File.7ドクター・メデオ MAD SCIENTIST OF MAD SCIENTISTS
名前 ドクター・メデオ(演:三重街恒二) 登場作品 『仮面ライダー(スカイライダー)』第39話 改造体 無し 職業 無し 前科 不明 悪性分 自らの目的に伴う他者の被害無視・罪悪感皆無
本人紹介 ネオショッカーのマッド・サイエンティストである。
専門分野は人間の脳髄で、「月給100万円」という、令和の世なら真っ先に「闇バイト」という単語が頭を過りそうなバイト募集の広告に応じた若者達をネオショッカーの尖兵とすべく脳改造手術を施すのがこのドクター・メデオの任務だった。
こいつにとって任務は趣味と実益を兼ねたものらしく、良く云えば研究心旺盛、悪く云えば自分の研究の為に多くの人々が脳をいじられ、廃人同様に変化していくことに心の痛みを全く覚えない鬼畜漢だった。
求人広告に騙された若者が連れて来られるや「また脳みそがいじれるわい。」と露骨に喜び、魔神提督(中庸助)が筑波洋を捕らえた際には、「これほどの逸材、滅多に手に入らない。」として、その脳を解剖・研究することを申し出る程だった。
「儂は無能が嫌いだ!」との台詞で「能無し」・「敗者」と見做した者には冷酷な魔神提督がその申し出をあっさり了承したのだから、ドクター・メデオの研究者としての能力は優れているのだろう。
組織への勧誘 実のところ、こいつを「根っからの悪党」に加えて良いものか否かには今でも躊躇いを覚えることがある。というのも、コイツの正体が今一つはっきりしないからである。
本作では改造人間にされた者が、改造手術によって悪の組織の一員となる前から充分に悪人で、(余り認めたくない表現だが)「生まれついての悪」とすら云いたくなる奴を採り上げている。
その例に習うなら、このドクター・メデオ(三重街恒二)は改造人間にされているのか否かもはっきりしない。また、悪の組織に協力している科学者の多くは、本来善良でありながら、拉致されたり、家族を人質に取られたりしたことで、科学を悪用する研究や開発を強要されている者が多い一方で、組織の力を自らの研究に利用出来ることで嬉々として悪に忠誠を誓っている者―所謂、マッド・サイエンティストも決して少なくない(その中間的な立場で葛藤している者もまた多い)。
ただ、マッド・サイエンティストも、マッド・サイエンティスト故に組織に加担した者もいれば、悪の組織における悪の研究に従事する内に良心と理性を失ってマッド・サイエンティストとなったものもいると思われる。ドクター・メデオがそのどちらなのかは経歴が不明である以上、何とも云えないのだが、シルバータイタンはいくつかの要因を傍証として、ドクター・メデオが根っからの悪人と断じた。その詳細は下記に譲りたい。
悪質性 何せ、アリコマンド養成計画に嬉々として従事していたことから、ドクター・メデオの性格にはかなりの悪質性を感じずにはいられなかった。何せ、このネオショッカーの計画、犠牲者達の悲惨な姿は見ていてかなり気分の悪いものがあった。
途中でガマギラスに殺された一名以外、全員が生還し、元の体に戻れたので、概ねハッピー・エンドだったが、脳をいじられ、正気が保てなくなり、日を追うごとに自分が得体の知れないゾンビ然とした存在になることを自覚させられる姿は正視に耐えなかったが、人間をそんな姿に追いやる悪事に、それに巻き込まれる新たな犠牲者を迎えるのに、ドクター・メデオは実に楽しそうで、それが例えネオショッカーの洗脳を受けたものだったとしても、その時点での彼を人格者と見る者は皆無だろう。
加えて、やはりシルバータイタンはこのドクター・メデオの立ち居振る舞いを素の性格によるものと思っている。推測だが、人間の脳髄という未知の領域で、奥深いものを研究するに当たっては生理学だけではなく、精神や深層心理的なものに対する深い知識や洞察が必要不可欠と思われる。となると、脳髄の研究は精神を薬物や機械にコントロールされた者には無理だと考える。ゆえにドクター・メデオは改造人間ではなく、自らの意志でネオショッカーに忠誠を誓い、脳の研究に従事していると考える。
それゆえ、ドクター・メデオは能力だけではなく、性格もまた「ネオショッカーの一員に相応しい。」と目されているのであろう。アリコマンド養成計画の為に脳改造された犠牲者の在り様は生死に耐えれたものでは無かったし、大脳という人体において極めて重要で且つその損傷が致命的な影響をもたらす部位にて様々な実験を行えば、その過程で悲惨な最期を遂げた者が数多く続出しているであろうことは容易に想像出来る。
もし、家族や自身の命をたてに脅迫されてネオショッカーに忠誠を強要されている者なら、かかる研究に従事すれば感情を殺さずにはやっていけないだろう。場合によっては良心の呵責から感情どころか自分自身を殺しかねない。くどいが、ドクター・メデオはそれに嬉々として取り組んでいた。
話は逸れるが、現実の歴史として、旧大日本帝国陸軍に関東軍防疫給水部隊、通称・731部隊と呼ばれる研究機関があった。悪名高い人体実験を行っていて、戦後本来なら重大な戦犯として裁かれる所をアメリカ軍に研究成果を提出することを条件に訴追を免れ、その研究成果を基に戦後の医学界に籍を置いた者も多いと云われている。
本作では真偽を含むその実態については触れないが、本来の目的は「防疫給水」とある様に、戦地における伝染病・風土病の感染を防ぎ、安全な飲料水を得るのが任務で、それに派生して様々な細菌研究を行った過程に人体実験を行ったとされているから、人道上言語道断な人体実験もあくまで防疫を目的としたもので、犠牲者の悲惨な死を喜んでいたとは思いたくない。中には捕虜に対して人体実験を行う中で罪の意識から発狂したり、自ら命を絶ったりした者もいると聞く。
つまり、人体実験とはそれほど罪深い行為で、731部隊が人体実験を行っていたことを必死になって否定する者も、それが本来許されないこと故に、「そんなことを行っている筈がない。」として否定したり、庇ったりしていると信じたいところである。
それゆえ、脳をいじり、人が人でなくなる悲惨さを意に介せず、嬉々としているドクター・メデオは心底許せないし、もし実在の歴史にて人体実験に笑いながら従事していた者がいたすれば八つ裂きにしてやりたいぐらいである。
最期 上述した様にドクター・メデオが生身の人間なのか、改造人間なのかは判然としない。任務の都合上、脳改造は受けていないと推測しているが、恐らく肉体も人間のままだろう。
というのも、彼は実験材料とされた若者達が仮面ライダーストロンガーによって連れ出されようとしているのを阻止(と云うか、愚痴混じりの抗議)しようとして、ストロンガーの電気ショックを受けて絶命した。
電気ショックはブラックサタンの戦闘員が気絶する程度とされているので、初老男性に見えるドクター・メデオがこれで絶命したことから、彼は戦闘員程度の簡易改造すら施されていない、見た目通りの初老で文弱の徒だったと思われる。
注目したいのは、ストロンガーによるドクター・メデオ殺害に殆ど非難の声が上がらないことである。悪の組織の構成員とはいえ、改造人間ではない者がライダーの技を受けて殺されることは非常に稀である。
歴戦の勇士である仮面ライダーと、改造人間ならざる研究員の戦闘能力差は非常に大きく、ましてや必要に応じて電気エネルギーの大小をコントロール出来るストロンガーならドクター・メデオを気絶させて捕らえ、法の裁きを受けさせることも充分可能だったことだろう。それゆえ、ライダーがライダーの技でもって生身の存在を殺害するとなると一抹の批難が生まれるが、ドクター・メデオ殺害を非難する声は聴かれない。
それだけ、ドクター・メデオが悪質な存在と捉えられればこそだろう。
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令和六(2024)年一〇月一七日 最終更新