9.ドグマ(仮面ライダースーパー1)

9−1.人工細胞X9
登場話
第11話「SOS!一也よ、ドグマに協力せよ!!」


有効性
 考えようによってはドグマ王国の兵器の中で一番恐ろしい存在かもしれない。人工細胞X9は外気に触れると途端に自己増殖し、あらゆる生命体を食い尽くすという恐ろしい細胞(実際に過失で瓶からこれをこぼしたドグマファイターが捕食されるシーンがあった)で、元々はドグマ怪人ジョーズワニ(三井恒)のパワーアップ用のアイテムだった。
 だが、ドグマに脅されていた佐野博士がこれを持って脱走したところ、ひったくりにあった所から話がややこしくなった。

 下手をすれば地球上すべての生命体が食いつくされかねず、地球の滅亡を決して望んでいないドグマは不本意ながら仮面ライダースーパー1沖一也(高杉俊价)に協力を申し出、同じく地球滅亡回避の目的から危険を承知の上で一也もまたドグマの組織力と手を結ぶこととなり、世にも珍しい仮面ライダーと悪の組織の共闘体制が、一時的とはいえ成立した(もっとも、互いに協力し合うシーンは皆無に等しかったが)。

 結果は、ジョーズワニ率いるドグマ一味がひったくり犯を見つけ、そこに一也が合流し、X9ドグマの当初の目的通りにジョーズワニに注入され、その肉体はエレキハンドも超高温火炎も通用しない頑強さを誇るなど、本来の目的通りに使われた。
 勿論、ジョーズワニスーパー1に倒された訳で、化学的に考えるなら、ジョーズワニの遺体が爆発四散することで、彼の体内に注入されたX9の再流出が懸念される訳だが、幸い時間の都合もあってX9が再度その脅威に注目されることはなかった。  それにしても恐ろしい細胞である。単純に破壊力からしてドグマが再利用しなかったのが謎とも云えるし、再利用しなくて当然ともいえる不思議な存在である。


何故再利用されなかったか?
 単純に考えてこれは危険性の重視だろう。
 また、佐野博士がX9を持って逃亡したことから、量的にもX9は佐野博士が持ち逃げしようとした分しか造られていなかったのだろう。

 とにかく危ない人工細胞である。X9はカタカナ表記すると、「エックスナイン」で、語感が道場主の大好きな「●ックス■イン」と似ていてアブナイから……………ぎょえええええええぇぇぇぇぇえええええぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇえぇー!!!!!(←道場主のチョーク・スリーパーを食らっている)。


 ゲホッ!ゲホッ!ゲホ……失礼、まあ単純に存在自体が危な過ぎたということでしょうか?仮にジョーズワニスーパー1を打倒していたとしても、X9がジョーズワニの体内から出ることはなかっただろうし、元々単発物質であったことは想像に難くない。
 当然、一時的とはいえ宿敵である仮面ライダースーパー1と手を組む羽目になったことを顧みれば、X9が再び日の目を見る事がなかったのも無理のない話だったと云えよう。


9−2.ファイブ・ハンド操作機能(仮称)
登場話
第21話「緊急指令!ファイブ・ハンドを奪え!!」


有効性
 仮面ライダースーパー1はスズメバチの改造人間で、そのスーパー1の全能力に対抗し得る、同じハチ型の改造人間としてメガール将軍(三木敏彦)がスーパー1の完コピを厳命して改造されたのがバチンガルである。

 改造手術を担当した科学チームは、スーパー1の改造メカニズムをすべて分析し、スーパー1と同等の能力をバチンガルに持たせることに成功したが、スーパー1のスペシャル・ウェポンであるファイブ・ハンドだけは製造に後一カ月は掛かる、と報告した。
 だが、スーパー1打倒を帝王テラーマクロ(汐路章)にせっつかれて時間の無いメガール将軍は、ファイブ・ハンドを持たずとも、ファイブ・ハンドを取り扱う能力(以下、便宜上、「ファイブ・ハンド操作機能」と表記)を持つことから、バチンガルスーパー1のファイブ・ハンドを奪って使わせることを案じ、それを命じた。その際にメガール将軍はくれぐれもファイブ・ハンドの5つすべてを奪うことを命じた。

 当然のことながら、ファイブ・ハンド操作機能は持っていても、ファイブ・ハンドそのものを持たないバチンガルは素のままでは明らかに仮面ライダースーパー1の劣化版に過ぎない。
 ゆえにバチンガルは草波ハルミ(田中由美子)と良(早川勝也)の姉弟を誘拐し、スーパー1を蜂の巣城へ誘き出し、人質を盾にスーパー1パワーハンドエレキハンド冷熱ハンドの譲渡を次々と要求した。
 幾多の戦いで自らの重要な武器となってくれたファイブ・ハンドを渡すのは身が割かれる想いがあるスーパー1だったが、ハルミ・良の命には代えられず、また、「ファイブ・ハンドは俺にしか使えない」との安心感も手伝って、云われるままに譲渡した。

 3つのハンドを渡した所でようやくスーパー1はハルミ・良の奪還に成功し、二人を脱出させた。呆れたことにドグマファイターが化けた替え玉を掴まされたりしつつ3つのハンドが奪われた訳だが、ファイブ・ハンドの内、武器としてのカラーが強いパワーハンドエレキハンド冷熱ハンドを奪ったところでバチンガルは慢心し、メガール将軍の厳命に従わず、残り2つのハンドの奪取を敢行せず、二人の人質を脱出させて一息つかんとしていたスーパー1に襲いかかる背後からエレキハンドのエレキ光線で攻撃した。

 自分にしか使えない筈のファイブ・ハンドで攻撃してくるバチンガルに驚愕したスーパー1だったが、勿論、自らは奪われたスリー・ハンドを使えず、バチンガルファイブ・ハンド操作機能を駆使して、主に、エレキハンド冷熱ハンドから発するエレキ光線・超高温火炎・冷凍ガスでスーパー1を大いに苦しめた。

 勝負の行方は、慢心からファイブ・ハンドのすべてを奪わなかったバチンガルが、レーダー・ハンドを構えたスーパー1を、武器にならない只のレーダーを構えている、とせせら笑っているところを、レーダー・ハンドから放たれたロケット弾を食らい、その一撃で情けないほどグロッキーになったところでスーパーライダー閃光キックを食らって、スリー・ハンドをあっさり奪い返されたところにエレキ光線を食らって爆死した。
 それはレーダー・ハンドを奪わっていないのを見たメガール将軍に怠慢を咎められ、その叱責を笑い飛ばそうとした直後の出来事だった。

 レーダー・ハンドがロケット弾になり得ることぐらい、形状を見て分からんか?と云いたくなるバチンガルの間抜けぶりは失笑物だが、ギョストマに続いてスーパー1を後一歩の所まで追い込んだ健闘と、明らかに勝敗の決め手となったファイブ・ハンドを駆使できるファイブ・ハンド操作機能の有効性は相当なものであることが断言できるだろう。
 テラーマクロが後一カ月の猶予を与えてくれていたら、如何なるストーリーになっていたかを見てみたかったのはシルバータイタンだけではあるまい。


何故再利用されなかったか?
 再利用しようにも、改造手術チームが求めた猶予の半分である2週間でドグマ王国は滅び去ってしまったのである。

 目の前でバチンガルの戦死を見たメガール将軍は自ら仮面ライダースーパー1と戦うことを宣言し、翌週に死神バッファローに変身して戦って戦死し、その翌週には「もはやスーパー1を倒せるのは余一人のみ」と断じたテラーマクロカイザーグロウとして不死身振りを武器に赤心少林拳一派を全滅させ、スーパー1を追い詰めるも、唯一の弱点を突かれてドグマ王国は滅亡した。

 結果論でしかないが、すべては時間がなさ過ぎた、の一言に尽き、他にコメントのしようもないが、筋の通ったストーリー構成そのものは見事だったと云える。


9−3.ドグマ鈴鳴り地獄
登場話
第23話「不死身の帝王テラーマクロの正体は?」


有効性
 前週にてメガール将軍を失ったドグマ王国は、親衛隊スーパー1迎撃を申し出るも、前述の「もはやスーパー1を倒せるのは余一人のみ」というテラーマクロの台詞から、総大将自らの出陣が決せられ、テラーマクロドグマの守護神・カイザーグロウの像から出る液体を全身に浴び、不死身の肉体を得た。
 ちなみにカイザーグロウの「カイザー」はドイツ語で「皇帝」を意味し、「グロウ」(正確な発音は「クロウ」)は烏座を意味する。この儀式の時、どこからともなく現れたカラスがテラーマクロの右が肩に止まったのを、「縁起が良い」として、そのまま不死身になる液体を浴びたが、その部分だけ不死身になっていなくて、最後にはその弱点を突かれてカイザーグロウテラーマクロどこかで聞いたような話が原因で戦死するのであった。

 ラストはともかく、弱点が看破されるまで文字通り、カイザーグロウの肉体は不死身で、赤心少林拳も、スーパーライダーキックも、ファイブ・ハンドによる攻撃もことごとく弾き返され、さしもの沖一也も命からがら戦線離脱せざるを得なくなった。

 勿論、これを逃すドグマではない。この戦闘の直前に沖一也テラーマクロは会談をアジト内で行っている。「余の息子になれ。」というテラーマクロの要請(←殆ど命令)を、勿論一也が蹴ったことで戦闘になった訳で、必然、戦場はドグマ基地のすぐ近くで、それでなくても一也メガール将軍の残したロケットからアジトの位置を知っていたのである。これはもう、どうあっても一也を生かして返す訳にはいかない。
 そこで3月の残雪に覆われた山中を、満身創痍で彷徨う一也を苦しめ、足止めする為に使用されたのドグマ鈴鳴り地獄がである。

 その効果は、例えて云うなら『人造人間キカイダー』にてアジト内のプロフェッサー・ギルが悪魔笛を吹き鳴らすことでジローが苦しみ出すシーンとイメージ的には近い。
 初登場の筈なのに、一也がその名前を知っていたのは何故?という疑問は置いておくとして、脳裏に鳴り響く鈴の音に頭を抱え、悶絶し続けた一也は雪中に突っ伏し、そこに谷源次郎に依頼を受けた赤心少林拳・玄海老師(幸田宗丸)と兄弟子・弁慶(西山健司)達が駆け付け、これが赤心少林一派対ドグマ王国の最初で最後の全面対決となり、最終的には双方が全滅した訳だが、これはまさしく『仮面ライダースーパー1』の中でも屈指の名アクション・シーンだった。
 では、仮面ライダースーパー1沖一也をここまで苦しめ、見せ場にも大きく貢献したドグマ鈴鳴り地獄は再利用されなかったのだろうか?
 否、正確には何故にそれ以前に一度の使用もなかったのだろうか?


何故再利用されなかったか?
 少し前述したが、「再利用」とは些か不適切で、そこにこだわると「その週の内にドグマが滅びたから、以上!」で終わってしまう(苦笑)。
 正確には、明らかに一也を苦しめた便利な兵器であるドグマ鈴鳴り地獄がそれ以前に使われることがなかったのか?プロフェッサー・ギルがジローを苦しめた程の頻度で利用されなかったのか?ということである。

 まず、操作性や技術的な者には問題なかろう。ドグマ鈴鳴り地獄は常にテラーマクロの玉座の脇になる釣鐘型の人面を模った鈴(というより鐘)が打ち鳴らされることで容易に発動していた。
 そこでその原因を、ドグマ鈴鳴り地獄ドグマ編の最終話とも云えるこの話のみで使われた=この話の背景でしか使えなかった、と仮定して以下の3つの原因を考察してみた。

 1つはドグマ鈴鳴り地獄が無差別攻撃兵器だったのではないか?という疑問である。ドグマ鈴鳴り地獄が山中に鳴り響いた時、既に山中に入っていた玄海老師や弁慶達がその影響を受けた様子はなく、親衛隊やドグマファイターが影響された様子もなかったから、対象は改造人間に限定され、簡易改造人間と見られるドグマファイターは対象外で、親衛隊は変身機能を持たないことから影響しなかったか、テラーマクロの側近として防護手段を装備済みだったのではないか?と考えられる。
 もっとも、それならそれで他のドグマ怪人達にも同じ防護手段を装備させ、常日頃からスーパー1を苦しめれば良かったのでは?との疑問が残るので2つ目の原因に移りたい。

 2つ目の原因は、ドグマ鈴鳴り地獄がこの第23話直前頃にようやく完成した兵器ではないか?という疑問である。
 ドグマ王国は第21話の段階で、ファイブ・ハンドを除けばスーパー1の解析及び、それと同等の能力を持つ改造人間・バチンガルを造り出す技術を有するに至っていた。つまりはその段階か直後辺りに解析データを元にスーパー1を苦しめる手段としてのドグマ鈴鳴り地獄が完成し、初使用されたのでは?との見方である。

 3つ目は効果範囲である。前述したように、仮面ライダースーパー1カイザーグロウの緒戦はドグマ基地に程近い山中で行われ、敗れた一也が彷徨ったのも同じ山中である。
 つまりはドグマ鈴鳴り地獄はこの山中の外では効かなかったのではないか?との推測である。悪の組織のアジトがその所在地を厳重に秘されるのは常識で、所在地が明らかになるのは壊滅直前であることがほとんどである。
 この『仮面ライダースーパー1』におけるドグマ王国でも前述したように第22話で戦死したメガール将軍の遺品からその位置が判明したのである。

 こう考えると単純な武器、絶大な効果を挙げる武器の出し所は重要かつ面白いものがあるのが伺える。これもまた特撮番組を楽しむ醍醐味と云えようか。



ドグマ王国への雑感
 シルバータイタンがドグマ王国を語る時にいの一番に思い浮かぶのがメガール将軍の悲劇性と、帝王テラーマクロの他の組織に類を見ないまでの王権の強さである。
 そしてそこに君側の奸としてのカラーが強い親衛隊が混じった対人関係が戦略・戦術・内政・信賞必罰に興味深い展開を見せるのはこの特撮房でこれまでも散々語ってきたところである。

 またドグマ王国は人類滅亡を目指した組織ではなく、優れた人間によるユートピアとしての地球を目指した組織(この理想はネオショッカージンドグマにも共通する)で、有能且つ忠実な者は努めて活かし、厚遇しようとした組織でもある。
 勿論、その為に邪魔者・無能者・我が組織に忠実ならざる者達に対し、世の法を無視し、手段を問わず殲滅しようとした行為は紛れもない悪行で、それに照らすなら彼等もまた所詮はテロ集団に過ぎない。

 そんな組織が考えるのはやはり世界征服の完遂であろう。
『仮面ライダーV3』第34話にて素顔のトリプルライダーが、キバ男爵(郷B二)を前に、「どんな手を使おうと正義は必ず勝つ!」(本郷猛)、「世界に悪の栄えた試しはないのだ!」(一文字隼人)、「我等がいる限り、デストロンの世界征服は不可能だ!」(風見志郎)と云い放つ名場面があるが、この考えに反論する人々が口にするのは、「テロリストも天下を取ればテロリストと云われなくなる。」という、いわば「勝てば官軍、負ければ賊軍」論である。
 シルバータイタンはこの「勝てば正義」を転じて、「負けて悪と云われない為に頑張る」という戦意発揚の為に抱くのなら反対はしないが、己が欲望を正当化する為に、どんな卑劣な手段を取っても後で後ろ指を指されない為に「勝てば正義」と考える輩は心の底から軽蔑するし、人生航路における敵とみなしている。
 第一、「勝てば正義」と云っている段階で、「現時点では私達は悪です」と云っているようなものである。善意的に解釈しても「現時点では私達は反体制勢力です」に留まる。
 話が横道に逸れたが、ドグマ王国もまた自らの理想実現の為に悪行を厭わず、結果がそれまでの行為を正当化することを欲した組織である。となると、ドグマ仮面ライダースーパー1打倒の過程において生み出した数々の戦略・兵器・アイテムにも託された想いを見てとるのが、理想半ばにて善の世を恨みながら死んでいったメガール将軍=奥沢真人への供養にはならないだろうか?



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新