第2頁 風見志郎………父よ、母よ、妹よ
Revenger 2
名前 風見志郎 変身するヒーロー 仮面ライダーV3 復讐取組期間 『仮面ライダーV3』第1話「ライダー3号 その名はV3!」〜? 復讐対象 ハサミジャガー及びデストロン 復讐達成 狭義において有り 復讐除去要因 大義へのシフト
愛する者の死 身も蓋もない云い方だが、暗黒組織デストロンの蛮行を目撃してしまったことが事の発端で、期せずして目撃したが為に風見志郎(宮内洋)及び彼の家族の人生は大きな悲劇にシフトしてしまった。
ある夜、風見はマンホールから突き出た刃物に刺された人間が溶けて消え失せるのを目撃した。刃物の主はデストロンの機械合成怪人ハサミジャガーで、風見はその体の一部を見たに過ぎなかったが、デストロンから「目撃者」と見做された。
「目撃者は消せ。」が前身であるショッカー以来の組織のやり様である。その直後、車に轢かれかけたのを皮切りに風見はコーヒーに毒物を混入されたり、オートレース練習中に砲撃されたり、と命を狙われ続けた。
そしてデストロンを偶然目撃した者に珠純子(小野ひずる)がいた。
山中でハサミジャガーと戦闘員がとある建物に入るのを見掛けた純子は直後にデストロンの襲撃を受け、それを風見が救った。救われた純子は張りつめていた緊張の糸が切れたものかその場で気絶。相手がどこの誰かもわからずどうしていいか困った風見は自宅に連れ帰って、風見の家族が介抱した。
だが、これはデストロンにとって、消すべき目撃者が一ヶ所に集まったことを意味した。
純子の口を封じんとして風見邸の壁を破ってハサミジャガーが乱入してきた。風見の父・達治(加賀邦男)は妻・綾(真咲美岐)、長女・雪子(関口英利子)、純子を庇い、彼女達に逃げる様に促しつつ燭台をぶつけてハサミジャガーに抵抗したが、忽ち刺殺された……。
前後の事情から風見家が危ないと見た一文字隼人(佐々木剛)に促されて帰宅した風見が駆け付けたが、忽ち戦闘員に取り押さえられ、その眼前で妹が、次いで母が刺殺された・………。
風見家にとっては完全に遅い話となったが、ハサミジャガーがその凶刃を純子に向けた直後に本郷猛(藤岡弘)が駆け付けた。それに力を得て戦闘員を蹴散らした風見の眼前で本郷は仮面ライダー1号に変身。その尽力で純子の危機は救われたが、風見は一瞬にして両親と妹を亡くした天涯孤独の身となった………。
仮面ライダー1号と、直後に駆け付けた仮面ライダー2号の前で怒りと悲しみに打ち震える風見は「俺は今日限り人間であることを捨てる……復讐の鬼となって親父達の仇は必ず取る……お願いだ、仮面ライダー!俺を改造人間してくれ!!」と懇願した。
復讐戦 この悲劇に端を発し、程なく風見志郎は仮面ライダーV3となり、デストロン壊滅まで死闘を展開し、その後も歴代悪の組織と戦い続けることとなった訳だが、デストロンとの戦いを決意した直後に風見の心を支配していたのは紛れもなく復讐心だった。
そしてその復讐の念は当初より否定的に遇された。
仮面ライダー1号は風見の「気持ちは分かる。」しながらも、「個人の復讐に力は貸せない。」とした。続けてライダー2号は人間であって人間でない改造人間の悲劇を説き、そんな身の上は「私達だけで充分だ。」として風見を改造人間とすることを遠回しに拒み、「君にもしものことがあったら亡くなったご両親も浮かばれまい。」とした。
ただ、Wライダーは風見が復讐の為に人間でなくなり、命を落としかねない戦いに投じることを拒んだだけで、世界平和を乱すデストロンを見逃すつもりは無かった。自分を助けたが為に風見一家が命を落としたことへの自責から声もなく涙を流す珠純子からデストロンの目撃地点を聞き出して現場に急行したのだが、そこには罠が待ち受けていた。
改造人間分解光線の照射に曝され、身動きもままならなかったWライダーだったが、そこの風見が乱入したことで二人は危機を脱した。しかし、それが為に身代わりになる様に改造人間分解光線に曝された風見は致命傷を負い、その命を救う為にWライダーは止む無く風見に仮面ライダーV3への改造手術を施したのだった。
翌週第2話にて、Wライダーはカメバズーカの体内に仕込まれた原子爆弾から東京を守る為に全エネルギーを放出して洋上にカメバズーカを連行し、原爆炸裂と共に姿を消し、V3はWライダーに代わってデストロンとの戦いに身を投じた。
潜む醜さ 復讐に端を発した仮面ライダーV3・風見志郎とデストロンの戦いだったが、実のところ、風見は復讐心をそれ程露わにしていない。
第2話では両親と妹の墓前で人間の体を失ったことを詫びてもいた。つまり、あれほど渇望した改造人間の身だったが、すぐに後悔したと取れる。
復讐心を然程露わにしていないから、風見が復讐に顔を歪めたり、喜怒哀楽を暴走させたりするシーンもほとんど見られない。逆を云えば、改造人間になってまで果たしたい復讐が醜いものであるのを風見は早期に気付いたのかも知れない。
ただ、両親と妹を一度に失った怒りと悲しみは凄まじく、感情の奔流に囚われていた初期の風見は純子に対してかなりぶっきら棒な態度を取っており、そこは美しくなかった。
勿論、風見は純子を怨んでいた訳では無い。悪いのはあくまでデストロンである。風見が当初純子に対して冷淡な態度を取っていたのも、純子が自分の側近くにいることでデストロンに狙われ続け、いつかは命を落とすことになるかも知れないのを懸念してのことだった。
それでも純子は(彼女が悪い訳ではないのだが)自責の念もあって風見に協力を申し出続け、なし崩し的に少年仮面ライダー隊の通信員として自然と風見の仲間となり、いつしか二人は「友達以上、恋人未満」的な仲になっていった。
復讐の終わり 風見志郎がいつ復讐を捨てたのかは何とも云えない。仮面ライダーV3となって以降、風見が復讐心をほとんど口にしなかった。
だが、ストーリー展開や、状況的に風見の復讐に対する在り様として、注目すべきところは三点ある。
一点目は、怨敵・ハサミジャガーとの戦いである。
云うまでも無いが、ハサミジャガーこそは両親と妹の命を奪った張本人である。シルバータイタンにも両親(父は既に故人だが)と妹がいるが、もし何者かに殺められたとしたら、その相手は「八つ裂きにしても飽き足らない者」となるだろう。
だが、仮面ライダーV3は(改造人間としての自分の能力が分からず戸惑っていたこともあるが)ハサミジャガーとの戦いにおいて特に感情を見せることも、暴言を吐くことも、極度の暴れ振りを見せることもなく、V3ダブル回転キックで討ち取った後も勝利に対する感慨も、亡き家族への想いを吐露することも無かった(遺言的なテレパシーを送ってきたWライダーの身を案じ、物思いに耽っている暇がなかったとも取れるが)。
ちなみに、原作『仮面ライダーV3』ではV3はWライダーに対して、ハサミジャガーを「家族の仇」として、こいつだけは自分に打ち取らせて欲しいと懇願し、両の鋏を引き千切って殺害すると云う倒し方をしていて、こちらの方が復讐心をかなり露わにしていた。
二点目は、第44話である。
ヨロイ元帥(中村文弥)の為に右腕を溶かされ、助手三人を殺された結城丈二(山口暁)が、助手達の墓標を前に滂沱に暮れていたところに現れた風見は復讐の為に戦うことの非を説いていた。さすがに悲惨な目に遭った直後の結城が即座に説得を聞き入れられる筈もなかったが、後々に影響するところはあった(詳細は次頁の結城丈二の項で)。
風見の説得は立花藤兵衛(小林昭二)に促されてのものだったが、風見自身、怒り・悲しみ・復讐心に囚われている結城にかつての自分の姿を重ねていて、結城の気持ちそのものは痛い程理解していたのだろう。
この結城とのやり取りから、両親と妹を殺された直後の風見がかなりの激情と復讐心に囚われつつも、約10ヶ月後には復讐の虚しさ、復讐心で歪んだ心で戦う事の非を悟り、克服し、時期は不明だが、復讐を捨てていたと思われる。
そして最後は10年の時を経た後の、『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』でのことである。この特番の主人公である仮面ライダーZX・村雨良(菅田俊)は姉を殺され、自分自身改造人間にされた恨みからバダン帝国への復讐を胸に戦っていて、バダンと戦うライダーマン・仮面ライダースーパー1も敵と見做して襲い掛かる始末だった。
V3はそこに割って入って戦いを止め、ZXに対して自分達が仲間であると告げた。最初は聞く耳持たなかったZXだったが、V3達が悪の組織に改造された改造人間であると知らされ、自分と同じ境遇の人間と知って、聞く耳を持つようになった…………えっ?V3はWライダー、ライダーマンは助手、スーパー1は恩師による改造で、「悪の組織に改造された」者はいないって?ハハハ……そうツッコむのは野暮ですな(苦笑)。
直後、村雨は自分と同じ境遇の人間が9人もいると知って、「一度は復讐の為に戦った。」とする風見の言葉に聞き入っていた。言葉は多くなかったが、風見自身、復讐を端緒として戦いを始めつつも、それを続けることが良くないと説いていた名シーンであった。
ともあれ、復讐を捨てた風見の心根は後輩ライダーにも影響を与え続けていたことが分かる。
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令和六(2024)年一一月五日 最終更新