ヒーローの啖呵

「啖呵」とは、商品や労働力を個数一として数えたときの価格……それは「単価」、和歌の一種で、「五・七・五・七・七」の………それは「短歌」、燃焼などで水分が失われ、炭素の塊と化した………それは「炭化」、病人を横臥させたまま運ぶ………それは「担架」…………。

ウケない冗談はさておき、「啖呵」…………goo辞書によると、「喧嘩をする際などの、勢いよく言葉が飛び出す歯切れのよい言葉。」とある。
 まあ、「喧嘩」とはチョット異なるが、「戦い前の口上」と捉えれば、戦いに臨むヒーローが敵を前にして名乗りを挙げるが如く戦意を示すシーンは、ヒーローのアイデンティティの発露であり、カッコ良さを示す偉大なるマンネリであり、毎度毎度楽しみにするワンシーンでもある。

 歴史もののドラマを見る際には猛将・豪傑が一騎打ち前に名乗りを挙げるシーンに胸を躍らせるように、ヒーローの啖呵切りに胸を躍らせるのもよくあることである。
 ただ、この啖呵切り、すべてのヒーローが行う訳ではなく、どちらかと云えば少数派と云える。実際、戦いにおけるリアリティを重視するなら、正悪が対立する中、相手の言い分にいちいち耳を貸す御人好しは少ないだろう。
 まして変身後稀にしか喋らず、対戦相手に会話能力のない怪獣が多いウルトラマンシリーズでは決まった啖呵切りは存在し得ない。
 厳密には皆無ではないが、今回の趣旨に外れる為、よって本作ではウルトラマンシリーズのそれは割愛している。

 現実世界においても、真っ当な言い分ですら、感情的になった相手から「言い訳すんな!」、「聞く耳持たん!」と頭から拒絶されることは少なくない(それを厭うてか、少し話せば理解して貰えることすら口つぐむ輩が多いのもムカつくが)。
 少しでも隙を見せれば相手の攻撃を受けて命を奪われかねない戦場において、いちいち口上を切る必要性を感じない者も多ければ、それに付き合わない者も多いだろうし、いざ殺し合いが始まれば言葉など何の意味も持たないことも少なくない。

 少し史実に目を転じると、鎌倉時代の元寇において、西国武士はそれまでの自分達の戦定法に則って単騎で突出して名乗りを挙げた際に、そんな作法など知らない上に言葉も通じない元軍から突然の一斉射撃を受けたり、多勢攻撃を受けたりして多くの御家人が討ち取られた。
 ただ、現実離れしているからこそ啖呵切りがカッコイイのも事実である。そこで今回は子供の頃の憧れに立ち返って、ヒーローの啖呵切りに注目した。
Part1.仮面ライダーシリーズ(昭和)………口上は悪への怒り?
Part2.仮面ライダーシリーズ(平成)………アイデンティティの発露
Part3.戦隊シリーズ………ピンポイント過ぎて申し訳ない………
Part4.その他のヒーロー………啖呵切りに入るまでが長い!
Part5.偉大なるマンネリが持つ人気


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令和三(2021)年六月一七日 最終更新