5−1.作戦本部
登場話
第17話「富士山大爆発?東京フライパン大作戦!」
有効性
ライダーマニアにとって、一番有名なガランダー帝国の作戦がサブタイトルにも使われているこの「東京フライパン作戦」かもしれない。
何せ、三原山(活火山)の溶岩を富士山(休火山)に誘導して、富士山を噴火させ、その溶岩を予め掘り抜いた東京地下に誘導し、地上のアスファルトをもって東京都をフライパン化し、地上の人々を熱でのた打ち回らせる、という作戦は『仮面ライダーアマゾン』のみならず、ライダー史上で見ても十指に入る名作戦(迷作戦?)である。
だが、この作戦を考案したのは、ガランダー帝国の作戦本部ではなく、ガマ獣人である。そう、実の所、作戦本部は何もせず、ただ、役立たずの烙印を押されてゼロ大帝(中田博久)に処刑される為だけに出て来たのである。謂わば、「有効性」というより、「同情」だな、こりゃ(苦笑)。
ガランダー帝国は、その下部組織であるゲドンが、仮面ライダーアマゾンの持つギギの腕輪奪取に執着し、ただの襲撃者集団になり下がっていたのに対し、ギギの腕輪奪取と並行して数々の世界征服作戦を企画立案・実践した。
ハチ獣人による「子供達の集団拉致と洗脳化」、ゲンゴロウ獣人による「東京火の海作戦」、前述の「東京フライパン作戦」、ハンミョウ獣人の「大地震作戦」、フクロウ獣人の「地下鉄大洪水作戦」、キノコ獣人の「東京カビ全滅作戦」、イソギンチャク獣人の「人食い人間大作戦」、モモンガー獣人の「東京大殺人作戦」、オオサンショウウオ獣人の「ヘリウム爆弾による東京壊滅作戦」、と実際に成功していれば甚大な被害が、否、成功せずとも一部大きな被害をもたらした、斬新且つ効果的な作戦が少なくない(世界征服計画の割に局地的な作戦が多い気がするのはシルバータイタンだけ?)。
ゆえにたった2回作戦を担当したであろう後に、提出した世界征服計画を、「研究不足、面白くない、滅んだゲドンと同じ」という、理不尽かつコミカルな理由で却下された揚句に全員処刑された作戦本部付きの黒ジューシャ達に同情するのである。
ここで視点を変えて注目したいのが、「東京フライパン作戦」の立案者がガマ獣人であることははっきりしているが、その他の作戦が何者によって考案されたのかははっきりしていない。
「たった2回」と前述したのも、作戦本部付の黒ジューシャ達が第17話の冒頭で処刑され、それ以前にガランダー帝国が世界征服に向けて動いたのが、第15話と第16話のみだったので、「2回」と推測したに過ぎない。だが、第15話での子供の利用は第19話にも見られ、拉致や洗脳や強制労働を基調としたのは第15話、第17話、第19話、第21話で見られ、炎をエンブレムにするぐらい「火」にこだわった作戦は第16話、第17話に見られ、第20話、第22話、第24話の大量殺戮はシャレになっておらず、殊に第20話ではモグラ獣人を始め、団地一つの住人が風邪をひいていた赤ちゃんを除いて全員犠牲になっている。
つまり、ガランダー帝国の作戦にはたった10話の中にいくつかの似たパターンが踏襲され続けたことはそれこそ「火」を見るより明らかで、そうなると益々作戦本部の存在意義は不透明なものになってゆく。
仮説に過ぎないが、もし、最初の2つの作戦が作戦本部によって考案されたものだとしたら、その後の作戦は、「東京フライパン作戦」でガマ獣人が考案したように作戦ごとに獣人達が考案したにしても、新たな作戦本部が設置されて新メンバーとなる黒ジューシャ達が考案したにしても、作戦本部の考えはある程度踏襲されていたことになる。
となると、いずれにしても、ゼロ大帝が彼等を処刑した理由もますます理不尽なものとなる。ま、ゼロ大帝が誰かを処刑する理由にはかなり気分的なものや、その場で思いついた見せしめによるものが多いのだが。
ともあれ、出番が短く、その実態も能力もイマイチ不透明ながら、ガランダー帝国の作戦立案の基礎を作ったと推測されることや、その最後に対する同情から取り上げさせて頂いた次第である。
何故再利用されなかったか?
単純に考えるなら、全員が処刑されたからだろう(苦笑)。
或いは、ガマ獣人の立案が面白過ぎて、ゼロ大帝が作戦本部に対して再設置する必要性を見出さなかったとしたら、再利用もへったくれもなかっただろう。
付け加えるなら、人員のなり手もそうはいなかったであろうことが考えられる。何せゼロ大帝の処刑はかなり気分的だ。ガランダー帝国内で生き延びる為のコツの1つは目立たないことであるのは充分考えられる。話が脇に逸れるが、かつて道場主は「かつて刑務所にて服役していた。」、「ワタシノ国ノワタシノ育ッタ街ハトテモ治安ガ悪カッタデース。」などと自称する人達から、閉鎖的で物騒な社会では目立たない事が生き延びるコツである、と教えられた事がある。確かに道場主も喧嘩が弱いくせに目立つ生徒だった故にイジメの標的にされた過去がある。
となると、黒ジューシャ達の多くは目立つ事を好まなかっただろう。作戦本部付の黒ジューシャ達が処刑された直後に、「東京フライパン作戦」を進言しようとしたガマ獣人に、ゼロ大帝が開口一番に行った台詞は「お前も死にたいのか?」である。
うむ、やはり作戦本部は再建されなかった、と見るのが妥当だな(自己完結)。
5−2.インカリヤ
登場話
第22話「インカ人形 大東京全滅の日!?」
有効性
名前からして古代インカ帝国にちなむもの、と容易に想像できる猛毒インカリヤは空気に触れると青酸ガスに変わる、という性質を持ち、その性能は「耳かき一杯の量で村一つが全滅する」と作中で説明されていた。
当然のことながら、猛毒物質としての殺傷能力も凄まじければ、空気に触れれば、という毒性噴出要因も特筆に値する。
勿論作戦そのものは仮面ライダーアマゾン達によって阻止されたのだが、仮に実践されていた場合、当局は、犠牲者達は青酸ガスによって毒死させられた、と判断するだろうから、インカリヤやガランダー帝国に追及の手が伸びるのには時間もかかるだろう。もっとも、アマゾン(岡崎徹)達にはすぐ分かるだろうけれど。
実際、「作戦本部」の項目でも触れたが、ガランダー帝国の作戦そのものは歴代悪の組織の中でも群を抜いて恐ろしいものが少なくない。『仮面ライダーアマゾン』という番組自体が作品の質とは全く無関係な事情で短期放映に終わったことや、基本的に獣人がギギの腕輪を持つアマゾンライダーより明らかに格下の戦闘能力しか有しなかったことや、最終回におけるゼロ大帝の弱さ(笑)からガランダー帝国は過小評価されている、とシルバータイタンは考えている。
作中の説明で、「メキシコがかつてスペインとの戦争の際に開発したものの結局使わなかった」とされていたのも、開発者がその運用を躊躇うほどの殺傷能力及び、取り扱いを間違えた際の危険の大きさも容易に類推される。
余談になるが、上記の説明から一転、注目したい事がある。
それはガランダー帝国とゲドンの関係である。ゲドンの首領である十面鬼ゴルゴスはその身にも、組織にも南米の存在した古代インカの化学をふんだんに利用していた。それに対してガランダー帝国の前身は古代パルティア王朝で、それが存在したのは中東である。
ガランダー帝国とゲドンの関係は最終回で少し、ゼロ大帝 (全能の支配者の正体の方)の口から触れられていただけだったが、ジューシャや獣人を率いて以外に一見関係なさそう出自の異なる組織に見えて、ガランダー帝国が古代インカ化学の殺人兵器を入手していた点に秘かにゲドンとの繋がりを観たのはシルバータイタンだけだろうか?
何故再利用されなかったか?
いや〜再利用と云っても、この後2回(ストーリー的には1回)で終わっているからねぇ〜、と云ってしまえばすべては終わる(苦笑)。
真面目に考えれば下記の2点が挙げられる。
一点は、作戦遂行の責任者であるモモンガー獣人及び、作戦に従事した者達に対する評価である。モモンガー獣人自身は、インカリヤを取り返す際に、状況の展開を読んで奪還から、毒ガス発動に切り替える臨機応変さを持つものの、毒ガステロに大切な隠密性を決定的に欠いている。
第22話の冒頭でモモンガー獣人はいきなり猟師に猟銃で撃たれ、自分を撃った猟師に対して、「狙うに事欠いて、このモモンガー獣人様を撃つとはー!!」と叫んで殺害したが、撃って下さいと云わんばかりの的の大きさと無防備な飛行スタイルは『怪獣VOW』でも語られていたが、かようにこの獣人は隠密行動に向いていない。
また、モモンガー獣人がインカリヤをアマゾンから取り戻す羽目に陥ったのも、メキシコからインカリヤを持ってきた運び屋が、途中でインカリヤを隠したインカ人形を、同じ人形を持った人とぶつかって取り落とした際に間違った方を持って帰る、という特撮界にありがちな悪の組織のケアレスミスによるもので、こんな奴等が遂行して失敗した作戦なら、ゼロ大帝も二度やろうとは思わなかったことだろう(笑)。
もう一点は、既にこの作戦の翌週には原水爆を上回るヘリウム爆弾によるテロ作戦が待っていたことだろう。ヘリウム爆弾の性能は最終回に相応しく、『仮面ライダーV3』に出て来たプルトンロケット、『仮面ライダー(スカイライダー)』に出て来た酸素破壊爆弾と比べての遜色がない。
成程、ここまでの武器と比較されてはインカリヤの出番が奪われたのも無理はない。
ガランダー帝国への雑感
まあ、ゲドンにしてもガランダー帝国にしても、番組の短さの影響受けた出番の少なさが惜しまれる。
「作戦本部」の項目でもだいぶ触れたが、シルバータイタンはガランダー帝国の作戦や装備は高く評価している。
ゼロ大帝にしても、その弱さは爆笑物だが、部下の隠し事を見破り、獣人・ジューシャ達を完全に恐れさせていた威圧感、ガガの腕輪を得る前のアマゾンライダーを無力化させたビームランス等、見るべきものはちゃんと持っている。
それゆえにこのゼロ大帝が(影武者とは云え)殆ど基地を出ることなく、作戦の陣頭指揮や各種武器の取り扱いにそれなりの関与を見せていれば、ガランダー帝国の恐ろしさ、ひいてはそれと戦う仮面ライダーアマゾンの強さも際立ったのではなかろうか?
帰らぬ繰り言だが、「TV局の腸捻転」が腹立たしい。
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特撮房へ戻る令和三(2021)年六月一一日 最終更新