第3頁 結城丈二………私怨より人類の平和

Revenger 3
名前結城丈二
変身するヒーローライダーマン
復讐取組期間『仮面ライダーV3』第43話「敵か味方か? 謎のライダーマン」〜第51話「ライダー4号は君だ!!」
復讐対象ヨロイ元帥・カマクビガメ
復讐達成無し
復讐除去要因東京都民殺戮阻止優先


愛する者の死 結城丈二が失ったのは肉親ではないが、自分の為には命を失うことも厭わない程自分を敬愛してくれた助手達だった。そして直前に彼は右腕を失っていた………。

 事の始まりはデストロン内部での政争だった。大幹部ヨロイ元帥は科学者グループのトップであり、配下からの尊崇の念も厚い結城を、自分の大幹部の座を脅かしかねない存在と見做して一方的に敵視していた。
 当の結城はデストロンを「科学の力で人間のユートピアを作る組織」と確信(盲信?)し、デストロンの首領を父に等しい存在とし、ヨロイ元帥に対しても「悪い奴だが、仲間だと思っていた。」と後に述懐していた。

 つまり当の結城には何の野心も害意も無かったのだが、ヨロイ元帥は最高幹部会議を開いて「数々の裏切り行為」を理由として結城の死刑を決めると有無を云わさず彼を逮捕した。そして彼を処刑すべく呼び出しに来たヨロイ元帥だったが、勿論結城はそれが自分を消す為の陰謀などとは夢にも思わない。
 いきなりの逮捕に対しても、裏切り行為を詰られても、(濡れ衣だから当然なのだが)結城は「何かの間違い」と捉え、不当逮捕にいきり立つ助手達を宥めつつ、ヨロイ元帥に対しては、「君には僕の助手に命令する権利は無い。」と堂々と相対した。

 だが、連行された果てに待っていたのは硫酸のプールだった。結城は釈明の暇も与えられずプールの上に宙吊りにされ、そこで逮捕・処刑が自分を邪魔者と見たヨロイ元帥の陰謀であることを知らされた。
 ロープが下ろされ、プールに沈められまいともがいたところ、結城の右腕は酸面に没してしまい、無惨にも肘から下はこの世から消失してしまった………。
 もがき苦しむ結城に下卑た笑いを浮かべつつもう片方の腕も溶かそうとヨロイ元帥が宣した次の瞬間、結城を救わんとして助手達が乱入してきた。
 戦闘員を突き飛ばして結城の体を下ろした助手達は(←硫酸プールに突き飛ばされた戦闘員が結城以上に可哀想に想うのはシルバータイタンだけ?)、時限爆弾爆発の間隙を縫って地下下水道に結城を連れ出したが、当然結城共々デストロンに追われる身となった。

 右腕を溶かされた結城の心身は激しく衰耗していたが、ヨロイ元帥への激しい恨みから失った右腕に替わってかねてから研究中だったアタッチメントを移植するよう助手達に要請した。重症の結城に麻酔も無しに施術することに逡巡した助手達だったが、結城の執念に押される形で移植=彼をライダーマンに生まれ変わらせる手術が施された。
 手術は成功したが、元々重傷だった結城は人事不省状態が続き、助手の一人・片桐二郎(平野康)が優秀な看護婦である妹・幸江(井上真彩子)を呼び寄せた。

 だが、結城を追うヨロイ元帥助手達が重傷の身である彼の治療を行う筈だと見て、助手達の身内に医療関係者がいないかを調べていて、幸江の存在を把握し、彼女が尾行されたことで結城達の潜伏場所が割れてしまった。
 襲撃者にはヨロイ一族のカマクビガメが選ばれ、まず妹と再会した直後の片桐が襲われ、高架より突き落とされた(即死は免れたがその後死亡)。そしてカマクビガメ片桐の声色を使って残る二人(山本相時・池上明治)の助手を誘い出し、「死んでも結城さんを守るぞ!」とする彼等を望み通りにしてやると云わんばかりにデストロンガスを放って殺害。直後、二人の体は炎上した…………。


復讐戦  遂に横たわる結城丈二の前に現れたカマクビガメ。だが、そこに立ちはだかったのは「復讐の鬼」と名乗るライダーマンだった。
 裏切者の濡れ衣を着せられ、右腕を溶かされ、自身を敬愛する助手達を惨殺されたことで復讐の念に燃えるライダーマン結城は直後こそ片桐幸江を庇ってロープアームを駆使して戦線離脱したが、程なく復讐戦に挑んだ。

 勝手知ったるデストロンアジトに潜入したライダーマンは即座にヨロイ元帥の元に向かったが、そこにはカマクビガメも待ち受けており、只でさえ右腕のみの改造人間であるライダーマンの能力にはいかにも分の悪い戦いだった(しかも初陣)。
 そこに今際の際の片桐から結城のこととデストロンアジトを聴いた仮面ライダーVが駆け付け、二人のライダーはなし崩し的な共闘からやがては正義に邁進する盟友となるのだったが、その道のりは決して平坦な者では無かった。


潜む醜さ 周知の通り、ライダーマンは口腔部が露出している唯一の仮面ライダーである。それ故、復讐に燃えるその表情の歪みっぷりは幾度も披露された。
 とにかくヨロイ元帥への復讐に燃えるライダーマンは、当初、憎悪の表情をかなり露わにしていた。スチール写真の中にも、ヨロイ元帥の絵にナイフを突き立てらり、絵を燃やして悦に入るライダーマンの写真があるが、いずれもかなり見苦しい。

 そして復讐の捉われたライダーマンの醜い側面は表情だけではなく、行動にも表れていた。危ないところを助けてくれた仮面ライダーV3に謝意を示さないばかりか、共闘も拒んだ。
 我が手で助手達の仇であるヨロイ元帥の首を取りたい気持ちは容易に理解出来るが、それが為にV3に対しても「邪魔するな!」と云わんばかりの態度が目立った。
 デストロンに幸江が拉致された際も、一人では無理だと云う風見の説得にも耳を貸さず、その後なし崩し的な共闘の末にカメクビガメに飲み込まれかけたV3がV3脱出パンチで体内から破壊することで怨敵の一人は討ち果たされたが、直後にV3が求めた握手をライダーマンは軽く払いのけて拒否したのだった。
 余りの頑固振りと、実際にカメクビガメに打ち向かわんとしたV3にロープアームを放って文字通り足を引っ張る行為に、珠茂(川口英樹)は、「敵も同然」と憤ったこともあった。

 ただ、そんな結城の復讐心に救いがあるとすれば、彼が「弱い者を守る」と云う一念を持ち続けていたことである。
 幸江救出に向かう際、カマクビガメが「V3とライダーマン、どっちが相手だ?」と息巻くのに対して、「私が先だ!」と云いつつも、ライダーマンが直後に取ったのはカメクビガメ強襲ではなく、幸江救出だった。まあ、自分を守って犠牲になった片桐二郎のことを想えば、当然の行為と云えなくは無いが。
 結城が憎むのはあくまでヨロイ元帥カマクビガメのみで、騙される形でデストロンに所属してた彼は首領を「あの人に育てられた。」としていて、デストロンそのものは憎んでおらず、(偽りではあったが)恩義から首領をV3必殺キックから身を挺して庇ったこともあった。
 その情の深さからサイタンクにV3打倒への助力を強要されたり、復讐心による冷静さの欠如をシーラカンスキッドに利用されたりしたこともあったが、いずれの結城の怨念が特定の個人に対してのみのものであることと、結城自身が本来は優しい性格であることを証明していた。
 そして最後の出番となる第51話で、彼は復讐よりも大きな人類愛を選んで見せたのだった。


復讐の終わり  まず助手達の仇であるカマクビガメは仮面ライダーV3によって倒されたことで、復讐対象としては自然消滅した。
 その後、V3・風見志郎の説得を受け、ヨロイ一族の悪辣なやり方を何度も目にして、ようやく結城丈二もデストロンを悪の組織であるとして認識を改め、第47話では端から共闘し、第48話ではデストロンとの決別を明言し、徐々に復讐心に表情を歪めることが減り、反対に笑顔が増えた。

 だが、ヨロイ元帥が怨敵であることに変わりは無かった。第51話にてデストロンがプルトンロケットで東京壊滅を企んでいることを知った風見と結城は奴賀だけに向かったが、その途中で一人の男(小倉雄三)が吊るされているのを発見した。
 男はデストロンの一員で、ヨロイ元帥の罠に落ちた風見を覚醒させ、プルトンロケットから東京にいる妻子を非難させて欲しいと懇願した者だった。勿論これはデストロンにとって裏切り行為で、彼がその咎で始末され、見せしめに吊るされたのは想像に難くない。
 「自分は散々デストロンの一員として手を汚しきた。」としていた男だが、自分を救ってくれたこともあり、そのまま捨て置けない風見は「降ろして葬ろう。」として遺体に近付いたが、そこに爆弾が仕掛けられていた(←この辺りのヨロイ元帥のえげつなさが、結城の復讐心による醜さを軽減させているとも云える)。

 気絶から目を覚ました結城は風見の姿を探すが見当たらない。風見の身も案じられるが、プルトンロケット発射まで時間が無いと見た結城は単身デストロンアジトに向かった。そしてそこでヨロイ元帥と首領の会話を耳にし、自分が「利用されるだけ利用されて、やがては消される」と云う身の上であったことと、何より首領が人類を「虫けらほどの価値もない。」として全滅させることに些かの痛痒も覚えていないことを知らされた。
 しかも、首領は結城が立ち聞きしているのを知った上でそのことを嘲笑う様に話していた。組織の仲間だけではなく、信頼していた、親とも見ていた人間に端から裏切られていたことへの怒りに燃える結城は室内に乱入するとライダーマンに変身し、ヨロイ元帥に掴みかからんとした。

 だが、そんなライダーマンに対して、首領は「そんな奴放っておけ」としてプルトンロケット発射を命じた。ヨロイ元帥ライダーマンを無視する様にスイッチを入れたが、さすがに自分に打ち掛かってくるライダーマンに対して応戦しない訳にはいかず、ザリガーナに変身し、最後の一騎打ちが行われた。
 だが、これまでも何度か両者が干戈を交えたことはあったが、ライダーマンヨロイ元帥に決定的な一打を与えられたことは無かった。特に優勢に転じることも無いままプルトンロケット発射の時間が迫ったことを察知したライダーマンは、怨敵を討ち果たすことより、東京都全都民の命を守ることを優先した

 プルトンロケットは有人ロケットでもあり、ライダーマンはそれに乗り込もうとした戦闘員をロープアームで絡め捕ると自身がそれに乗り込み、V3に後事を託し、「安全な場所で爆破させる。」と告げ、上空に達したところで、「ライダーマン結城丈二の最期を見ろ!」と叫ぶやダイナマイトらしきものでプルトンロケットを内部から破壊し、東京都は救われた。

 復讐よりも、多くの人々を救うことを優先し、その為に我が身を犠牲にすることも厭わなかったライダーマンを褒め称えるV3は彼を「英雄」とし、「仮面ライダー4号」の名を贈ったのだった。
 ここにライダーマン結城丈二は復讐を捨て、その替わりに仮面ライダーの一人となる栄誉を得たのだった。


後日譚 デストロンが滅び、ヨロイ元帥も落命したことで結城丈二の復讐対象は消滅した。だが、結城が抱いた怨念は並大抵のものでなかったことが後日展開された他作品にて垣間見える。

 特番『全員集合!7人の仮面ライダー!!』にてこうらくえん遊園地にて歴代ライダーが素顔で勢揃いし、立花藤兵衛と共に思い出話に花を咲かせたのだが、結城の番が回ってきた際に、藤兵衛は「ヨロイ元帥ってどんな奴だった?」と尋ねた。
 それに対して結城は、奴こそが最も卑劣な男であることが断言出来るとした。デストロン壊滅後も、ライダーマンはGOD〜デルザー軍団までの数々の悪の組織と戦っており、その中で様々な悪人と遭遇してきたことだろう。そんな中、ヨロイ元帥こそが最も卑劣と断言するのも、自身の右腕と敬愛してくれた助手を奪われた恨みが骨髄であった故だろう。
 もっとも、歴代悪の組織の大幹部の中に在って、ヨロイ元帥の残忍さと卑劣さは今でも際立っているのも確かなのだが(苦笑)。

 そして本作の続編とも云える漫画『仮面ライダーSPIRITS』の第6話にて、プルトロンロケット共に大空に散った直後の結城丈二が描かれていた。
 奇跡的に一命を取り留めた結城はタヒチに流れ着いていたが、記憶喪失に陥っていた。そしてそこに死んだ筈のヨロイ元帥が襲い掛かってきた。『仮面ライダーV3』の最終回にて首領に見放され、爆殺された筈のヨロイ元帥だったが、自己の地位を守る為には仲間に濡れ衣を着せて殺すことも厭わない卑劣漢はスペアとなるボディを用意しており、そこに魂を移し、次なる組織(恐らくGOD)への手土産として結城の脳髄を持参すべく結城に襲い掛かったのだった。

 ICPOの捜査官アンリエッタ・バーキンから、デストロンの一員として自分が為して来た悪行を聞かされて尚、記憶の戻らない結城だったが、ヨロイ元帥を前にして機械の腕が以上に疼くのを感じ、「この機械の腕は余程あんたをキラってたらしいな」と叫んだ。
 勿論最後には記憶を取り戻すのだから、結城ヨロイ元帥を前にして憎悪を感じても何に不思議もない。だが、何も思い出せない状態でも尋常ならざる嫌悪感をフラッシュバックさせていたことから、結城の心身に刻まれた恨みは文字通り骨髄だったのが見て取れた。
 直後、ヒナウからアンリ経由でライダーマンマスクを渡され、変身した結城は、彼の名を呼ぶヨロイ元帥に対して自分はライダーマンだとして、ヒナウの声援を受けて復讐ではなく、背後にいるヒナウ、タヒチの人々を守る戦いに身を投じた。

 そして、本来ならライダーマンとしての力ではヨロイ一族の装甲を砕けないとの設定は保持されたまま、ドリルアームで穿った穴にマシンガンアームから銃弾を撃ち込むことでヨロイ元帥の体内で跳弾が起きると云う形でライダーマンは怨敵に勝利した。
 皮肉も、復讐を捨て筈の男が復讐を果たした訳だが、その勝利を掴んだ右腕は、憎む相手と戦う出ではなく、「みんなを守る腕」(ヒナウ談)となっていた。


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令和六(2024)年一一月五日 最終更新