Part3.戦隊シリーズ………ピンポイント過ぎて申し訳ない………

 まず、最初にお詫び申し上げておきたいが、シルバータイタンは決して戦隊シリーズに詳しくない。関心は充分あるが、リアルタイムで見た作品は少なく、知識・考察共に仮面ライダーシリーズ・ウルトラマンシリーズのそれに比べて大幅に足りていない。
 全話を通して見たのは(令和3年6月30日現在)、『秘密戦隊ゴレンジャー』、『ジャッカー電撃隊』、『バトルフィーバー』、『電磁戦隊デンジマン』、『太陽戦隊サンバルカン』のみで、後ろ2つはリアルタイム放映時のみの視聴で、記憶はかなり薄れている。
 それ以降の作品に至っては1話も見ていないものばかりで、そんなシルバータイタンが戦隊物を語るのはおこがましい気すらする。

 ただ、それでも取り上げたのは僅かな知識の中からの自己満足でもインパクトや存在感のあるものを例示したかったからに他ならない。ただでさえ戦隊シリーズは各作品にヒーローが多数登場するのだから、人数に埋もれ易いという不利な状況を乗り越えてシルバータイタンの心に突き刺さった啖呵切りはとそれが持つ意義を充分に吟味したい。
1.キレンジャー
 俺は阿蘇山たい!怒ればでっかい噴火山たい!
概略 戦隊シリーズの第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』にて、ゴレンジャーが名乗りを挙げ、各話における最終決戦に入った際に、キレンジャー黒十字軍戦闘員を投げ飛ばしながら発することが定例だった。
 ゴレンジャーに限らず戦隊シリーズは登場人物が多いから、単純に名乗りを挙げるシーンだけでも結構な時間を取る。更にそこから個々に戦闘員を蹴散らし、怪人との戦いがあり、最後のとどめや大団円まで待っているのだから、一人一人が啖呵切りをしたら大変なことになる(苦笑)。
 それゆえ、他の四人は各々の得物で戦闘員を蹴散らす際の技名ぐらいしか呼称しなかったのだが、キレンジャーだけが何故か特別扱いで、戦闘員と戦いながらなぞなぞを行ったりする、些か緊張感に欠ける展開まであった。

 キレンジャーに変身した大岩大太(畠山麦)は九州出身という設定(実際に演じた畠山氏は長野出身)で、九州弁を用い、カレー好きの大食漢キャラと相まって、コミカル担当でもあった。
 番組途中の第話で栄転によりゴレンジャーから離れたが、第話で二代目キレンジャー・熊野大五郎(だるま二郎)の戦死に伴い、復帰した経緯を持つ。勿論そのキャラクターや役所に変わりはなく、復帰直後の戦いにおいて早くも「俺は阿蘇山たい!怒ればでっかい噴火山たい!」を叫んだ訳だが、いつものシーンでありながら、大岩の復帰と熊野への弔いという二つの大きな出来事に裏打ちされていただけに数十年を経た今でもその印象は色褪せないと云える。


2.スペードエース
 真っ赤に燃える正義の血潮、悪を切り裂けアトム射ち!ジャンプ一番、赤い星、光って唸る核のムチ!
概略 戦隊シリーズ第2作『ジャッカー電撃隊』において、リーダー格である桜井五郎(丹波義隆)が変身したスペードエースが戦闘員を蹴散らす際に切っていた啖呵である(このことは後の三人も同様)。

 僅かな数しか戦隊物を見ていない中でこんなことを云うのは不適切かも知れないが、シルバータイタンは『ジャッカー電撃隊』に対して、「勿体ない………。」というイメージが強い。
 第1作にして2年も続いた前作『秘密戦隊ゴレンジャー』の後継番組ゆえ、様々なプレッシャーが制作陣にも、俳優諸氏にもあったと思われ、梃入れにビッグワン・番場壮吉(宮内洋)を投入したことも逆に主演の4人を食ってしまう形となり、同作はシリーズ最短の35話で終わってしまった。
 だが、トランプの図柄をシンボルとしつつ、各々が核・電気・磁力・重力と云う全く異なる力を特技としていた設定は面白いもので、これらの相違を活かし切れなかったのがジャッカーを前作に比して存在感の薄いヒーローにしてしまったとシルバータイタンは捉えている。

 逆を云えば、4人の異なるパワー源に関する描写をもっと活かし、上手く演出出来れば『ジャッカー電撃隊』『秘密戦隊ゴレンジャー』に比肩し得る作品に仕上がっていたのではないかと思われるし、視聴率には繋がらなかったとは云え、4人全員のアイデンティティをじっくり考察する楽しみを残してくれている。

 このことを踏まえてスペードエースの啖呵切りを考察するが、スペードエースに変身する桜井五郎(丹波義隆)は近代五種の有望な選手で、生身の人間として活躍するのを志していたことや、親から貰った体を改造することに否定的だったので、ジョーカー・鯨井大介(田中浩)のスカウトも拒否したが、カレン水木(ミッチー・ラブ)が撃たれたことへの怒りから人間の体を捨てることに同意した。
 桜井五郎を演じる丹波氏は物静かな、どこか寂しげな表情・演技の多い俳優だが、それゆえ同作では静かに秘めた怒りを端的に演じている。「核」という日本人にとってアレルギー的に忌避感のあるパワー源も、すべては悪に対する怒りで、「真っ赤に燃える正義の血潮、悪を切り裂けアトム射ち!」という啖呵切りはそれを如実に表していたと云えよう。

 惜しむらくは、「核」と云うものが巨大過ぎる破壊力を持ちつつ、そのイメージが悪過ぎたと事だろうか?原子力をエネルギーに用いたフィクションは当時決して少なくなかったのだが。


3.ダイヤジャック
 スピード一番、青い星、ギラリギラギラ電気剣!怒りのエレキでつばなりさせて、守って見せるぜ青い地球!
概略 ジャッカー電撃隊の一人・ダイヤジャックの啖呵切りで、スペードエースに勝るとも劣らぬほど悪に対する怒りを漲らせている。
 そもそもダイヤジャックになる東竜(伊東平山)はボクシングのジュニアウェルター級の元世界ランク2位の名ボクサーで、マフィアより世界タイトルマッチの八百長を強要され、八百長に応じるよりは試合放棄を選んで夢を捨てた過去が有ったので、「悪の組織」には他の三人以上に怒りを覚えるところがあったことだろう。

 ただ、東は歴代戦隊シリーズ主演者の中でも屈指の強面ながら(←伊東さん、許して………)少年野球の監督を務めるなど厳格でも面倒見のいい人物で、そんなダイヤジャックが「怒りのエレキ」と称して電気の力を振るい戦うのが「守って見せるぜ青い地球!」と締められているのが何とも微笑ましい。


4.ハートクイーン
 娘18、涙を捨てて、戦場に咲く桃の花!ひらり一点、桃の花、咲かせて散らす磁力盾!
概略 ジャッカー電撃隊の紅一点で、磁力を武器に戦うハートクイーンの啖呵切りである。「娘18」と名乗るハートクイーン・カレン水木を演じたミッチー・ラブさんは放映当時17歳で、(数え年と云うことにすれば)啖呵切りに偽りはなかった(笑)。
 ともあれ、そんな少女と云える年齢設定でありながら、麻薬Gメンでクライム傘下の麻薬密売組織を壊滅させたため、その報復を受けて父を殺され、自身も右腕をなくす重症の末、サイボーグ手術を受けたと云う4人の中でも最も悲惨な過去を背負っていた。

 それゆえ素顔のカレン水木としての活躍には様々な空手仲間との交流にも暗く重いものが多いのだが、その反動かハートクイーンとしての言動は乙女チックである。磁力を用いた得物も盾・ハートキュートで、相手を殺傷するするよりは磁力の持つ誘引力・反発力を駆使してクライマー達を翻弄していた。
 その際に、色っぽい口調で、「もう一つ如何?」と問い掛け、クライマー達は情けない声で「もう結構です〜!!」と云って音を上げるのがパターンだった。

 スペードエースダイヤジャックが素顔では冷静沈着で、変身体では悪への怒りを爆発させていたのに対し、ハートクイーンは素顔での活動や境遇が凄惨で、変身体の方が軽やかだったのが興味深い。
 やはり紅一点の女性キャラには「涙を捨てて」と云わせはしても、実際には無慈悲な戦闘を展開させたくなかったと云ったところだろうか?


5.クローバーキング
 チョップ一撃、緑の火、目から火の出る重力パンチ!重いパンチが唸りをあげりゃ、緑の風が渦を巻く!
概略 ジャッカー電撃隊の一人で、重力を武器に戦うクローバーキングの啖呵切りである。クローバーキング・大地文太(風戸佑介)は当初他の3人に敬語で接しており、真面目な桜井、厳つい東、アンニュイなヒロインのカレンの中に在って前作で云う処のキレンジャーのコミカルさとミドレンジャーの青臭さを担っていた。
 些か残念なのはそんな軽妙感溢れる大地文太のキャラと、重力と云う重厚感あるパワー源を担うクローバーキングのキャラとが上手くマッチングしていなかったことと云えようか?

 実際、鉄球を振り回し、大の字になった体勢でフライングボディアタックを敢行するクローバーキングの戦い振りは「重」を連想させるもので、設定には忠実と云える。
 ただ、如何せん人間体に「重」のイメージが無いことと、重力が武器となっていることを感じさせるのはイメージとして難しかったのかも知れない。
 そして文言的に充分「重力」を重視している啖呵切りが、このクローバーキングにおいては流麗で雅語的だったことも些かミスマッチだったかも知れない。

 4タイプの能力をもっと上手くキャラクター・アクション・技的に表現し、1話形式でもクローズアップさせる話で各々を際立たせれば、独特の啖呵切りと相俟ったアイデンティティが確立され、4人のジャッカーはビッグワンの登場を必要としない程『ジャッカー電撃隊』は名作たらしめたのではないかと思われてならない。
 戦隊物に詳しくないシルバータイタンが述べても説得力が無いだろうけれど(苦笑)。


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令和三(2021)年六月一六日 最終更新