8.ネオショッカー(仮面ライダー(スカイライダー))

8−1. ゴキブリジンのマント&疑似キック砲(仮称)
登場話
第16話「不死身のゴキブリジン Gモンスターの正体は?」


有効性
 サブタイトルにあるように、ネオショッカー怪人ゴキブリジンの最大の強みは不死性、正確にはスカイライダーの必殺技、スカイキックをも物ともしないタフネス振りにあった。
 だが、このタフネスには秘密があり、それはゴキブリジンが纏うマントにあった。

 一見、只の赤マントにしか見えないゴキブリジンマントだったが、その性能は優れたヨロイの役割を果たし、スカイライダーは戦闘の途中でマントの秘密を見切り、めくり挙げたマントゴキブリジンの頭部に被せ、視界を塞ぎ、剥き出しにしたボディーにスカイキックを決めることでゴキブリジンを討ち取った。
 つまり、これはスカイライダーが勝負には勝てたが、スカイキックがマントの防御力を打ち破ることが出来なかったことを証明した実戦結果とも云える。

 ちなみに『仮面ライダー(スカイライダー)』こそは道場主がリアルタイムで見た最初の仮面ライダーシリーズで、第1話以来、ゼネラル・モンスター(堀田真三)に処刑されたサソランジンを除くすべてのネオショッカー怪人がスカイキックの前に倒れる中で、最初にスカイキックを破ったゴキブリジンのインパクトは強かったが、ゴキブリジンがスカイキックに耐え得るところを披露する実験シーンのインパクトはもっと強かった。
 その実験とは、実際のスカイキックの代わりに疑似スカイキックを放つもので、それは下記のスカイライダーの脚を模した槍(?)をバズーカ砲で飛ばすもの(便宜上、以下、「疑似キック砲」と称する)で、
 


 はっきり云って爆笑した。

 正直、「こんなんでスカイキックの代わりになるのか?」、と実験が実戦に即していることに対して大いに疑問を抱いたものだったが、実験でも実戦でもゴキブリジンマントそのものは見事にスカイキックに耐え切ったのだから、過程や実験の怪しさはともかく、その有効性には疑いの余地はない。

 となると、ネオショッカーは何故に後発の改造人間達にこのマント、またはマントに使用された布地を改造人間・幹部・アリコマンド達の軍装に使用しなかったのか?また、スカイライダーのスカイキックと同じ威力を発してターゲットを攻撃できる疑似キック砲の使用と量産をしなかったのか?という疑問が残る。
 グランバザーミー率いる怪人U世部隊一人一人に装備させたていたら8人ライダーといえども大苦戦は免れなかっただろうし、シルバータイタンの中では、本作で取り上げている武器・能力の中でも1、2を争う程再利用・量産が為されなかったことに激しい疑問の残る矛=疑似キック砲と盾=マントである。


何故再利用されなかったか?
 ゴキブリジンマントが再利用されなかったのには翌週に控えていた幹部交代にその理由がある、とシルバータイタンは考えている。

 スカイライダーゴキブリジンが共に健在でまだ両者が戦っている中に突如ヤモリジンが割って入ったが、その正体はゼネラル・モンスターだった。そしてこのヤモリジンゼネラル・モンスターゴキブリジンが戦死した翌週、プロフェッサー・ドクの計算に基づいて分身の術を駆使した戦術と人質作戦を敢行(←スカイライダーより弱いと認めているぞ)するも、結局は失敗し、スカイライダーの激し怒りを買ってスカイキックを食らった。
 最期を悟ったヤモリジンゼネラル・モンスターの姿に戻り、自分の体内には大量の爆薬が埋まっていることを告げてスカイライダーと共に自爆せんとしたが、行動に移ろうとした刹那、赤い怪光線がゼネラル・モンスターを直撃し、これを爆殺した。
 光線を発したのは新たにネオショッカー日本支部の指揮を執ることとなった魔神提督(中庸助)で、この流れを見ると、ゴキブリジンマントは幹部交代による路線変更の中で自然消滅的に顧みられなくなったと思われる。

 殊に魔神提督の持論は「無能が嫌い」で、良くも悪くもこの論は堅持された。となると、性能は良くても、「めくり上げれば無防備」という実態がばれたマントの再利用・量産を魔神提督が認めるとは思えない。もっとも、魔神提督自身の赤マントには使用されていそうな気がするが(笑)。

 もう一つの有能兵器としての疑似キック砲の再利用と量産に関してはどうだろう?これに関しては比較的容易に想像がつく。ずばり、カッコ悪過ぎるから(笑)

 まあ、冗談はさておき(半分本気だが…)、疑似キック砲は実戦には投入されておらず、必然的にこの武器はスカイライダーに破られていない。前述したように、通常兵器として量産・装備していれば、後々何回か複数の改造人間一度に投入することでスカイライダーを追い詰めた際に、ゲストライダーに妨害されていたのをカットすることぐらいは充分に出来たと思われる。となると、魔神提督の美意識か、さなくば疑似キック砲の内、足槍か、射出装置であるバズーカ砲に技術・コスト面で量産を妨げる要因があったのではないか?と思われるが如何だろうか?


8−2.爆弾人間
登場話
第23話「怪人ムササビ兄弟と2人のライダー」


有効性
 魔神提督プロデュースによる新宿爆撃のX作戦、そしてこれを陽動として実際には横浜爆撃を目論むXY作戦にて使用されたのがこの爆弾人間である。

 軍服ともバイクのつなぎともつかない灰色の服装で、言葉も表情も出さず、目的とした地点に個々に散り、時間と共に腰にセットしたボタンを謳歌することで自爆攻撃を敢行する存在で、目的地1か所につき約10名が配された。

 実の所、「有効性」に関しては、爆弾人間はその成果を発揮していないので言及できない。新宿ではスカイライダーに妨害され、スカイライダーが新宿で足止めされている間に横浜で発動させようとするも、終始この作戦を追い続けていた伊東次郎(北村総一郎)の通報で駆け付けた仮面ライダーV3に妨害され、遅れて新宿から駆け付けたスカイライダーも加わって、完膚無きまでに殲滅されたのだから(ちなみにスカイライダーの愛用バイク・スカイターボはマッハ2の速度を誇り、新宿から150km先の横浜には、信号や衝撃派や安全といった諸問題を無視すれば6分で着く)。

 ではどこに「有効性」を見出すのか?それは量産化に成功していることである。実際、『仮面ライダー(スカイライダー)』では魔神提督が海外から招いた2体の改造人間によって、片方がスカイライダーを迎撃し、片方が作戦を敢行する。または両者が別々の作戦を離れた場で敢行し、スカイライダーの妨害を防ぐ、という両面作戦が何度となく取られた。それゆえに武器の量産化は体が一つであることに対し、片方の作戦を有効にできる効果があるのだが、第31話〜第40話まで毎週のように現れた歴代ライダー達によって阻止されたのである

 そこでシルバータイタンは単純に思った。
 爆弾人間を90人作って、全国に散らせたら、一ヶ所ぐらい成功したんじゃないか?と。

 当時、仮面ライダーは8人しかいなかったのだから。


何故再利用されなかったか?
 1つには爆弾人間1体が屋外で人や建造物に接していない状態で爆発しても軽微な被害しか出てなかったことが挙げられる。
 恐らくは、引火物・爆発物が大量にある場所や、人が集まる場所、崩壊すれば周囲に甚大な被害をもたらすであろう建造物の中での爆発を必要としたと思う。一つの現場で10人も投入されたことや、10人もいながら1人としてライダーに対して自爆攻撃に出た者がいなかったことも爆弾人間の限界を物語っているように見える。

 となると、再利用されなかった理由はコスト面か、単体では大きな破壊力を持てない事からその後は軽視されたからと見られる。



8−3.10万カロリー消耗作戦(仮称)
登場話
第47話「スカイライダー最大の弱点!0.5秒の死角をつけ」


有効性
 「ネオショッカーで1番の知将を挙げよ。」と云われればシルバータイタンは躊躇うことなくスエズ運河の使者・アブンガーを挙げる。
 そして、このアブンガー魔神提督の罵声や督戦を無視してまで2週間のスカイライダー偵察に徹し、立案・実践したのが仮称・10万カロリー消耗作戦なのである。

 アブンガーの計算によると、スカイライダー・筑波洋(村上弘明)が1日に使用できるエネルギーは10万カロリー、そして必殺技であるスカイキックを放つのに必要なエネルギーは2万カロリーとのことで、この計算はプロフェッサー・ドクの様な計算違いはなかった(笑)。
 計算を終えたアブンガーが建てた作戦は、スカイライダーを散発的に襲撃したり、テロの妨害に動かしたりして、2万カロリーにまでエネルギーを消耗させたところでスカイキックを放たせ、それを紙一重でかわし、スカイライダーがすべてのエネルギーを使い果たして無力化した所に掟破りのアブンガースカイキックを放ち、多くの同胞達を死に追いやった恨みに報いんとしたものだった。

 最初は腰を挙げないアブンガーを臆病者呼ばわりした魔神提督もシミュレーション映像を用いてのアブンガーの説明に感心し、その認識を改めていた。(余談だが、シルバータイタンはこのシミュレーション映像に出てきた、「特訓に次ぐ特訓を重ねスカイキックをマスターしたアリコマンド」をあっさり殺したことが全くもって勿体ない話であることを以前にも触れている)。

 結果に触れると、スカイライダー打倒は失敗したが、襲撃とスカイキック回避による10万カロリー消耗作戦そのものは図に当たった。スカイキックを交わされた直後のスカイライダーはアリコマンドにすら手も足も出せずにボコボコにされていた。
 このまま鈍器で殴り殺すか、縊り殺すか、より頑丈な拘束を施して基地内で処刑するかすれば良かったのだが、アブンガーがとどめの為にはなったスカイキックがアリコマンドに誤爆したため、その爆風で変身ベルト・トルネードが回転し、エネルギーが復活する、という強引極まりない展開で復活を遂げた スカイライダーはスカイキックを放ち返してアブンガーをダムの下に叩きこんで倒すのだったが、それに対するナレーションが「絶体絶命の仮面ライダーを救ったのは、平和を祈り、正義を愛する心だった」だったのは笑えた。
 誤爆も強引な復活もすべては「平和を祈り、正義を愛する心」だったらしい(笑)。

 ともあれ、最終目的は達せられなかった10万カロリー消耗作戦だったが、目の付けどころは決して悪くない。誤爆でおじゃんにしたとはいえ、スカイライダーを無抵抗状態に追い込んだのは立派だったし、10万カロリーのエネルギーを消耗したスカイライダーが無力な存在になることを立証し、実際に実現したのはスカイライダーの弱点を発見したに等しく、後々のネオショッカー怪人達もこういった消耗攻撃を展開してスカイライダーと戦うべきだったが、それらしき動きは見えなかった。それは何故かを追ってみたい。


何故再利用されなかったか?
 兵器や作戦が再利用されない理由はこれまでの例に即せば、役立たずと見られる、費用対効果や、量産化・頻発化に伴う困難が考えられるが、この場合はネタばれではないだろうか?
 武器などでも暗器(隠し武器)はどういうものであるかがばれると二度目は役に立たない事が多い。

 このアブンガー10万カロリー消耗作戦では、三平少年(早川勝也)を溺れさせてそれを助けさせ、アジトごとスカイライダーを吹っ飛ばしたり、崖の上から岩を落としたり、でカロリー消耗に成功した訳だが、10万カロリーを消費し尽くし、アリコマンドにさえ手も足も出なかった1コマはスカイライダーにとって思わぬ不覚であり、二度と繰り返したくないトラウマ的失態でもある。
 となると、後々スカイライダーは10万カロリーという自らの必要エネルギー量を悟り、8万カロリーも消費すれば戦線離脱することもあり得る。簡単に云えばエネルギー消耗による苦戦を経験すれば、以後エネルギーの消耗量・残量に誰だって気をつけるだろう。
 となると、それを予測してネオショッカー10万カロリー消耗作戦とは別の路線を作戦としても不思議ではない。


ネオショッカーへの雑感
 ネオショッカーは後半になって魔神提督が指揮を執るようになると、特に顕著になるのだが、各支部間での独自の作戦を敢行し、階級も様々である。
 ゼネラル・モンスターは途中で昇進して軍服の色が変わり、グランバザーミー魔神提督にタメ口を聞き、トリカブトロンは5階級昇進で将軍位にある黄金ジャガーと同格になっていて(その割にはその前からタメ口を叩いていたが)、アブンガー魔神提督の督戦に従わないことで悪態は突かれても処罰はされなかった。

 かようにネオショッカーの組織内における地位関係・並びに対人関係は単純に見えて複雑である。
 また魔神提督が招聘したネオショッカー怪人達は同一作戦に従事させるのには人選が狂っているとしか思えない程仲の悪いケースが多かったが、各幹部・各怪人達に独立独歩性が強ければ、過去の作戦や兵器が再利用されないのに幾ばくかの納得も行く。

 この逆をいく例外的なケースとして、熱帯樹・アフロマジンガの改造人間にして、アマゾンの使者・キギンガーがいる。
 このキギンガーは第36話・第37話に登場したのだが、その前の話である第35話にて研究されていた人間を植物に変えるワクチンの開発を続けて、一村の支配を完成一歩手前まで進捗させていたし、ガラパゴス等の使者・ドラゴンキングとも対立することなく、役割分担も徹底しており、お陰でライダー迎撃に全力投入出来たドラゴンキングスカイライダー2号ライダーとのタッグにも堂々と渡り合っていた(一瞬の隙を突かれてダブルライダーキックの前に敗れたが、その強さはグランバザーミー黄金ジャガーと比べても遜色なかった)。

 ネオショッカーは個々には強力な力を持つ者も少なくなかったし、複数の作戦を並行させることでスカイライダーを何度も翻弄した魔神提督の作戦立案も目の付け所は間違っていなかった。となると、ドラゴンキング&キギンガーのような組み合わせと、過去の作戦の再活用が成功していれば、ネオショッカーはかなり有利に世界征服作戦が遂行できたのではないかと思われ、それが惜しまれるのである。



次頁へ
前頁へ戻る
冒頭へ戻る
特撮房へ戻る

令和三(2021)年六月一一日 最終更新