4.ショッカーライダー…本物×3の恐怖

名前ショッカーライダー
肩書ゲルショッカーのホープ
出身地ゲルショッカー日本支部
初登場1972年12月23日放映『仮面ライダー』第91話「ゲルショッカー恐怖学校へ入学せよ!!」
偽装手段本物を基にした製造
偽装対象仮面ライダー1号
偽装目的本物の信用失墜、敵地への潜入・壊滅、(本物と同じスペック+α)×人数を利しての本物抹殺
偽装完成度普通ならバレバレ
本物との外観上の相違マフラー、手袋、ブーツの色
看破者一文字隼人
登場作品『仮面ライダー』
概略 恐らく、「ヒーローの偽物」というものが、如何に恐ろしく、厄介な存在であるか?を示したことにかけてはババルウ星人と二大双璧ではないか?とシルバータイタンは見ている。

 ゲルショッカーが、本物の仮面ライダー1号のデータを元に作り出した、同等の能力を持つ仮面ライダーそっくりの改造人間で、ブラック将軍(丹羽又三郎)は「ゲルショッカーのホープ」と呼んでいた。

 第91話のラストで、仮面ライダー1号は催眠状態にされていた少年ライダー隊の少年少女を救うために捨身の攻撃に出て、ムカデタイガーとともに崖下に転落し、消息を絶った。
 ブラック将軍は、仮面ライダー1号が消息不明となったこのタイミングにこのショッカーライダーを世に放った。目的はアンチショッカー同盟や、少年仮面ライダー隊と云ったゲルショッカーの敵対組織にショッカーライダーを「味方」として内部潜入させ、内部から崩壊させることにあった(ストーリー上のメイン目的は「同盟のコンピューターが弾き出したゲルショッカー首領の正体データの抹殺」だったが、最終的にこれは虚偽だった)。

 ゆえにショッカーライダーの容姿は仮面ライダー1号にそっくりだった(←手袋マフラーブーツについてツッコミたくて仕方がない方々ももう少しだけ御待ち下さい(笑))。
 特にメインとなったショッカーライダーNo.1は、その正体がばれるまで、立花藤兵衛(小林昭二)、滝和也(千葉治郎)、アンチショッカー同盟の面々の前でも「本物の仮面ライダー1号」として振る舞い、彼等の前では本郷猛(藤岡弘)の声で喋った。

 仮面ライダー1号ショッカーライダーは容姿が似ているだけでなく、能力も似ていた。肉弾戦は完全に互角で、ライダーキックを放ったり、サイクロン号を駆使したりという能力面でも甲乙付け難かった。加えて、オリジナルには無い別の能力も保持していた(詳細後述)。
 ゲルショッカーサイドでは端から「仮面ライダー1号と全く同じ能力」を目的に改造していた。恐らくは旧ショッカーに残されていた改造データを基にしたのだろう。同時に仮面ライダー1号が生きていることも可能性として考慮に入れていた。
 ゲルショッカー編に入ってから、本郷猛は当時の藤岡氏の諸事情で度々行方不明に陥っており、その都度生きていた仮面ライダー1号がまた姿を現すことは充分考えられた(実際そうなったし)。
 だがもし、本物と偽物が対峙するようなことになった際、「完全に同じ能力」では運次第ではどちらが勝つか分からない(戦い慣れしている分、本物の方に分があるとも云える)。ブラック将軍もそれは先刻承知していた様で、ハエトリバチやエイドクガーとタッグを組ませ、有利な状況を作り出した。
 実際、前者は互角だった本物と偽物の戦いを一気に本物優位に運ぶことに成功した(自身は一瞬のスキを突かれて海中に没したが)。後者は実際に1度仮面ライダー1号を破って、少年仮面ライダー隊の面々を拉致することに成功した。

 更に手が込んでいたのはショッカーライダーNo.1No.6の6体までいたことである。それまでショッカー並びにゲルショッカーは幾度か仮面ライダー1号に勝利しかけたことがあった。だがそんなときに限って偶然仮面ライダー2号が帰国して、その好機を潰された(逆パターンもあり)。それゆえ、頭数を揃え、本物を上回る数を擁していたのは適切な処置と云えた。
 仮面ライダー2号ショッカーライダーNo.1が対峙していた時、その間隙を縫ってショッカーライダーNo.2が少年仮面ライダー隊本部を襲撃していることを知らされ、「ショッカーライダーにも2号がいるのか?!」と驚愕した一文字隼人(佐々木剛)だったが、結局は6体いたのだから、正面切っての戦闘ではショッカーライダーズの方が断然優勢だった。

 だが、仮面ライダー1号2号には幾多の死闘を潜り抜けてきた「キャリア」があり、1対1ではショッカーライダーとは互角か、若干優勢だった。そして「悪」にはない、「正義」サイドの専売特許である「絆」が為す、チームワークが本物にはあり、そこに立花藤兵衛考案のライダー車輪が加わって、6体のショッカーライダーは互いがぶつかり合ってその身を砕き、一網打尽にされた。


偽物としての暗躍 偽物が持つ2つの恐ろしさを具現化していたのがショッカーライダーであった。
 1つは「本物への成り済まし」である。第93話で一文字隼人が指摘するまで、アンチショッカー同盟員達はおろか、藤兵衛さんも滝もショッカーライダー仮面ライダー1号と思い込み、ゲルショッカー首領の正体を記録したコンピュータテープ(通信筒みたいなやつだった)を奪われたり、時限爆弾とすり替えたにせテープがセットされたり、ライダーガールズ並びに少年仮面ライダー隊員達が攫われたりした。

 もう1つはその能力である。前述と被るので単純に言及するが、「1対1」で互角なところに「2対6」(仮面ライダー1号2号ショッカーライダー×6)という3倍のハンデは脅威である。戦い慣れと、コンビネーション技(ライダー車輪)で勝利したとはいえ、それが無ければ本物の敗北は必至で、第93話のラストから第94話の冒頭にかけて最初に8人の仮面ライダーが戦った際にはアンチショッカー同盟のリーダー・小暮精一郎(上野山功一)が放ったガス弾に紛れることで辛くも危地を脱していた。

 ライダー車輪発動前後だけを見ると、しょぼく見えるショッカーライダーだが、本物と見分けのつかない容姿(←ツッコミは今しばらくお待ち下さい)、本物より頭数の多い戦力は、迎撃態勢が整うまで充分な脅威だった。
 何より、「偽物を認識した途端に本物まで疑いの目で見なければならなくなる。」という脅威を具現化したショッカーライダーが特撮史に残した足跡は極めて大きいと云えよう。


正体暴露 お待たせしました!ライダーファンの皆様、ショッカーライダーの本物との相違をツッコミましょう!(笑)

 それでは皆様、ご一緒に



 マフラー手袋とブーツの色がちゃうやんけ!!!」



 御協力ありがとうございました(笑)。
 最初に登場したショッカーライダーNo.1は声まで偽装し、その存在が「偽物である」と暴かれたのは、第93話でのことだった。
 アンチショッカー同盟日本支部に届けられた、首領の正体を弾きだとするコンピューターテープをショッカーライダーNo.1はその容姿を利用して詐取したが、そのテープをゲルショッカーアジトのコンピューターにかけると、そのテープはダミーで、本物は南米支部から届けられるとのことだった。
 ゲルショッカーサイドでは殺人音波を発するように作られた偽テープを滝達に渡していたのだが、慌ててショッカーライダーNo.1をアンチショッカー同盟の元に戻して、殺人音波作戦を中止した。そしてそこに本物のテープを届けに来たのは一文字隼人だった。
 一文字の持ってきたテープを「私が預かろう。」としたショッカーライダーNo.1だったが、そのとき一文字が、
 「ライダー、いつからそのマフラーだ?」
 と詰問したことで、ようやくにしてショッカーライダーという偽物が存在することが白日の下に曝された
 以後、ショッカーライダーはその容姿において本物に成り済ますことはなかった(厳密には、この直後少年仮面ライダー隊本部にいた面々がショッカーライダーNo.2に騙されたのだが)。

 一文字の指摘を見て、TVの前で多くの方々が「やっと気付いたんかい!!」というツッコミを入れたと思う(笑)が、少しだけ弁護(?)すると、以前にも仮面ライダーのボディや装飾品(手袋・ブーツ)の色が変化した例はあった。
2号ライダーを例にとると、第72話で和歌山に駆け付けた2号ライダーが、モスキラスに襲われていた藤兵衛さんを救った際に初めて新2号としての姿を見せたのだが、藤兵衛さんは一文字が元の姿を見せるまで、赤い手袋とブーツにイメチェン(?)していた2号ライダー1号ライダーだと思い込んでいた。
 となると、立花藤兵衛を初めとするライダー周辺人物達にとって、仮面ライダーの体各部の色が変わることはさほど大きな変化と認識されていないのかも知れない。
 ともあれ、同じ93話の最終場面にて、ショッカーライダーNo.3No.6までもが参陣し、サブタイトル通り「8人の仮面ライダー」となって第94話へ続いた。
 かくして「成り済まし」による脅威は去り、後は「本物と同じ戦力が大挙として敵になった」との脅威が席巻するのだった(1話だけだったが)。

 参考:ショッカーライダーの相違
ナンバリングマフラーの色独自能力備考
ショッカーライダーNo.1 火炎を吐く三面拳雷電同様爪先に短剣を仕組んでいる。ハエトリバチとコンビを組んで最初に暗躍。
ショッカーライダーNo.2 毒煙放出エイドクガーとコンビを組んで暗躍の二番手となる。6人総がかりで指弾を放った際には彼が号令を掛けた。
ショッカーライダーNo.3 爆雷内蔵
ショッカーライダーNo.4 放電攻撃
ショッカーライダーNo.5 地割れを起こせる
ショッカーライダーNo.6 溶解液噴出
 ※独自能力はいずれも本編未使用
 ※手袋・ブーツは全員黄色で、複眼の下に黒い縁取りがある。

 ちなみにツッコまれまくるショッカーライダー達のマフラーの色だが、「全員が同じマフラーや手袋の色だと、同士討ちの危険があった。」との擁護論(?)もあることを付記しておきたい。

 つらつら思う……………体色変化どころか、各部の形状変化まで頻繁な平成ライダーならさぞかし「成り済まし」は容易だっただろうに(苦笑)。


原作とリメイクにおいて ショッカーライダーを「単なる偽物」と位置付けるのは大早計である。『仮面ライダー』だけを見ていてはその存在が持つ重みを見損なうことになる。

 それというのも、仮面ライダー2号ショッカーライダーから生まれた。」という重大な事実があるからである。
 そもそも本郷猛からして、脳改造を受けていれば「仮面ライダー」は生まれ得ず、1号2号も無かった。緑川博士(野々村潔)が脳改造手術前に本郷猛を逃がしたことで仮面ライダー1号が生まれ、本来なショッカーの貴重な戦力となる筈の存在はショッカー最大の敵となったのは周知の通りである。

 その仮面ライダーの為に、蜘蛛男に始まる初期の改造人間を次々と倒されたショッカーは、ショッカーに残存されたデータと技術で、同じ仮面ライダーを作ることで対抗馬とし、更には数で圧倒することが、原作・リメイク・後付け設定のそれぞれで為された。
 そしてそんなショッカーが本郷ライダーと対抗させる為に生んだ元祖ショッカーライダーの1人が一文字ライダーだったのである。

 まず原作だが、「13人の仮面ライダー」というサブタイトルの回で本郷猛は12人のショッカーライダーによる銃撃を受けて戦死した(正確には脳以外が絶命した)。
 だが事前にショッカーライダー(←原作内ではこのように呼称されていない)の一人が新聞記者として本郷と接触、対戦しており、その時受けた負傷で自我を取り戻し、彼が本郷猛の後を継ぐ新しい仮面ライダーとなって、11人の仲間を倒した。
 勿体ぶったが、この自我を取り戻した元ショッカーライダーこそが一文字隼人だった。

 そして『仮面ライダーZX』のリメイク漫画と云える『新仮面ライダーSPIRITS』では本郷猛の回想として、彼と一文字隼人との邂逅、一文字がショッカーライダーに改造され、脳改造前に救出された経緯とともに、一文字の「同期」として改造された5人のショッカーライダー (その容姿は旧2号と同じもの)が登場していた。
 6人目のショッカーライダーとして、空手5段・柔道6段の一文字が死神博士に目を着けられた様に、他の5人も様々な戦闘技能(ライフル銃、剣道、中国拳法、キックボクシング、レスリング)に優れていた。
 更に本郷猛改造後に、残されたデータを改良して改造されたと思しき彼等は、素体と改造過程に自信があってか、本郷ライダーを「旧型風情」とし、「俺達の誰か一人と闘ったとしても…キサマに勝ち目はない。」と見下していた。
 だがそれまでに11体の改造人間に勝利することで改造人間としての身体能力を成長させ、戦い慣れていたことで本郷ライダーは単体としてはショッカーライダーより優位に立ち、原作同様一文字ライダーの加勢を得たことが正義サイドの勝利を呼んだ。

 かくして「偽物の脅威」を決定づけたショッカーライダーの注目度は今なお色褪せず、映画『仮面ライダーTHE NEXT』にも登場し、『仮面ライダーSPIRITS』での地獄大使率いるショッカーライダーNo.1No.6が蘇り、本編では使用しなかった特殊能力の披露も見られた。
 『仮面ライダーSPIRITS』にはバダン以前のすべての悪の組織が復活し、ライダー達と干戈を交えたが、次頁以降に登場するシーラカンスキッドも、カメレオンファントマも、オオサンショウウオ獣人も、ドロリンゴも、本編で披露した偽ライダーとなることはなかった(カメレオンファントマは滝和也に擬態したが)。
 その差を見ても、ショッカーライダーの存在感の強さは、「単なる『最初の偽物』に留まっていない」ことと、「場合によっては「本物」になっていたかも知れない」という2つの事実に裏打ちされていると云えよう。


全くの余談 ソード・ワールドRPGリプレイ集第8巻『亡者の村に潜む闇』にて、変身能力を持つデーモン・ダブラブルグが仲間の一人に変身して潜入されたことに苦しんだパーティメンバーが「偽物ならマフラーの色が違えばいいのに…。」と呟き、ゲームマスターに「それは偽ライダーじゃねぇか。」と突っ込まれていました(笑)。
 やっぱショッカーライダーの影響は大きいわ(笑)。


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令和六(2024)年五月一三日 最終更新