第8頁 ウルトラマンヒカリ………純粋過ぎた故に

Revenger 8
名前セリザワ・カズヤ
変身するヒーローウルトラマンヒカリ
復讐取組期間『ウルトラマンメビウス』及び『ヒカリサーガ』(※期間については様々な捉え方があるので詳細は後述)
復讐対象高次元捕食体ボガール
復讐達成有り
復讐除去要因地球人との交流及びウルトラ兄弟としての覚醒


愛する者の死 ウルトラマンヒカリは体色から見えるようにブルー一族と云われる種族で、元々は戦士型ではなく、宇宙科学技術局に所属する科学者だった。年齢は2万2000歳で、ゾフィーよりは若いが、初代ウルトラマンより年長である。
 その任務故にM78星雲外で積極的に戦うことも無く、「命の固形化に関する技術の研究」の成果により、ゾフィー以外には見られないスターマークを授与される程の人物だった。だが皮肉にもこの研究成果を、触覚宇宙人バット星人を初めとする侵略的宇宙人から狙われることとなり、責任を感じたヒカリは長官就任を辞退して宇宙放浪の旅に出たことで長く表舞台に現れなかった。

 そんな放浪中にヒカリが遭遇したのが、惑星アーブでの悲劇だった。
 アーブの民には滅びの運命が予言されており、ヒカリはウルトラマンキングから授けられたナイトブレスを引っ提げてその運命を回避せんと尽力したが、奮闘空しくアーブ高次元捕食体ボガールによって滅ぼされてしまった。
 交流を重ね、愛したアーブの民を滅ぼされた光の怒りと悲しみには凄まじく、当然の様にボガールは復讐対象となった。


復讐戦 ボガールは高次元捕食体のレジストコードが示す様に、捕食一筋の存在で、食欲の塊のような存在だった。何せ、地底怪獣グドンが古代怪獣ツインテールを食らわんとして襲い、ツインテールが必死に抵抗しているところに割って入り、両者を共に食ってしまうような奴だった。
 当然、滅ぼした星に留まる筈なく、次の捕食対象を求めてアーブを発ち、ヒカリもそれを追った結果、両者は地球に到達した。そこでヒカリは宇宙斬鉄怪獣ディノゾールとの戦いに敗れ、命を落とさんとしていたCRUE GYUES JAPANの隊長セリザワ・カズヤ(石川真)と遭遇し、地球での活動を容易にする為にセリザワと融合した。


潜む醜さ 前もって滅びの運命を知らされ、ウルトラマンキングからその阻止を命じられながら、それを回避出来なかったことがウルトラマンヒカリの心に深い悲しみと大いなる怒りをもたらしたことは想像に難くない。悲しみだけ、怒りだけ、ならまだしも両者が揃うと誰しもが簡単に復讐に捉われる。

 上述した様に、復讐の為にセリザワ・カズヤと融合したが、初代ウルトラマンやウルトラマンジャック、A、タロウが遭遇した地球人の命を救う為に融合したのに対し、ヒカリは自己目的の為に一方的に融合しており、半ば乗っ取りに近かった。
 まあ、そうは云っても、結果的にセリザワの命を救うことにはなったし、彼の意識を完全に塗り潰すようなことはしなかったので、良心を失った訳では無かった。

 そんなヒカリの復讐に捉われた様を象徴するのが、伝説の鎧・アーブギアと、「ハンターナイトツルギ」の名だった。

 アーブギアは、惑星アーブの知性体の怨念が宿った伝説の鎧で、友好関係にあったアーブの民を滅ぼされたヒカリは復讐の為にボガールを倒すことだけに生きる決意をし、その際にこの鎧を纏ったことでハンターナイトツルギとなった。
 誤解を恐れず云えば、ヒカリは「復讐の為にウルトラマンであることを捨てた。」と云える。もっとも、別の云い方をすれば、「ウルトラマンに復讐は相応しくない。」と考えていたのかも知れない。

 いずれにせよ、この時点でヒカリの頭にあったのは「復讐」の二文字で、セリザワとの融合も単に地球での活動をし易くするだけのものでしかなかった。当然地球に常駐する意思も義務もなく、ウルトラマンメビウスとなし崩し的に共闘することはあっても、本当の意味での共闘ではなかった。


復讐の終わり ハンターナイトツルギの復讐は、文字通りの意味で云えば、第10話にてボガールモンス(←ボガールがエレキミクラスの電撃エネルギーを吸収して進化した存在)を倒したことで終結した。

 だが、本作の主旨である「復讐を捨てる」という事を考察すると、単に仇敵を討滅したことで終わる単純な話ではは無く、特にウルトラマンヒカリハンターナイトツルギという二つの在り様を持つこのウルトラマンの「復讐」を考察すれば前後の流れと考察は重要である。

 復讐の為だけに生きることを誓ってアーブギアを纏い、ハンターナイトツルギとなったウルトラマンヒカリだったが、やはり彼はウルトラマンだった。上述した様にセリザワ・カズヤの意識を潰さなかった。
 このことで復讐の念に引き摺られながらも、ハンターナイトツルギは常に同じウルトラマンであるウルトラマンメビス、ヒビノ・ミライ(五十嵐隼士)、セリザワの直弟子とも云えるアイハラ・リュウ(仁科克基)の説得、加えてセリザワの潜在意識からの説得を受けて、徐々に「ウルトラの心」を取り戻していった。

 「ウルトラの心」を文言で解説するのは難しく、長くなるので割愛するが、別作品でウルトラマンゼロが完全に悪の権化と化したベリアルにすら、「お前だって、「ウルトラマン」だろうが!!」と怒鳴りつけていたことから、ウルトラ一族が生まれながらに持ち、どんなに闇落ちしても失い得ない芯からの正義と思われる。
 結局、ハンターナイトツルギボガールモンスとの最終決戦で復讐を遂げたが、エネルギーを使い切り息絶えた。ある意味、復讐に捉われた人生の終焉だったと云える。

 だが、幸いにしてウルトラの母に助けられたことで蘇生し、メビウス達との共闘への想いもあって、しばらくは地球を狙う怪獣達と戦い続けたが、その前後で地球人の持つ強さや仲間の大切さを学び、ウルトラ戦士の強さの源が「守るべきもの」にあると悟り、このことは強さ至上主義主であった宇宙剣豪ザムシャーにもかなりの影響を与えた。
やがてメビウスの成長を見届けたことと、自身の体への酷使をゾフィーに諭されたこともあって、地球を離れると惑星アーブを再訪した。
 そしてそのとき、アーブギアは、「復讐の鎧」から、ヒカリの正しき心にアーブの大地が共鳴して生まれた「勇者の鎧」に変わり、後に暗黒宇宙人ババルウ星人を追って地球にて対峙した際に、自らの意思でアーブギアを纏ったことでミライ達を驚愕させた。

 そしてヒカリは、ババルウ星人に対して、「俺はもう、一人ではない!!」と云い放った。それはかつて復讐に捉われ、周囲を全く無視して戦った男が、メビウス及び地球人との切れない絆を持ち、滅ぼされた星野滅びぬ意思纏ったことで、滅びたアーブの民とも永遠の絆を保ち得たことを確信した瞬間で、ここにウルトラマンヒカリの復讐心は完全に消え去ったと云えよう。


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令和七(2025)年二月一四日 最終更新