは少々異なるかもしれないが、拷問器具に恐怖したヒッピーは「多分…。」と前置きした上で、本物の江崎夫妻が舞鶴海岸に潜伏する意を漏らしていたことを喋った。
ここから先は推測でしかないが、シルバータイタンはこの舞鶴潜伏情報は江崎夫妻が何気なくぽそっと漏らしたことをヒッピーが無意識の内に覚えていたものと思われる。敬介達の最大の目的は江崎夫妻の安全だから、ヒッピーに大切な潜伏先を告げる必要はない。
勿論、ヒッピー達を身代わりにするとはいえ、その命はちゃんと守るつもりでいたのだから、いざ殺されそうなった場合を想定して博士夫妻の潜伏先を教えた可能性も皆無ではないが、当初は発信機を頼りに尾行していたから、敬介に二人の身を守り抜く自信があればやはり教える必要はない(結果的には撒かれたが)。
となると、ヒッピーは本来知らない筈のこと、または僅かな偶然としてしか知り得なかったことを無理矢理記憶の彼方から引っ張り出して拷問からの解放を請うた訳だから、そこまでの恐怖を与え、相手を必死にならしめたこの拷問器具はかなり優れた装置ではないか、と考える。
余談だが、シルバータイタンは時代劇でも、大河ドラマでも、漫画でも拷問シーンは大嫌いであり、あってはいけないものと考えている。史実でも、冤罪問題もそうだし、大伴古麻呂や小林多喜二のように白状(?)させる前に死に至らしめる、といった本末転倒な例も数多い。
それでも明らかに黒でありながら人質の監禁場所や爆弾を仕掛けた在り処にふてぶてしい態度で黙秘する容疑者を刑事ドラマで観た際にはTV画面に向かって「拷問にかけてしまえ!」と叫んでしまったりするのだから、人間の思考は勝手なものである(苦笑)。
何故再利用されなかったか?
単純に考えて地味過ぎたことだろうか?斬新なネーミングがある訳でもなく、構造もシンプルで、目的も機能も拷問器具の域を出るものではない。
前述したように、秘密を白状させる手段としては長いライダー史において、もっと使い勝手のいい催眠術や、自白剤や、脅迫手段が幾つも登場したし、シルバータイタン自身何故にここまでこの装置に注目したのか良く分からない程地味な存在である。
だが、1本のナイフ、10メートルほどのロープ、1壺の油、水筒1本分の水、といった風に、本当に便利なものとは有り触れたものであることに触れておきたい。正確には便利だからこそ、在り触れるようになったのである。なかなか常日頃は忘れがちなことなのだが。
GODへの雑感
そもそも悪の秘密結社とは謎の存在なのだが、それを考慮に入れてもこのGovernment Of Darkness=GOD機関は謎が多い。
同じGODの名と、同じ戦闘工作員という共通項がなければ、神話怪人軍団と悪人軍団は丸で別組織である。
目的も、神話怪人軍団が東西両大国の首脳が秘かに手を組んで日本転覆を狙った尖兵としての破壊工作を担う団体(その割には世界中に基地があった訳だが)なのに対して、悪人軍団はRS装置争奪を制した世界の破壊を目指す者となっている。
前半のGOD総司令と、最終回で「ワシがGODだ!」と云っていた呪博士が同一人物であるかもはっきりしない(拙サイトで何回か触れていますが、多くのマニアが同一人物説に否定的です)。
『仮面ライダーストロンガー』の最終回によればGODもまたショッカーからデルザーまでの組織同様、1人の首領に率いられた悪の組織の1つとなるが、となると東西両大国首脳との関連もまたうやむやである(というか触れられないだろうな)。
話が横道にそれ過ぎたが、上記から推測して、GODとは改造人間(ギリシャ神話をモチーフとした怪人・史上の悪人の子孫と動物の融合改造)・組織体制(神話怪人軍団と悪人軍団の二元制)・内偵機能(GOD秘密警察)等において様々な試みが為された実験的な組織と見られなくもない。
成程、それでは便利な設備や道具の再利用よりも、新規開発に力がそそがれたのは分らないでもない。だが、それならそれで後々の組織にそれを活かして欲しかったと思われてならない(かなり無理を云っているのは承知の上だが)。
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