3.MAT(帰ってきたウルトラマン)
3−1.MN爆弾
登場話
第5話「二大怪獣東京を襲撃」・第6話「決戦!MAT対怪獣」
有効性
実は活躍していない。地底怪獣グドンの前に全くの無力だった。しかし、破壊力が及ぼす影響への考察、その点を考慮した上での使用決定等がMATという組織(主に上層部)を見る上において非常に参考になるので取り上げさせて貰った。
MN爆弾の使用が提案されたのは古代怪獣ツインテールの卵を粉砕する為である。
だが、この MN爆弾の使用はかなり躊躇われた。標的であるツインテールの卵が新宿の工事現場にて発見されたことから、爆弾を炸裂させた場合に地下街に閉じ込められた5人の女性(郷秀樹 (団次郎)の恋人・坂田アキ(榊原るみ)を含む)の身に危険が及ぶことが想定された。
つまりは、この MN爆弾、本来目的とする怪獣の肉体粉砕する際に出る爆風・振動・余波が建造物に対して甚大な破壊力をもたらすと思われる破壊力を有していた訳である。
MATとて科学特捜隊、ウルトラ警備隊に続く組織だから、過去の組織のデータは有していただろう(逆にMATのデータがTACやGUYSに存在していたのは明らかにされている)。当然のことながら過去の怪獣の肉体強度ぐらい計算しているだろう。
それが証拠に只でさえ怪獣達に苦戦していたMATは第18以降登場するようになった地球外からの怪獣には更に苦戦するようになったのだから。
そこから類推するに、地球防衛軍は怪獣の身体強度を超えてひたすらに破壊力の大きな武器開発に余念がなかったことになる。
その最たるものはスパイナー (『ウルトラセブン』にも名前だけ登場した小型水爆に匹敵する、使えそうで使えない兵器)である。結局、怪獣と共に確実に東京を破壊するこの兵器は加藤勝一郎隊長 (塚本信夫)以下、MAT隊員総員の猛反対を受けて使用が見送られた訳だが。
MN爆弾は、その性能はともかく、地球防衛軍並びにMATの在り様を見るのにこれほど興味深い材料は珍しい。それゆえにもっと出番が欲しかった気がする。
何故再利用されなかったか?
これは地球防衛軍上層部の気持ちに立てば分かる。殊にやっとの思いで使用された MN爆弾は無効で、絶対の自信を持っていたスパイナーはMAT隊員達の総反対で陽の目を見なかった岸田長官 (藤田進)にしてみれば面目丸潰れである(笑)。
岸田長官が面目故に倫理を踏み躙る人間だったり、MAT隊員の中に甥の岸田文夫隊員 (西田健)がいなかったりしたら、長官は加藤隊長の口封じさえ謀ったかもしれない。
それでなくても第22話での加藤隊長の宇宙ステーション転任には、宇宙大怪獣べムスターによる旧宇宙ステーション壊滅を幸いに地球防衛軍上層部が彼等に反論する加藤隊長を栄転にかこつけて宇宙に左遷した、との説がマニア達の間で実しやかに囁かれている。
まあ、上記はチョット飛躍した仮説だが、憂慮すべき被災者が救助された後で遠慮なく威力を発揮した筈の MN爆弾はグドンにかすり傷一つ与えられず、役立たずの烙印を押されてもおかしくない。
事の是非はさておき、プライドを重視すれば再利用を提言するには滅茶苦茶勇気がいるし、この MN爆弾が威力的に丁度いい、と見られるケースはかなり限定されるのは想像に難くない。
「帯に短し、たすきに長し」という言葉があるが、満を持しての登場に「たすきにもならなかった。」とは立場のない話である。
しかしながら、以降もMATは多くの特殊兵器を使用した訳で、繰り返しになるが比較対象としてぐらいなら MN爆弾に出番があっても良かったのでは?ともシルバータイタン的には思ってしまうのであった。
3−2.麻酔弾
登場話
第6話「決戦!MAT対怪獣」
有効性
前述の MN爆弾とは反対に、これは成果を挙げた武器である。直接相手を死に至らしめた訳ではないが、ツインテールの両目を潰し、結果論ではあるものの、それがツインテールの戦意を殺ぎ、それを倒したグドンも帰ってきたウルトラマンのスペシウム光線の前に砕け散った。
本来の目的とは異なる成果とはいえ、帰ってきたウルトラマンの助けを借りたとは云え、二大怪獣を死に追いやり、結果、MATの解散を免れさせ、スパイナーという怪獣退治の為に都市を灰燼に帰してしまうような本末転倒兵器を使用させずに済ませたのである。
話が前後したので、少し背景を語るが、グドン・ツインテールの二大怪獣が MN爆弾をもってしても倒せず、その為地球防衛軍上層部は小型水爆に匹敵する超高性能爆弾・スパイナーによる攻撃と都民の避難を命じた。
勿論都内で核攻撃を行う命令にMAT一同は猛反対し、都民の住居・財産を守るべきであることを主張した。
何をトチ狂ったのか地球防衛軍上層部は都民の住居・財産より怪獣に首都を蹂躙される屈辱の方を重視して、MATの意見を聞き入れようとしない。そこで代替案として麻酔弾による迎撃を加藤隊長は提言し、岸田長官は失敗した折にはMATを解散させることを条件に、要請は受け入れられた。
そう麻酔弾がなかったら、今の東京はなかったのかもしれないのである。
何か、兵器としての機能より、別兵器の出番をもたらさずに済ませた功績の方を主張したくなる存在だが、それは御愛嬌(?)ということで(笑)。
何故再利用されなかったか?
結局は帰ってきたウルトラマンの力を借りて二大怪獣を倒すに至った、との結果論による所が大きい、とシルバータイタンは想像する。
また、この麻酔弾がツインテールの動きを大きく減退させたのは間違いないのだが、麻酔弾が及ぼした効果はツインテールに対する目潰しであって、本来の効用である睡眠効果は及ぼしていないし、ツインテールを永遠に眠らせたのはグドンである。
しかも2発の麻酔弾はツインテールに対する攻撃で使い果たし、帰ってきたウルトラマンの助け無くば、グドンを死に追いやれた保証はない。
結局、岸田長官の「なーに、いざという時はウルトラマンが助けてくれるさ!」という暴論通りになってしまったことも、麻酔弾の優れた武器としての立場を軽減させてしまっているだろう。
元が地味な存在だけにこの不完全な活躍は致命的だったといえよう。
余談だが、標的を行動不能に陥らせることで攻撃を有利にできる麻酔弾の使用例は少ない。その数少ない例は古代怪獣ゴモラと大亀怪獣クイーントータスと鬼怪獣オニオンに使われた例が挙げられるが、ゴモラ・クイーントータスは生け捕りが目的だったし、オニオンも決して好戦的な怪獣ではない。
やはり怪獣や超獣や宇宙人の抹殺を主目的とする組織に麻酔弾は似合わないのだろうか?それとも登場した存在の多くが抹殺される運命にある怪獣・超獣・宇宙人・円盤生物達を眠らせた上で攻撃することは卑怯と見られるからだろうか?
だが、未知の存在で、体内に如何なる可燃物質や有害細菌を含んでいるかもしれない怪獣には麻酔で眠らせるのは極めて安全かつ有効であることを円谷プロには見直して欲しいものである。リアリティある番組制作の為にも。
3−3.サターンZ
登場話
第37話「ウルトラマン夕陽に死す」・第38話「ウルトラの星光る時」
有効性
実はこれもその成果を発揮していない。否、途中で暗殺宇宙人ナックル星人に強奪され、彼が帰ってきたウルトラマンに敗れた後もそのままだったら東京破壊に利用されていた訳だから、その威力は発揮されてなくてよかったのである、番組的には。
そのような損な役回りを回されたミサイル用液化火薬・サターンZの性能だが、一滴でタンカーを破壊し、タバコの箱ほどの量で富士山を吹き飛ばす力を持つもので、云い換えれば六〇〇〇倍の威力をもつニトログリセリンでもある。
核兵器並の破壊力を持ちながら放射線を発しないことからこの爆薬はダム工事に利用されようとしていた。同時にその破壊力は後々地球に襲来するであろう宇宙人・怪獣を迎撃する兵器のエネルギー源としても大いに注目されていた。
しかしながら研究機関からの輸送中にMATは用心棒怪獣ブラックキングの陽動に引っ掛かる形でサターンZをナックル星人に奪われ、強奪した張本人であるナックル星人も自身が戦死した折にも時限式で爆発させることで東京壊滅に利用したものの、直接攻撃では帰ってきたウルトラマンの抹殺、MATへの降服要求に走り、サターンZはたちまちその存在感を薄めた。
ブラックキングを倒され、自身もウルトラ投げを食らって絶命直前のナックル星人は悔し紛れに、「勝ったと思うな」と云い放って、サターンZによる東京壊滅を仄めかしたが、既に電波研究所が隠れ蓑であることを突き止められていたこともあり、ナックル星人絶命後、郷秀樹は即行で電波研究所に隠されていたサターンZを見つけ、MAT隊員達もすぐに当りをつけて駆け付けた。
結局、サターンZは最後の最後にその危険性を強調するような慎重な移送が描かれただけで、当初MAT内で語られた期待や、ナックル星人もが強奪によってMATの戦力とさせず、自らが悪用した経緯など丸でなかったが如く、以後出てくることはなかった。
『帰ってきたウルトラマン』全51話の中でも超有名エピソードとなる第37話・第38話。数々の出来事(坂田兄妹の惨殺・初代ウルトラマンとウルトラセブンの客演)の中で、それなりの知名度を持つサターンZは何故に以後の話ではその存在感を皆無としてしまったのだろうか?
何故再利用されなかったか?
名前のせい?とも思ったが、サターンはサタン(satan)=魔王のことではなく、土星(saturn)のことなので、名前が縁起悪いという訳でもない。
考えられるのは以下の3点ではなかろうか?
・使い勝手の悪さ
・面子
・量産化の失敗
「使い勝手の悪さ」は破壊力のコントロールの難しさのことで、実際にニトログリセリンの取り扱いの難しさを考えれば、実戦配備は容易な話ではない。
また「面子」だが、宇宙人に強奪された事実により、最高兵器としての将来性に傷がついたと考えるの充分に在り得る話である(苦笑)。
「量産化の失敗」に関しては、MATがサターンZを強奪された後に取り戻しに躍起になってはいても、再配備には全く手を打ってなかったことが挙げられる。
幸いにしてナックル星人が強奪した物自体は取り戻せたが、その間にナックル星人化学者の分析により、組成表等がナックル星に渡っていれば、生き残ったナックル星人や、ナックル星人と同盟関係にある宇宙人(劇場版『ウルトラマンメビウス&ウルトラ8兄弟』から、少なくともザラブ星人・ガッツ星人・テンペラ―星人がナックル星人と同盟関係にある)がサターンZを利用した兵器で地球襲撃を敢行するであろうことは充分に考えられる。
しかしながらその後敵味方如何なる存在もサターンZを使用していないことを見ると、材料・コスト・保存性等の問題が、相当ハイレベルな化学技術を用いても量産化が困難だったと考えられるのである。
MATへの雑感
MATの通称に「解散MAT 」という不名誉なものがある。
地球防衛軍上層部から幾度となく、解散をちらつかされ、後番組の『ウルトラマンA』にてMATは過去の存在と化していたが、客演した坂田次郎(川口英樹)が全く成長していなかったことから、『帰ってきたウルトラマン』最終回後にMATは解散させられた、と考える特撮マニアは多い。
最終回にて基地内に潜入した触覚宇宙人バット星人に武器・弾薬・航空機を壊滅させられた状況からも、解散させられていてもおかしくない。
それゆえに、怪獣が暴れ続けている状況下で解散が命じられそうになっていた MAT のこと、所有の秘密兵器には不当に過小評価されてはいまいか?の疑問がつきまとう。
勿論、この問題は単純ではない。
竜巻怪獣シーゴラスの角を粉砕し、東京都竜巻から救ったレーザーガンSP-70には再利用が確認される(シーゴラスの角を粉砕した時程の活躍ではないが)。実績がある武器が正当に評価された例はちゃんと存在している。
地球出身の怪獣と宇宙出身の怪獣で強弱に差をつけられたり、隊員同士の対立(主に郷と岸田)が描かれたりした為にMATという存在は損な役回りを与えられている。
再登場、とまで行かなくとも、もう少しちゃんとした成果及びそれらに対する正当な評価があれば、MATに落とされた暗い影は幾分かなりとも軽減されたのでは?と思われてならない。
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特撮房へ戻る令和三(2021)年六月一一日 最終更新