3.エースロボット…嫌がらせの為だけに製造された存在
名前 エースロボット 肩書 超人ロボット 出身地 マイナス宇宙ゴルゴダ星 初登場 1972年7月7日放映『ウルトラマンA』第14話「銀河に散った5つの星」 偽装手段 本物に似せた偽造 偽装対象 ウルトラマンA 偽装目的 模擬戦闘に使用してのウルトラ兄弟への嫌がらせ 偽装完成度 チョット注意すれば分かるレベル 本物との外観上の相違 ごてごてと着いたプロテクター 看破者 看破の必要なし 登場作品 『ウルトラマンA』
概略 異次元人ヤプールがその科学力をもって製造したロボットである。
目的はウルトラ4兄弟(ゾフィー、ウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン)への嫌がらせの為だけというのが如何にもヤプールらしい(嘲笑)。
前話となる『ウルトラマンA』第13話で、ヤプールは偽造ウルトラサインでもってウルトラ4兄弟をマイナス宇宙にあるゴルゴダ星に誘き寄せ、ウルトラ兄弟の弱点である冷気でもって行動力を奪い、十字架に拘束することに成功していた。
ヤプールはゾフィーからM87光線を、ウルトラマンからスぺシウムエネルギーを、セブンからエメリウムエネルギーを、帰ってきたウルトラマンからウルトラブレスレット奪い、異次元超人エースキラーのものとした。
エースキラーは名前の通り、ウルトラマンAを抹殺することを目的として開発されたサイボーグで、既にウルトラ兄弟を人質にすることでウルトラマンAの殺し屋超獣バラバに対する抵抗力を奪っておきながら、かかるサイボーグまで開発したのだから、ヤプールの陰湿さは長いウルトラの歴史の中でも群を抜いている。
そんなサイボーグを作り上げたヤプールが、エースキラーの模擬戦闘用に同時開発したのがエースロボットだった。
ヤプール曰く、「我等のヤプールの科学力をもってすればAの1人や2人を作るのは造作もないことなのだ。」とのことで、その言葉を証明するかのように、エースロボットはメタリウム光線すら放った。
だがエースロボットの存在意義は、エースキラーの能力テストと同時に、「ウルトラ兄弟の愛する弟であるAがどんな死に様を遂げるのか?を嫌がらせ的に見せつける。」という陰湿な目的にあったと云っていい。
当然の様にエースロボットの放つメタリウム光線をエースキラーは涼しい顔で受け止め、逆にエースキラーがヤプールの指示の下に放つスぺシウム光線、エメリウム光線、ウルトラブレスレットに散々打ちのめされた挙句、倒れ伏したところにM87光線を受けて木っ端微塵に砕け散った。
偽物としての暗躍 前項とほぼ被るが、エースロボットの役割は、エースキラーの技で良い様にいたぶられて、嬲り殺しにされる様をウルトラ4兄弟に見せつけるものだった。
従来の偽物が暗躍した時のような、「本物の社会的信用失墜。」や「敵陣営への潜入」といった役割はエースロボットにはなかった。
勿論、ヤプールの解説(?)もあったから、ウルトラ4兄弟の目にも、エースロボットが「ウルトラマンAを似せて作ったレプリカ」なのは明らかだったが、4兄弟に「近い将来、愛する弟がこんな風に嬲り殺しにされる………。」という恐怖心・絶望感を与えられれば、偽物であることがバレバレでも問題はなかった。
実際、ウルトラ4兄弟は十字架に拘束されて身動きできない目の前で、弟そっくりな存在がいたぶられる様に身悶えし、ナレーション(岸田森)も、
「それは目を覆うばかりの凄惨な戦いだった。今まで幾多の怪獣や宇宙侵略者達を倒してきたウルトラ兄弟達の武器が、今、彼等の最愛の弟であるウルトラマンAに使われようとしていた。」
と無表情なウルトラ兄弟に替わって(笑)、その気持ちを代弁していた。
また最後にM87光線でエースロボットが木っ端微塵にされた時のインパクトは強く、ウルトラ兄弟のみならず、TVの前の視聴者も、「レプリカ」と分かっているのに驚いたものだった。
ゆえに目的が目的だったこともあって、エースロボットは「本物そっくりな容姿と能力」に期待されたヤプールの目的自体は立派に果たしたと云える。
まあ、この後エースキラーは本物のウルトラマンAに敗れたから、エースロボットの大任遂行も、ヤプールの戦略的には何の意味もなかったが、映像インパクトに、「偽物」と分かっているのに貢献したことは大いに褒められていいだろう(笑)。
正体暴露 エースロボットはコピー元であるウルトラマンAと対峙していないし、地球人の目にも触れていないので、「正体暴露」に関しては考察する意味がない。
それゆえ、本物との差異と、それが衆目に曝された際の「if」について語りたい。
エースロボットの、本物との外観上の相違は全身にゴテゴテと付いた見るからに重そうなプロテクター(←設定によると「強化パーツ」とのこと)にある。前例となるにせウルトラマンやにせウルトラセブンと比較しても、外観上の相違は大きい。
にせウルトラセブンは前頁で触れたように、関節部と腹部にプロテクターが付いているが、にせウルトラセブン自身が上空や海中をよく動くので、じっとしているところを遠目に見た場合でないと、案外本物っぽく見えるかもしれない。だが、エースロボットはプロテクターが金色で、にせウルトラセブンのそれよりも幅広で、しかも動きが鈍いから、もし地球上に降り立ったら、偽物であることはバレバレだったと思われる(笑)。
この考察から同時に、エースロボットはサロメ星人が後年行おうとしたような、「本物と同じスペックによる大量攻撃」も難しかったと思われる。
エールロボットはメタリウム光線こそ放ったものの、本物に比べて「技の多様性」と「耐久力」と「俊敏性」が大幅に劣ったと思われる。
本物のウルトラマンAは光線技を取っても、タイマーショット、バーチカルギロチン、パンチレーザーと多様で、アクロバティックな動きは4人の兄に勝り、後にはレオキック(←数々の戦いを経て鍛えに鍛えられた一撃だった)をもかわした。
本物のAがエースキラーに勝てたのには、「M87光線が放たれなかった。」、「4兄弟が切り札的に譲渡したエネルギーでスペースQが放てたから。」といった相違もあったにはあったが、Aは肉弾戦において互角以上に戦い、スペースQを放つ直前にエースキラーが放ったウルトラブレスレットを弾き飛ばしもした。これは明らかにエースロボットには出来なかったことである。
つまるところ、エースロボットはメタリウム光線が放てて、本物そっくりの容姿で嬲り殺しにされる様をウルトラ4兄弟に見せることが出来れば役割的には充分だった。「見せつけ」ではなく、真の意味での模擬戦闘を行うのなら、もっと素早く動けるエースロボットを作る必要があった。
ここからは推測だが、ヤプールの云った、「我等のヤプールの科学力をもってすればAの1人や2人を作るのは造作もないことなのだ。」は7割方ブラフ(はったり)だったと思われる。
容姿や、一部能力に関してはコピー出来ても、総合力では本物の遠く及ばない粗悪品としてのコピーしか出来なかったのだろう。
その証拠になるかどうか微妙だが、後年、ヤプールはエースキラーの例に倣った、メビウスキラーやビクトリーキラーと云った、対ウルトラマン用のサイボーグ超人を作ったが、ウルトラマンのレプリカはエースロボットが最初で最後だった。
嫌がらせ目的しか考えてなかったのか、コピーとしても粗悪なものしか作れない科学力でしかなかったのかは詳らかではないが(笑)。
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令和五2023)年九月二一日 最終更新