2.ウルトラ警備隊(ウルトラセブン)

2−1.ライトン30爆弾

登場話
第15話「ウルトラ警備隊西へ(後編)」

有効性
 キングジョーを倒した……如何に優れた武器であるかの説明はこれで充分でしょう(笑)。
 その戦闘能力の高さはウルトラセブンが唯一自力で倒せなかった(平成版では自力で倒したが)ことから『ウルトラセブン』のみならず、ウルトラ怪獣の中でも最高峰にあるのが、スーパーロボット・キングジョーだが、こいつの強さの要因は何と云っても防御力、それも頑丈さである。

 キングジョーのボディーを構成する素材はスーパー・メタルと呼ばれる策略星人ペダン星人の科学が生んだ特殊金属で、西洋の甲冑よろしく、その超重量(キングジョーが倒れたら自力で起き上がれない)に比例した防御力を持ち、地球防衛軍の砲弾は勿論、エメリウム光線・アイ・スラッガーも堪えなかった。
 六甲山防衛センター科学班チーフ・土田博士 (土屋嘉男)曰く、スーパーメタルは「我々の武器では到底破壊できない。」物で、作中ではペダン星人に拉致されていたウルトラ警備隊ワシントン基地の頭脳、と称されるドロシー・アンダーソン (リンダ・ハーディスティー)が救出された際に、彼女の口からライトンR30爆弾こそが破壊し得るもの、としてその名が浮上した。
 いずれにしてもキングジョーの強さがその頑丈さに起因していることに疑いはなく、キングジョーにとって、天敵とも云えるこのライトンR30爆弾にしても、撃ち込まれる際に土田博士より出来る限り至近距離にて撃つ様指示されていた。

 そしてキングジョー破壊より31年を経た平成版である『ウルトラセブン1999最終章6部作』において、甦ったキングジョーUを倒す際にウルトラセブンはかつてキングジョーライトンR30爆弾を被弾した箇所にアイ・スラッガー四連打を食らわすことで何とか倒すことに成功している。
 つまりは過去の古傷を攻めることでしかキングジョーUを破壊できなかった、とも取れ、それでも尚、アイ・スラッガーの先端が少し欠ける程の衝撃を必要としたのである。スーパーメタルが如何に頑丈なものであるかが充分過ぎるほどうかがい知れる。

 余談だが、『ウルトラセブン』におけるキングジョーも、『ウルトラセブン1999最終章6部作』におけるキングジョーUも、その最期において、「気をつけ」の姿勢で停止してから倒れ、爆破炎上している。この死に様を『空想科学読本2』等ではライトンR30爆弾の「不思議な性能」とされることもあったが、平成版でも同じ死に方をしたことから、シルバータイタンはスーパーメタルによる装甲の下にある機械部分が破壊されたことのよる機能停止が先に来て、後に内部からの爆破に至ったと見ているが、だとすると、これまたスーパーメタルの頑丈さと、それを破壊せしめたライトンR30爆弾の性能の高さの証明になるとも見ている。


何故再利用されなかったか?
 前述したように、キングジョーは『ウルトラセブン1999最終章6部作』にてキングジョーUとして復活した。
 それは30年以上前の戦いで神戸港に沈んだ残骸を引き上げ、修復し、人類によるプログラム命令で使役する、夢のスーパーロボットとしての復活の筈だったが、ラハカムストーンの影響受けて暴走し、再度ウルトラセブンと戦うことになった。
 復活の経緯もキングジョーに対するトラウマとも思えるセブンの想いも、見事なまでに過去の設定が生かされているが、ライトンR30爆弾の「ラ」の字も出て来はしない(映像ではあったが)。
キングジョーUキングジョーウルトラセブンにさえ倒せなかったスーパーロボットであることを見込まれ、同時に恐れられもした。それゆえにその制御には慎重を期された訳だから、暴走−実際にした−時の対策として、いざとなったら破壊する手段としてライトンR30爆弾が配備されていてもおかしくない筈なのにである。

 そこで無理矢理考えてみた理由は下記の2つが考えられる。
・量産化に失敗した。
・ゲンの悪い武器として忌避された。

 まずは1番目の「量産化に失敗」だが、数多くの人材を擁するウルトラ警備隊において、ワシントン基地のアンダーソンだけがライトンR30爆弾がスーパーメタルを破壊し得ることを知っていた訳だが、ウルトラ警備隊がそれを知ってから配備までにはそれほどの時間がかからなかった。つまりは元からあった兵器であることが考えられるが、土田博士は破壊力の未知性だけではなく、弾が一発しかないことも理由に、慎重な発射を要請していた。
 つまり、ライトンR30爆弾は元々技術的に量産できない、または量産どころか再製造すら見送られる事情があったのではないか?ということである。もっとも、『ウルトラマンメビウス』の第11話では宇宙警備専門部隊とも云えるGUYSスペーシーが地球に飛来する筈だった宇宙斬哲怪獣ディノゾールの群れを、ライトンR30爆弾の改良兵器である宇宙機雷ライトンRマインで宇宙空間にて一体を除いて殲滅することに成功しているので、研究は続けられていた訳だし、地上で使われず、宇宙で使われたことに原因があるかも知れない。


 2番目の、「ゲンの悪い武器として忌避された」であるが、これはペダン星人との邂逅を不幸なものとして捕え、対ペダン星人戦に関連した事物が忌避されたから、とシルバータイタンは見ている。
 思うに、誤解が生んだとはいえ干戈を交えることになったペダン星人との邂逅は不幸なものだった。生物がいない、と予測して打ち上げられた観測ロケットが侵略の斥候と勘違いされ、いくら謝罪の電文を送っても聴く耳を持たず、ついにペダン星人は報復に出た。
 ペダン星人の分らず屋振りには見ていて腹の立つものがあり、侵略の意図もないのに地球人が唯々諾々と報復を受けなければならない謂われは無い。だが、地球人サイドは争いを望んでいた訳ではなく、当然のことながら自衛戦とはいえ悲しい争いであったことは想像に難くない。
 そんな悲しき争いに使われたライトンR30爆弾は縁起の悪い武器として忌み嫌われたのではあるまいか?


ウルトラ警備隊への雑感
 『ウルトラセブン』には等身大の宇宙人が数多く登場し、謀略あり、人間同士の信頼問題あり、でドラマ性が重視される一方で、第26話「超兵器R1号」のように、現実の軍拡競争への警鐘も見られた作品で、その為、兵器の類は重視される時は徹底して重視され、軽視される時は一顧だにされなかったようにも見えます。

 第28話で登場した高性能爆薬スパイナーは名前だけの登場でしたが、その存在感は後番組である『帰ってきたウルトラマン』にもその影を落としていました。
 一方、ウルトラガンに射殺され、ウルトラホークに円盤を撃墜された宇宙人は少なくなく、マグマライザーに至っては分身宇宙人ガッツ星人に囚われたセブンの危機を救い、最終回では爆薬を積んでの自動操縦特攻で、幽霊宇宙人ゴース星人の地下基地を破壊し、史上最大の侵略から地球を守るのに大いに貢献しました。
 つまり、地味な武器ほど汎用的に多用され、ライトンR30爆弾R1号スパイナーの様な武器はここぞという時の為の存在にして、平時にはむしろ危険であることを知らしめる意図があったような気さえします。


 ウルトラシリーズにて、今尚最高傑作の呼び声高き『ウルトラセブン』。その傑作に秘められた人間への、世界平和へのメッセージを凝視した時、兵器とは刃物一つでも、大量の重爆弾でも、決して軽く考えてはいけないことに気付かされます。





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令和三(2021)年六月一一日 最終更新