4.TAC(ウルトラマンA)
4−1.シルバーシャーク
登場話
第39話「セブンの命!エースの命!」
有効性
結論から云えば、「一度はウルトラマンAをも倒した火炎超獣ファイヤーモンスを一撃で倒した。」というのがシルバーシャークの有効性である。
ファイヤーモンスは火炎人ファイヤー星人から渡された炎の剣で持ってウルトラマンAを刺殺しただけではなく、ウルトラセブンの助けを得て復活したAとの再戦でも初戦同様に炎の剣でAを窮地に追い込んでいる。
そしてそのAの窮地を、ファイヤーモンスを倒すことで救ったのがこのシルバーシャークである。
同名の熱帯魚や競走馬が存在するが、この際無視して欲しい(苦笑)。
特撮マニアの間におけるこのシルバーシャークの評価はかなり高い。
単純に怪獣を倒しただけなら無重力弾やライトンR30爆弾と云った武器が存在し、これらの方が遙かに名高い。
『ウルトラマンA』はどうしてもヤプール編までの方の印象が強いため、巨大ヤプール打倒後になると地獄星人ヒッポリト星人のようなインパクトの強い猛者や、満月超獣ルナチクス・雪超獣スノーギラン・最強超獣ジャンボキングといった重要な話に絡む超獣でないとどうしても人々の記憶から薄れてしまう。
だが、拙サイトを見て頂く程に特撮に詳しい方々なら、「怪獣より強い存在」と位置付けられた超獣が如何に手強い存在であるかを御存じかと思う。そんな超獣と戦わされ、ウルトラ兄弟に見せ場を奪われた超獣攻撃隊TAC(Terrible-Monster Ataccking Crew)が可哀想な程に前座役・ヤラレ役に達せられていたかもよく御存じかと思う。
それ故にそこそこのマニアでないとこのシルバーシャークの存在さえ知らない事が多いが、無重力弾やライトンR30爆弾に引けを取らない優秀兵器なのである。
何より敵であるファイヤー星人はこのシルバーシャークが自らを滅ぼし得る武器であることを知っており、ファイヤーモンスに完成前の破壊を命じた訳だが、そのファイヤーモンスが返り討ちに遭ったことからもその有効性は充分だろう。
ただでさえTACが超獣を倒したというだけでも凄いのに(苦笑)、このシルバーシャークは、ゼットンを倒した無重力弾やキングジョーを倒したライトンR30爆弾と同様に、ウルトラ兄弟すら敗れたり、倒せなかったり、かなりの苦戦を強いられたりした相手を倒した武器なのである。
ウルトラマンAはファイヤーモンスを操っていたファイヤー星人を倒すことで雪辱を果たし、面子を保ったが、結果だけを見ればファイヤーモンスを倒していないのである(だからと云ってAがファイヤーモンスより弱い、と決め付けたりはしないが)。
肝心のシルバーシャークについて触れておきたいが、「超獣に対する最強の兵器」とされるレーザー砲である。
発射の際は吉村公三隊員(佐野光洋)と今野勉隊員(山本正明)が二人掛かりで支えていたが、ジープで運搬できる大きさで、その大きさで超獣を一撃粉砕出来たのだから、内包されているエネルギー源はかなり高性能なものであることが伺える。
『空想科学読本2』での柳田理科雄氏の文によると、レーザー光線とは出力さえ充分なら、如何なるものも破壊(正確には熱による切断・溶解)可能だが、現実には巨大生物を倒すだけの出力が見込めないとしている。その観点からもこのシルバーシャークは良く出来た武器である。
そしてそれ故に再度の登場がなかったことが惜しまれるし、30年以上の時を経て『ウルトラマンメビウス』においてドキュメントTACのデータをもとにシルバーシャークを改良した基地配備型の巨大兵器として、彗星を砕く力を持つシルバーシャークGが登場し、宇宙剣豪ザムシャーとサーベル暴君マグマ星人兄弟・海底原人バルキー星人との戦いで地球に飛来したオオシマ彗星の破片群を撃ち砕いたり、1体とはいえ無双鉄神インぺライザーの撃破にも成功したりもしている(その際にシルバーシャークGもインぺライザーに破壊されたが)
ウルトラシリーズのファンとしては何とも嬉しい復活だった。
何故再利用されなかったか?
身も蓋もない云い方をすれば、TACという正義のチームが徹底的にヤラレ役を振られたからである。
超獣を倒すべき出番はウルトラ兄弟や、多彩化したAの技に奪われ、結局TACが自力で倒したのは、ファイヤーモンスとガス超獣ガスゲゴンと他数体の等身大宇宙人のみだった。
ただでさえ正義のチームが頻繁に怪獣・超獣・宇宙人・円盤生物を倒す訳にはいかないが、それを考慮にしてもTACは超獣を倒す機会に恵まれなさ過ぎた。詳細は後述するが、TACはメンバーも装備も決して無能なものではないにも関わらず、作品の設定や作風を重んじる流れから損な役回りを演じることとなった。
元よりTACの装備には優れた物が多い。TACが今少し超獣を倒す機会に恵まれた役回りなら科学特捜隊のマルス133ぐらいには活躍できたのではないかと思われる。
TACへの雑感
改めてTACというのは可哀想な存在だと思う。
「怪獣を超えた」存在である超獣・シリーズを通じての強敵ヤプール人・続々と登場するウルトラ兄弟・初の男女合体変身の為に北斗星司(高峰圭二)と南夕子(星光子)に重きを置かれた初期のチーム模様ゆえに、超獣が容易にTACに倒される訳にはいかず、当のAさえ、数々の光線技や兄弟の助けを必要とした。
その渦中においてTACは幾度も戦闘機を破壊され、「脱出TAC」という有り難くない二つ名さえ囁かれている。
だが誤解して欲しくないが、TACは決して雑魚やチョイ役を振られた訳ではない。
常に冷静沈着で信賞必罰に公正且つ部下を徹底的に信頼する竜五郎隊長(瑳川哲朗)、短気で怒りっぽいが正義感と責任感が強い副隊長格・山中一郎隊員(沖田駿介)、目立たずとも情報分析で何度もチームに貢献した吉村隊員、怪力無双でありながら無駄な暴力を嫌う純情漢・今野隊員、爆発物の小技を得意とし、チームの険悪ムードを和らげる美川のり子隊員(西恵子)、妖星迎撃ミサイルの構造を丸暗記し、異次元突入装置を開発し、等身大宇宙人を倒したり、Aの危機を救ったりした数々の兵器を開発した梶洋一主任(中山克己)、といった個性的かつ有能で個々に見せ場を持つ愛すべきキャラクターが隊員には目白押しである。
特に、山中を「単なる柄の悪い横柄な上司」としか見ていなかったり、梶を「役に立たないものばかり作っている」とほざいたりする連中には猛省を促したい。
番組後半に梶の姿が消えていたことを「役立たずだから」と断じている愚か者もいるようだが、シルバータイタンに云わせれば、「これ以上登場させ続けたら、梶に何体もの超獣を倒す役を振らなければならなくなり、それではTACらしくなくなるから。」と判断された故に梶は出番を奪われたと思っている。
今少し作風が防衛組織に味方し、特殊兵器を出し過ぎずに個々の出番を増やした有効活用を行っていれば、TACはウルトラ警備隊やGUYSに負けない人気組織となっていたことと思うし、惜しまれもするのである。
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特撮房へ戻る令和三(2021)年六月一一日 最終更新