7.ババルウ星人…特撮界のドッペルゲンガー

名前ババルウ星人
肩書暗黒星人
出身地ババルウ星
初登場1974年12月27日放映『ウルトラマンレオ』第38話「決闘!レオ兄弟対ウルトラ兄弟」
偽装手段本人の変装
偽装対象アストラ、ハンターナイトツルギ、ウルトラマンメビウス
偽装目的本物の信用失墜、敵地への潜入
偽装完成度完璧
本物との外観上の相違皆無
看破者ウルトラマンキング
登場作品『ウルトラマンレオ』、『ウルトラマンメビウス』、『ウルトラマンメビウス外伝 ヒカリサーガ』、『ウルトラマンX』(注:他にもババルウ星人が登場する作品は多数ありますが、変身能力を発揮したもののみ対象としています)
概略 「暗黒宇宙の支配者」との異名を持ち、長く光の国侵略を目論んで来た難敵宇宙人。
その変身能力はウルトラシリーズに登場した様々な敵役の中でも随一。厄介な偽物の代表選手で、シルバータイタンは「特撮界のドッペルゲンガー」と(勝手に)呼んでいる。

 『ウルトラマンレオ』の第38話において、偽アストラに化け、レオ兄弟VSウルトラ兄弟の諍いを誘発したが、最終目的は光の国の消滅にあった。
 簡単にその手段を辿ると、「本物のアストラ襲撃・監禁」→「偽アストラに化けて光の国に侵入し、ウルトラキーを盗み出す。」→「コントロールを失ったウルトラの星が地球に衝突し、宇宙の塵と消える。その間妨害するであろうウルトラ兄弟は自分を弟と思い込むウルトラマンレオを利用して凌ぐ。」というものだった。


偽物としての暗躍 事前準備としてウルトラマンレオの弟・アストラを襲撃し、北極星近辺にて氷漬けの形で監禁した。その後光の国にて、腕に装備した分銅鎖でもってウルトラタワーを引き倒し、その灯を消すことでウルトラ兄弟のパニックを煽った(この時の兄弟の台詞からババルウ星人が長く光の国侵略を企んでいたことが明かされ、襲撃もババルウ星人によるものと目されていた)。
 ウルトラ兄弟達が動揺する間隙を縫って、偽アストラはコントロールルームに侵入するとウルトラの星のコントロールキーとも言えるウルトラキーを盗み出し、ウルトラの星は制御を失い、地球に向けて暴走し出した(←「合鍵ぐらい作っとけ。」というツッコミを入れなくてはなるまい)。

 キーを盗み出した偽アストラはコントロールルームを出たところでウルトラマンに目撃され、しばしの格闘の後、隙を突いて地球に向けて飛び立った。このことでウルトラマンは兄弟達に「キーを盗んだのはレオの弟アストラ。」と証言。ウルトラ兄弟は偽アストラを追う一方で、長兄ゾフィーは地球にいるウルトラセブン=モロボシ・ダンに「レオ兄弟は悪魔に魂を売った。レオを見張れ。」とのサインを送った。

 事の成り行きを知ったダンはそれをウルトラマンレオ=おヽとりゲン(真夏竜)に話し、共同でアストラを取り押さえてウルトラキーを奪い返すことを提言した。ウルトラキーをそのままにしていては暴走するウルトラの星は地球に衝突し、地球は宇宙の塵となってします。
 だが、ゲンは事の深刻さを承知しつつも、アストラがその様な暴挙に出たことを信じられず、守るべきアストラと地球、そしてダンとの師弟愛に苦悩した。
 やがて偽アストラが地球に降り立ち、ダンはウルトラ念力でその動きを封じ、遅れて地球に降り立ったウルトラ兄弟達がキーを奪い返そうとしたが、どうしても弟の危機を見過ごしに出来ないゲンはダンを殴り倒してウルトラマンレオに変身して偽アストラとウルトラ兄弟の間に立って仲裁せんとした。
 この間、レオを初め、ゾフィー、ウルトラマン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンAが様々な形で偽アストラと接触したが、誰一人その正体を疑うものはなかった。
 愛する弟の行動を一番不可解に想う実兄・レオもまた例外ではなかったからババルウ星人の変身・成り済まし能力はウルトラシリーズは勿論、特撮界全般で見ても群を抜いている。

ともあれ、ウルトラの星が迫りくる焦りもあってか、ウルトラ兄弟達は「アストラを殺す!」という暴言を吐くほどまでに激昂。偽アストラは数々の犯行への関与をレオに問われてこれを否定するも、肝心な事には答えず、手には隠しようのない巨大なウルトラキー(苦笑)。
 結局話し合いならず、迫りくるウルトラの星の引力を受けて嵐吹き荒ぶ地球を舞台にレオ兄弟とウルトラ兄弟という光の巨人達による同士討ちが展開され、ゾフィーは「最後の警告」を発した後、それでも偽アストラを庇うことを辞めないレオへの合体光線発射を弟三人に命じ、その直撃を受けてはさしものレオも瀕死の重傷を負った(画面をよく見ると、偽アストラはレオの背中を押して、モロに合体光線の照射に曝していた)。

 すべてはババルウ星人の思惑通りに進んだが、第39話冒頭にてウルトラマンキングが現れるや呆気なくその正体は暴かれた。
 その際、ウルトラキーを折られたことで、ウルトラの星と地球が衝突して消滅するという当初狙った願望は残された(←やはり「キーなど問題ではない!」とは言えんな(苦笑))。
 だがそれもレオと、復活したアストラの手でキーが修復されたことで瓦解。修復されたキーが元の位置に戻されるのを防ぐ為に巨大化してレオ兄弟に襲い掛かるも、レオの迎撃を受けている間にアストラはキーを戻し、2つの星の衝突はすんでのところで回避された。

 そして悪だくみとともにババルウ星人自身にも終焉の時が来た。レオキックを食らったババルウ星人は胸部のランプから火花を迸らせ、もんどりうって大地に倒れて絶命した。


正体暴露 前述した様に、偽アストラの正体を暴いたのはウルトラマンキングだった。ウルトラ兄弟のみならず、実兄・ウルトラマンレオの眼をもってしても見抜けなかったその正体をキングは看破し、洗礼光線でもって変身を強制解除した。
 このとき初めてババルウ星人は画面上にその正体を現した。その姿を見て、ダンが「ババルウ星人…。」と呟いていたことから、ダンを初め、ウルトラ兄弟がババルウ星人の存在・名前だけでなく、その容姿も知っていたことは明らかである。

 何故ウルトラマンキングだけが、実の兄の力をもってしても見抜けなかったその正体を透破抜けたのか?その完璧な擬態を如何なる原理で強制解除出来たのか?これに言及するときりがないので割愛するが、その後本物のアストラが救出されるまで時間が掛かり、その救出にはキングもウルトラ兄弟も何ら関わっていなかったので、キングとてババルウ星人の行動すべてを把握していた訳ではなかったのだろう。
 ただ、ウルトラ兄弟がババルウ星人の存在と容姿とウルトラの国に対する敵意まで知りながら、その変身能力を欠片も把握していなかったとしたら、余りにも敵を知らなさ過ぎた
 「彼(敵)を知り、己を知れば百戦して危うからず。」という有名な『孫子』の一節があるが、作中、キングが現れるまで偽アストラの正体を疑った者は皆無で、ウルトラ兄弟はババルウ星人の変身能力を全く知らなかったようにも見えるし、キングの「お前達の眼にはその男がアストラに見えるのか!?」という一喝から推測すると「ババルウ星人の変身能力を忘れていたのか?!」と叱られているようにも見える。

 ともあれ、キング、ゾフィー、ウルトラマン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンAの5体(←しかも伝説の長老と宇宙警備隊隊長が入っている!)から敵意を向けられてはババルウ星人も逃げるしかなく、完璧なはずの変身能力と作戦は「伝説の長老」を前に瓦解したと云えよう。


前後のババルウ星人 身内にすら見抜けない完璧な変身能力と「レオ兄弟VSウルトラ兄弟」というショッキング且つ壮大なバトルをプロデュースしたとあって、ババルウ星人の知名度は高く、「厄介な変身能力の持ち主」としての認知度も高い。

 それゆえババルウ星人は後番組にも登場し、『ウルトラマン』の前史となる漫画『ウルトラマンSTORY0』にも登場し、内山まもる氏の漫画『ウルトラマンレオ』にも独特の立場を持って登場し、暗躍ども恐怖度も実に多彩である。
 ただ、そのいずれにおいても変身能力で群を抜いているのは間違いない。

 『ウルトラマンSTORY0』ではウルトラ戦士の抹殺と宇宙支配を企む星間連合の首領格として登場し、ボーグ星人やメトロン星人に命令する権力と立場を保持していた。
 戦闘能力においては模擬戦闘や光の戦士との戦いで凄まじい能力を見せつけ、ドリュー(←L77世滅亡前のレオとアストラの師匠を務めた剛の者)と相打ちになったほどだった。
 変身能力においても光の国の戦士が待つ光線技やウルトラサインまで駆使するほどの完コピぶりだった(同時に変身に初の出対象に触れることが必要で、エネルギーの消耗が大きいことも明かされた)。ウルトラマンの1人に成り済まして星のコントロールタワーのシステムを破壊し、ウルトラの父を拉致するのに成功していた。

 また星間連合崩壊後も、他の個体群が連合メンバーであったザラブ星人、メトロン星人、ガッツ星人、ナックル星人、ヒッポリト星人、テンペラ―星人に化け、エレキング、バードン、ビラ星人、ゴーロン星人、アストロモンス、ガブラ、スノーゴン、ドラキュラス、バド星人、ササヒラー、チブル星人、クレージーゴン、ブラックキング、ゴーストロン、恐竜戦車、ナース等を率いて、主だったメンバーを欠いていた光の国を襲撃し、その際にはゾフィーに化けてM87光線まで駆使していた(この一撃からウルトラの母、および多くの戦士を守るために身を挺した光の国守護隊長アキュラが戦死)。
 更にはタロウに化けて不意を打つという変身宇宙人ならではの秘境戦法でカラレスとサージを討ち取り、両者が命に代えて放った最後の攻撃にも耐え切った(かなりの重傷を負ったが)。そしてその力を抑えるためにフレアも犠牲となり、剛力随一のゴライアンも変身能力を担う角を奪って、戦えぬ体となった。

 同作は最終的にゾフィーがババルウ星人を討ち取ったことで終わるという、いわばラスボスともいえる存在だった。その正体は光の国から数百万光年離れた高度に文明化された平和な星に住む種族だったが、平和主義に異を唱え、調査名目で暗黒宙域に追放されたことで暗黒の力を得て、同士討ちの果てに闇の心と力を増幅させ、光の勢力を憎むようになった経緯があった。そしてその死はウルトラ戦士に「闇」というものを深く考えさせる契機となった。
 う〜ん………これほどの前史があるなら、やはり偽アストラに対して、直前のその名前を口にしたババルウ星人の擬態を疑わなかったことが解せん………(苦笑)。

 そして内山まもる氏の漫画『ウルトラマンレオ』では、レオ兄弟の両親を捉えて人質にし、ウルトラマンAに変身してレオ兄弟を呼び出し、両親の命をたてに兄弟に光の国襲撃を命じるという姦計を巡らしていた(実際、レオ兄弟は両親が救出されるまで泣きながら光の国を破壊し続けた)。
 作風もあって、随分人間臭いババルウ星人達が描かれ、大勢で掛かりながらセブンガーにボコボコにされ(最終的に破壊には成功したが)、ブラック指令に媚を売り、レオの父親が内部から破壊した宇宙船の破片に刺さって絶命する、といった間抜けなシーンも多かった。

 そして『ウルトラマンレオ』本編から30年以上を経て、『ウルトラマンメビウス』以降も様々なババルウ星人が登場した。特に『ウルトラマンメビウス』では外伝と合わせて「ウルトラマンヒカリの宿敵」としての立場が与えられ、ウルトラマンメビウスハンターナイトツルギに擬態し、彼等の信用を大きく失墜させようとした。
 変身能力が完璧なのも変わらず、ナイトシュートを放つ完コピ振りで、その戦闘能力に関しても、ヒビノミライ(五十嵐隼士)は「君(←ウルトラマンヒカリ)一人では(勝ち目がない)」と推測するほどだったが、自らの意志でヨロイを纏えるようになったヒカリの前になす術なく敗れ去った。

 『大怪獣バトル』絡みの諸作品ではレイオニクスバトラーとしてアントラーを操ったり、ウルトラマンべリアルの手下としてレイ(南翔太)が変身したレイモンの回し蹴りで消滅したり、で変身能力は発揮されなかった。

 そして近くは『ウルトラマンX』に登場し、犯罪ネットワーク集団・暗黒星団のリーダーを務め、ダダ、ケムール人、ゼットン星人を従えていた。そのリーダー振りから『ウルトラマンSTORY0』で見せたような首領格としての存在感を見せるか?と思われたが、その目的は落ちぶれたバルキー星人ハルキを慕って故郷から追ってきたサメクジラ・ジョリーを強奪するというセコイものだった(苦笑)。
 バルキー星人ハルキ『ウルトラマンギンガ』の頃にイカルス星人イカリやナックル星人ナクリとともに落ちぶれており、ババルウ星人側が強奪しても一向におかしくなかったのだが、何故か「ラグビーで勝負だ!」の提案を了承。
 前半は相手チームの結束の弱さやケムール人の高速移動もあって51対0の圧倒的有利で折り返した。その際には得意の変身能力でバルキー星人ハルキに化けてボールを奪ってトライするという風に個性を発揮していたが、やはりせこかった(苦笑)。
 結局後半に逆転され、試合後のノーサイドの精神を拒絶し、逆切れで強制的にジョリーを奪うべく他の暗黒星団メンバーと共に巨大化して暴れたが、ゴモラアーマーを纏ったウルトラマンXのゴモラ振動波により4人まとめて空の彼方へ飛ばされていった。

 これほどの足跡を残したババルウ星人は今後もウルトラファミリーや地球人の厄介な敵として現れ、様々なものに変身することだろう。
 それは間違いなく楽しみな事なのだが、それゆえに様々な個性が発揮されることに賛否の声が上がることも間違いないだろう(苦笑)。面白いんだけどね。


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平成二七(2015)年一〇月二四日 最終更新