File3.加納修 人死にを意に介さない冷血漢
名前 加納修(演:根岸一正) 登場作品 『仮面ライダー』第42話 改造体 ハエ男 職業 学生 前科 ひき逃げ 悪性分 甚だしい人命軽視傾向・罪悪感皆無
本人紹介 一言で云って、不良大学生。恐らくは金持ちの坊ちゃんで、それ故に何不自由なく、それゆえに自由気儘に育ったゆえか、傍若無人且つ罪悪感の欠片もない人物である。
作中冒頭、不良学生仲間とドライブに興じていたところ、石倉五郎(三浦康晴)が引率する小学生の集団下校の列に乱入。五郎の友人である岡野弘(後藤良英)を轢いてしまう。
無茶な運転で人を轢いただけでも許されざる行為であるが、加納はそのまま逃走。完全なひき逃げである。あ〜あ、父親であるプロフェッサー・ギルがこのことを知ったら、只じゃ済まないぞお前………(←道場主「作品が違う!!」)
これを目撃した一文字隼人はバイクでこれを追い………えっ?無免許?……………まあ、これはヒーローのダーク面を弾劾する作ではないのでスルーして(苦笑)、追いついた隼人は加納を難詰するが、加納は罪悪感の欠片も見せず、当然の様に恥じる様子も、謝罪の意も見せず、隼人にボコられた。
当然これで反省する玉ではなく、逃走を図った可能はその残忍性を見込まれた死神博士(天本英世)の指示で地中に引き摺り込まれる形でショッカーアジトに拉致され、ハエ男に改造されたのだった。
組織への勧誘 同じショッカー怪人と見込まれた者としては、前々頁の野本健よりも、前頁の無期懲役囚13号に近い。罪を罪とも、命を命とも思わない残忍性が「ショッカーの一員に相応しい。」と見込まれ、勧誘されたと云うより拉致された。
死神博士が期待したのは、能力よりも完全に性格。というのも、ハエ男に与えられた任務は大量殺戮や大都市破壊と云った大規模なテロ行為ではなく、単純に仮面ライダー・一文字隼人の抹殺で、その為に加納修の残忍性と隼人への(逆)怨みの念に期待が置かれていのが分かる。
実際、ハエ男に貸与されたのは人を洗脳薬で、一服すれば三日間はハエ男の命令に従うという物で、ハエ男は立花レーシングクラブの面々に服用させることで隼人の隙を付き、殺さんとしたものだった。
極めてピンポイントな目的による「勧誘」と云えよう。実際、加納は隼人にボコられた恨みを骨髄に抱いており、死神博士からの指令に積極的に従った。ただ、抹殺を本気で目論むなら、多少は戦闘能力も素体に求めるべきだったかもしれないが(苦笑)。
悪質性 死神博士をして、「この男の体には冷たい氷のような血が流れている。」と云わしめた冷血漢・加納修。既に上述しているが、この男の辞書に「罪悪感」という言葉は無い。
何せ、オープンカーで小学生の列近くで暴走するだけで自らの行為が周囲に迷惑どころか害悪をもたらすことを一顧だにしていない。百歩譲って事故を起こした後に後悔や謝罪の意を示せば、「単に阿呆だった。」と見れなくもないが、逃げ出したことから自らの行為と結果が法に触れることは分かっていたようだ(一応大学生だしね)。
だが、追いついてきた隼人に「貴様!それでも赤い血が通った人間かあ!!」と難詰されて返した台詞が、「うるせーなー!日本じゃなあ人間余るほどいるんだあ。一人や二人轢き殺したって、却ってせいせいすらあ!」だから恐れ入る(←道場主「入るなよ。」)。
成程、ショッカーに見込まれる訳である。
そんな加納だが、こいつが掛かる人間になってしまったのも、資産家にて我儘に育てられたことに起因していると見られる。恐らく裕福な家にて甘やかされて育ったことで何もかもが自分の思い通りになると勘違いし、都合の悪いことに対して謙虚に向き合う姿勢を欠片も身に着けなかったのだろう。
滝和也(千葉治郎)の調査で自宅を突き止めた隼人が加納の母を詰問した際、彼女は「修は不良なんかじゃありません。」と断言し、隼人達の話を頭から受け入れなかった。察するに、溺愛する余り息子を信じ切り、ひき逃げ等しないと頭から信じ込んでいたのだろう。
勿論、息子の所業を知った上で庇っている可能性も無いではないが、突然息子を詰問しにやってきた藤兵衛達に上等なコーヒーを振舞っている余裕の態度からも、溺愛による盲信の線が強いと思われる。
それゆえ、ハエ男を目の当たりにした際はショックのあまり気を失っていた。まあ、盲信が強い彼女のこと故、息子が怪物になったとは欠片も思っていないだろうから、単純に異形の存在を見た恐怖から失神しただけという可能性の方が高いとシルバータイタンは考えるが。
ともあれ、昭和中期のドラマに登場する悪質な金持ちのボンボンにはこんな奴が多かった。うちの道場主も幼少頃、近所に学校や地域のルールを丸で守らず、周囲にも(弱い相手限定で)乱暴に振舞う奴がいたが、その母親は周囲に抗議に対して逆ギレばかりする女だった。
結局、その家は父親の浮気が原因で気が付けば一家離散で姿を消していたが、道場主達は、「そりゃあんな女がかみさんじゃ浮気もするぜ。」と云って、せせら笑っていた。幼き日の道場主達の嘲笑も感心出来た話ではないが、それだけ教育者としてその母親の悪質振りは近所でも評判で、親が子をしっかり躾けないことが如何に問題かを幼心に植え付けられたものだった。
加納の母親は格別悪質な人物とは思わないが、溺愛による盲信と甘やかしが容易に想像され、それが加納修という男を自らの行為に対して顧みることや責任を持つことを知らない人物に育てたんだろう。
そして厄介なことに罪悪感を抱かない人間程、自分が被った害には(理由不問で)恨み骨髄に抱く。思うに、死神博士も加納の隼人に対する憎悪と、そのエネルギー源となる冷血さに注目したものの、対一文字隼人戦略以外に利用する考えは無かったのではないだろうか?
何せここまで我儘だと組織としては使い勝手悪い事極まりなく、隼人さえ倒せれば後は邪魔とさえ云えるだろうから。
最期 性格的にはショッカーに見込まれたハエ男・加納修だったが、戦闘能力で見ると素体は単なる大学生でしかない。我儘に育った過程からも武道やスポーツで心身を鍛えたとは思えず、いくら改造手術を受けて常人を遥かに上回る戦闘能力を身に着けたと云っても、柔道六段・空手五段の素体を持ち、何十体もの改造人間を屠ってきた仮面ライダー2号の敵では無かった。
結局、さしてライダーに対して強敵感を見せるでもないままライダー回転キックの前に戦死。当然加納修としても死亡したことになるが、その死を彼の母にどう知らされ、葬送を初めとするその後の処遇は作中で触れられていない。
恐らく、加納の母は息子が怪人になったことを信じないまま、永遠に戻らない息子を延々と待ち続けたのではないだろうか。甘やかし教育の付けが回ってきたとも云えるが、些か残酷な話ではある。
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令和六(2024)年九月日 最終更新