3.チョロ(小塚政夫) ………元・日本一の大泥棒

チョロ(小塚政夫)
俳優佐藤輝昭
出演作品『仮面ライダースーパー1』
出演期間第1話を除く全話
職業谷オートモーターショップ店員
能力泥棒としての技能
短所お調子者
名場面『仮面ライダースーパー1』第44話
概略 谷源次郎が経営する谷オートモーターショップの店員で、元・日本一の大泥棒との経歴を持っている。
 作中本名で呼ばれたことは皆無に等しく、敬称の有無に関わらず通称の「チョロ」で呼ばれている(作業用つなぎの背中にも「 CHORO 」と記してある)。仮面ライダースーパー1沖一也(高杉俊价)を「兄貴」と呼んで慕い、時に一也に追随し、時に草波ハルミ(田中由美子)・良(早川勝也)兄妹と行動を共にし、時にジュニアライダー隊を率いた。

 チョロを一言で表現するなら、「人の良いおっちょこちょい」である。
 一也と行動を共にする割にはドグマ怪人、ジンドグマ怪人は勿論、ドグマファイター、ジンファイターと格闘戦を交えることも殆どなかった。
 まあ、ドグマ編に関して云えば玄海和尚(幸田宗丸)、弁慶(西山健司)といった赤心少林拳の使い手達が担い、ジンドクマ編では一也がジュニアライダー隊の面々に危険な行動を禁じ、隊長のハルミもジンファイターに抵抗する際もスーパーボールを一斉にぶつける戦法がメインで、チョロも戦いに巻き込まれること自体が殆どなかった(捕えられることはあったが)。

 「仮面ライダーの仲間」としては、『仮面ライダー』の史郎(本田じょう)や、『仮面ライダー(スカイライダー)』の沼さんの立ち位置に近く、コメディリリーフ的に、悪の組織による被害をコミカルに表現したり、苦戦したり、傷ついたりする仲間を想う気持ちを見せたり、ここぞというところで沖一也の助けとなるスタンスは作品を通じて一貫しており、絶対的なものを持っている訳ではないが、欠かせないメンバーとなっているといういみでは、典型的な「愛される三枚目」だった。

 ジンドグマとの最終決戦直前にスーパー1の正体が一也であることを知り、「やはり!」とばかりに快哉を叫び、そのまま谷、ハルミと共に国際宇宙科学研究所に急行。ジンドグマ壊滅後、元の夢だった宇宙飛行士となって宇宙に旅立つ一也がジュピタースーパー1に乗って飛び立とうとする瞬間、別れの言葉を告げる谷、ハルミ、水沼マサコ(永塚りえこ)、ジュニアライダー隊の面々とともに、普段のチョロにしては珍しく、「兄貴ー!!」と絶叫してその旅立ちを見送ったのだった。


ドジっ子属性 前述したように、チョロは典型的な「人の良いおっちょこちょい」である。
 そしてその様な男にありがちなように、能天気で無神経でもあった。

 こう書くとチョロを演じた佐藤氏に申し訳ないが、成人男性にしては背が低く、ジョギングに出ていた時のスタイルを見る限り、体格的には逞しいとは云い難い。多少の器用さと、小知恵の効く面は見られるが、取り立てて聡明でもなさそうだった。

 第2話では、自分の兄貴分になると教えられていた男・沖一也がどれほどの男か試そうとして、背後から不意打ちを掛けようとしたが、あっさり返り討ちにあった。

 第3話では、一也の身を案じて黄金郷に(無断で)ついて行かんとしたが、ドグマに捕えられて自分が心配の種になった(苦笑)。

 第4話では、一也、イスマイル王子(石田信之)とともに捕えられてギロチンに掛けられた際に、関節を外して脱出しようと試みたが、拘束度合いはその上を行っていた。

 第10話では「世界の滅亡」(という幻覚)に直面し、その回避よりも食欲に走って周囲を呆れさせた。

 第19話では敵のアジトに(なし崩し的に)潜入し、洗脳にも耐えるところを見せたが、耳栓が外れて(笑)気絶。結局スーパー1カセットゴウモルを倒し、谷に救出された。

 第24話では、交通遺児を励ます為のチャリティーにピエロにふんしていたのは見事に似合っていたが、焼きそばの調味料を間違えるという、ベタで昭和なミステイクを披露していた(笑)。

 第29話では、「俺のバイクの腕は一也の兄きに次ぐ。」と大口叩いて、ハルミと2ケツで謎の美女(←妖怪王女(吉沢由起)の変装)を追うも、巨大な水たまりにドッポーン(笑)。一緒にずぶ濡れになったハルミに「本当に運転が下手!」と憤慨されていた。
 バイクショップの店員だからと云って、必ずしもバイクの運転が上手である必要はないかもしれないが、下手なのは問題だろう(苦笑)。

 第32話では、皆で釣りに行くのに餌を忘れるおっちょこちょい振りで一也を呆れさせた。まあこれに関しては通りすがりの人に「いいポイントを教えるから」と云って餌を分けて貰おうとしていたので、笑うのはかわいそうだが、事件解決後の釣りで空き缶を釣るという、やはりベタで昭和なギャグシーンをかまし、谷に「チョロの晩飯はそれ(空き缶)だー!(笑)」とからかわれていたのが少し哀れだった(苦笑)。

 第44話では様々な意味で彼らしい活躍(?)を見せるのだが(詳細後述)、ジンドグマの幹部達に利用すべき人材として紹介された際に、幽霊博士(鈴木和夫)が「最近妖怪王女の男の趣味も変わった。」と皮肉られていたところから、見た目一発的に認められる風貌で無かったことがうかがえる(←佐藤輝さん、お許し下さい(土下座))。

 三枚目キャラにありがちな、大口を叩くところがチョロにも若干見られるのだが、彼の場合、それが職業意識(←やや誇張あり)に基づいているのが興味深い。
 普段は小心者っぽい言動が目立つのだが、前述のバイクの腕や、前職(?)の泥棒の腕に関することを問われたり、求められたりした場合には余裕の表情で可能と云い切り、実際に実行して見せた。
 ただいずれの場合も、場の空気を読んでいるとは思えない。第47話で一也スーパー1であることを知り、快哉を叫ぶところもそうだったが、愛する人が改造人間と知って、任務上恋に陥る訳にいかず悲しむハルミの背後で「結ばれない運命なんだよなぁ。」と呟いていたのは無神経過ぎた。
 でもどこか憎めない人ではあったのである、小塚チョロさんは。


愛される点 緊張感と皆無なチョロのそのコミカルな言動は、短所でありながら魅力でもあった。
 何せ本来仮面ライダーシリーズは、悪の組織を相手にした改造人間同士の殺し合いと云っても過言ではない。殊に『仮面ライダースーパー1』は数あるライダー作品の中でも、一也の師である玄海老師が醸し出す重厚感、悪は悪なりに理想や、世を恨まざるを得なかった哀しき過去を持っていたことから、前半は特に「重い」作品だった。
 それを視聴者である子供に親しみ易くするのにチョロは欠かせないキャラクターだった。前作のがんがんじいの良い所をロール(役割)的に引き継いでいたと云える。

 そして、その緊張感の無さは、「敵組織に警戒されない。」という長所と直結していて、チョロはムードメーカーとして、意外な伏兵として、時折コミカルでも納得の出来る活躍をしていたのであった。

 第10話ではバクロンガーの夢薬に冒され、「地球は滅びる……。」との絶望に取り付かれたが、「どうせ死ぬなら……。」と思ったチョロが取った行動は「死ぬ前にカツ丼、天丼、鰻丼を一度に食べてやる!」で、「それだけ食欲ある奴が死ぬか?」と呆れられていたが、ギャグな様に見えても、人間が本能的な希望があれば絶望の中でも行動出来ることを表しているといえなくもない。

 第19話では病床から起きあがったミツル(←ドグマに洗脳されていた)を追ってなし崩し的にドグマの教室に潜入したチョロカセットゴウモルに「随分老けてるな…」と訝しがられても「12歳です。」と云い切っていた。チョロの設定年齢は不明だが、演じていた佐藤氏の放映時の年齢は36歳だから、これに従うなら物凄いサバの読み方であった(笑)。
 そしてカセットゴウモルが子供達への洗脳を強めようと様々な音波を発するのも、催眠カセットをこっそり盆踊りのカセットとすり替えて、教室を盆踊りの現場に替えたり(ドグマファイターも一緒になって踊っていた(笑))、耐久力を試す為の怪音波に耳栓で耐えたり、とカセットゴウモルやドグマファイター達をてこずらせながら、自分の存在を特別なものとして悟らせなかったのは凄いものである。

 最終的には耳栓が外れてしまったことで(笑)、怪音波に耐え切れず、気絶してしまったが、なし崩し的な潜入にもかかわらず、小学生用の衣服(しかも大人サイズ(笑))、盆踊りのカセット(笑)、耳栓を所持し、活かしていたのは用意周到とも云えるし、「普段どんな趣味を持ってんだ?」との疑念も抱かせてくれる(笑)。

 第23話におけるドグマとの最終決戦で赤心少林拳一派が全滅し、作風はコミカルに転じたので、チョロは目立たなくなるか?と思われたが、子供達の引率に加わるためか、意外な活躍を見せ出した。
 第37話では谷と共にジンファイターに化けてジュニアライダー隊を救出するという活躍を見せた。そういや、戦闘員に化けて敵アジトに潜入する仮面ライダーはかなりの確率でばれるが、仲間を助ける為に戦闘員に化ける立花藤兵衛、谷源次郎、沼さん、チョロは意外とバレないよな(笑)。

 第44話での活躍は一押しなので、詳細は敢えて後述に回したい。

 第47話では黄金病に侵され、牢獄に閉じ込められた一也を救う為、谷と共に屋台のラーメン屋に化けて牢獄に近付き、ラーメンに好奇心をくすぐられて近寄って来たジンファイターに不意打ち(ラーメンのどんぶりを顔面に押し付けての混乱誘発)を喰らわせ、その間隙を縫って、牢の鍵を盗み、一也を救い出したのは前歴を活かしたチョロの手腕によるところが大きかった。

 最後に注目の一押しである第44話の活躍について触れたい。
 この話に置いて、ジンドグマの妖怪王女は日本宇宙開発研究所が所持する新ロケット燃料Xβを盗まんとした。
 Xβは簡単に例えるならとてつもなく強力なニトログリセリンで、その爆発力は1/1000mgで戦車をも吹っ飛ばすほどだが、衝撃に非常に弱く、小瓶一本分程度の量でも床に落としただけで東京中が吹っ飛ぶという物騒さで、実用化のためにはまだまだ研究が必要な段階にあった。
 だが、単純な破壊兵器として使用するならこれほど役に立つ物はない。ジンドグマが喜んでこれに目を付けた訳だが、さすがにこのデリケートな代物を安全に盗み出すには、特化した人材を捜し出すことが必要となった。
 そのための作戦を指揮者が妖怪王女で、実行役はハシゴーンだった。

 しかし人材を探す方法というのが凄まじく手当たり次第だった(笑)。殆ど偶然にプールに行こうとしたジュニアライダー隊の面々と引率のチョロと出会ったハシゴーンは彼等(最年少のマサル(荻堂盛幸)を除く)を拉致し、狭い所を潜り抜けるテストを行わせた。
 体の柔らかい子供達に期待してのことだったが、全員潜り抜けられず、一人の隊員の体が抜けなくなったのを無理矢理引き抜いた際に尻もちをついたハシゴーンはジュニアライダー隊員達に笑われる始末だった(←緊張感のない奴等…)。

 だがそこはやはり悪の組織の怪人、自分達を笑う少年少女達に激昂し、「役立たずは全員死刑!」と叫び、これには一同の顔色も変った。
 そこへ出張ったのがチョロである。普段お道化役でも子供達の危機とあっては黙っていられないのが彼の良い所。自分が潜り抜けに成功したら子供達を助けて欲しい、と持ち掛けた。
 ハシゴーンは初め、子供が通れないのに大人のチョロが通れると思えず、その申し出に取り合おうとしなかったが、チョロにも自分の過去に対するプライドがあったのか、自分が元日本一の大泥棒であったことを告げ、これぐらい出来る!と改造人間相手に啖呵を切り、ハシゴーンも「出来るのであれば」と了承した。

 チョロは「頭さえ通れば可能。」と云い切り、肩の関節を外して見事に潜り抜けに成功し、ハシゴーン、ジンファイター、ジュニアライダー隊員達の拍手喝采を受けた(←やっぱり緊迫感無さ過ぎるぞ!ジュニアライダー隊員諸君!!)。

 その身体能力を褒めたハシゴーンは、本来の任務への必要性から、「ちょっと揺らしただけでも爆発するものを持って運べるか?」と問えば、チョロは「金庫破りに爆発は突き物!」と再度の啖呵切り。この辺りは普段のお調子者に見え掛けたが、合格を告げるハシゴーンに対して、即座に子供達の釈放を願い出ていたチョロはさすがに「一也の弟分」と云えた
 ハシゴーンも応じようとしたところ、マサルの通報を受け、隊員達が撒いたプレートを追跡した一也が乱入して来たため、ハシゴーンチョロだけを拉致して撤収した。
 一連の流れを説明した後、普段はチョロをからかっている良もさすがに自分達を助ける為に文字通り体を張ったチョロの身を案じずにはいられなかった。
 それに対し、一也チョロがテストを受けされられていた状況から、「奴等はチョロを何かに利用するつもりだ。それが終わるまでは恐らく無事だ。」と分析。この分析は完全に的を得ていたが、説明段階でも充分に納得出来た(出来過ぎを感じさせなかった)から、その意味でもこの第44話はなかなかの名作だった。

 一方、妖怪王女ハシゴーンが拉致して来たチョロを洗脳装置に掛け、他の参幹部は人を見た目で判断して「エネルギーの無駄遣い」と揶揄していたが、彼の潜り抜け能力はジンドグマの首領・悪魔元帥(加地健太郎)をして、「見事だ!」と云わしめるものだった。
 一身体能力を対象としたものとはいえ、三枚目キャラが悪の首領に絶賛されたのって、他に例が無いのではないだろうか?長いライダー史にあっても稀有で貴重なシーンだった。

 その後チョロはXβを盗み出したところで、ハシゴーンに用済みとされ、洗脳が解けた直後にXβが何か分からずに軽々しく扱おうとして研究所院をうろたえさせるという三枚目に戻っていたが、チョロが見せた子供達を救う一心で自分が尽くせる限りの体術を尽くした点と、その身体能力はもっと絶賛されてもいいと思う。

 チョロの、関節を外して狭い所をすり抜けるという能力は、第4話にも見られた(失敗したが)から、恐らくは初期段階からあった設定なのだろう。
 惜しむらくはこの能力、もっと活かす場面が描かれて欲しかったものである。

 これはシルバータイタンの推測過ぎないが、チョロの元・大泥棒としてのスキルが発揮されるシーンが少なかったのは、谷源次郎による更生を受け、それらの能力を必要に駆られない限り封印していたからではないだろうか?
 チョロは初登場時、まだ見ぬ一也を既に「俺の兄貴分」としていた(余談だが、佐藤氏の方が高杉氏より4歳年上(笑))が、この時点でチョロの周囲の人間で一也のことを知っていたのは谷だけである。つまりチョロは谷から一也のことを「自分の兄貴分になる人間」と紹介され、それに全く疑問を挟んでいなかったのだから、余程谷を信頼するきっかけがあったと思われ、それこそがチョロが盗人稼業から足を洗ったことと関連しているのではないかとシルバータイタンは考えている。
 チョロは休憩時間に煙草を吸っていて、その時イラついていた谷から八つ当たり的に「煙草なんか吸ってる場合か!」と怒鳴りつけられても黙ってそれに従っていた。

 『仮面ライダースーパー1』の時間設定から余り時間が経ってないと思われる『仮面ライダーSPIRITS』チョロは宇宙開発センターのコンピューターを前にして、ハルミに世界中の銀行にハッキング可能、と自慢して谷に小突かれていたが、恐らく腕を自慢したかっただけで、本当にやるつもりはなかったのだろう。

 そんな気のいい三枚目キャラにして、弟分のチョロに危ない所を救われた一也は、亡き師・玄海、亡き友・弁慶の幻影を見ていたのか?と谷に問われた際に、

 「わかってますおやっさん。今 俺の師はあなた(谷源次郎)であり 友は チョロ お前なのだから」

 と答えていた。
 正義の味方・仮面ライダーはすべての仲間を家族同然に大切にするが、TV作品の後日譚的な話とはいえ、ヒーローに正面切って「友」と云われたのもチョロだけではないだろうか?
 おっちょこちょいキャラでありながら、「足手まとい」を感じさせず、気が付けば周囲から愛されている三枚目・チョロ…………考察すればするほど凄い奴である。


次頁へ
前頁へ戻る
冒頭へ戻る
特撮房へ戻る

令和三(2021)年一一月一〇日 最終更新