4.更なる恐怖の可能性……もしも「TV局の腸捻転」がなかったら?
ゲドンという組織が歴代悪の組織に比して、様々な意味で矮小に見えることの要因を、「首領」と「悪行」の面で見て来たが、この頁では「番組構成」という観点で見てみたい。
周知の通り、『仮面ライダーアマゾン』は全24話で、これは平成27年7月5日現在全ライダー作品においても最短である。勿論これは同番組の人気が無かったからではない(人気はいまでも高い)。
それは、俗に云う「TV局の腸捻転」と呼ばれる出来事のため、話数が短くなってしまったからである。その訳や実態は後述するが、全24話という話数は主人公・キャラクター・的組織の多様性を見せるにはあまりにも短い話数である。余程インパクトのあるキャラクターや作戦やアクションを展開しないと番組のそのものの印象を残すことさえ難しい。
もっとも、その点、『仮面ライダーアマゾン』は主人公である仮面ライダーアマゾンも作風も十面鬼も見た目からしてかなりのインパクトで、その点は失敗していない。
ただ、多様性を見せるのには苦しかっただろう。ゲドンに限った話ではないが、組織である以上様々な人員がいて、様々な作戦を展開し、それらに応じて多様性を見せるのだが、その点、ゲドンは毎週違う獣人が出ることを除けば単一だ。後任のガランダー帝国が第17話で『東京フライパン作戦』という特撮史上有名な奇抜な作戦で抜群のインパクトを残したことを見ても、単なる和数の問題としてはいけないとは理解しているが、少ない話数がゲドンに与えた影響も大きいだろう。
いずれにせよ制作陣の苦労が忍ばれる作品である。前述の第17話でゼロ大帝が作戦本部付きの黒ジューシャを処刑する際の処刑理由に「面白くない」と云っていたが、あれは制作陣の苦悩を代弁したものだったのかも知れない(笑)…………勿論この推論の真偽について責任は全く持てないのだが(苦笑)。
「TV局の腸捻転」とは?
一言で云うなら「ネットチェンジ」と呼ばれる出来事で、放送局がそれまでの系列(ネットワーク)と異なる系列に変わることを指す。
1960年代になってテレビの全国ネットが確立されてくると、全国紙を発行する新聞社と東京キー局相互の連携も強化されるようになり、地方局もまた、東京キー局、及び関連の新聞社の系列に入るようになった。
『仮面ライダー』〜『仮面ライダーX』を制作・放映して来た毎日新聞社系列の毎日放送でも、資本系列に対してネットワーク体系が捻れていた「腸捻転」状態を解消せんとして、朝日新聞社系列のNETとともに、昭和五〇(1975)年三月三一日に、TBS系列に参入することとなった。
当然、『仮面ライダーアマゾン』に限らず、様々は番組が放送時間変更・放映期間変更等の影響を受けた。それにより、同番組は全24話で終了することとなった。
ただ、シルバータイタン自身、長年誤解していたが、同番組が全24話なのは放映開始前の予定通りで、短さ自体は「TV局の腸捻転」と無関係でないにしても、突然早期の打ち切りとなった訳ではない(実際にそうなったのは『仮面ライダーストロンガー』の方で、急遽39話で終わることとなったので仮面ライダー1号・2号の変身シーンが登場せず、改造魔人ジェットコンドルが幻の存在となったのが惜しまれる)。
実際に毎日放送側が用意した第1話放映日の読売新聞記事でも「全二十四話」と告知されている。しかし、現場スタッフには知らされていなかったようで、平山亨・内田有作・阿部征司といった主要スタッフ諸氏は口を揃えて「途中で番組終了を聞かされた」と述べている。
もっとも、この頁の目的は「TV局の腸捻転」の影響を考察するもので、「TV局の腸捻転」自体を分析するものではないので、「腸捻転」についてはここまでにしたい。
もし『仮面ライダーアマゾン』が48話以上あったら?
「たられば」の話ははっきり云ってシルバータイタンの独断と偏見による推測でしかない。多分にシルバータイタン自身の「そうあって欲しかった」に基づいて推測されることを予めご了承頂きたい。
まずは以下のことが考えられる。
○ゲドンの活動期間(出番となる話数)が増える。
○ガガの腕輪がその能力を発揮していた。
○十面鬼が少しは賢い首領となる(笑)。
○モグラ獣人の活躍が増える。
○アマゾンの衣装が増える(笑)。
○ゲドンがアマゾン抹殺・人肉確保以外の策を展開する。
○十面鬼の巨岩に埋まっている9面がもっと意見を述べている。
○ゲドンとガランダー帝国との関係がもう少し詳しく語られる。
○etc
そしてこれらのことを総合して、ゲドンが見た目のインパクトに相応しい恐怖の組織として仮面ライダーアマゾンの好敵手となっていたことが推測される(また、そうあって欲しかった)。
勿論、放映話数による程度の問題で、小規模的にはゲドンと十面鬼は立派にその役割を果たしてはいたのだが。
何故短期間に2つの組織が?
1つの作品に複数の組織が現れた例として『仮面ライダー』、『仮面ライダーアマゾン』、『仮面ライダーストロンガー』、『仮面ライダースーパー1』がある(さすがに『仮面ライダーディケイド』は別格だろう)。
個人的に、1つの作品に2つの組織を登場させるのは、制作陣にとって一つの賭けと思われる。組織交代に視聴者の納得がいく流れが必要になるし、後続組織には全組織以上のインパクトや強さが求められる。その点、「ショッカー → ゲルショッカー」や「ブラックサタン → デルザー軍団」は見事に成功しているが、「ドグマ → ジンドグマ」はかなり酷評されている。
また出番が分割される分、個々の組織の個性を出すのにも苦労が要るだろう。
『仮面ライダーV3』を見てみると、デストロンという1つの組織しか出て来ないが、「大幹部不在期」→「ドクトルG指揮期」→「キバ男爵指揮期」→「ツバサ大僧正指揮期」→「ヨロイ元帥指揮期」という5つの展開を辿った為、キバ男爵とツバサ大僧正はそれぞれ5週しか出番がなかった。
それでもキバ男爵指揮期には Wライダーの帰還があり、ツバサ大僧正指揮期はツバサ軍団の予想外の手強さが、ヨロイ元帥指揮期はライダーマンの存在が、それぞれの期間を盛り上げたのだから、制作陣には脱帽ものである。
かように充分な長さがあって尚、複数の組織、複数の幹部を際立たせるのに苦労するのに、全24話しかなかった『仮面ライダーアマゾン』に2つもの組織が出て来たのは非常に疑問だった(←注:批判・批難は全くしていません)。
ただゲドンの出番が初めから14話に限定されていたのだとすると、制作陣は『仮面ライダーアマゾン』の主題の1つである「ホラー作品への原点回帰」と「悪の組織も様々であることを見せる」という役割をゲドンに託したのではあるまいか?
う〜ん……自分で勝手に疑問を呈して勝手に答えてしまったが(苦笑)、ゲドンが24話フルに出ていれば良かった訳でもないので、今少し「2つの組織が存在した。」という点を活かしてくれれば同番組はもっと傑作となっていただろう。
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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新