第9頁 霊媒故の強敵。実体無き亡霊怪人軍団

再生怪人軍団File.9
登場作品『仮面ライダーBLACK』第42話
構成メンバークモ怪人、クワゴ怪人、サイ怪人、ベニザケ怪人、カミキリ怪人、キノコ怪人、イラガ怪人、サボテン怪人、ネズミ怪人、シーラカンス怪人
指揮官ハエ怪人
再生手段超能力+霊媒術
手強さ
作中行動 第35話で生まれ変わったシャドームーンがゴルゴムの指揮権を掌握して以来、日本国に対して正式に宣戦布告したこともあり、その暗躍は直接的なものが増えた。この第42話では、ゴルゴム怪人の中で憑依能力に優れたハエ怪人を、強力な霊能力を持つ神野ユウキ(片岡伸吾)に憑依させることで霊界に落ちたゴルゴム怪人達を復活させ、東京を襲撃させた。

 10体の怪人が復活し、やったことは各地での人間襲撃である。
 クワゴ怪人サイ怪人カミキリ怪人は西谷警察署を襲撃。サボテン怪人キノコ怪人はオフィスのビジネスマンを、シーラカンス怪人ベニザケ怪人は東京湾から上陸して港湾作業員を、イラガ怪人ネズミ怪人は八百屋(店主を演じたのは小野寺丈氏(笑))を襲った。
 勿論この暴挙に対して、南光太郎(倉田てつを)が駆け付け、仮面ライダーBLACKに変身して迎撃したのだが、従来の再生怪人がゾンビか修理品(?)なのに対して、この話における亡霊怪人は、謂わば、幽霊で、「あっちはこっちを掴めるのに、こっちはあっちを掴めない。」という霊体ならではの卑怯な特殊能力を保持していたため、物理攻撃が無効で、ライダーの攻撃は全く通じなかった。

 正確には、攻撃時に実体化し、攻撃を受けるときに霊体化していた訳だが、ライダーの攻撃は完全に防がれており、結局ユウキの実弟で、潜在的に兄以上の霊能力の持ち主である神野マコト(岡村康司)が光太郎の呼び掛けに応じて霊能力を発揮して兄の意識に呼び掛けたことで、ハエ怪人がマコトの体内から追い出されたことで霊媒が溶け、亡霊怪人達は苦しみながら霊界へ逆戻りし、ハエ怪人もBLACKの前に敗れ去ったのだった。



生前比較 良くも悪くもこれには意味がない。何せ霊媒怪人であることが最大の特徴にして最大の武器で、霊体である強みを活かすことがすべてで、生前の能力がどうだったかは丸で関係なかった。
 ただ、制作陣には「再生怪人は戦闘員並みに弱い。」という定説(?)に対する反発があったのかもしれない。従来の再生怪人の中には生前の特殊能力を丸で示さず、戦闘においてもただ力任せに殴り掛かってくるだけの者も多かったが、この話における亡霊怪人はある程度「生前」が反映されていた。

 クワゴ怪人は糸を吐き、サイ怪人は怪力を活かした突進攻撃、カミキリ怪人は触覚攻撃、シーラカンス怪人は巨大な手による顔面鷲掴みを行っており、それぞれの「らしさ」はそれなりに反映されていた。
 マコトがユウキの意識に呼び掛けるべく霊能力を発揮しようとした刹那、ネズミ怪人が素早く現れてこれを阻止せんとした。能力の問題ではないが、亡霊怪人の中では一番の新参(第38話に登場)で、EP党暗躍というかなり緻密且つ姑息な計画に参画していたネズミ怪人らしい行動に見えた。もっとも、いざマコトが霊能力を発揮するとネズミ怪人自身の取り押さえは何の効果も無かったのだが(苦笑)。

 ともあれ、従来の再生怪人よりは、「生前」が意識された面もあったが、霊体としての反則なまでの厄介さが遥かに強いイメージを持っていたので、「生前」の印象が弱くなっていたのは否めなかった。



対ライダー戦 既に上述しているが、霊媒が溶けるまで、仮面ライダーBLACKは亡霊怪人に対して文字通り手も足も出なかった。
 霊媒自体は神野マコトが兄・ユウキに霊能力で呼び掛け、ハエ怪人を兄から追い出したことで解けた訳だが、当初、マコトは協力を渋っていた。というのも、霊能力の為に周囲の者から「宇宙人」と呼ばれ、いじめの対象にもされていたので、自身の能力を疎ましく思っていたためだった。
 そんなマコトに光太郎は、自分と兄弟同然に育ち、今はゴルゴムの為に体ばかりか心まで改造された親友・秋月信彦のことを語り、兄を失うことを恐れたマコトが協力することを決心させた訳だが、この間、光太郎は亡霊怪人達にボコボコにされ、取り押さえられていた。

 マコトへの説得が功を奏し、ユウキをハエ怪人から解放したことで亡霊怪人達を霊界へ逆戻りさせることには成功したが、ライダー自身は亡霊怪人に一太刀も浴びせることが出来なかった。マコトへの説得が為せないまま、マコトがネズミ怪人に殺されでもしていたら、霊媒は解けず、光太郎はいずれ力尽きていたことは想像に難くない。

 つまり、ライダーはハエ怪人が指揮するゴルゴムの悪企みには勝ったが、亡霊怪人自体には丸で敵わなかった訳で、「再生怪人は弱い。」との千古の鉄則はここに敗れたのだった。


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令和六(2024)年七月一八日 最終更新