5.菊池啓太郎………大きな理想を持つ「充分強い男」

俳優溝呂木賢
出演作品『仮面ライダー555』
出演期間第3話〜最終話
職業自営業(クリーニング屋経営)
能力理想の強さ(思い込みの激しさとも直結してる)
短所洗濯物を汚されると見境がなくなる
名場面『仮面ライダー555』第19話、第43話、第44話
概略 東京で創業100年の老舗クリーニング店「西洋洗濯舗 菊池」を営む21歳の青年。「世界中の洗濯物が真っ白になるように、世界中のみんなが幸せになる」ことを夢見るように、良くも悪くもお人好しの理想家。
 また、誰に対しても礼儀正しく、乾巧(半田健人)を「たっくん」と呼ぶのを始め、誰かを呼び捨てで呼ぶシーンが殆ど存在しない。主要メンバーの年齢が近く、多くが呼び捨てで呼び合う中で、男性が誰かを継承付けで呼ぶ例は菊池啓太郎以外には珍しい。

 クリーニングの修行先の九州で乾巧、園田真理(芳賀優里亜)と出会い、以降2人と行動を共にするようになり、実家兼クリーニング店は、と真理が住み込みでアルバイトをする場となった(放映から10年経った劇場版『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』が客演した時もベースとしていた)。
 後に草加雅人(村上幸平)も住み込むようになり、4人で生活するようになる。両親は「世界中の洗濯物を真っ白にする」ためにアフリカに渡っており、店の経営は啓太郎に任されていたが、を初めとするバイトの雇い方を経営者としてのセンスはお世辞にも高いとは云えず、店は赤字続きである(それでも倒産の危機に瀕した様子はなかった)。

 菊池啓太郎を演じる溝呂木賢氏は、『仮面ライダー555』出演者と供に写真集を飾っており(メンバーは溝呂木賢、半田健人、泉政行、唐橋充の諸氏)、同様に同番組出演者で構成されたイケメン新撰組の四人(泉政行、村上幸平、芳賀優里亜、原田篤の諸氏)と比べても遜色ない程、精悍で凛々しい容姿を持たれているが、作中ではその御人好し振りと、殊、洗濯物を汚されたとなった際の冷静さ喪失振りから容姿に似合わぬボケ役、三枚目役を振られ易い。
 殊に『仮面ライダー555』の、乾巧周辺のレギュラーメンバーは年齢差が殆どなく、男性メンバーの中で、ライダーでもなく、オルフェノクでもない啓太郎は尚の事、能力的な及ばなさが目立ってしまうし、ライダーやオルフェノクには振られない演技を振られることとなる。

 同作ヒロインの一人、長田結花(加藤美佳)とは互いに顔を知らないメル友として「結花さん」、「啓太郎さん」と呼び合う仲だったが、店の再オープンのチラシ配りをしていたところ、偶然ぶつかった本人に一目惚れする、という昭和の少女漫画みたいな出会いを果たした(笑)
 そして互いに、相手がメル友その人と気付かぬまま、啓太郎は「結花さん」にメールで悩みを相談し、結花は「啓太郎さん」を憐れんでアドバイスをすると云う、リアルとメール上で異なる奇妙な関係が続いた。

 「周囲から浮いているのでは?」との悩みから、真理に惚れて振られっ放しの海堂直也(唐橋充)と意気投合して、趣味の悪いファッションに走ったり、ダブルデートを失敗させたり、時には洗濯物を汚す性質の悪い女児にいい様に利用されたりして、自己嫌悪を覚えつつも真剣に対応することで周囲からは知らず知らずのうちに信頼された。

 戦えないキャラクターゆえに、オルフェノクを前にして臆した姿を見せることも度々あったが、ウルフオルフェノクであり、結花がクレインオルフェノクであることを知った際(同時に結花がメル友の「長田さん」であることも知った)には、ショックはショックで感じつつも、啓太郎自身が交流していた二人を本当の二人として受け入れた。
 それも単純に恋慕に引き摺られたものではなく、すべてのオルフェノクが必ずしも人間の敵ではないと理解してことで恐れるをなくし、結花を受け入れたものであった。

 人間、オルフェノク、メル友、様々な立場を乗り越え、すべてを受け入れた上で真剣な恋を始めようとした啓太郎と結花だったが、初デートの待ち合わせ場所に向かう途中、結花は武装警官とロブスターオルフェノクの襲撃を受け、致命傷を負った。
 最期の力を振り絞って啓太郎ともう会えない旨を送った結花は白い羽と灰になって消え散った。結花の最後のメールを見て、結花の死を悟るもそれを言動には表さず、翌日にはと真理を食事に誘い、結花の幸せを信じている旨を述べ、気丈に振る舞いった。
 そして、結花以外にも多くの犠牲を重ねてアークオルフェノクとの最終決戦が終わったとき、ようやく訪れた安らぎの中、草原に真理、啓太郎と供に寝そべるが、「ようやく見つかった夢」として、口にしたのは、啓太郎が日頃口にしている言葉ときわめて類似しているものだった。


ドジっ子属性 繰り返しになるが、菊池啓太郎という男、どこまでも御人好しな男である。そしてその御人好しゆえに周囲の人間に翻弄されることが少なくない。
 また、「世界中の洗濯物が真っ白になるように、世界中のみんなが幸せになる」ことを夢見るのは誠に結構なことだが、理想を実現させる為には強い能力が必要となる。その意味においては残念ながら啓太郎には格別飛び抜けて優れた能力の持ち主とは云えなかった。
 そのくせ、汚い物や、心の汚いものが側に寄るとアレルギーを発症してくしゃみを連発するが、その為にトラブルに見舞われることも少なくない。

 平成仮面ライダーシリーズはつい近年まで戦闘員が登場しない作品が多かったが、この『仮面ライダー555』も例外ではなかった上、主要メンバーの大半がスマートブレイン社製のライダーズギアと呼ばれるベルトで仮面ライダー555仮面ライダーカイザ仮面ライダーデルタに変身する者か、オルフェノクと呼ばれる人類進化形態として覚醒された者達で、戦闘能力が常人を遥かに凌駕するだけでなく、それまで歩んできた境遇からも海堂直也を除けばシリアス一直線な人間が多かった。
 勢い、ドジ役、コミカル役、おどけ役は「啓太郎:海堂」=「8:2」で振られることとなった。オルフェノク出現を目撃しては携帯を取り出して、に連絡し、「たっくん!?」と助けを求める姿に弱々しさを感じる人も多いだろう。

 また、普段は温厚で、誰に対しても腰の低い啓太郎だったが、こと洗濯物を汚されたときは別人だった。だが、だからといって能力が向上する訳でもなく、それとて人間の精神の不安定性とされた(啓太郎のアイデンティティの象徴でもあったが)。

 具体例を挙げると、第4話ではファイズの力を人助けの為に使わんと欲して、真理に無断でベルトを持ち出すも、真理同様ベルトに受け入れられず、それをカクタスオルフェノクに奪われるという失態を演じ、前述のアレルギーを直に語ったため、に「喧嘩売ってんのか?」と凄まれる羽目に遭った。
 第11話では「結花さん」からの久々のメールに舞い上がってと真理に呆れられ、第14話ではつい怒りで胸ぐらを掴んだばかりの草加のクリーニング手際を見ただけで、「一緒に住まない?」と云い出す軽薄さ。第15話では(一応結花をオルフェノクと知ったのを伏せた上での気遣いだったが)に「長田」のことを諦めろと云われたのを皮切りに、メル友の「結花ちゃん」を出汁に、真理、草加の三人掛かりで「二股」を責められる始末だった。

 第18話では、嘘の下手な性格からはずみで、が「俺でさえ今までずっと云わなかった」という真理の「丸顔」に言及して本人を怒らせ、嘘吐き少女・倉田恵子の嘘のコロッと騙され、個人ライブに一人ギャラリーとして付き合わされた(さすがに途中で愛想を尽かして去ったが)。
 第20話では、大幅値下げで店を超多忙にしておきながら、困ったピザ屋を手伝い、と真理に「おい・・・このまま啓太郎に任せてたたら一ヵ月後にゃ潰れるぞこの店」、「そんなもたないかも・・・2週間・・・いや1週間後には」と云われる有り様だった。

 そしてそんな経営状態にもかかわらず、第25話では「だって真理ちゃんもたっくんも最近全然かまってくれないしさ…」という理由で木村沙耶(斉藤麻衣)を新しいバイトに雇い、に「ただでさえ赤字なのに…。」と呆れられていた。
 第27話では沙耶がにばかり関心を示すのを面白くなく思う一方で、仕事で沙耶と車に同乗していたのを結花に見られて動揺。
 第30話では、結花に靡いて貰えない啓太郎同様、真理に靡いて貰えない直也と「俺達は変わるんだ!」と喚きながら二人して恐ろしく似合わない金髪にするという馬鹿コンビぶりを発揮した。


 第41話では、海堂への好意を露わにする結花を見て、メル友の「結花さん」に「振られてしまいました…。」とメールし、「啓太郎さんみたいな優しい人を振る女なんて許せません もっと強引に・・・・・思いきって手くらい握っちゃったらどうですか?」と返信を受けて、助言通りに結花の手を握ったら、「きゃ!なにするんですか菊池さん!サイテー!!」と拒否られた上にビンタを喰らう始末だった……(哀れだ………)。
 第43話では、結花を励まさんとして、「そうだ!これからお風呂入らない?」と呼び掛けた真理に同調して「そうだよ、一緒に入ろ…」と口走る間抜け振りを発揮した(←この後、当然の様に真理に殴られた)。

 とかく、御人好しが昂じる上に、何処か寂しがりなところがあるから、クリーニング店常連のオバさんの愚痴から出た下らない要件にまで首を突っ込み、直情的に(考え無しに)行動してしまう………。勿論、事ある毎にを陥れようとする草加の演技にもコロッと騙される(←を疑うのではなく、草加を「善人」と信じてしまう)。
 リアルの世界に生きていれば、「すぐに面倒事・厄介事に首を突っ込む暑苦しい奴」と見做されるかも知れない。
 仲間内に、人を陥れることも辞さない草加や、不幸な境遇から心ならずも殺人を重ねてしまったオルフェノク達もいる故に、「悪役」では持ち得ない「三枚目役」をほぼ一人で担わされた菊池啓太郎の境遇には同情して余りあるものがある。


愛される点 暑苦しいぐらいに夢を重んじ、困っている人を放っておけない菊池啓太郎との性格は、当初ヒーローとしては信じられないくらいに厭世的で、夢を持つ人を馬鹿にすらしていた乾巧を真の仮面ライダーとして行く上で、実は非常に重要な存在であることが検証すればするほど露わになる。
 はっきり断言しよう。

 菊池啓太郎『仮面ライダー555』に欠かせない登場人物である!」

 と。

 災況にあってうろたえがちな性格ながら、「恐れを知らない」というよりは「放っておけない」という気持ちが強いために、云いたいことははっきり云う。
 面倒事を厭うて負傷した真理を置いて去ろうとする「・・・あのコの云うとおりだね。キミ友達いないでしょ」と云い放ち、結花に惚れていながら、結花にそっけない海堂に対して、「君は正義の味方じゃない!君に比べたらたっくんの方がまだマシだよ!」と云い切る…………直前に両者の戦闘能力を見ているから、場合によっては相手の怒りを買って、暴力的な報復が来てもおかしくない場面だが、啓太郎は怯まない。
 そこには打算も、勝算も関係なく、「助けるべきを助けなければならない」という信念だけがあった。

 それゆえストーリーの成り行きを検証すると、啓太郎がいなかったら放置されたり、スルーされたりしていたであろう事象も少なくない。何せ、レギュラーメンバーの大半は「今時の若者」で、「自分に関係ない。」と思ったことに自ら行動を起こすとは思えない。そういう意味でも啓太郎の存在はやはりストーリーに欠かせない。
 勿論、そこから生まれた啓太郎の活躍、及び男気溢れる行動は少なくない。
 第10話ではホースオルフェノクに敗れた海堂の手を離れたファイズベルトを取り戻すという機転を利かせ、第13話では真理の為に草加の胸ぐらを掴み、第15話では重傷を負った木場の意識を取り戻させるのに尽力し、第33話では、真理を瀕死にしたという自責の念からファイズギアを渡そうとする「そんな!たっくんのせいじゃないよ!真理ちゃんもすぐ良くなるって!」と云って、必死に励ました。
 続く第34話では、真理の遺体を前に、それまでの様子がおかしかったことに気付いた木場勇治が、「ちょ、ちょっと待ってくれ。園田さんは乾巧がその手にかけたんじゃ?」と訝しがれば、「何を云ってんだよ!たっくんがそんな事するワケないじゃないか!」と猛抗議。清々しいまでに菊池啓太郎の辞書に「人を疑う」という文字はない。
 「長所は短所」という諺があるが、啓太郎に関しては「短所は長所」と云いたくなる。


 そんな菊池啓太郎が大活躍を見せたのが、第19話、第43話〜第44話なので、ここは詳しくスポットを当てたい。

 まず第19話だが、前話となる第18話で、我侭クソガキ・倉田恵子の嘘泣きにコロッと騙され、様々な我侭に付き合わさられていた啓太郎だったが、彼女がキノコオルフェノクに襲われているとあっては見捨てておけず、に連絡後、突撃を敢行するも秒殺KO(苦笑)。
 その後も我儘を続けた恵子だったが、再度洗濯物を狙って泥団子爆撃を行おうとしたところを啓太郎達にとっ捕まり、今度こそ観念して、犯行動機が、「綺麗な洗濯物を見ると、謎の爆発で頭を強打して記憶喪失障害になったお母さん(しかも事件はファミレスにて、コツコツためたお小遣いでお母さんに誕生日プレゼントを渡しているときに起きた!)を思い出すから。」であったことを白状。
 その後も啓太郎は新たなバッグを買った恵子と供に入院している彼女のお母さんの下に駆け付けたり、記憶の戻らない母に邪険にされて泣き崩れる恵子を必死に慰めたり、再襲撃して来たキノコオルフェノクに棒きれ一本で果敢に立ち向かったり、と彼特有の優しさから出る行動力は発揮(勿論キノコオルフェノク自体はが撃破)。
 最後には「これを見たら何か思い出すのでは?」という啓太郎のアイデアから、恵子と啓太郎が洗濯物を干す姿を見て、母の記憶も戻り、戦闘だけでは決して解決できない問題を啓太郎は見事に解決したのだった。


 第43話〜第44話は番組終盤にして、啓太郎と結花の関係に関する最終決着ともあって、菊池啓太郎の魅力がこれでもか、という程発揮された。ただその結末は余りにも悲しく、切ないものだったが…………。

 正当防衛の為とはいえ、警官を殺害してしまった結花を匿う為、勇治が彼女を菊池クリーニング店に預けに来た。勿論、真理と啓太郎は大賛成。前非から今にも死にそうな表情の結花を気遣い、一方で、「既に振られている」と思っていた啓太郎は逆に落ち着きを持って結花に想いを告げた。
 その会話がきっかけで、程なく結花は「菊池さん」が「啓太郎さん」であることに気付いた。しかし、ハンドルネームならともかく、モロ本名を使い、周囲の人間が散々下の名前で呼んでいたのに、このときまで気付かなかったのにはちょっと無理がありませんか?制作陣の皆様!?

 ともあれ、啓太郎がメル友本人と知ったが為に却って居た堪れなくなった結花は書き置きを残して菊池家を出奔。当然、啓太郎、真理、、勇治は手分けして彼女を捜索。
 姿を隠す結花は啓太郎に最後のメールを送り、文中で「いつのまにか啓太郎さんのこと好きになってんだって」と告白。メール受信のタイミングで結花を見つけた啓太郎啓太郎は「長田さん」が「結花さん」であることを悟った(結花に負けず劣らずの鈍感振りだが、結花は周囲の人間が姓で呼ぶことも多かったので、まだこっちの方が気付くのが遅くても納得出来る)。
 そこへ冴子(和香)=ロブスターオルフェノクが結花をラッキークローバーに無理矢理参入させようと現れるが、勿論これを黙って見ている啓太郎ではなく、冴子にタックルを敢行。
 さすがに相手にならず、ボコボコにされるのを見かねた結花は啓太郎を守る為に彼の目の前でクレインオルフェノクに変身。さすがに驚愕せずにはいられなかった啓太郎だったが、冴子撃退後に変身を解いて背中を向けて「これが本当の私……私の姿。だから…来ないで」と呟くが、啓太郎は黙ったまま近づき、結花を力強く彼女を抱きしめ(ここで第43話が終わり、続く第44話冒頭で)、「ダメ…私…啓太郎さんに迷惑かけちゃうから…」と尚も躊躇う結花に、

 「かけたらいいじゃない。話したよね俺の夢?俺さ、本気で思うんだよね。人間もオルフェノクもみんなが幸せになれればいいなって。だからさ・・・かけてよ、迷惑。」

 と優しく、云い切った。
 結花は前を向いて啓太郎の胸に飛び込んで嬉し涙を流し、啓太郎も微笑みながら彼女を力強く抱きしめる…………………う〜ん何てカッコいい三枚目何だ……子供向けの番組で、ここまでプラトニックに男女の恋愛を描き切ったシーンは極めて稀有である。
 普段いちゃつくカップルを見る為に醜悪な怒りの炎を燃やす道場主が全然いやらしさを感じずに称賛したのだから……イテッ!(←道場主のロシアン・フックを喰らった)。

 もうこの後は見ている方が恥ずかしくなる程の、啓太郎und結花のラブラブモードが続いたが、勿論これは単に色事に溺れたのほほんとしたものではなく、啓太郎啓太郎で内面に手必死にすべてを理解し、受け入れようとしていた。
 に「そうか、お前もとうとう知っちまったか。長田結花がオルフェノクだってこと」と問いかけられるも、「うん…でも俺大丈夫だよ。だってたっくんたっくんだし、結花さんは結花さん…でしょ?俺さ、なんとなくわかるんだよね。結花さんの心の傷みたいなもの…だから、さ…俺が傍にいてあげたいっていうか・・・」と告げ、それに対して啓太郎を絶賛。
 一方の結花も、啓太郎の想いに気持ちを強くしたためか、オルフェノク仲間(勇治und海堂)にもう一度警察に出頭し、「2度とオルフェノクにならない実験」をもう一度受けると宣言。様々な想いや思考の違いがあって、この話し合いは決裂。
 結花の啓太郎への想いまで否定した勇治に、「お前、変わったな。」と非難する海堂だったが、悲惨にも、身の安全を考えれば勇治の推測が正しかったからやるせない。
 結局、襲撃を受けた結花は辛くもそれを凌いだが、最悪のタイミングでロブスターオルフェノクの追撃を受け、啓太郎に短かった幸せの時への感謝と、彼の遠大な理想が叶うことを記したメールを送り、白い羽と灰になってその身を散華させたのだった……………………。
 啓太郎の男らしさが最も輝いていただけに、そこに家庭的にも不遇だった結花が本当の、束の間の幸せを感じていただけに涙なしには見られないシーンだった。


 具体的な活躍を抜きにしても、菊池啓太郎の純粋さ、理想に向かう強さは乾巧と園田真理が一番認めていた。最初は呆れていたことだったにもかかわらず。
 それが、啓太郎がオルフェノクであることを知った上で結花を受け入れた際には、「お前はやっぱり凄い奴!」と絶賛し、受け入れられた結花がそれでも不安がったことに対して真理は啓太郎は充分強い奴。」と結花に太鼓判を押していた(その少し前にも、美容師への夢を称賛された際に真理は、「啓太郎の夢の方が凄いじゃない。世界中の人を幸せにするんでしょ?洗濯物を真っ白にするみたいに。」と述べていた)。
 最終回でが最後に発した「理想」がそれまで啓太郎が日々述べていたことと一致していたところに啓太郎の存在が如何なるものであったかが集約されていると云えよう。

 『仮面ライダー555』には二人の主役がいると云われている。一人は乾巧で、もう一人は木場勇治である。だが、菊池啓太郎という存在なしに彼等は上手く融合したであろうか?
 繰り返すが、菊池啓太郎はストーリーになくてはならない存在だったのである。


次頁へ
前頁へ戻る
冒頭へ戻る
特撮房へ戻る

令和三(2021)年一一月一〇日 最終更新