7.ライダーパンチ…(仮面ライダーBLACKVSカニ怪人)

番組『仮面ライダーBLACK』
サブタイトル第13話「ママは怪人養育係」
技名ライダーパンチ
使い手仮面ライダーBLACK
被験者カニ怪人(ゴルゴム帝国所属)
実践結果一回目・弾き返される。二回目・ほぼ決着(とどめはライダーキック。カニ怪人死亡)
ストーリー概要 子供を産んだばかりの母親が次々に攫われる事件が相次いだ(全部で11件)。襲撃者はゴルゴムカニ怪人。母親の悲鳴を聞いて駆け付けた南光太郎(倉田てつを)だったが、カニ怪人は口から吐く泡を隠れ蓑に母親を連れて地割れの中に消えた。

 母親を攫われた太一少年は、常日頃の自分が母親の云う事を聞かない子である為に罰が当たったと思って自分を責め、光太郎に母親の奪還を哀訴した。
 そんな鬼畜の所業を繰り返すゴルゴムの狙いは母親達にカニ怪人の卵を孵化させ、養育する係を務めさせるというもの。大神官ビシュム(好井ひとみ)に云わせると、「デリケートに優しく育てる」には「赤ちゃんを産んだばかりの母親が必要」とのことで、普段二言目には「愚かな人間ども」を繰り返す彼女無いらしく台詞である。

 余談だが、2週間前の第11話で、ゴルゴムは怪人の食料となるゴルゴメスの実の増産に失敗し、多くの怪人達を凍結させた筈だが、この回ではカニ怪人を大量に増やそうとしている………うーん、不可解だ(苦笑)。
 アジト内では攫われて来た母親達はナーススタイルで卵に両手を翳して、抑揚のない声で「育て〜育て〜卵よ〜育て〜」と呼び掛け続けていた。

 その頃、光太郎はまたも女性の悲鳴を聞きつけて、救助に向かうが、これはカニ怪人の罠。変身する暇を与えないカニ怪人の攻撃に苦戦する最中、後をつけて来た太一少年は母親が攫われた時に見た地面の亀裂を見つけ、母親を探す為に地割れの中に潜り込んだ。
 一方で宙に飛んだ光太郎仮面ライダーBLACKに変身し、着地に合わせてライダーパンチを放ったが、あっさりと弾き返された。歴代悪の組織におけるカニ系怪人の全員が全員硬さを武器にした訳じゃなかったが、カニ怪人の頑丈さは見た目通りである。
 その後もBLACKの攻撃は弾き返される一方で、泡に寄って身動きの円滑さも奪われた為に川に飛び込んで泡を落とすや、ロードセクターを召喚して命からがら戦線離脱する始末だった。

 戦闘による肉体的ダメージそのものは基地としている倉庫に帰還した直後から改造人間としての治癒能力が発揮されて快方に向かったが、ライダーパンチが全く効かなかったショックの方は簡単に拭えず、再選に向けてこれまでのゴルゴム怪人との戦いを振り返ったが、ヒントを得られる事は無かった。

 少し話はそれるが、仮面ライダーBLACKは別称「仮面ライダー0号」とも云われ、スカイライダーと並んで仮面ライダー旧1号への原点回帰が意識されたライダーで、それは『仮面ライダーBLACK』の作風にも反映されていた。
 過去の戦いの中にヒントが得られず、行き着いた結論は『特訓』になった訳だが、『仮面ライダー』にて1号ライダーが初めて特訓を行ったのも第13話だったのは偶然であろうか?

 思案の途中でロードセクターに付着したカニ怪人の粘液を見つけた光太郎はシャーレに採ったそれが随分燃え易い物質である事を発見する。顕微鏡で調べて粘液の正体が余り綺麗じゃない海に生息するカラドロアメーバであることを突き止め、ゴミの浮いた海に潜伏しているであろう敵を想像するも、勝ち目がない事に消沈せざるを得なかった。
 直後にBLACKは独り特訓に挑む事になったが、大岩(←くどいが、キレンジャーではない←もうええっちゅーねん!by道場主)を空中に放り投げてはパンチ・キックを放って破壊力増強を図るBLACKだったが、岩は跳ね上がるばかりで砕くには至らなかった。
 そのとき、偶然崖から転落した子犬を空中で受け止めたBLACKは子犬を助けた直後に自分達に降り注ぐ大岩に向かってジャンプし、全身のバネを効かせてアッパーカットを放った事で大岩の粉砕に成功し、これを「新しいライダーパンチの完成」とした。うーん、これは特訓のせいなんだろうか?(苦笑)。

 その頃、地割れの中のスロープを滑り降りてゴルゴムのアジトに潜り込んだ太一少年は母親を発見した。泣きながら駆け寄る太一少年に気付いた母親はそれまで一心不乱に卵に訳の分からない呼び掛けを行っていたのを中断し、太一少年同様に泣きながら彼を抱き止めた。我が子に再会した衝撃で解ける程度の弱い催眠状態だったようである。まあ他の母親達まで解けたのは激しく謎だが(苦笑)。
 脱走しようとした太一少年と母親達に即座にカニ怪人が襲いかかったが、太一少年の悲鳴をアメーバ頼りに汚い海を捜索していた光太郎が聞き付けた。

 アジト内に駆け付けた光太郎は大神官ビシュムの嘲笑とカニ怪人に怒りを燃やし、仮面ライダーBLACKに変身すると戦闘に突入した。
 ジャンプを多用して巧みにカニ怪人の吐泡攻撃をかわす中、BLACKカニ怪人が壊したタンクから漏れたオイルと、同様にカニ怪人が断線して火花を散らす電線を利用してこれを火攻めにした。
 怯むカニ怪人BLACKライダーパンチを放つと、一度目はその場から微動だにしなかったカニ怪人だったが今回のライダーパンチにはもんどりうって吹っ飛んだ。すかさずとどめのライダーキックが放たれ、カニ怪人はもがき、炎上し、昇天した。

 難敵を倒したBLACKは太一少年と母親達に脱出を促し、卵を一つ残らず焼却してゴルゴムの陰謀を挫いたのだった。


炸裂と決着 戦いの決着は前述の通り、高圧電流によって発火したオイルによる火攻めがカニ怪人の抵抗力を奪った所にライダーパンチライダーキックが炸裂して着いている。
 注目すべきは緒戦では仮面ライダーBLACKのあらゆる攻撃に丸で動じなかったカニ怪人が再戦ではBLACKの攻撃がストレートに通じている点である。
 火攻めに入るまではカニ怪人の吐泡攻撃をBLACKがかわしてばかりいたので、カニ怪人は頑丈さだけではなく、格闘能力にも優れていた事が窺える。ただ火攻めはそれ自体がダメージを与えたものではなく、猛火や爆煙がカニ怪人の視界を遮り、動きを制限していた要素が強い。
 逆を云えばダメージらしいダメージは特訓によって来た得られたライダーパンチに始まっている。「新しい」と形容されたライダーパンチは、アクション上では従来のと事後に相違をもたらさなかったが、この話に続く第14話の冒頭では硬い甲羅を持つカニ怪人が「新しいライダーパンチ」によって倒された事を大神官バラオム(高橋利道)がかなり口惜しがっており、その話で登場したゴルゴム最強のマンモス怪人が緒戦においてパンチ一発で戦意喪失・戦線離脱に追い込まれている。

 アクションに変化はなくとも、前後の戦績からライダーパンチに始まる仮面ライダーBLACKの成長が著しく遂げられた第13話が持つ意義は大きい。


ライダーパンチのレゾンデートル 『仮面ライダーBLACK』において、仮面ライダーBLACKゴルゴム怪人との戦いはライダーパンチライダーキックの連打で決着となるパターンがめちゃくちゃ多い。拙サイト『必殺技のステータス』でも触れたが、「他に決め技は無いのか?」と云いたくなるぐらい、9割以上の怪人がこのパターンで倒されている。
 そんなライダーパンチの存在感の大きさを再認識させてくれるのがこの第13話である。

 「仮面ライダー」と云えば明らかにライダーパンチよりライダーキックの方が大きな存在感を持つ。実際、『仮面ライダーBLACK』を見ていても、ライダーパンチは「ライダーキックへの繋ぎ」と見てしまいがちである。だがこの第13話で南光太郎ライダーパンチが弾き返された事にかなり動揺していた。それだけライダーパンチを決められるかどうかがBLACKにとって重いということだろう。

 改めて仮面ライダーBLACKのアクションを見ていると、ライダーパンチを放つ為のBLACKのダイビングは全身のバネを利かし、右腕が伸び切った所で発光した拳が命中している。歴代ライダーのパンチ技の中でも仮面ライダースーパー1並みに合理的なアクションが為されている(ライダーキックも同様)。
 最後の最後にゴルゴム怪人にとどめを刺すのはライダーキックだが、その先鞭となるライダーパンチが持つ重要性は見た目以上に大きいと云えよう。


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令和三(2021)年五月二〇日 最終更新