10.ガイナニンポー…本物がいるのに潜入。間抜けはどっちだ?

名前ガイナニンポー
肩書怪魔獣人
出身地クライシス帝国
初登場1986年7月16日放映『仮面ライダーBLACK RX』第37話「牙むく獣人忍者隊」
偽装手段本人の変装
偽装対象霞のジョー、仮面ライダー1号
偽装目的敵陣営への潜入
偽装完成度物凄く高い
本物との外観上の相違皆無
看破者吾郎、仮面ライダー1号(本人)
登場作品『仮面ライダーBLACK RX』
概略 海兵隊長であるボスガン(藤木義勝、声・飯塚昭三)率いる怪魔獣人大隊の一員。錫杖を得物とし、頭に金環を載せ、猿の様なその容姿を一言で言い表すなら「クライシス帝国版孫悟空」である。

 滅びの運命を背負った故国・クライシス帝国が地球移住計画を企画し、その前段階として人類を屈服させんとするも、数々の計画は仮面ライダーBLACK RX・南光太郎(倉田てつを)の妨害によって次々とt材しており、ボスガンは過疎の村・風神村を移住前の一時的な移民居留地とするべくこれを占拠した。
 その急先鋒として、特別な戦闘員である獣人忍者隊を率いたのが怪魔獣人ガイナニンポーである。また、ボスガンもチャップの特別隊であるチャップ悪魔分隊を率い、かなり作戦に力を入れていた。

 ガイナニンポー並びに獣人忍者隊は風神村の大人達を次々捕らえ、風神村には怪魔界と同じ環境になるよう亜硫酸ガスを撒き、捕らえた村人達は環境変化を図るための実験台にされた(あくまで生存環境を整えるのが目的だったため、人体実験の中では比較的緩い方だったが)。
 だが、村人達の中で分校の子供達と、大沢教諭(新居一典)には逃げられた。殊に大沢教諭には村の外にまで逃げられたため、光太郎達の介入を招いた。当然だが、これにはジャーク将軍(高橋利通、声:加藤精三)が激怒したため、ガイナニンポーには光太郎一行の迎撃が命ぜられた。

 この迎撃戦においてガイナニンポーはに侵入して来た光太郎の弟分・霞のジョー(小山力也)を捕らえ、亜硫酸ガス実験室に放り込むと、自らが偽霞のジョーに変身し、光太郎達の元に戻り、探ってきた秘密基地を案内すると装って、本当に連れて行った(苦笑)。もっと危険な罠を張ったところにでも誘い込めばいいのに(苦笑)。
 ともあれ、光太郎の隙を突いてこれを打倒せんとしたが、かなりアクロバティックなアクションや獣人忍者隊を駆使しても仮面ライダーBLACK RXには抗し得ず、リボルクラッシュの前に倒れた。

 そして約二ヶ月後の第45話でガイナニンポーは霊界怪人として復活した。既に最終回間近で、怪魔獣人大隊隊長ボスガンも戦死しており、諜報参謀マリバロン(高畑淳子)が駆使する怪魔妖術の奥義により、ガイナカマキル、キュルキュルテン、アントロント、エレギトロン、メタヘビー、スカル魔スター、ズノー陣等とともに霊界から召喚された。
 真っ白な容姿と、不死身の肉体を持った強敵として甦ったガイナニンポーは(作中明確な指摘があった訳ではなかったが)霊界怪人の先鋒的存在として、10人ライダー、霞のジョー、白鳥玲子(高野槇じゅん)、的場響子(上野恵)、吾郎(小野寺丈)達の作戦会議の場に偽仮面ライダー1号として潜入。
 正体発覚後も、霊界怪人達の先頭に立ってライダー達と交戦した。

 霊界怪人は妖術で甦った存在で、「既に死んでいる」という特性上、その肉体は不死で、戦闘能力自体は大したことなくてもその不死身振りでライダー達を追い込んだ。しかしマリバロンが、妖術を停止させる金の羽を潜んでいたバイオライダーに奪われたため、霊界怪人達はそれを貼られて次々と機能停止。最後の最後まで暴れ続けたガイナニンポーも最前変身した仮面ライダー1号に金の羽を貼られ、動けなくなったところを他の霊界怪人共々、バイオライダーのスパークカッターを受け、霊界に追い返された。


偽物としての暗躍 素晴らしい変身能力を持ち、久々に「偽物=厄介な敵」との認識を新たにしてくれたガイナニンポーだったが、変身能力の高さに比して、その活用振りには「?」がつく。

 都合2回登場したガイナニンポーだが、前述した様に1回目は偽霞のジョーに化けた。容姿では完全に光太郎達の目を欺き、本物の霞のジョーを上回るアクションと、猿のような仕草を一瞬見せたことが微かな違和感を南光太郎に抱かせたことを除けば、怪しむには至っていなかった。
 既に前述したが、問題は光太郎達を騙しおおせた変身能力ではなく、騙した光太郎達を本当の秘密基地に連れて来たことにあった(笑)。霞のジョーを初め、基地に囚われていた風神村の村民達が救出され、亜硫酸ガス発生装置も壊されたことは言うまでもない(ま、大沢教諭の村脱出が不測の事態だったため、罠を張る時間が無かったと取れなくはないが)。

 2度目の登場となった第45話での変身能力行使は意味不明だった(苦笑)。仮面ライダー1号に化け、10人ライダー達の作戦会議の場に潜り込んだ訳だが、ガイナニンポーが化けた偽1号ライダーはマフラー・手袋・ブーツの色まで本物と同一(笑)で、途中まで誰も気付かなかったことがおかしい事でも何でもなかったので、変身自体は完璧だった。
 ただ、本物の1号ライダーがいる場に一緒になって入っていたのではバレるのは時間の問題(笑)で、ガイナニンポーは隙を見て他のライダーを攻撃した訳でも、本物の信用が失墜するような行動を取った訳ではなく、単に本物に成り済まして本物同様渡された被災地図を見ていただけだったので、潜入に何の意味があったのかは全くの不明であった(苦笑)。
 ま、バイオライダーが金の羽を奪っていなければ10人ライダーは疲労の果てに討ち果たされていた可能性が高かったことを考えれば、悪戯心から来た嫌がらせでも良かったのかも知れないが。


正体暴露 容姿に関していえばガイナニンポーの変身能力は素晴らしく高い。少なくとも見た目でバレたことはなく、行動面でも「普段とチョット違うかな?」と思わせるレベルだった。
 しかも第37話に関していえば、同話における霞のジョーは第26話でボスガンに重傷を負わされて以来、約3カ月振りに復帰したもので、本人曰く、「パワーアップして戻ってきた。」とのことだったので、多少普段と仕草やアクションが異なっても違和感は少なかっただろう。実際、白鳥玲子は本物を上回る偽霞のジョーのアクションに「本当にパワーアップして戻って来たのね!」と絶賛していたのだから。

 また、直接指摘はなかったが、仮面ライダーBLACK RX・南光太郎の偽物看破能力は決して低くない。光太郎は第41話で的場響子が怪魔妖族百目婆ァに憑依された際は僅かな歩調の違いで響子がいつもと違うと怪しみ、これを基に正体を看破してもいた。
 その光太郎の観察眼を見事に欺いたのだから、変身能力には全く問題なかった。では何が問題だったのか?を言及すると、第37話でも、第45話でも、「本物と同席した」の一言に尽きる(笑)
 第37話ではガス室から本物の霞のジョーが読唇術を使えないシルバータイタンにもはっきり分かる口の動きで「そ・い・つ・は・に・せ・も・の・だ!」と伝えたことで、第45話では10人ライダーによる作戦会議の場に仮面ライダーが11人いたことで(笑)発覚した。
 特に後者では、いくら容姿が完璧でも本物の1号ライダーがそこにいた上、本人による「偽物はお前だー!」の一言に馬鹿正直に正体を現したのだから、本当に悪戯レベルで終わってしまった(苦笑)。せめて本物と取っ組み合えばどちらを攻撃したらいいのか他の9人ライダーも迷っただろうに…………。
 一応の弁護(?)をすれば、仮面ライダー1号は2号・V3とは以心伝心が可能だったから、「11人いる!」となった段階で猿芝居は無用だった、と考えられなくはない。

 ガイナニンポーの変身能力はストーリー的には充分面白かった。だが、もう少し活かし様があったのが惜しまれるところでもあった。


余談 全然関係ないが、「クライシス帝国版孫悟空」であるガイナニンポーに姿を真似られた霞のジョーを演じた小山力也氏は、後年アニメ『パタリロ西遊記』で渋い軍人然とした沙悟浄の声を当てた。
 「それがどうした?」と言われても困るが(苦笑)。


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平成二七(2015)年一一月三〇日 最終更新