9.ドロリンゴ…せ、せこ過ぎる……

名前ドロリンゴ
肩書ネオショッカー怪人
出身地ミンダナオ島
初登場1980年8月29日放映『仮面ライダー(スカイライダー)』第48話「4人のスカイライダー 本物はだれだ?」
偽装手段本人の変装
偽装対象スカイライダー
偽装目的本物の信用失墜
偽装完成度ほんの少し注意すれば分かるレベル
本物との外観上の相違マフラー、ブーツの色
看破者特になし
登場作品『仮面ライダー(スカイライダー)』
概略 ネオショッカーの魔神提督(中庸介)が海外から招聘した怪人達の中の一人で、ミンダナオ島(フィリピンで2番目に大きな島)からやって来たアメーバ型の改造人間。  その軟体性を活かし、様々な形態に体を変える能力を有し、また、どろどろした体は攻撃した相手を体内に取り込み、体液で溶かすという攻撃も可能だが、直立しない本体としての攻撃力は殆どなかった。

 その変身能力を利用してスカイライダーに化け、悪事(と言うより悪戯)の限りを尽くし、信用失墜に務めた。また、同じ姿で複数体に変身することも可能で、戦闘時にはスカイライダーが何体もいるように見せて敵(=がんがんじい)を惑わせた。
 また社会的に信用の失墜したスカイライダーをネオショッカーに引き込む謀略も展開したが、肝心の戦闘能力は偽スカイライダー 3体で掛かっても本物には遠く及ばず、水平回転チョップを受けてドロリンゴの本体に戻ったところに留めのスカイキックを受けて爆死した。


偽物としての暗躍 セコイの一言である(苦笑)偽スカイライダーに化けて悪事を働き、本物のスカイライダーの社会的信用失墜を図ったのは王道だが、「悪事レベル」、「信用失墜対象」、「被害者」のすべてが「子供」の域を出なかったのが逆に凄かった(笑)

 何せスカイライダーの評判を貶める為にやったことが、「子供が作った砂山を壊した」、「子供の水鉄砲を壊した」、「子供に無理矢理アイスクリームを食べさせた」という、「悪戯」の域を出ないものばかりで(苦笑)、殊にアイス無茶食わせの際には、「腹を壊しちまいな。」との悪態をついたり、止めに入った店員の顔にアイスを押し付けたり、という「子供の悪戯」レベルを脱しないものばかりだった。
 中には浩介少年(安田勝明)轢き逃げという残忍なものもあったが、これは意図的に引いたものではなく、偽スカイライダーを本物と信じて、その悪事を止めようとしたが為の事故という要素が強かった。故にやはり偽スカイライダーの悪事は「悪戯」の域に留まった。

 何故にすべてのスケールが「子供」の域に留まったかは不明だが、狙った効果自体は有った。アリコマンドが化けた青年の唆しもあって、子供達はすっかりスカイライダーを敵視知るようになり、子供達は矢田幹次(桂都丸)の説得にも耳を貸さず、青年の一言で勘次にも牙を剥いた。
 とはいえ、ただの子供による袋叩きで、勘次は相手が子供なので抵抗こそ出来なかったが、然したるダメージを受けた訳でもなく、子供達の敵意はスカイライダーのボード人形にボールをぶつけるレベルで、「殺意」や「害意」には程遠かった(笑)。
 もし筑波洋(村上弘明)が、子供達に嫌われたことによる精神的ダメージを考慮しないとしたら、魔神提督が提唱した「偽仮面ライダー作戦」はスカイライダーに何のダメージも与えていないと云えた(笑)。

 ただ魔神提督の立案に付け加えたドロリンゴの作戦はストーリーを面白いものにしていた。ドロリンゴは事故に遭った浩介少年を人質に、筑波洋にネオショッカーの仲間になれ、と強要した。
 社会的信用を失い、社会に居場所を失くした者は「自分の生きられる世界はここしかない………。」と思えば、それが反社会的な組織であっても身を投じてしまうことは現実もある話である。暴力団員として罪を犯し、警察に逮捕された犯罪者が出所後に再度暴力団に戻ってしまう要因の一つにも「居場所」と言う考え方があるだろう。
 ドロリンゴが取った方法を有名な小説で例えるなら『水滸伝』が挙げられる。同作品に出てくる108人の好漢の中には、法的には山賊でしかない梁山泊に入る気など更々なかったのに、智多星呉用の謀略で罪を被せられて一般社会にはいられないようにして入山を余儀なくされた者達もいる(例:霹靂火秦明、撲天鵰李応、美髯公朱仝等)。
 勿論、これは現代日本人の感性ではかなり眉を顰めるものだが、それだけにネオショッカー怪人であるドロリンゴが考え、実践する分には面白かった。
 応じた(振りをした)洋に、ドロリンゴは「言葉だけでは信用出来ない。」として、証に喫茶ブランカの面々の首を持ってい来させて、洋を一般社会に戻れない殺人者としてネオショッカーに迎えようとした謀略振りも良かったし、それを看破した洋が巧みな芝居で谷源次郎(塚本信夫)・沼二郎(高瀬仁)の協力を得てドロリンゴを出し抜いた展開も面白かった。
 何せ谷と沼は、お目付のアリコマンドに変装して、ドロリンゴの隙を突いて見事に浩介を奪還したのだから、特に三枚目役を振られることの多い沼にとっては最大の活躍シーンとなったのも特筆に値する。

 結論、ドロリンゴ偽スカイライダーとしての行動や目的はショボかったが、派生した作戦の狙い、そこから生まれた展開はこの第48話は面白いものにしたと言える。


正体暴露 少なくとも子供及びがんがんじい(苦笑)の眼は誤魔化せていた。偽ライダーのお約束(笑)でマフラーとブーツの色が黄色で、外観上の相違となっていた(何故か手袋は本物と同色)が、勿論指摘するものはなかった。

 また、正体暴露に関しても余り意味はない。筑波洋の仲間であるブランカの面々は偽スカイライダーの為した悪事があまりにセコカったことから、直の目撃者すらこれを本物と信じず(笑) 、最終戦闘時のがんがんじい以外に主要メンバーで惑わされた者はいなったので。

 繰り返しになるが、ドロリンゴによる偽スカイライダーに化けて謀略は、コンセプトはともかく、行動はとにかくセコかった。その「セコさ」を笑い飛ばすか、不満に思うかで第48話の評価は分かれるだろう。


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平成二七(2015)年一一月二二日 最終更新