第4頁 ウルトラマンレオ………最後には見下していた?

Revenger 4
名前おゝとりゲン
変身するヒーローウルトラマンレオ
復讐取組期間『ウルトラマンレオ』第1話「セブンが死ぬ時!東京は沈没する!」〜第30話「日本名作民話シリーズ! 怪獣の恩返し 鶴の恩返しより」?
復讐対象サーベル暴君マグマ星人
復讐達成狭義には有り
復讐除去要因地球への帰化


愛する者の死 話は『ウルトラマンレオ』の始まる前のことである。
 早い話、サーベル暴君マグマ星人がL77星を侵略し、ウルトラマンレオの同胞がほぼ皆殺しに近い目に遭い、L77星そのものも宇宙の藻屑と消されてしまったのである。

 『ウルトラマンレオ』の前日譚となる話が漫画『ウルトラマンSTORY0』で描かれているが、マグマ星人は宇宙に点在する美しいものを求めて星々への侵略を繰り返しており、その次なる標的としてL77星が選ばれた。
 レオは星の王であるアルスの長男で、双子の弟・アストラと共に王子として武官・ドリューの教えを受けていたが、そこにマグマ星人が襲撃してきたことで父が光の巨人となる能力を持つことを知り、自身もその力が求められた。
 前々から交流のあった星が次々とマグマ星人に滅ぼされるのを憂慮していたアルス王は抗戦の意志を固め、「侵略者とは取引をしない。」として、次男・アストラが捉えられても降伏に応じなかった。
 結局戦いの中でアルス王はレオを庇う形で戦死。紆余曲折を経て光の巨人としての能力に目覚めたレオは迫り来るマグマ星人の尖兵達を次々に蹴散らし、マグマ星人総統をも討ち取ったが、侵略の急先鋒に立っていたその兄が自棄糞を起こし、腹いせ的にL77星の地下深くに眠るマグマを起動し、L77星を消滅させてしまった………。
 ウルトラマンレオは母とL77星の民衆を乗せた脱出ロケットを発射させんとして、同じく光の巨人としての能力に目覚めたアストラと共に尽力したが、そこにL77星崩壊の余波が襲い、ウルトラマンレオは宇宙空間に放り出され、アストラ、母、数多くの臣民達、ペットのロンとも離れ離れとなり、後にアストラ、ロンとは再会を果たしたが、それまで長い間家族と故郷のすべてを失った宇宙の孤児として広大な宇宙を彷徨ったのだった。


復讐戦 何もかもを失ったレオにとって、まずは生きるのに必死だったと思われる。長い放浪の果てにレオが辿り着いたのは地球だった。地球を故郷にそっくりな星と見たレオはそこを第二の故郷と定め、地球人・おゝとりゲン(真夏竜)と名乗り、城南スポーツセンターのトレーナーとしての人生を歩んだ。

 ようやくにして得た平和の内に過ごすゲンは、番組が始まった時点では戦いの日々に身を投じる意志は無かった。地球には宇宙パトロール隊・MACがあり、それをウルトラセブンであるモロボシ・ダンが率いていた。ゲンはそれを知りつつ、MACともダンとも接触を図らなかった。マグマ星人が地球に来るまでは………。

 だが、あろうことか、怨敵マグマ星人は地球を侵略の標的と定め、双子怪獣ブラックギラス・レッドギラスを率いて襲来してきた。それを迎えうったウルトラセブンは双子怪獣の猛攻に苦戦し、右足を折られ、不具にされた。そこにマグマ星人が現れ、三位一体攻撃の前にセブンの命が風前の灯火と見られたその刹那、ウルトラマンレオが現れ、セブンに加勢した。
 双子怪獣がセブンに取り押さえられる中、マグマ星人との一騎打ちを展開したウルトラマンレオは勝負を有利に展開。不利を悟ったマグマ星人は撤収し、レオゲンに姿に戻って海岸に横たわるダンの元に駆け寄った。
 ダンはその場でゲンにMACへの入隊を要請したが、ゲンは最初それを渋った。明言した訳では無いが、恐らく怨敵マグマ星人と戦う以外の戦意は無かったのだろう。だが、ダンから「セブンはもういない。」と告げられ、セブン亡きMACを前にしてダンの要請を断れなかった。

 かくしてMAC隊員とトレーナーと云う二足の草鞋を履くこととなったゲンだったが、第1話、第2話、第30話の3話に渡って怨敵・マグマ星人との死闘を展開したのだった。
 第1話終盤では双子怪獣の必殺技ギラススピンの前に苦戦し、第2話にてダンのウルトラ念力に救われ、そのダンから与えられたヒントを元にきりもみキックをマスターしたことで双子怪獣を首ちょんぱにして勝利したが、不利な戦いを徹底して避けるせこい性格のマグマ星人は即座に撤収し、逃げられてしまった。

 そして第30話では、マグマ星人から求愛された宇宙鶴ローランが地球に逃げて来たことから星村と名乗る女性(桜井浩子)に化けた彼女と遭遇し、彼女を守る為にマグマ星人と再戦することとなった。
 憎むべき侵略者から、獣姦趣味のストーカーに成り下がり果てていたマグマ星人は、最終的に自らを囮としたローランに襲い掛かったところでレオの迎撃を受け、幾多の死闘を重ねて戦闘能力を大幅にアップさせたレオの相手としては善戦したが、それでもレオはほぼ危なげなく勝利を収め、怨闘に終止符を打ったのだった。
 勿論、マグマ星人は一人ではなく、以降のウルトラ作品には何人ものマグマ星人が登場している(過去作「サーベル暴君十人十色」を参照して頂けると嬉しい(笑))。だが、令和6(2024)年11月6日現在、ウルトラマンレオマグマ星人と戦った記録は無く、復讐戦は展開されていない。


潜む醜さ 普通に考えてウルトラマンレオおゝとりゲンマグマ星人を憎むのは当然過ぎるほど当然だった。もし、ある日突然地球が異星人に襲われ、自分一人が生き残り、地球そのものが滅ぼされたとして(チョット想像つかないが……)、命からがら逃れた果てにその異星人と遭遇したら………まず冷静ではいられまい。

 第1頁でも触れたが、第二期ウルトラシリーズの主人公は成長途上にある若者の、人間的に未熟な一面が描かれることも多い。しかも同じチーム内に同じウルトラマン、それも老成した冷厳な上司として併存しているのである。ゲンの怒りに顔を歪ませる様は嫌でも際立った。
 そんな諸事情が相まって、復讐戦に燃えるゲンの姿は同情を誘いながらも美しくは映らなかった。入隊直後に起きた異変に対して「マグマ星人だ!」と色めき立つゲンに対して先輩達は「後輩が分かった風な口を利くな。」と的な態度を見せた。
 ダンが例え100回が100回虚報でもそれを調べるのがMACの任務としたことで哨戒が行われれたが、不運にもゲンがウルトラマンとしての能力で海中に潜む双子怪獣を捉えたのに対し、マッキー1号に搭載されたレーダーはそれを捕捉出来ず、「異常なし」と判断され、それに納得出来ない態度を取るゲンはすっかり浮き上がってしまい、ダンの制止を振り切ってMAC隊員としての立場も無視して双子怪獣に挑んだ。
 戦いは上述した過程を経て双子怪獣を倒したことでマグマ星人を撃退させたが、その過程でダンは度々復讐の念に凝り固まって冷静さを欠くゲンを諭したが、ゲンは故郷を奪われた悲しみと怒りは当事者にしか分からないと反論。さすがに感情論とはいえ、これにはダンも反論する言葉が無かった。

 ただ、冷静さを欠き、周囲を見ない戦い方をしたことに対して、ゲンに反省がない訳では無かった。第1話終盤でウルトラマンレオを双子怪獣との戦いの巻き添えでスポーツセンターの仲間で、恋人とも云える山口百子(丘野かおり)が重傷を負い、さすがにゲンはそれに責任を感じていた。
 それゆえ第2話終盤では都内に被害をもたらさないため、双子怪獣を沖合に誘い出す様にしてウルトラマンレオは戦った。ナレーション(瑳川哲郎)も触れていたが、これは海での戦いに慣れた双子怪獣を相手にするには自らの戦況を不利にする行為だったが、レオはそれを選んだ。


復讐の終わり  ウルトラマンレオマグマ星人に対する復讐の念をいつ捨てたのか?それは、復讐の念を捨てたのか否かも含めはっきりとはしない。
 ただ、確実に云えるのは、レオが復讐よりも優先すべきことをしっかりつかんでいたことである。それは第2の故郷にして唯一の故郷である地球とそこに住まう人々を守ることであった

 一応、第30話にてレオマグマ星人を討ち果たしていて、これをもって「本懐を遂げた。」と見る向きもあるが、シルバータイタンはそんな単純な話と思っていない。
 そもそも、直接的な仇だけで云えば、故郷L77星を侵略した親玉であるマグマ星人総統はレオ自身がその場で倒している。また、L77星を破壊した総統の兄は当然L77星と運命を共にして果てている。
 そんなレオが直接的な仇となったマグマ星人のみならずマグマ星人全般を憎んでいたのは想像に難くなく、すべてのマグマ星人を恨みとするなら、レオが本懐を遂げる日はマグマ星人を絶滅させる日という事になる。余りこんな書き方をしたくないが、ヒロシマ・ナガサキへの原爆投下で家族を皆殺しにされた人が原爆投下を命じたトルーマンや、爆撃機エノラ・ゲイの搭乗者のみならずすべてのアメリカ人を憎み、殺意を抱くのと似た話になる。

 だが、レオは第1話・第2話でマグマ星人に対する憎悪を見せ、第30話でも「両親の仇」としていたが、少なくともマグマ星人を皆殺しにする行動は一切起こしておらず、同話でマグマ星人を倒した際にも、格別勝利の感慨を見せていた訳では無く、ローランを故郷に送る行動に移っていた。
 ここからは推測になるが、レオに「マグマ星人は好きか?」と問えば、今でも「大嫌いだ!」と帰って来るだろう。だが、過去作でも触れたが、マグマ星人は十人十色で、全員が全員L77星侵略・殲滅に邁進していた訳でもなく、好戦的でもなかった。
 L77星側の頑強な抵抗に厭戦気分に陥って多くのマグマ星人が逃げ出していたし、単純に剣豪としての道を選んでいた者(『ウルトラマンメビウス』第16話)もいれば、賞金稼ぎに身を投じた者(『大怪獣ラッシュ ウルトラフロンティア』)もいれば、地球で就職した者(『ウルトラマンタイガ』)までいた。
 恐らく、レオは故郷を滅ぼした民族であるマグマ星人に好ましい感情は抱けぬものの、徐々に怨みの心を薄れさせ、直接的な仇となったマグマ星人はともかく、それ以外のマグマ星人に対してまでは復讐心を抱いていなかったのではあるまいか?
 実際、第30話でマグマ星人と一人倒し、その命を奪っているが、その個体はL77星を滅ぼした個体ではない(従軍していたかも知れないが)。第1話・第2話に登場した個体と同一か否かはっきりしないが、もし同一個体なら「セブンの足と変身能力を奪った怨敵」ということになるが、故郷を滅ぼした敵に比べるとまだ憎悪対象としては弱い。

 思うに、ウルトラマンレは地球でのおゝとりゲンとしての日々を充実させることによって第二の人生が充実し、第一の人生における不幸を軽減させていたのではあるまいか?
 第2話での勝利に際しても、レオの胸中にあったのは双子怪獣を討滅した勝利への喜びではなく、瀕死の重傷を負った山口百子を憂う気持ちだった。
 幸い百子は一命を取り留め、MAC隊員としてダンのいじめにも等しい特訓(苦笑)を受けつつ、徐々に戦闘能力を高め、MACでの雰囲気もアットホームなものに良化し、L77星人よりも地球人としての日々の方が大切なものとなり、マグマ星人への復讐の念は皆無ならずとも、二の次、三の次へとシフトしていったと思われる。

 実際、第30話冒頭でマグマ星人に襲われるローランをマッキー2号での攻撃で救った際にも、逃げるマグマ星人に対して「ざまぁ見ろ!」との罵声をゲンは浴びせており、それは「恩的に対する憎悪」よりは、「見下した相手への侮蔑」との色合いが強かった。
 少なくとも、第30話の頃には第1話・第2話時点に比してかなり復讐心を軽減させていたと思われる。

 そして作品全体を通じて思うに、おゝとりゲンウルトラマンレオが復讐心を捨てた、或いは大幅に軽減させた背景にあるのは「地球への帰化」にあるとシルバータイタンは見ている(勿論、アストラが生きていたことや、ウルトラマンキングとの邂逅も大きい要因ではある)。
 元々地球にたどり着いたころのゲンにウルトラマンとして戦う意志は無かった。セブンと知り合ったのも、セブンが怨敵であるマグマ星人と双子怪獣に襲われていたからで、その危機さえ脱すれば、「ほな、さいなら」で終わる筈だった。
 だが、城南スポーツセンターのトレーナーとして、MAC隊員として、多くの人々と交流する中ですっかり地球に馴染み、侵略的宇宙人に対してそれらを討ち果たすよりも、大切な仲間を守ることの方が重要となっていった。その過程には地獄の特訓や、宇宙人そのものを敵視する多くの地球人の怒りと悲しみがあり、決して平易なものでは無く、第40話ではスポーツセンター・MACの多くの仲間を失った。
 それでもすぐに美山家に受け入れられ、一時は「円盤生物が地球を襲うのもレオがいるから。」との意見に苦悩したが、その考えを口にしていた美山いずみ(奈良富士子)自身が、ゲンを「宇宙人なんかじゃない、私達と同じ血の通った人間」としたことで、ウルトラマンレオは完全におゝとりゲンとしての地球への「帰化」を果たし、地球は彼にとって唯一にして本当の故郷となった。その後、ウルトラ兄弟の一員としての任務からウルトラマンレオとして地球を離れたり、K76星でウルトラセブンの息子・ウルトラマンゼロを鍛える師匠としての任に着いたりしたが、地球が唯一の故郷であることに変わりはなく、『ウルトラマンメビウス』第34話では、人として、戦死として未熟だったころの自分が守れなかった黒潮島の犠牲者に対して花を手向けるゲンの姿があった。
 ゲンは黒潮島を「俺が決して忘れてはならない場所」として、地球を守る為の決意・能力がまだまだ甘いと見るメビウスに対して厳しい叱咤激励を行っていた。

 結局のところ、ゲンが復讐心を捨てたのか否かは厳密にははっきりしない。だが彼が復讐よりももっと大切なものを持ち、その前にあっては復讐心もちっぽけなものとなっていることだけは断言出来よう。


次頁へ
前頁へ戻る
冒頭へ戻る
特撮房へ戻る

令和七(2025)年一月四日 最終更新