5.シーラカンスキッド…同じ画面に2人いる!?

名前シーラカンスキッド
肩書デストロンヨロイ一族
出身地デストロン日本支部
初登場1974年1月5日放映『仮面ライダーV3』第47話「待ち伏せ!デストロン首領!!」
偽装手段本人の変装(デストロン科学陣による改造)
偽装対象ライダーマン・結城丈二
偽装目的敵陣営への潜入、東京都民皆殺しの罪を結城に被せる
偽装完成度かなり完璧に近い
本物との外観上の相違皆無
看破者風見志郎
登場作品『仮面ライダーV3』
概略 事の発端はデストロンの大幹部・ヨロイ元帥(中村文弥)が猜疑心から科学者グループ・リーダーの結城丈二(山口暁)に「裏切者」の汚名を着せて処刑しようとし、それがためにライダーマンという厄介な敵を生んだことにあった。
 いわば「要らん事しー」で新たな敵を作ってしまったヨロイ元帥だったが、勿論だからと言って反省するようなイキモノではなく(笑)、状況を逆手に取った新たな謀略を考え、そこから生まれたのがデストロンライダーマンだった。

 元々結城はデストロンの一員だったので、彼に関するデータはデストロン内に充分残されていたのだろう。画面上確認できるだけでもデストロン科学陣は前後左右の3か所から撮影された結城の顔写真を基に本人瓜二つの人物を製造し、本物のライダーマンと同じマスク・強化服を纏わせた。
 その目的は2つで、1つは本物の結城丈二ライダーマンに成り済まさせて仮面ライダーV3・少年仮面ライダー隊関係者の抹殺、2つは計画中の東京都民1000万人皆殺しの罪を結城丈二に擦り付けることだった。

 白々しい住所記載の年賀状で(笑)、風見志郎(宮内洋)と結城をおびき寄せたヨロイ元帥は結城を挑発してライダーマンに変身して潜入させたところを罠にかけて捕らえ、デストロンライダーマンとすり替えた。
 別行動でヨロイ一族のシーラカンスキッドを追っていたV3は、途中の通路で倒れていた(振りをしていた)デストロンライダーマンを本物と思い、これを介抱すると撤収した。

 その後偽結城は「デストロンの影が見えたような……。」という虚言で風見を崖の上に誘い出すところを縛り上げて突き落とし、更には結城の姿で潜り込んだ少年仮面ライダー隊本部まで襲撃し、藤兵衛さん、珠純子(小野ひずる)、茂(川口英樹)姉弟を眠らせ、一同を爆殺せんとした。
 これは負傷しながらも風見が駆け付けたため未遂に終わったが、そのまま結城として振る舞い、デストロンのアジトに駆け付けると風見を本物のライダーマンと鉢合わせさせようとした。
 だが、V3が先回りして謀略に関するヨロイ元帥と偽結城の悪だくみを立ち聞きしていたことですべては露見。V3とライダーマン偽結城を追い、正体であるシーラカンスキッドを倒したのだった。


偽物としての暗躍 デストロンライダーマンが暗躍した時間は短く、範囲も狭く、露見も呆気なかったが、作りは凝っていた。
 偽ライダーの先輩筋(?)であるショッカーライダーは周知の通りマフラー・手袋・ブーツの色が本物と異なったが(苦笑)、デストロンライダーマンは本物と全く相違が無かった。更にマスクを取ると結城丈二と同じ顔が出て来た訳だから、仮面ライダーV3もすっかり騙された。

 世に偽ヒーローは多けれど、変身前の素顔まで似せたヒーローは極めて少ない(能力的にそれが可能だったものもいただろうけれど)。そういう意味ではデストロンライダーマンは偽物としての役割に徹する力は充分に保有していた存在だった。
 実際、翌週本物のライダーマン自身がデストロンライダーマンの振りをして門番を務めるデストロン戦闘員の隙を突くのに利用していたぐらいだから、擬態そのものはパーペキに近かったと云える。
 惜しむらくは本物のライダーマンの様にカセットアームを用いるシーンが無かったこと。特に大技を用いた訳でもないただのストレートパンチ1発で変装が解けた脆さ、そして謀略の呆気ない露見による企画倒れにあったと云える。


正体暴露 正体暴露に関してはほぼ前述している。偽結城丈二がヨロイ元帥の元に戻って来て、もうすぐ風見志郎とライダーマンが鉢合わせて殺し合うことになる、とほくそ笑んだところを、先回りして物陰で立ち聞きしていた仮面ライダーV3が現れたことで偽物作戦は瓦解した。

 V3とライダーマン偽結城を追い、V3がパンチ一発食らわせたところで偽結城の顔面は真っ二つとなり、中からシーラカンスキッドが現れた。
 だが「デストロンライダーマン=シーラカンスキッド」が暴かれたこと自体には意味はなかった。はっきり言って、偽結城ライダーマンが同じ場所にいるのを目撃された段階でもうV3を騙すことは出来なくなっていたからである。

 ヨロイ元帥は罠に掛けて捕らえたライダーマンを敢えて殺さず、シーラカンスキッドの化けたデストロンライダーマンに数々の悪事を働かせ、ライダーマン・結城丈二が世の人々から憎悪の視線で見られるように仕向けようとした訳だが、その作戦を遂行する為には、間違ってもデストロンライダーマン偽結城丈二)とライダーマン結城丈二)を同じ空間に居合わせてはいけなかったのである。

 これは何もV3に目撃されて露見した結果論だけでいっているのではない。本物の名を貶める為には、本物に成り済まして働く悪事が「偽物の仕業」とばれた時点で瓦解する。
 ゆえに「偽物が存在する」ということ自体を徹底的に伏せなくてはならない。そして「偽物が存在する」ということがバレバレになるシチュエーションとは、同一空間に本物と偽物が混在していることに他ならない。
 変装の名人、怪人二十面相やアルセーヌ・ルパンが一部の隙も無く明智小五郎やガニマール警部に変装したとしても、同じ場に明智小五郎・ガニマール警部がいたら、どんなに馬鹿な奴でも「少なくともどちらか片方は偽物」との思考は働く。
 仮に立ち聞きしていたのがV3でなくても、藤兵衛さんや少年ライダー隊隊員やマスコミであっても同様である。ヨロイ元帥達は「壁に耳あり、障子に目あり」の心構えでデストロンライダーマンライダーマンを同じ空間に置くべきではなかった。
 そういう意味では、本物の仮面ライダーが行方不明のタイミングを見計らってショッカーライダーを放ったブラック将軍の方が戦略面では定石を重んじていたと云えよう。

 そして作戦の有効性とは別の意味で、「同じ空間に存在する」ということでこの『仮面ライダーV3』の第47話には極めて不可解なワンシーンが存在することを触れずにはおかれない。
 それはシーラカンスキッドデストロンライダーマンが同一空間に同時に存在したことである

 デストロンのアジト内でシーラカンスキッドに遭遇したV3はこれを追うアジト内の通路上に倒れていたデストロンライダーマンから助けを求められるのだが、僅か2,3秒とはいえ、シーラカンスキッドが倒れているデストロンライダーマンの側を走り抜け、それからV3が追ってきたのである。これは明らかにおかしい
 この時点では何とも思わなかったが、終盤、V3のパンチを受けて偽結城の顔面が割れた下からシーラカンスキッドの面が現れたとき、道場主は物凄く顎を落とした…………。  もうチョット、整合性という言葉を重んじましょうね、制作陣の皆々様………。ストーリー的には面白かったから余計に勿体ない………。


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平成二七(2015)年一〇月二〇日 最終更新