2.ライダーパンチ…(仮面ライダー2号VS狼男)

番組『仮面ライダー』
サブタイトル第39話「狼男の殺人大パーティー」
技名ライダーパンチ
使い手仮面ライダー2号
被験者狼男=ゾル大佐(ショッカー軍団所属)
実践結果決着(狼男=ゾル大佐死亡)
ストーリー概要 クリスマスに程近い真夜中、二人の酔っ払いがショッカー怪人に惨殺された。ショッカーが開発したウルフビールスを射たれた酔っ払いは忽ち実験用狼男になるや、同僚を殺害した。それを目撃した若草園の園児・早瀬久美子は現場に靴を落としたことから身元が割れ、ゾル大佐(宮口二郎)は配下にその口封じを命じるのだが、その施設の早苗先生(鷲尾真知子)が一文字隼人や石倉五郎(三浦康晴)と偶然顔見知りだった為に2号ライダーの介入を招くことになる。

 口封じの為に若草園に押し入り、早苗を脅迫して久美子の部屋を聞き出した狼男は毛布にくるまった久美子を拉致するが、これは囮で毛布の中身は五郎だった。当てが外れて狼狽する狼男の隙をついて滝和也が五郎を助けるも、狼男2号ライダーライダーキックをもかわして逃走した。

 後半に入り、FBIからゾル大佐が新たな作戦を立案し、その為に幹部がある地点に来日することを知った一文字と滝は帝国通りに現れた幹部を襲い、ヘリコプターにしがみついての大立ち回りの末に仮装パーティーへの招待状と仮装用のヴェールを入手した。


 招待状と仮装用ヴェールを用いてゾル大佐主催のパーティーに潜入した一文字だが、勿論これは罠で、ゾル大佐はパーティー出席者にヴェールを脱ぐ事を命じた。
 ヴェールの下からはゾル大佐同様ナチスの軍服に身を包んだ(恐らくは)ドイツ軍人達が姿を現す中、一人ヴェールを脱がない出席者に一文字の正体を見抜いている事をゾル大佐は告げ、配下に運転手に化けた滝の捕獲を命じたが、ヴェールの下にいたのはその滝で、一文字はこの隙に基地内のウルフビールスを始末していた。

 ウルフビールスと基地と配下を失ったゾル大佐に退治する一文字狼男が駆け付けない事を揶揄するが、ゾル大佐は自らが一文字と同じ改造人間であることを告げ、鞭を一閃するや金毛を交えた狼男に変身し、一文字に襲いかかった。
 負けじと一文字仮面ライダー2号に変身し、敵の俊敏さ・ジャンプ力・指ミサイルに苦戦しつつもハイジャンプから宙を一転してのライダーパンチを炸裂させ、最初の大幹部との決戦に勝利したのだった。

 死闘に勝利した2号ライダーはそのままの姿でサンタクロースとして若草園の子供達にライダー人形をプレゼントするのだった。


炸裂と決着 大幹部が怪人に変身する最初の話となったのがこの第39話である。ゾル大佐がその正体を告げ、変身したのは最後の最後で、ストーリーの序盤にはゾル大佐実験用狼男が一緒に登場しており、タイトルからも直前まで彼の正体は分からないし、これがゾル大佐最後の出番と知らせるものもなかった(死神博士地獄大使の最終対戦時はタイトルからそうなることがバレバレだった(笑))。
 ともあれ最後の対峙もゾル大佐がその正体をカミングアウトするまでは何度か為された両者の対峙に過ぎないように思われたが、カミングアウト一つで「仮面ライダー対大幹部の正体」という初の展開に突入した。

 勝負その物は然程長いものではなく、2号ライダーも然程苦戦した訳じゃなかった。些か寂しかったのは変身後の狼男が「狼作戦は狼男だけが行える!」との宣言以外には最後の最後まで喋ることはなく、ライダーパンチを喰らった後は断崖絶壁に転落して爆死し、後年の大幹部達のように人間体に戻って今際の言葉を残すこともなかったことにある。
 もっとも、これは最初の幹部決戦にストーリーのウェイトが置かれればこそであろう。数々のライダー対大幹部の死闘を見慣れてきた特撮マニアとしては贅沢な物の見方をしていると云えるかもしれない。

 単純なる改造人間同士の死闘としては2号ライダー狼男の戦いは極めてオーソドックスなものである。距離を置いての戦いでは指ミサイルも発射されたが、白兵戦では武器も特殊能力もなく、ベアナックルによる殴り合いをメインに2号ライダーの一本背負いに対して狼男は脚力で即座に体勢を立て直す等、華麗ならずとも無駄もなかった。

 悪く云えば華がない、良く云えば原点に徹した戦い及び決着と云えようか。


ライダーパンチのレゾンデートル 決着直前まで2号ライダー狼男の決戦はどちらが有利とも不利とも云えないものだった。最終局面にてライダーパンチを放つまでどの技も披露されることは無かった。となるとライダーパンチは単純に出て来た必殺技の一つに過ぎないように見えるが、シルバータイタン的にはここで2点のレゾンデートルを提起したい。

 一点はショッカー怪人の手強さに対しである。第27話からこの第39話に至るまでの第3クールに登場した怪人はライダーキックが効かない者が少なくなかった)。
 第27話のムカデラス、第29話のクラゲダール、第30話のザンブロンゾ、第33話のアルマジロング、第35話のアリキメデス、第36話のエジプタス、第38話のエイキングライダーキックに倒された(厳密にはアリキメデスは蟻酸で死んでいる)が、第28話のモグラング、第31話のアリガバリにはライダーキックが効かず、前者が生コンへの突き落としで、後者はライダー卍キックで止めを刺されている。
 またライダーキックへの耐性は不明だが、第32話のドクダリアンは火中に投げ落として、第34話のガマギラーはセスナ破壊への誘爆で、第37話のトリカブトはマンションからの突き落としで勝利している。(以上、参考サイト:『必殺技のステータス』転載許可済み(←当たり前だ!))

 そしてこの第39話でも明らかにゾル大佐よりも格が落ちると思われる実験用の狼男ですらライダーキックを躱している。放たれはしなかったが、金毛の狼男にもライダーキックが通じなかったであろうことは想像に難くない。それを一撃で倒したライダーパンチは静かにその存在感を高めたと云えよう。

 もう一点はこの戦いが初の対大幹部決戦だった事にあろう。何事も一番初めはインパクトが強い。この第39話限りで見ればライダーパンチが格別強力な必殺技に見える訳ではない。

仮面ライダー2号の代表的必殺技=ライダーパンチ

の図式はこの時静かに産声を上げたと云っても過言ではあるまい。


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令和三(2021)年五月二〇日 最終更新