7.大杉忠太………作内でもリアルでも取り戻した人望
俳優 田中卓司 出演作品 『仮面ライダーフォーゼ』 出演期間 全話 職業 天ノ川学園高校地学教師、生活指導主任 能力 生徒を守るという使命感 短所 人望の無さ 名場面 『仮面ライダーフォーゼ』第29話・第30話
概略 天ノ川学園高校に務める教師。担当教科は地学で、生活指導主任。設定によると30代(放映時の田中卓司氏の実年齢は35歳)の独身で、同僚の女教師・園田紗理奈(虎南有香)22歳に惚れていた様で、暗に幾度となくモーションを掛けていたが、園田には男として全く意識されていなかったようである。
ネット上には園田が大杉忠太をかなり嫌っていたとするものもあるが、作中描写を見る限り、園田が大杉の好意に気付いていた様子はなく、恐らく全く関心を抱かれていなかったのだろう(それはそれで悲惨だが……)。
園田失踪前から彼女と自分の写真をコラージュさせたものを持ち歩き、園田の後任に着任した、園田に勝るとも劣らぬ美女である宇津木春香(長澤奈央)に靡く様子もなく、大杉は良く云えば一途な性格だったが、悪く云えば思い込みが激しく、傍目には粘着質に見えたことが彼の評判を落としていた。
何かとある度にサスペンダーを鳴らすアクションを取るが、その情緒不安定っぽい言動は役柄と相まっていやらしく映った。作中当初だけで見ると本当に下衆い教師で、生徒を学園ヒエラルキーだけで判断して態度をコロコロ変えていた。
ゾディアーツに遭遇すれば生徒を見捨てて真っ先に逃げ出す様に臆病で(まあ他の教師にしてもゾディアーツに立ち向かうシーンは殆ど無かったが)、日和見主義者で、自分の気に入らない生徒をとことん目の敵にするなど陰湿な一面もあった。
自分の経歴を共にした学ランにこだわって天高の制服着用を拒む如月弦太朗(福士蒼汰)を「不良」・「究極の問題児」と見做して、学園内のトラブルに対しては真っ先に弦太朗及び周囲のその周囲の面々にあからさまな疑いの目を向けていた。
当然学内での生徒からの人気や人望は皆無に等しく(教諭陣のそれは厳密には不明)、大杉自身「(周囲の人間が)まともに相手してくれない」、「呪われたような人生」等と口にし、自覚していた。
後述するが、話が進み、弦太朗達との接点が増え、仮面ライダー部に顧問としてかかわる様になると理解ある人物となり、何かと弦太朗達への気遣いや思いやりも見せるようになったが、朔田流星(吉沢亮)の正体(=仮面ライダーメテオ)を仮面ライダー部関係者で唯一知らされなかったり、尽力した修学旅行先で置いてけぼりにされたり、と云ったおとぼけキャラは最後まで続いた。
まあ、三枚目が完全に三枚目らしさを失くしてもつまらないのだが(笑)。
ドジっ子属性 決して悪人ではなく、成果はともかく教師としての職務には熱心に取り組んでいたのだが、如何せん暗い過去から来るネガティブさが佇まいや言動に影を落としている。
加えて当初の相手の能力や立場の高低に応じて態度を変えていたことも祟って、人を褒めても媚びに映り、人を叱れば鬱陶しい邪魔者に映り、殊に初期における人望・信頼は無きに等しかった。
殊に園田紗理奈に対する言動は、放映当時テレビ朝日の公式HPにおける人物紹介で「いつもいやらしい目で彼女を視姦している。」と書かれる有様だった(しかし、子供も見るであろうHPに「視姦」なんて単語使って良いのか?)。
機を見て園田にモーションを掛けんとするも、意を決したときには(悪気はないのだが)園田は姿を消した後なのがお約束で、理事長・我望光明(鶴見慎吾)、校長・速水公平(天野浩成)にも重要視されていた様子はなかった………と云うか歯牙にもかけられてなかった。まあそのおかげで悪事に手を染めずに済んだと云えなくもないのだが……。
殊に若い校長である速水がイケメン振りから保護者(生徒の母親達)からの熱い視線を向けられていたのに対し、大杉は応対に出ただけで「気持ち悪い」等と扱き下ろされる有様だった。
ともあれ、第2話では前述の様に学園の「キング」である大文字隼(富森ジャスティン)・同じく「クィーン」である風城美羽(坂田梨香子)のカップルに、「絵になりますなぁ〜。」と云って媚びていた。
第4話では前話でカメレオン・ゾディアーツによる襲撃がありながら、フェス(学園のクィーンを決めるイベント)が中止にならないことを怪訝に思うなど、生徒の安全を守る教師らしさを一瞬見せたが、憧れの園田が「でも生徒達が楽しみにしてますもの。私は応援したいですわ。」と口にした途端、「も、勿論僕もそう思ってたんですよ園田先生!」と掌を反す始末だった。
第11話では仮面ライダー部の部室にして月面基地でもあるラビットハッチへの入り口であるロッカーに入ろうとした城島ユウキ(清水富美加)が大杉に見つかったのだが、ユウキが園田に頼まれて呪われたロッカーを廃品回収に出そうとしているとして誤魔化そうとした。すると大杉は途端にすっかり興奮し、断固として中身(弦太朗達が潜んでいた)を確認しようとした。
慌てたユウキが「だ、ダメです!呪われちゃいますよ!」と脅しても、「俺の人生なんかもうとっくに呪われてる!このくらいで怯むか!どけ!」と返す始末。園田への想いの強さは立派だが、一歩間違えれば変態である。
結局、この仮面ライダー部の危機は隼が「園田先生が呼んでますよ。」と偽ったのを真に受けた大杉が立ち去ったことで回避された。凄まじい執着である。
ちなみにこのロッカー、ピクシス・ゾディアーツに破壊され、歌星賢吾(高橋龍輝)が月から還られない身になるという危機に陥ったのだが、大杉がこっそりすり替えっていたことで事なきを得、彼は妙なところで期せずして賢吾の命を救っていたりする(笑)。
第13話では、相次ぐゾディアーツによる事件を受けて天高PTAが激昂して押し掛け、対応に出た大杉はオバタリアン達に(文字通り)踏み潰される始末だった。しかもこのオバタリアン達、イケメン校長の速水公平が登場するや黄色い歓声を上げ、釈明が終わるや「校長先生がそう仰るなら。」と云ってあっさり矛先を収めたのだから、大杉は全くの引き立て役である。
同話で大杉は速水に理由も告げず席を外すよう云われ、すごすご引っ込み役を振られる体たらくだったのだが、まあ、過去に『仮面ライダー剣』でライダーの一人仮面ライダーギャレン・橘朔也を演じた天野浩成氏演じる校長先生の初登場回とあっては無理もない話と云える(「それにしても、天野氏はマダムキラー役を振られるわ、雛形あきこさんを嫁にするわ、何て羨ましい………(by道場主)。」)
第17話では相変わらず学ランを着続ける弦太朗に、「退学にするぞ!」と凄むも朔田流星が「模範服はあっても服装に関する罰則はない。」と諭されただけで引っ込んでいたのも痛かった。
第21話では戻らぬ園田への想いがクローズアップされていたのが極めて痛々しい回で、冒頭弦太朗が火災報知機を壊したものと決めて掛かって職員室に呼び出したのだが、その目的は「俺の話し相手になれ!」というとても寂しがり屋さんなものだった(泣)。
園田が失踪(実際には、正体であるスコーピオン・ゾディアーツとして仮面ライダーフォーゼに敗れた責任を取らされてダーク・ネビュラに追放されたのが真相)したのを、弦太朗・歌星賢吾・城島ユウキの3人による心労からの退職だと決めてかかり、3人を自身の目の前に席替えし、四六時中監視した(これによってラビットハッチや仮面ライダー部の存在を突き止めた)。
第26話では、卒業式とプロムが学園内で相次ぐ事件への考慮から中止になるかと思いきや、我望の鶴の一声で挙行されることとなったのが大杉の口から述べられたのだが、それを訝しがる生徒の声に「俺もそう思うんだけどねぇ・・・理事長の方針だから。そういう学校なのよここ。」という台詞で、弱者的立場発言が可哀想な程似合っていた(苦笑)。
第29話で、弦太朗達は最上級生に進級し、同時に一年生に後にライダー部部員となる草尾ハル(荒木次元)・黒木蘭(ほのかりん)が入学した。常日頃「天ノ川学園の生徒全員と友達になる!」と広言している弦太朗にはこの二人も例外ではないのだが、幼少の頃から虚弱体質なハルを幼馴染として案じる蘭は過去のトラウマもあって、何かにつけて彼を守ろうとする余り、熱過ぎる弦太朗を合気道の技で投げ飛ばし、大杉もこれに巻き込まれた(苦笑)。まあ、この偶然から大杉はこの話のラストでラビットハッチの存在に気付いた訳だが。
そして重要展開を迎えた第30話。大杉は賢吾の口から弦太朗達と共に学園の平和を守っていた事を知り、大杉自身それに心を痛めていたことが明らかになったのだが、ラビットハッチの存在を学校に伏せて欲しいとする賢吾の懇願に聞く耳持たず、すべてを校長に報告するという石頭ぶりを発揮。
あくまで教師としての使命感から来る学校と生徒を思っての発言なのだが、当の校長がゾディアーツなのだから、大杉のこの頑固さはストーリー的に迷惑要因でしかなく、直後に彼は監禁の憂き目を見た。
ただそれでも事態に対して何かをしなければならないという使命感は本物で、監禁から逃れるとNo.38スイッチを証拠に校長に報告に行かんとしたところで蘭とぶつかり、スイッチを取り落としたことで蘭からハルを「化け物」にしたと詰問された。
ハルを「化け物」にしたスイッチが「教師から渡された物」と知った大杉は信じられない想いで驚愕しつつも、それを決して見過ごさない熱血教師振りを発揮したのだが、本当に天高の教師なのか?と逆に詰問していたことがハル=ムスカ・ゾディアーツから「蘭を攻撃している。」と誤解され、大杉はムスカ・ゾディアーツの攻撃に曝され、情けない悲鳴を上げながら自転車で逃げ惑う羽目に陥った。
もっとも、パンピーである大杉がゾディアーツに抗するのも土台無理な話で、ストーリー的にはこの事でフォーゼにNo.38スイッチを投げ寄越してその勝利に貢献する展開を為し、これがもとで仮面ライダー部の顧問に就任したのだから、悪い話ではなかった。
第41話ではサジタリウス・ゾディアーツの脅迫により、隼・美羽・JK(土屋シオン)達が恐怖心から仮面ライダー部を(一時的に)離脱する事態に陥った際、大杉は顧問として「仮面ライダー部は今日で解散だな。これ以上生徒達を危険な目に遇わせるワケにはいかん。
残った連中が何をしようと俺は関知しないが・・・絶対に死ぬな。それは校則違反だ。」と宣った。直後に、「そんな校則ないでしょう?」とツッコまれると、「たった今俺が作った。分かったな?校則は絶対に守れよ!」と云う横暴振り(苦笑)。
まあ、これは生徒の身の安全を守る顧問としての使命感から出た台詞と思えば、然程横暴と云えまいて。
そして最終話では我望理事長の正体を知り、学園内における一連の怪事件が彼と彼の息が掛かった者の仕業であることと、彼が日本支配すら目論んでいることを職員会議で主張するも教諭陣からは相手にされなかった。
ただ、これは話のスケールが大き過ぎて信憑性を得難かった故で、大杉の人望とは余り関係ない気がする。実際、学園内に怪事件が続発していたことは誰もが知っており、直に関わったこともある佐竹(神保悟志)・宇津木の両教諭は弦太朗達が何者かと戦っているのは事実と証言していた。
ともあれ、これは直後に当の本人がその正体を暴露したことで大杉の証言が事実であったことが明らかになった訳だが。
かように、何処か真っ直ぐなものを持ちながらそれが空回りすることで容姿や思い込みの激しさも相まって周囲にヒかれ気味な大杉忠太というキャラクターだが、、これは彼を演じた田中卓司氏そのものらしい。
確かにアンガールズにおける田中氏は自虐ネタを展開し、お世辞にもカッコ良さを売りにしているとは云い難い。作中、大杉は園田にモーションを掛けては空回りするとともに、学生時代から丸で女性に縁がなく、何かと避けられまくっていたことを幾度となく吐露していたが、哀しいことに田中氏の実体験と完全に一致しているらしい。
田中氏は188cmの長身で、40代半ばでも痩身スタイルを保ち、幼少時より地元ではかなり有名な学力優秀者として高名で、広島大学を卒業している高学歴者でもあり、現在コメディアンとしても確かな実力を持ち、その稼ぎを考えれば所謂「三高」なのに実に勿体ない話である。
もし、芸風の為にそれらの長所を塗り潰して余りある残念な存在を演じているのだとしたら、逆にその芸人魂には脱帽する他ない。
愛される点 学園物のドラマや漫画によくあるパターンだが、「嫌な奴」的な存在だった大杉忠太は番組が進むにつれ、段々「いい奴」になって行った。
当初こそ天ノ川学園の校風もあってか、「キング」と「クィーン」のカップルである大文字隼と風城美羽に対して「絵になる。」と媚びに等しい賛辞を送っていた。
ただ、園田紗理奈への好意や、思い込みの激しさによる如月弦太朗を初めとする仮面ライダー部の面々に露骨に疑いの目を向けたり、何かにつけて突っ掛かったりするような言動が目立ったとはいえ、大杉は教師として間違ったことは全く行っていなかった。
第7話では隼の父・大文字高人(加門良)が、アメフト部が全国大会3連覇を達成した祝賀会を開催した際に、「天ノ川学園アメフト部と誇らしき我が息子・隼に乾杯!」と、露骨に自分の息子の手柄を讃えていた際には「息子の名前を使うか?」と云って眉を顰めていた(園田の方が「大文字君のワンマンチームだからやむを得ない。」としていた)。
暗い青春時代のトラウマから、寂しがり屋な面が露骨だったが、その分学内では自分とまともに会話してくれる人物と見た弦太朗達には親近感を寄せている素振りも見せていたし、「生徒を守るのが教師の務め」と語るなど、不器用ながらも教師として模範的な一面も持ちあわせており、これが後述の仮面ライダー部を認めるきっかけとなった。
園田への接し方に眉を顰める視聴者も多かったと思われるが、想いが強過ぎただけで、セクハラ行為を初めとする彼女の意志を無視したり、踏み躙ったり、と云ったことは一切しておらず、速水からの情報で彼女がスコーピオン・ゾディアーツと知ったときには「俺の愛しい園田先生が」とショックを受けるなど彼女への想いは一途であった。
第29話にて新学期に入ってからは、弦太朗の所属する3年B組の担任になる。これがきっかけでラビットハッチ及び仮面ライダー部の存在を知り、顧問となった訳だが、最初は「学園で認められていない」ということを理由に、弦太朗達の言い分にも聞く耳持たず、仮面ライダー部を解散に追い込もうとしたが、黒木蘭の話でゾディアーツスイッチを手配しているのが自分と同じ教職員である事実を知ったことと、ムスカ・ゾディアーツに襲われた際に仮面ライダー部に助けられたことから考えを改め、今まで空席だった仮面ライダー部の顧問に強引ながら就任した。
前述した様に、蘭の話からハルを狂わせたのが自分の同僚と知らされたときには驚愕しつつもそれを捨て置かない意志を見せていた。
同話のラストにて仮面ライダー部の顧問になったことで、弦太朗達への理解が深まったこともあって、態度はかなり軟化し、「やっと仲間を得た」として(苦笑)、顧問としての仕事にも乗り気になった。
第31話では、弦太朗・賢吾・ユウキの潜入捜査の為に「昴星高校への体験通学」と偽って速水に嘆願して了解を取り付けるなどした活躍は、「弦太朗達の味方となった教師」である彼にしか出来ない仕事だった(実際、天高の理事長・校長・園田はゾディアーツだったので、大杉が味方になった意義は大きい)。
修学旅行の班分けの際に弦太朗達を同じ班にするなして部員達への気配りも見せ、仮面ライダーとして戦い常に危険と隣り合わせな弦太朗と流星の身を心から案じ、戦えない悔しさをこらえるJKを励まそうとするなど顧問らしい一面も見せるようになる(JKは大杉に励まされたことを恥じていたが(苦笑))。
そして第32話では、親友を助ける為とは云え、長い間弦太朗達を騙し、果てには彼を殺害した流星(勿論生き返るのだが)が、自責の念・罪悪感に駆られて思い出していた仲間達の中にはちゃんと大杉が含まれていた(笑)。
そして終盤、レオ・ゾディアーツ・立神吼(横山一敏)がラビットハッチを襲った際には、生徒達を守ろうと単身挑みかかっており、初期では信じられない程生徒想いになっていた。
かように、大杉忠太と云うキャラクターは天ノ川学園内と云う限定された作品舞台にあって、弦太朗達が僅かな生徒同士間でゾディアーツと戦う中、唯一人教師と云う立場で味方に立った稀有な存在である。
初めこそ能力至上主義で生徒をランク分けするアメリカンな天ノ川学園の校風や、服装規定に従わずヤンキー風な態度から弦太朗とその周囲を目の敵にしていたが、それは偏見が強かっただけで、教師として問題解決に取り組まんとしていたからでもあった。
学園ドラマやヤンキー漫画に登場する教師達は概して主人公である不良学生達と「事勿れ主義」で関わろうとしないか、極度に目の敵にする分からず屋が多い。大杉は当初こそ後者に該当したが、いざ味方になると協力的で、ゾディアーツに抗し得ない臆病者であっても、生徒を守らんとする姿勢は一貫してブレていなかった。
当然の様に、大杉忠太は話数を重ねるにつれて「良い奴」となり、激昂して佐竹を面と向かって呼び捨てにした弦太朗でさえ、大杉を面と向かって呼び捨てにしたことはなかった。
彼の変貌振りは徐々に変化したもので、存在感の薄い時期もあったのでよくよく注視しないと分かり辛い(云い訳にならないが、本作の制作が大幅に時間の掛かったものとなったのもそのせいである)。
ただ、劇場版を比較してみれば分かり易い。劇場版に大杉忠太が登場したのは、『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』、『仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!』、『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』、『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイド with レジェンドライダー』の4本だが、平成ライダーシリーズ後半において、本編のレギュラーは3本登場するのが通例である。
1本目は本編序盤で、前作レギュラーと共演し、2本目は本編終盤で、単独作となり(次回作ライダーの顔見せはある)、3本目は本編終了後の次回作序盤で後日譚的に登場する。
この通例に則り、本編序盤に放映された『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』で大杉はヘタレ教師カラーが強い時期だったこともあり、けったいな占い師に化けて弦太朗に自分と園田の仲を取り持つよう訴えていた(勿論即行でバレていた)が、本編終盤の『仮面ライダーフォーゼ THE MOVIE みんなで宇宙キターッ!』では理解ある教師兼顧問となり、本職であるアンガールズの相方である山根良顕氏も教師・小松種夫役で客演し、コンビでいい味を出していた。
この作品では終盤、仮面ライダー部の面々が宇宙に取り残された弦太朗を救うために40個のアストロスイッチを40人が弦太朗を想いながら押す必要に迫られ、仮面ライダー部の面々がそれまで登場した生徒(大半はゾディアーツに取り憑かれた経験あり)・教師達にアストロスイッチを託して回るシーンがあった。
結果的には以前に弦太朗の熱い想いを受けて改心した者達が多いこともあって全員が快く弦太朗の為にスイッチを押してくれたのだが、40人に託す間時間に追われていることもあって、ライダー部の面々は必死になって懇願して回っていた。
中でもユウキは最後の方では泣きながら周囲に懇願して回り、それを優しく抱きしめる宇津木先生が印象的だったが、その中で大杉は小松に「頼む!如月の為に!」と頼み込んでいたのが別の意味で印象的だった。
と云うのも、小松は弦太朗と丸で接点がなく(弁当のデザインにする程フォーゼの存在は知り、好意的だったが(笑))、唐突過ぎる大杉の懇願に意味も分からず、気圧される様に応諾しており、小松が応じた要因を想像するなら、大杉の必死さと彼への同僚としての信頼しか考えられない。
「誰も俺のことを相手にしてくれない‥…。」とぼやいていた大杉忠太だったが、人としてはちゃんと信頼され、その熱意は通じていたのである。
本編終了後、次回作序盤期に『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』にも当然の様に天高の教諭として登場した訳だが、我望・天野が去った後の天ノ川学園は佐竹指揮の下に生まれ変わっており、本編から五年後の時代設定で同学園の卒業生である如月弦太朗を新任狂して迎えていた。
当然の様に弦太朗は仮面ライダー部の顧問に就任しており、顧問を退いた大杉は同僚教師となって尚も学生時代同様に破天荒な弦太朗に辟易させられながらも、明らかに良くなった学園の雰囲気を表現する役を担っていた。
かつては不良学生を敵視し、弦太朗を「バッド・ボーイ」と呼んでいた佐竹新校長は心底弦太朗の為を思った助言を繰り返して彼が「グッド・ティーチャー」になることを望み、登場時に教職への意欲を丸で持っていなかった宇津木は新設のキックボクシング部を大活躍させ、大杉はそれを嫌味なく讃えていた。
『仮面ライダーフォーゼ』の登場人物は敵も味方も第三者も如月弦太朗と関わることで多かれ少なかれ良い風に変わっていったのだが、誤解を恐れず述べれば大杉は例外だった。勿論、散々前述している様に大杉は当初弦太朗を「問題児」として敵視していたのが理解ある顧問となった分には充分に変わった人物なのだが、変わらなかったのはその「熱意」である。
下手すりゃ偏執とも云えた園田への恋心も熱意、敵意・理解と相反する感情でも弦太朗達を見続けたのも学園を良くせんとの熱意、様々なイベントの開催に異を唱えたのも生徒の安全を第一に考える教師としての熱意、周りがドン引きした物云いや横合いからの割り込みも想いの強さから来た熱意…………そう大杉忠太とは熱意の漢(おとこ)で、その熱さは主人公・如月弦太朗と相通じ、番組を引き立てるエッセンスとなっていたのである。彼を只の駄目教師と見るのは余りに一面的過ぎる物の見方であろう(ま、この頁をここまで読んで下さった方がそんな見方をするとは思いませんが)。
大杉を上手く表した表現として、とあるサイトにあった大杉評を紹介したい。
「大杉忠太。ダメ教師ではあってもクズ教師にあらず!」
余談だが、前述した様に大杉を演じた田中氏はアンガールズでのコメディアンとしての活動の方が本職なのだが、その自虐的な芸風故が祟って、自分の甥や姪にも半ば馬鹿にされていたのが、『仮面ライダーフォーゼ』に出演したことで、「卓司おじちゃん、凄い!」と云われるようになったらしい。
この視線の変化には、仮面ライダーシリーズというブランド級の作品に出演したことが大きいのは間違いないが、作中を通じて大杉忠太が「嫌われ者教師」から「理解ある顧問」に成長したことも無関係ではないとシルバータイタンは考える。
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令和三(2021)年一一月一七日 最終更新