1.ライダーパンチ…(仮面ライダー2号VSカニバブラー)

番組『仮面ライダー』
サブタイトル第19話「怪人カニバブラー 北海道に現る」
技名ライダーパンチ
使い手仮面ライダー2号
被験者カニバブラー(ショッカー軍団所属)
実践結果決着(カニバブラー死亡)
ストーリー概要 第14話より登場した仮面ライダー2号一文字隼人(佐々木剛)の活躍も一ヶ月以上が経過していた。2号編初の、作品としても第6話・第7話に続く遠隔地ロケで、北海道が舞台になったのはこれが初めてである。

 ストーリーはショッカーによくある化学兵器による自然災害の誘発。新型水中爆弾を使って人工大津波を起こし、室蘭半島を壊滅させる計画だった。その地に立花レーシングクラブの面々がバカンスにやって来たのはお約束的偶然である(笑)。

 人工大津波の前段階として行った人工小津波の実験を隠蔽する為に各地の気象観測所を襲撃し、地震計を破壊し、海底基地に近付く人々を無差別に殺害して機密を保持するのがショッカー怪人カニバブラーの任務だが、当時既に悪の組織は大事の前の小事で自ら機密を漏らす悪癖を持っていたことが分かる(笑)。

 この基地に近付く人々の抹殺任務の為に北海道にやって来た立花レーシングクラブ一行を襲撃したカニバブラー2号ライダーと邂逅する。それらの任務の途中で海底基地との通信に使用していた小型無線機を落としたことで滝和也(千葉治郎)の先輩・神田の手に入り、極超短波384メガサイクルを解析されることになる(←アホである)。
 小型無線機の紛失に気付いたカニバブラーは神田を拉致して無線機を取り戻さんとするが、これは2号ライダーに阻止された。

 事ここに至って作戦遂行を焦るショッカーは札幌中央気象台の地震計の破壊に走り、これを成功させるも、2号ライダーと三度目の対決となり、ライダーキックに耐える奮闘を見せるも、逃走することになる。
 その後、滝やマリ(山本リンダ)の協力で逆探知を完成させた一文字は海底基地に駆け付ける。ショッカーサイドは新型水中爆弾で基地破壊と人工大津波発生を同時に行わんと図るもサイクロンで突入してきた2号ライダーに阻止される。

 作戦阻止に成功した2号ライダーカニバブラーとの決戦に及び、口から吐き出された白い泡(人間を溶解する力がある)に視力を奪われるが、カニバブラーが左手による鋏攻撃を岩にぶつける誤爆で苦しんでいる隙を突き、ライダーパンチの一撃で勝利した。

 戦いが終わった後、一文字は仲間の有難味と、それゆえに決してショッカーに負けないという矜持を得て後々の戦いに想いを馳せるのだった。


炸裂と決着 カニバブラーは一部にドジな面も見受けられるが、ショッカー怪人の中ではそれなりに有能な方である、とシルバータイタンは見ている。
 甲殻類であるカニの改造人間とくれば鋏・甲羅・泡・水中適応が能力の基本として考えられるが、意外に甲羅の固さや水中適応は重んじられていない(亀系の怪人では重んじられる)。だが、カニバブラーは四点とも重視されている。
 甲羅はライダーキックに耐え(←これは立派)、戦いが不利になると海中に逃れて2号ライダーの追跡を振り切っている。そして口から吐かれる溶解泡(←カニ系はこの点が重んじられる傾向にある)は人を溶かし、2号ライダーのCアイを損傷して視力を奪い、戦いを有利にしている。
 だが、カニ属の武器である筈の鋏が意外な欠点となった。鋏の付け根が弱点らしく(当時流行したライダーカードによればこれに類似した欠点を持つ改造人間が少なくない)、誤って岩を叩いたことで苦しんだ隙を逃さず、2号ライダーライダーパンチを炸裂させ、戦いに勝利した。

 小型無線機の紛失や、岩への誤爆を見れば間抜けさが目立つカニバブラーだが、基地の見張りに際してもラフな服装で、海に入ろうとする人だけを襲ったり、札幌中央気象台の襲撃を成功させたり、といった所にはそれなりに有能な面も見られる。ストーリーのオーソドックスさの中に隠れた強豪と見るのは云い過ぎだろうか?
 それゆえに第37話での再登場時にショッカーが自ら仕掛けた毒ガスを滝に利用されてあっさり敗れたのが残念ではあるが。


ライダーパンチのレゾンデートル 長い仮面ライダーの歴史にあって、仮面ライダー2号の代名詞ともいえる存在感を持つライダーパンチが初めて決まり手となったのがこの第19話である。とはいうものの、この話におけるライダーパンチの存在感がそれほど大きい訳ではない。
 前述したようにシルバータイタンカニバブラーを能力的にそれなりに強い怪人に分類しているが、かといってゲバコンドルトカゲロン程の強豪怪人とは見ていない。またアリガバリの時のように猛特訓によって生まれた技という訳でもない。ストーリー的にも北海道を舞台にした背景や、ラストの一文字の台詞にあるように仲間の活躍への想いの方が重い存在感がある。

 ではこの話におけるライダーパンチのレゾンデートル(存在意義)は軽いか?ニェート(No)である。注目すべきは二点ある。
 一点はカニバブラーライダーキックに耐えたことである。ライダーパンチライダーキックに耐えた相手を倒しているのである。拙作『必殺技のステータス』において触れたが、同作品において仮面ライダー2号は主役を張った期間(第14話〜52話)の戦いで54.29%をライダーキックで決着をつけている。残る戦いでもライダーキックの派生技が多く、次いで多いのが相手の自爆や意外な弱点を突いた物である。如何にライダーパンチが切り札としての地位を持っているかの証左と云えよう(言及はないですけどね)。

 二点目はこれがライダーパンチの初登場・初決着ということである。この第19話だけを見れば単発登場の技に過ぎないように見えるが、ライダーパンチは後々最初の大幹部を倒し、一号ライダーライダーキックと併存して要所要所に謳われ、劇場版に、漫画に披露され続けるライダーパンチの活躍はこの第19話に始まることを歴史的観点から注目されて欲しいものである。


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令和三(2021)五月二〇日 最終更新