6.MAC(ウルトラマンレオ)

6−1.MACウラン

登場話
第36話「飛べ! レオ兄弟 宇宙基地を救え!」

有効性
 身も蓋もない云い方になるが、実の所、この MACウランが具体的な成果を発揮することはなかった。ただ、変身怪人アトランタ星人に執拗に狙われ、レオアストラ兄弟の尽力がなければMACステーション破壊の為に逆用されるところだった。
 同時に、MAC内にても高倉長官(神田隆)・モロボシ・ダン隊長(森次晃嗣)を始め、隊員一同その運搬に機密保持の徹底と慎重を期し、搬入後の MACウランの活躍も大いに期待されていた(この辺りはMATのサターンZと似ている)。

 直前になって、ダン隊長の肝煎りでおヽとりゲン(真夏竜)がマッキー2号を操縦しての運搬役に命じられるも、内田三郎隊員(五代勝也)に化けたアトランタ星人の妨害で、ゲンは事故を起こしかけ、運搬役を外されることとなった。

 第36話を見た人には周知だが、本物の内田はアトランタ星で命を落としていた(詳細不明)。ゲンは、凶暴且つ狡猾な宇宙人が住まうアトランタ星より3年間も行方不明だった内田が生還したことに疑問を抱いていたが、アトランタ星人は先手を打って、テレパシーで正体を明かしながら、自分がゲンダンの正体を知っていることを告げ、自らの正体をばらせば、自分も二人のウルトラマンの正体をばらす、と恫喝した。
 性質の悪いことに、アトランタ星人が化けた内田高倉長官の一人娘・あや子(大井小夜子)の婚約者だった為、長官の肝煎りでMACに復帰し、自分で操縦を妨害しておいて、アトランタ星帰りの腕前を誇示して運搬役を担当する、と申し出、認められた。

 勿論、ゲンは事前にダン内田の正体を告げて相談していたが、ダンも正体をばらされては困るし、その急所を突かれている以上、自らが推薦したゲンが失敗した(ということにされてしまったいる)難事に対して、高倉長官内田を推薦することを拒めない。
 結果、ダンウルトラ念力で高倉長官の娘を危篤状態にして(!!)高倉長官内田 (に化けたアトランタ星人)にあや子の元に駆け付けるよう、告げた。
 勿論パイロットとして MACウランが積載されたマッキー2号を操縦してMACステーション破壊を目論むアトランタ星人は任務の重さをタテに任務から離れようとしないが、それに対するダンMACは人の命を軽視する組織ではない!」の台詞が笑える。「あや子を危篤にしたのは誰?」と云いたくなる。いえ、勿論、アトランタ星人の目を欺く為の一時的なもので、殺意どころか最終的な危険性も全くないものであることは分かっているんですがね……。

 尚も、「おヽとり隊員でさえ失敗した任務」(それゆえに自分がやるしかない)として食い下がるアトランタ星人だが、ダンは隊長である自分が操縦する、と告げ、しぶしぶ高倉長官と共に現場を去るアトランタ星人ゲンに尾行させた。
 ダンの計略は図に当たり、アトランタ星人高倉長官を張り倒してマッキー2号を追おうとするが、これはゲンに妨害され、正体を現すと東京上空400kmに位置するMACステーションに向かうマッキー2号(に積載された MACウラン)を追った。

 マッキー2号はアトランタ星人の両腕に捕らえられ、勿論ゲンウルトラマンレオに変身して、これを追跡したが、ダンがこれを拒絶した。
 ダンの乗るマッキー2号はアトランタ星人に掴まれて暫くしてから炎上を始めており、そのままMACステーションに突入させられてしまうだけでも大変なことになるが、  ステーション内で MACウランが爆発すればMACの壊滅に繋がりかねない(実際に、後にMACは円盤生物シルバーブルーメに飲み込まれて、中に駐屯していた隊員達の殉職と共に壊滅している)。
 MACステーションを守るため、アトランタ星人を倒す為、ダンアトランタ星人と共に自爆することをレオに告げ、アトランタ星人の足を掴んでいるレオに離れるよう命じた。

 まあ、結局は何の意脈絡もなく登場したアストラアトランタ星人からマッキー2号を強奪し、消火させてからMACステーションに安置し、レオはウルトラマントでもってアトランタ星人を墜落せしめ、後から駆けつけたアストラとともに袋叩きにした果てに、これを討ち果たしたことで事無きを得た訳だが、ここで殆ど名前だけしか登場しなかった MACウランの性能について、ダンの台詞からうかがえることがある。
 MAC隊長モロボシ・ダンは、第1話のサーベル暴君マグマ星人、双子怪獣ブラックギラスレッドギラスとの戦いによる負傷でウルトラセブンに変身する(正確には元の体に戻る)能力を失っていた為、共に地球を守る任務につくおヽとりゲン=ウルトラマンレオに厳しく当たったり、命に関わる特訓を課したり、凶暴極まる怪獣・宇宙人と戦わさなければならない事に常々罪悪感を抱いていた。
 その一方で我が身に代えても地球を守る、との想いが下手な地球人以上に強いダンは、後事をレオに託して、自殺行為とも云える特攻に出ることもしばしばあったし、実際に第13話ではマッキー3号で透明宇宙人バイブ星人の口腔内に飛び込み、これを仕留めている。
 それゆえにダンはこの時、アトランタ星人を道連れに自爆しようとしたわけだが、シルバータイタンはここに MACウランが絡んでいると見ている。
 と、いうのも、ウルトラシリーズに出てくる怪獣・宇宙人は一人乗り航空機の爆発に巻き込まれたぐらいで絶命するのは難しい、と考えるからである。
 前述のバイブ星人を特攻で倒した時にしても、口腔内に飛び込めた―人間で云えば口の中に包丁が突き刺さった程のダメージが想像できる―状態(この時点でバイブ星人はほぼ戦闘不能状態)で期待が爆破炎上したから、そのままバイブ星人は炎に包まれたが、通常、怪獣も宇宙人も、特定の弱点となる箇所や体内、生物的急所(頭部・心臓・etc)を除く体表上で重火器による爆発があっても、良くて多少の痛みを感じている程度である。
 この時のアトランタ星人とマッキー2号は明らかに密着していない。通常の爆弾程度なら良くてもアトランタ星人の両腕が吹っ飛んだ程度で終わりだったろう(通常はそれでも充分致命的だが)。ダン MACウランの威力を知ればこそ、アトランタ星人を倒せるだけの充分な試算と、レオを巻き込む恐れを察知し、「離れろ!」と命じたのではあるまいか?

 状況証拠とのみとなってしまったが、只でさえ核燃料となり得るウランの破壊力は驚異的で、それがMAC御用達の MACウランともなれば相当な破壊力があったであろうことは容易に想像できるだけに、具体的な力が発揮されなかったのは残念である。


何故再利用されなかったか?
 まず単純に、使用する機会に恵まれなかった、というのがある。第36話で登場した MACウランだったが、第37話での異次元獣スペクターとの戦いは、名前の通り異次元である鏡の中の世界が舞台となり、第38話ではレオ兄弟とウルトラ兄弟が戦うは、暴走したウルトラの星の影響で地球に天地災害が頻発するは、で何と戦っていいか分らない状態で、第39話では迫りくるウルトラの星を破壊する為にUN105X爆弾の使用を協議しなければならない有様で、第40話冒頭でMACは早々と全滅した。
 シルバータイタン的にはMAC最後の抵抗としてステーション内に運び込まれた筈の MACウランでもってシルバーブルーメを内部から木っ端微塵にして欲しかったものだが、ステーション内でモロボシ・ダンが行方不明となっている状態ではそれも叶わなかったということか……。

 余談だが、 MACウランが再利用されなかったの理由の一つに、ウランによる攻撃は核攻撃に他ならず、現実世界における核兵器に対する怒りの声が反映されたのではないか?と見ている。そう、あたかも『帰ってきたウルトラマン』でスパイナーの使用が最後の最後まで反対された様に…。


MACへの雑感
 多くの組織の中で、戦果、扱い共に悲惨なのがMACである、とみるのはシルバータイタンだけではないだろう。
 とはいうものの、決してMACは下らない組織等ではない。等身大の星人達と死闘を繰り広げ、地球人と宇宙人の考えの相違を暗に示し、嫌な長官が多かった第2期ウルトラシリーズで最後に登場した善玉長官がいい味を出し、ゲンとは別の道で、恐ろしい能力を持つ怪人・宇宙人達と死闘を繰り広げ続けたのである。
 実際、MAC以前の問題として、『ウルトラマンレオ』自体が長期シリーズの渦中における視聴率低迷に悩み、オイルショックの煽りから爆薬の予算も制限された当時ならではの事情もある。それゆえに制作陣もMACの設定に悩み、過去のウルトラマンが隊長を務めたのを皮切りに、レオ自身もM78星雲人ではなく、特訓シリーズ、昔話シリーズ、円盤生物シリーズ、と梃入れの嵐となった。

 今でこそ、それらの考察や奮闘努力や命題の評価が高い『ウルトラマンレオ』であるが、もう少し全体に余裕があれば、歴戦の勇士・モロボシ・ダンの指揮の下、等身大宇宙人・円盤生物と興味深い戦いを繰り広げるMACが見られたのではないかと思われる。



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新