第5頁 城茂………改造手術の苦痛に耐えたが
Revenger 5
名前 城茂 変身するヒーロー 仮面ライダーストロンガー 復讐取組期間 『仮面ライダーストロンガー』第1話「おれは電気人間ストロンガー!!」〜? 復讐対象 ブラックサタン 復讐達成 不明 復讐除去要因 不明
愛する者の死 話は『仮面ライダーストロンガー』の始まる前に遡る。つまり、事の顛末は主人公・城茂(荒木しげる)が第2話で語っていた範囲でしか分からない。具体的な描写を知るとなると、漫画『仮面ライダーSPIRITS』第15巻・第16巻に詳しい(※同書が本作の続編であるとの正式な規定はありませんが、話を分かり易くするため、本作では続編と捉えて語っています)。
茂が悪の組織によって奪われたのは親友の沼田五郎だった。彼が如何なる人物だったかは上掲書の描写に頼るしかないのだが、それによると茂と五郎は同じ城南大学アメリカンフットボール部に所属する仲間で、時に「俺の方が強い!」と云い張って殴り合う喧嘩友達で、無二の親友だった。
後に仮面ライダーとなった茂が仮面ライダーストロンガーと名乗ったのも、アメフトの試合において五郎が自身のボールコントロールと、茂の俊足を活かしたアサイメント(作戦)名として、「より強く(stronger)」という掛け声として口にしたのが由来となっていた。
その五郎がある日突然無残な死体となって発見された。
部の仲間から知らされ、新聞に「体内に人体実験の痕」と記され、駆け付けた茂は五郎の遺体を納めた棺を前にし、「バッカヤロウ テメエ何やってんだよ 何が「より強く・・」だ 俺達はまだ勝っちゃあいねぇ!」と半狂乱になって叫び、事件を調べに来ていた警察官達に取り押さえられる有様だった。
直後、事件を主題に来たマスコミ関係者と思しき者が、「ブラックサタン」?聞いたことないな」、「海外からの思想テロ集団か」、「人体実験ってあたりがいかにも宗教批判って感じで」と話しているのを聞き付けた茂は、「おい その話……聞かせてくれよ」と迫り、親友の仇であるブラックサタンの存在を知った。
それにしても、この事件、新聞の片隅にも「タンとは…」という文章が見え、マスコミ関係者はブラックサタンの名を知っていたことが伺える。上述した様に殺された五郎の遺体の周囲には警察関係者も来ていた訳だから、死体遺棄事件、それも人体実験の痕が認められる程の人為的損壊が為された大事件なのに、本編第12話ではブラックサタンの脅威を街頭演説で訴える老人・大和田鉄平(永井柳太郎)に対して行きかう人々は変人を見る目で見ていた。真面目に疑問なのだが、五郎の遺体発見後、警察は何をやってたんだろう?
まあ、それはさておき、恐らく茂はそこから独自の調査を経て、ブラックサタンに乗り込んだのだろう。アジトに乗り込んだ時点で茂はブラックサタンが改造人間を作り出す科学力を擁した大規模な組織であることを把握しており、第1話で奇っ械人ガンガルに変身前の体では「勝負にならない。」と述べていたので、生身の体、それもたった一人ではとても太刀打ち出来ないのを充分認識していたのだろう。
そこで茂が採った策は、ブラックサタンを騙して自分を改造人間にさせ、その脳力でブラックサタンを倒すと云うものだった。
復讐戦 歴代仮面ライダーの中に在って、誤解を恐れず云えば城茂には目的の為に手段を択ばない傾向が比較的強かった。多くの仮面ライダーが敵の甘言に対して聞く耳持たないのに対し、茂は一応話を聞き、場合によっては一時的な不可侵の約束に応じることもあった(勿論長続きしないが)。
上述した様にまず茂はブラックサタンを騙すところから始めた。
ブラックサタンの科学者(富士乃幸夫)達に対し、「世界一強い改造人間になって思う存分悪事がしたい!」との大嘘を並べて、自分を改造人間にしてくれと申し出た。科学者陣は茂の申し出を小気味いいものとし、直後に行われた適材試験(体に電気を流して耐久力を図るものと思われる。過去にショッカーも似たことをやっていた)でも茂を「奇っ械人には最適」として嬉々として改造手術に臨んだ。
茂と面会した当初、科学者の一人は改造人間になることを強く切望する茂に対して、死以上の苦痛と危険が伴う改造手術をどうしてそうまでして受けたがるのか?と尋ねていたが、実際この手術−奇っ械人スパークを作らんとする手術に耐え切れず、沼田五郎は命を落とした。別件だが、岬ユリ子(岡田京子)の兄・岬守(倉石功)も改造手術の為に命を落としていた。
そして茂もまたかなりの苦痛に耐えて手術を受けていたOPの終盤でも繰り返されるこのシーンを見る度思う、麻酔は無かったのか?と。全身麻酔が開発されるまでの時代、外科手術は痛がる患者を縛り付けて行ったとか、針麻酔で眠らせたとか、当身を食らわせて気絶させた隙にやったとか、様々な説を聞いたことがあるが、想像を絶する痛みの中、発狂死する者もいたと云う。恐らく五郎も守も相当な苦痛の果てに悶絶死したと思われ、その死に様からも茂の復讐心の大きさがうかがえると云えよう。
ともあれ、耐えがたい苦痛に耐えて茂は改造人間ストロンガーとなった。『仮面ライダーSPIRITS』によると、当初五郎の改造体につけられる筈だったスパークの名を「縁起が悪い」として自らストロンガーと名乗ったと描写されている。もっとも本編第2話では手術終了直後にブラックサタンの科学者が「ストロンガー」との名を与えていたが、その時にカブト虫の改造人間であることが明言されていたから、普通ならカブトムシ奇っ械人か、奇っ械人ビートルと名付けられただろう。
いずれによせ、科学陣は最適な素材を用いた強力な改造人間が生まれたことを喜び、茂を大首領(声:納谷悟朗)への宣誓式に臨ませた。だが、首領と組織への絶対忠誠を誓う筈の場で茂は、自分が親友沼田五郎の仇討ちの為に仲間入りを騙って改造人間になったことを暴露し、自己催眠装置によって脳がブラックサタンのものとなるのを密かに阻止していたことを告げるや、初変身を披露することでブラックサタンへの宣戦布告としたのだった。
潜む醜さ 親友の為に自らの肉体を捨て、改造人間となってブラックサタンへの復讐に挑んだ仮面ライダーストロンガー・城茂だったが、実はほとんど復讐心を前面に押し出さなかった。「沼田五郎」の名が出たのも本編では第2話が最初で最後だった。
それ故に茂が復讐心で表情を歪めたり、冷静さを欠いた行動を見せたりすることも無かった。唯一度、茂が復讐心を元に表情を歪めたとしたら、それは上述の宣誓式の時だった。
ブラックサタン大首領から組織の命令には何があっても従うことを万物の悪魔に誓うよう命じられた茂は黙りこくり、科学者達に先制を促されると狂ったように大笑いし始めたのだったが、それは嘲笑で、ブラックサタンの大首領並びに組織の面々を「余りにも間抜け」と罵ったものだった。
人を嘲って笑っているのだから、この時の茂の表情は敵の立場に立って見ればかなりムカつくものだった。同作放映当初、俳優経験がまだそれほど深くも無かった荒木しげる氏の演技にはべらんめえ口調に不自然さも見受けられるのだが、このときの嘲笑はかなりの名演で、本来人が人に向けるものとしてはかなり醜いものでもあった。
結局、これを最後に茂がブラックサタンへの敵意を見せても、復讐心を露わにすることはなく、沼田五郎の名も出ることは無かった。
復讐の終わり 実のところ不明である。そもそも復讐を捨てたのかすらも分からない。それもこれも城茂が第2話の宣誓式のシーンを最後に、復讐心を全く示さなかったからである。
まあ、「親友沼田五郎を改造手術で殺害したブラックサタンへの復讐」という命題で考えれば、第26話におけるブラックサタン大首領討滅に伴うブラックサタン滅亡をもって茂の復讐は終わったと云える。
思うに、茂は感情の起伏が激しいように見えて、ネガティブな感情は余り表に出さず、内に秘めるタイプの人間なのだろう。第30話で電波人間タックル・岬ユリ子が戦死した際、自分の力が至らなかったことを詫び、第31話冒頭でユリ子の墓前にて「デルザー軍団最後の一人を倒すまで」と云う言葉を口にし、直後、罠に掛けて絞め上げたドクロ少佐に対して、「タックルの仇を討ってやる。」と口走ったが、その後、タックルへの仇討ちや復讐の言葉を口にすることは無かったし、デルザー壊滅まで訪れないとしていたユリ子の墓が作中にて再度登場することも無かった。
後日譚 当然のことながら城茂の中から岬ユリ子と沼田五郎に対する想いが消えた訳では無かった。『仮面ライダーSPIRITS』第11話の時点で茂はユリ子が眠る三浦海岸近くのバイク屋に立花藤兵衛と共に住まい、頻繁にユリ子の墓参りをしていて、目の前に電波人間タックルが現れた際もそれがバダンによって作られた紛い物であると理屈では分かっていたのに、ウルトラサイクロンをまともに食らって、胸部の内蔵部品が露出するほどの重傷を負い、変身不能に陥っていた。
それから程なく現れた奇っ械人スパークを前に「五郎」と呼び掛けるも、故人との約束の為にはどんなに無様でも死ねないとして、自分のプロトタイプであったスパークの体から強奪した部品で変身能力を取り戻し、再生ブラックサタン奇っ械人軍団相手に獅子奮迅の戦いを展開した。
妙な形ですっかり元気を取り戻して奮闘する仮面ライダーストロンガーに対して半ば呆れていた立花藤兵衛に風見志郎はその姿を「茂のこだわり」とした。その意は「天に召された女と・・・・太地に眠った男の分まで悪を倒せと・・・・」というものとされていた。
ここでいう「女」と「男」が誰であるかをいちいち述べては野暮だと思われる。
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令和七(2025)年一月四日 最終更新